「喰らいやがれ!」
何度目かの砲撃がドスジャギィを襲った。
エリア移動を挟んでエリア2。既に狩りは大詰めとなっていた。ジャギィ達を束ねる王の印であるエリマキはボロボロに崩れ、足取りすら覚束なくなってしまっているドスジャギィ。対するヤマトとディンは疲れこそ見えるものの、目立った負傷は見当たらない。ジャギィ達を掃討してからはディンの盾に阻まれ、ドスジャギィの攻撃は殆ど当たりすらしなかったのだ。
ヤマトは多人数狩猟はアマネとしか行ったことがない為、盾を持った壁役となるハンターとの狩猟は初めてだったのだが、その戦いやすさに驚いていた。壁役が的確に攻撃を防いでくれると、確実に攻撃を仕掛けるチャンスが生まれる。当然、実力が無ければ巨大なモンスターの攻撃を何度も正確に防ぎきることは難しい。それを当然のようにやってのけるディンの実力の高さは相当なものだろう。
一方のディンもヤマトの実力が高いことを感じていた。恐らくヤマトがドスジャギィと相見えることは初めてでは無いだろうが、ディンが作った隙を尽く見逃さない。そして決して牙や爪から身を守れるとは思えない防具で攻撃を躱す為にひたすら動いているというのに、動きが全く鈍らない。その集中力とスタミナは驚異的であった。
そんなまだまだ歴は浅くとも実力のある二人のハンターと戦う巨大なドスジャギィもいよいよ虫の息。しかしドスジャギィも生きることへの渇望から力を絞り出し、最後の猛攻を始めた。尻尾を振り回し、爪を振るう。巨体を活かした体当たり。ただ生きることだけを考えたその猛攻は今までで最も激しいものだった。
「ディン、一発凌げるか!?」
相手が瀕死だからといって油断をしなかった二人だが、それでもやはりこの局面での猛攻を前に攻撃のチャンスを作り出せない。次の一撃で決めようとヤマトがディンに向かって叫ぶ。軽やかなステップで上手く攻撃を躱していたディンが当然、というサイン代わりにガンランスを掲げた。
「グォォォア!!」
そしてドスジャギィの渾身の体当たり。ディンはステップを踏む足を止め、しっかりと地面を踏みしめる。腰を落とし盾を構え、その体当たりに正面から受ける姿勢を取った。
「ナメんなぁ!!」
そして必死に踏ん張り、後ずさりながらもしっかり攻撃を完全に受け止めたディン。盾を持つ腕はその重みに痺れ、足元には後ずさった跡が見える。それはドスジャギィの生への思いの強さが確かに刻まれていた。
しかしそれを完全に止められたドスジャギィ。渾身の一撃を終えたその体は隙だらけである。それを見逃さずにドスジャギィの懐へ潜り込み、体を一気に引きながら太刀を振るうヤマト。
「ッらァ!」
ヤマトの斬撃は鳥竜種の硬い鱗を簡単に引き裂き、ボロボロのドスジャギィの息の根を完全に止めた。巨大なドスジャギィは先程までの生を思わせる激しい動きから糸が切れたように崩れ落ち、どさりと地面に沈んだ。
「……ぁあ、」
そして同じように膝から崩れ落ちて大きな息を付いたヤマト。ヤマトの十八番である全身を使った斬撃は途轍もない集中力を要する。更にジャギィ達の相手、巨大なドスジャギィの相手をするのに常に走り回っていたのだ。狩りが終わった途端に疲れが出たのだろう。
「なんだよヤマト!今のすっげえな!!」
対して遥かに元気なディンが武器をしまいながらヤマトに駆け寄ってきた。彼も集中力と精神力を削り取られるガードを続けていたから相当疲労は溜まっているはずなのだが、それを感じさせない。それはヤマトの必殺技を目の当たりにしたからなのか、はたまた元々のスタミナが異常なのか。
「……まあ日々の鍛錬の賜物ってもんさ。さ、剥ぎ取ろうぜ」
「ああ、そうだな!」
ハンターはモンスターを狩猟した場合、そのモンスターの鱗や皮、爪等をナイフで剥ぎ取り、持ち帰る。それは今まで生きていたモンスターへの敬意であり、その強者を自分が倒したという誇りの証である。しかし、根こそぎ剥ぎ取ることは許されない。自然に還す為、ハンター達は最低限しか剥ぎ取ることはしない。
ちなみに、剥ぎ取られた部位は武器や防具を作る際の素材として使われることとなる。ディンの武器や防具は鳥竜種ドスマッカォから作られている。
「強かったぜ、お前。静かに自然の中眠れ……」
ディンは剥ぎ取る最中、常にドスジャギィの亡骸に話し掛けていた。彼は心の底から先程まで生きていたこのドスジャギィという強者に敬意を払っていたのだ。その瞳はベースキャンプで悠久の景色を眺めていた時の、真っ直ぐな瞳と同じであった。
「ディン、お前……」
「なんだ、ヤマト?」
「……いや、俺はお前を尊敬するよ」
その敬意は正に「生」への敬意。ハンターにとって「生き延びる」ことこそが最も大切である以上、それへの敬意を重んじることは何よりも重要なのだ。それを真っ直ぐな瞳でモンスターにも行う彼は、紛れもない「誇り高きハンター」そのものであった。
「へっ、何言ってんだよ!俺もお前を尊敬するぜ、あんな動き回りながら正確に相手を斬り続けられるんだ、すげえ腕してるぜホント!」
実力のことを褒められたと勘違いしたディンは(実力のことも尊敬はしているのだが)照れくさそうに頭を掻きながら、ヤマトに素直な尊敬の意を伝えた。恐らくひたすらに真っ直ぐな男なのだろう。
「帰ろうぜ!帰ったらさ、ユクモ村のいいとこ!案内してくれよ」
「ああ、そうだな。ユクモの名物、沢山教えてやるよ」
狩猟達成。二人は互いに拳を重ね、それを小さく祝った。
次回から日常編(?)です。ユクモ村を存分に楽しんでいただければ。あ、もしかしたら恋愛もすこし......?
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