モンスターハンター 〜舞い踊る嵐の歌〜   作:亜梨亜

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リオレイア戦、第二ラウンドです。

こんなチームで狩り行きたいなぁ....野良でいいチームに出会えたことが無くて....いや私のPSも足りてないんですけどねw

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第二ラウンド

「ペイントの匂い、残ってますね」

 

 リーシャが鼻をひくつかせる。渓流はエリア6、先刻ヤマト達がリオレイアと戦闘を繰り広げたエリアだ。

 

「全くわからん……本当に残ってるのかこれ?」

 

 尚リーシャ以外の三人は、彼女曰く残っているらしいペイントの匂いが解らない。それもそのはず、もうペイント液がリオレイアに付いたのは何時間も前の話だ。完全に消えていなくとも、もうほぼほぼ消えていると言っていい。

 

 それをしっかりと嗅ぎ分けているリーシャの鼻はいったいどのような仕組みになっているのか。モンスターの嗅覚とさして変わらない気もする。

 

「残ってますよ、ちょっとですけど。……あっちだ。エリア7ですね、これ」

 

「すげぇ、俺には無理だ」

 

「大丈夫、僕も全く解らない」

 

 ディンも普通に話せる位には回復している。とは言え無理は禁物なのだが。

 

「ディン、お前俺の護衛が今回の作戦だったよな」

 

 エリア7へ向かおうと足並みを揃えた時に、ヤマトがディンに確認した。

 

「ああ、今度はしっかりやるぜ」

 

「いや、俺の護衛じゃなくて自由に動いてくれ」

 

 少しずつ緊迫感が増していく。エリア7に辿り着くまでもうほんの少しだ。

 この緊迫感……リーシャの鼻はどうやら本当にペイントの匂いを嗅ぎ分けていたらしい。間違いなく陸の女王がいる事を感じ取れた。

 

「は?いや、じゃあお前どうするんだよ」

 

「安心しろ。あいつの攻撃は全部躱す」

 

 その緊迫感の中、ヤマトは一人別の空気を醸し出していた。絶対的な自信と覚悟。間違いない。こいつは本当にそれをやるつもりだ……ディンにはそう感じ取れた。

 

「解った。まあ二発くらいは躱し損ねても俺が止めてやるよ」

 

「ああ、頼むぜ」

 

 そして辿り着いたエリア7。背の高い草や足元を流れる水。場合によってはハンター達にとってそれは武器であり、また脅威でもある。

 果たして今回は……どうか。

 

「行くよ、皆。第二ラウンドだっ!!」

 

 シルバが叫び、一斉に武器を構える。幸いリオレイアはまだ草木に紛れたハンター達に気が付いていない。

 

 いきなり飛び出したのはやはりリーシャだった。背の低い彼女は更に姿勢を低くし、草木に完全に隠れるように走り出した。その動きはあまりにしなやかで、大槌を携えているとは思えない程静かだ。静かに獲物へ接近する狩人。それは兎というよりは豹。或いは迅竜か。

 

「やぁぁぁ!!」

 

 リオレイアがリーシャの接近に気が付き、臨戦体勢となった時は、既にリーシャのハンマーが振り上げられており、回避は不可能となっていた。振り下ろされるハンマーはリオレイアの頭を思い切り叩き、威嚇の為の咆哮の出鼻を完全にくじいた。

 

「ナイスっ!」

 

 そしてシルバが草陰から矢を放つ。それはリオレイアの首筋を捉え、追撃手となった。リオレイアは草陰に隠れているシルバを本能で発見し、ターゲットにする。

 ターゲットがシルバに変わり、目線がリーシャから離れた瞬間、リーシャは足元に何かを叩きつけた。叩きつけられた「何か」は地面に着弾した途端、真っ白な煙を噴射させる。

「何か」とはケムリ玉。煙幕の如く煙を噴射し、モンスターの視界を奪う道具だ。既に見つかっているリーシャとシルバは隠れようが無いが、ヤマトとディンの姿は完全に隠れることとなった。

 

「いつでも不意打ちどうぞっ!」

 

「僕ら二人で注意を引くよ!」

 

 ヤマトとディンが二人で話している間に、リーシャとシルバの二人で考えた作戦。砲撃が使えるディンと、動きが機敏なヤマトの二人の不意打ちの成功率をあげる戦法だ。

 ヤマトはともかく、ガンランスは重い為、ディンは奇襲に向かない。しかし、もし奇襲が成功したなら、彼の攻撃力は相当なものになる。その為に二人で注意を引き、ケムリ玉で撹乱する作戦だ。

 

「助かる!」

 

「サンキュー!」

 

 その作戦の意図をすぐに把握した二人は草陰を使い更に身を隠しながら、一気に距離を詰めに行く。

 

「ディン、俺の後ろに合わせろ!デカいの頼むぜ!」

 

「合点!任せな!!」

 

 鋭い踏み込みでディンより数歩前に出るヤマト。背中の得物に手を掛け、シルバに向かって突進しようとしていたリオレイアの足元を横から斬り裂いた。

 急な足元の痛みに驚くリオレイア。そこに居たヤマトはそのまま走り抜け、体を転がしながらリオレイアの正面に向き直る。

 

「ギャオォァア!!」

 

 そのヤマトの動きにイラついたのか、リオレイアはターゲットをまたもや変更し、先刻ディンを襲った牙で噛み付こうとする。しかしヤマトは躱そうという動作を見せず……武器を斜めに構え、骨盤を落としていた。

 

「ふっ!」

 

 そして牙に太刀の刃を滑らせ、体もその流れに逆らわずに牙を「いなす」。ガチン!という牙の音がヤマトの耳元で聞こえた。

 

 そしてその隙に……ディンが竜撃砲のチャージを終えている。

 

「っらぁ!!」

 

 ドゴォン、という爆音と共に発射される飛竜のブレスの如き熱の暴力。それは本物の飛竜にとっても大ダメージは免れない。

 またもや足元を襲う衝撃。リオレイアは耐えきれずにその場に倒れることとなった。

 

「よしっ!」

 

 しかしこれで全員がリオレイアに感知されてしまった。ここからは奇襲は効かない、地力による勝負だ。

 倒れたからといって接近し、追撃するのではなく、一度引いて次の動きに備えるハンター達。相手の体力は有り余っているのだ、ここで欲を出す訳にはいかない。

 

「ここからが正念場だよ」

 

 ゆっくりと立ち上がり、鬱陶しそうにハンター達を睨むリオレイア。口から炎が溢れ出ており、目がギラギラと輝いている。沸点が頂点に達したのだろう……怒り状態だ。

 

「グギァァアアアォア!!!」

 

 耳を塞いで蹲るしかない、途轍もない咆哮。飛竜種であり、陸の女王と呼ばれるリオレイアの、本気で狩りに行く際の合図とも言えるその咆哮。

 

 目を瞑り、耳を塞ぐしかない彼らをよそに、リオレイアは口の中で超高温の炎の玉を作り出していた。

 

「グォァア!」

 

 そして吐き出される炎。目を開けたハンター達はまだ痺れが残る体でその炎への対応を余儀なくされる。

 

 しかし、彼だけは……ディンだけは恐ろしい反応速度で動き出していた。

 

「うぉぉぉ!!」

 

 咄嗟に盾を構え、火球を受け止めたディン。盾越しに感じる熱と勢いに押され、片膝をつき、片目を閉じてしまう。が、確かに、確かに火球を受け止めきった。

 

 そして姿勢が崩れたディンのカバーに入ろうとリーシャが飛び出す。しかしリオレイアは翼をはためかせ、空へと飛び出した。これではリーシャのハンマー攻撃は当たらない。

 

 リーシャの、ハンマー攻撃は。

 

「そこだっ!」

 

 リオレイアの右の翼膜に穴が開く。渾身の力を振り絞って引き絞られたシルバの矢が、空へ飛ぶことを予想された角度でリオレイアに突き刺さったのだ。

 

 リーシャの、ハンマー攻撃は当たらない。しかし、シルバの弓による射撃なら、当てることができる。

 

「ヤマト君、カバーお願い!」

 

「ああ!」

 

 シルバを厄介に感じたか、リオレイアは滑空しながら恐ろしい勢いでシルバに突撃する。しかし、滑空ということは高度は少しずつ落ちていく。そうなるとヤマトの太刀も、届く。

 

「疾っ!」

 

 スラリとすれ違い様に太刀を振り抜くヤマト。またもや右の翼にダメージを受けたリオレイアは軌道が少しズレた。

 そうなればシルバにも余裕が生まれ、安全に回避することが出来る。

 

 着地したリオレイアはすぐにシルバの方を向き、自慢の脚で走り出す。当然、ターゲットはシルバ。

 

「させるかよ!」

 

 その目の前に割って入った人影。大盾を構えて腰を落とすその姿は紛れもなくディンだ。リオレイアの突進を相手に、正面から力比べを挑みに行った。

 

「また無茶をっ!」

 

「んぐぅぅ……っ!ッぁあ!」

 

 両足を踏みしめ、盾で無理矢理軌道をずらす。そして軌道がズレ、リオレイアの頭が向かった先は、リーシャのハンマーが構えられた場所である。

 

「いらっしゃいませぇっ!!」

 

 全力で叩き込まれたハンマーの一撃。そのダメージは確実に脳に響いているはずだ。

 

「安心してくれ、シルバ!俺はお前らを守る壁だ!!」

 

 またもや片膝をついているディンは息を荒らげながらそう叫ぶ。その背中は呼吸を整える為に上下しているものの、恐ろしく逞しく見えた。

 

「……解った!信じていいんだね!?」

 

「当たり前だろ!……ヤマト!お前も信じていいんだろうな!?」

 

「言葉返すぜ……当たり前だろ!」

 

「ヤマト君っ!一緒に暴れますよ!撹乱作戦です!」

 

 第二ラウンド。ゴングはまだ鳴らされたばかりである。

 





飛竜戦、まだ続きます。

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