ご無沙汰しております。亜梨亜です。
短編も終わり、いよいよ今回から第3章となります。
章が進むほど、私の執筆力も上がればなぁ……
はい。それでは本編をどうぞ!
強い女も
リオレイア討伐から一晩が過ぎ。
目を覚ましたヤマトはいつの間にかベッドの上にいた。そしてリタの姿が見えなくなっていた。おそらくは先に目を覚まし、家に帰ったのだろう。
その証拠に、机に目をやると置き手紙とムーファのぬいぐるみが置いてあった。
「ばーか。おかえり」
手紙には、その一言だけが記されていた。
ヤマトは苦笑し、いつもより少し遅いが朝の稽古を始めるために木刀を手に取り、外へ出た。
昨日まで自分が死闘を繰り広げていたとは思えない程普通の朝。普通の空。普通の風。
逆にそれが気持ち良かった。
何も考えず集中して稽古に臨めるからだろう。
しかし、ただ一点に置いて普通の稽古風景でない所が見受けられた。
「おはよ」
外に出ると、そこには短めの木刀を二本持ったアマネが立っていたのである。
「……おう」
「ちょっと、何よその返事」
「眠いんだよ」
昨日の疲れと眠気が混じってイマイチ頭が覚醒しきっていないヤマトはそこにアマネがいる事実がイマイチ理解し切れていない。そんなヤマトの反応に彼女は口を尖らせた。
「折角リオレイア討伐おめでとうって言いに来たのに……もう既に集会所じゃアンタらの話で持ちきりよ」
「おめでとうって言いに来た奴がなんで木刀持ってんだよ」
「あぁ、これ?どうせ今からあなた素振りするんでしょ、折角だしついでにかかり稽古したいなーっ、て」
そう言いながらアマネはお手玉をするかのように木刀を放っては受け取り、を繰り返す。まるで曲芸師だ。
少しずつ頭が覚醒してきたヤマトはやっとアマネが言いたいことが理解出来た。
リオレイアと戦うまで成長したんなら、その証を見せて欲しい。つまりこういう事なのだろう。
「まぁ、かかり稽古は構わねえけどさ」
「流石、ノリがイイわね。じゃあ……早速!」
突如両手に一本ずつ持った刀を構えて突撃するアマネ。完全に不意打ちそのものだったが、ヤマトはその不意打ちはリタのおかげで(せいで?)慣れている。すぐに後ろにステップを踏み、木刀を構えた。
「ていっ!」
右手を振り、先制攻撃を仕掛けるアマネ。ヤマトはその攻撃に合わせて、下から斬り上げるように木刀を全力で振る。リーチも筋力もヤマトの方が上だ、アマネは勢い良く押し戻された。
その隙にヤマトはアマネの横を走り抜け、家の隣の広場へ移動する。アマネも押し戻された勢いを上手く使い、逃がすまいと体勢を直しつつヤマトの後を追う。
その瞬間、ヤマトが左脚を軸に回転し、木刀を横に振る。回転の勢いもあり、相当なスピードだ。
アマネはその木刀の動きを見切り、木刀を踏み台にして宙返り。流石のヤマトもアマネの体重を重ねた木刀を両腕で支えることは出来ず、前のめりに倒れる。
宙返りでヤマトの頭を越え、ヤマトの背後を取ったアマネがはそのまま両手の木刀をヤマトの背中に向かって振り下ろす。
「やらせるかよっ!」
ヤマトもそう簡単にやられる訳にはいかない。転ばないように踏ん張っていた両脚をわざと地面から離し、勢い良く伸ばす。ドロップキックの形となった両脚はアマネの両肘を突き、木刀が振り切られることは無かった。
そのまま前転し、すぐにアマネに向き直るヤマト。アマネは口元に笑顔を浮かべ、双刀を構えていた。
「ほんとにあなたの体術は凄いわね」
「お前の空中戦法の方がよっぽど頭おかしいと思うぜ、俺は」
再度突撃するアマネ。ヤマトは腰を落とし、木刀を低く構えた。
またも初手は右手に持った刀の横薙ぎ。腕が振り切られる前にヤマトは左足から大きく踏み込み、肩に力を入れた。アマネの前腕がヤマトの肩にぶつかり、隆起した筋肉が勢いを殺す。
「ちょっ!?」
そのままさらに踏み込みショルダータックル。アマネは咄嗟に後ろに引き少しでも衝撃を減らそうとする。
「はっ!」
更にもう一歩踏み込むヤマト。低めに構えていた木刀を振り上げ、姿勢を崩したアマネに決めの一撃を見舞おうとした。
「なめんじゃないわよ!」
しかしアマネもすぐに倒れた姿勢から無理矢理体を回し、足の裏で木刀を叩き、軌道をずらす。そしてそのまままるでダンスを踊るかのように足を振り上げ体を回し、曲芸のように立ち上がった。
太刀筋が逸れた木刀は地面を叩き、ヤマトはすぐさまその地面を叩いた振動も構わずに木刀を引き、アマネの反撃に備える。案の定、アマネは再度突進し、二本の木刀を勢い良く振り始めた。
懐に入ってしまえば、太刀より双剣の方が有利なのは当然の摂理である。ヤマトは攻撃を捌くので手一杯となり、次第に後ろに少しずつ押し込められていった。
「やっべ……」
しかし、ずっと後退りが出来るわけでもない。ヤマトのすぐ後ろにはヤマトの家の壁が迫って来ている。
「だったら……!」
だったら。ヤマトはギリギリまで後ろに引き、アマネの太刀筋を集中力で見切る。そしてその太刀筋に合わせて木刀を滑らせ、体を低く落としたまま、まるで舞踏会のステップを踏むかのように体を入れ替えた。ヤマトの新たな必殺技、「イナシ」だ。
「え?嘘っ!?」
勢いを全く殺さずに攻撃をいなされたアマネは逆に目の前に壁がある状態で、更にはヤマトに背後を取られてしまう。文字通りの形勢逆転だ。
「貰ったッ!!」
チャンスと見たヤマトが木刀で突きを入れる。
「まだよっ!」
しかしアマネはヤマトの予想を超えた。
すぐに後ろを向く、という動作を捨て、その場で飛び上がり、壁を思い切り蹴ったのだ。
その勢いでヤマトの頭をまたもや飛び越え、ヤマトの突きは壁に当たることとなる。
そしてアマネは着地と同時に振り返り、両の刀をヤマトに向かって振り抜く。
ヤマトも突きが外れた瞬間に振り返り、太刀をアマネに向かって振り抜く。
ガイイン!という木刀では普通聞けないような音が鳴り響いた。
お互いの得物は振り抜かれることなく、鍔迫り合いの状態となっている。パワーがあるヤマトの方が若干上手か。
「本当にどんな状況でも跳ぶな、お前」
「あら、褒めてるの?……余裕ね」
その瞬間、アマネは膝を畳み思い切り体を後ろに逸らす。突如終わりを告げた力比べ。ヤマトの余った力はアマネのすぐ上を通り過ぎ、姿勢が崩れた。
「そこっ!」
そして右足をすぐに伸ばし足を払うアマネ。姿勢が崩れたヤマトはなす術もなく転ばされ、その隙にアマネは立ち上がり……首元に木刀を突きつけた。
「……フフ、私の勝ちー」
意地悪そうな笑みを浮かべて勝ち誇るアマネ。ヤマトも木刀を離し、両手を上げて降参のポーズをとった。
「なんでそんな対人特化みたいな技術あるんだよ……」
「まぁ、女の子は自衛策が無いと大変なのよ。……あなたの幼馴染だってそうでしょ?」
「……あー、確かに」
幼き日、このようなかかり稽古でボコボコにされた記憶が蘇る。
今でも徒手空拳ならヤマトと張り合えるだけの実力を持つのだ、リタの腕も相当と言える。
勿論、リタやアマネが飛び抜けて強いだけで、普通の女性はヤマトのような鍛えた男性と張り合うなど不可能に等しい。それは女性ハンターであってもだ。
「リタちゃんだっけ?女の子は男が守ってあげなさいよ」
「アイツは俺が守らなくてもなんとかすると思うけどな」
首元に突きつけていた木刀を下ろし、手を差し伸べるアマネ。その手を掴み立ち上がり、土を払うヤマト。
「バカ。強くてもね、女の子は守られなきゃいけない時があるの」
「は?」
「……あなた、鈍感というかバカね、本当に」
心の底から溜め息をつくアマネ。
「どういうことだよ」
「いや……いいわ、その内解る」
心底疲れた表情でヤマトの家へと入っていくアマネ。ちなみに家主であるヤマトが入室許可を出した記憶は無い。
「……まあいいや」
予想外のかかり稽古で喉が渇いた為、もう特にアマネに何も言う事は無く、ヤマトも家へと入る。
そこで見たのは乾いた笑みを浮かべるアマネと……恐ろしく不機嫌そうな顔をしたリタだった。
「あら、リ、リタちゃん……いつからここに?」
「あなた達が全力でかかり稽古してる時に声かけるのも悪いかなーとおもいましてかってにはいらせてもらいました」
「あ、あぁ、そうだったのか。いや、あーその、悪いな、気付かなくて」
段々言葉に感情が籠らなくなっていっている。
何故かアマネも怯えていた。
その光景を見たヤマトは即刻回れ右をして逃げたくなった。
あのリタはヤバい。俺殺される。
「まぁ、たかが同業者の、アマネさんも、勝手に入るわけですし?私が入ってても、問題ないわよね?ねぇ、ヤマト?」
「…………お、おう、そうだな、別に問題ない」
抱き締めているムーファのぬいぐるみから綿が飛び散りそうになっている。ムーファの首はどんどん絞められ、可愛いはずの顔の部分は膨張し、なんとも言えない不細工で恐ろしい表情をしていた。
「私は守られなくてもなんとかする?そうねー、アンタなんかに守られなくったってなんとかするわよ、アンタなんかに守られたら恥よ!恥!」
「だよな、それは俺もそう思う」
「何でそこだけ無駄に流暢に言えるのよ!!ヤマトのバカッ!!」
「………あー、リタちゃん?あのー、その、ちょっと落ち着きましょ?お外でちょっとだけお話しない?」
両手を前に出して抵抗の意思が無いことを示しながら対話を試みるアマネ。早くしないとムーファのぬいぐるみが破裂しそうだ。
「お話って大した知り合いでもない私とあなたで何を話すんですか」
「あー……うん、どっかの鈍感なバカがやらかしたことについて」
鈍感なバカ、という言葉に少し紅くなるリタ。因みに、当の本人は鈍感なバカというのが誰を指しているのか全く理解していない。
「……少しだけお話しましょう」
はち切れそうなムーファのぬいぐるみは首を緩められ、安堵の可愛い表情へと戻る。
「……ヤマト、アンタあとで話あるから」
そう言い残し、リタはアマネと共に外へ消えていった。
「……なんで?」
何故リタがここにまた来たのか。
何故リタがあんなに怒っていたのか。
ヤマトには微塵も理解出来なかった。
以前シルバの短編書いてる時にも思ったんですが、いやぁ新章とかになるとなんとなく新鮮な気持ちで書けますね……!もうヒイヒイ言いながら書いてました()
あと、初の対人戦。まあ稽古ですけど。どうでしたか……?ムズイです。
感想、評価等、宜しくお願いします。