お久し振りです。
……ごめんなさい。めっちゃ投稿期間開きました。しかも今回短めです。
今回から第四章へ入ります。
それではどうぞ。
天才が故に?
あまりの寒さに、全てが凍てつくのではないか、という大地。
凍土と呼ばれるこの狩場。ここでしか採れない植物や鉱物も存在し、狩人達はしばしばこんな極寒の地にすら足を踏み入れる。
しかし、当然ながらそんな凍土に足を踏み入れるのは狩人だけではない。
「ディン、そっち行ったぞ!」
「解ってる!!」
寧ろこの極寒の地を好んで棲息するモンスターすら存在するのだ。
ヤマト、ディン、リーシャ、シルバ。リオレイア討伐時に結成されたこのパーティはウマが合い、その後もしばしばこのメンバーで狩猟に赴いている。四人の相性の良さもあり、チームハントでなら強力なモンスター相手でも立ち回れるようになっていたのだ。
今回の狩猟対象は凍土を棲家にする飛竜、ベリオロス。巨大な琥珀色の牙に真っ白な鱗、スパイクのような前脚が特徴のモンスターだ。
ベリオロスはディンに向かって突進するも、ディンは盾を上手く使って横へ衝撃を受け流す。勿論、正面から受け止めなかったのには理由がある。それは受け流した方向に……
「行けっリーシャ!!」
「もちろんですっ!……ぐーてん、もるげんっ!!!」
それは受け流した方向に、ハンマーを構えたリーシャが待っていたからだ。思い切り振り抜かれた渾身の一撃は、ベリオロスの牙を吹き飛ばした。その牙はディンの方へと飛んでいく。
「あっぶねぇ!おい、行けとは言ったけどもう少しスマートにやれよ!」
「てへっ★……ごめんなさいディンさん!」
「ハンマー振り回しながらてへっとか言っても可愛くねえよ!」
「二人共集中して!来るよっ!」
シルバが二人を狩猟の世界へ引き戻す。
既に狩猟開始からかなり時間が経っている。常に前線でヘイトを取り続けていたヤマトの疲労も激しいが、それ以上に牙を折られたベリオロスの疲労、消耗も激しい。たまらずベリオロスは空へと飛び上がり、空中からブレスを吐こうと息を吸いこんだ。標的は、リーシャ。
その瞬間である。
「……疾っ!」
ブレスが吐き出される直前のタイミングを見計らって、シルバが矢を放った。ブレスとすれ違うように矢は飛んでいき、ベリオロスの鼻先に突き刺さる。
ベリオロスは怯み、ターゲットをシルバに変更する。その脇で竜巻のように吹き荒れるベリオロスのブレスを、ぴょんぴょん、と飛び回るように躱すリーシャ。
「ブォォォォォ!!」
空中から急降下し、シルバを轢殺しようとするベリオロス。しかし、シルバは動かない。何故なら……
「せぁぁぁっ!!」
間にヤマトが飛び込み、その鋭い太刀筋でベリオロスを切り刻む事が解っていたから。更に言うなら、その太刀筋でベリオロスの急降下してくるルートが少し変わることまで解っていたから。
だから、シルバはそこから回避をする事ではなく、弓を引き絞る方に意識を傾けていた。上向きに、大量の矢を放つ為に。
「流石ヤマト君……ありがとう」
「ばーか、礼には及ばねえよ」
そして空に向かって放たれる大量の矢。やがて重力に従って落下する矢は……強撃ビンが塗りこまれ、ベリオロスに雨となって降り注いだ。
天から矢を降らせる特殊な射法……曲射である。
「今だよ!ディン君、リーシャちゃん!」
「はいっ!」
「任せな!」
大量の矢を受けて怯んだベリオロスの懐に飛び込む、ディンとリーシャ。先に仕掛けるのはディン。思い切りガンランスを叩きつけ、思い切り引鉄を引く。ガンランスに装填された弾が一気に放たれ、爆発。必殺のフルバーストだ。
フルバーストを受けたベリオロスは、爆風に煽られて頭が上に流れた。その頭を思い切り殴るべく、ディンを踏み台にぴょん、と跳ぶリーシャ。振りかぶられたハンマー。
「あいん!」
それを思い切り横に振る。
「つばい!」
更に回転を加えてもう一撃。
「どらぁぁぁぁい!!!」
更に更に回転を加え、脳天を砕くかのようにハンマーを振り下ろすリーシャ。その一撃は文字通りベリオロスの脳天を砕き、地面と顎がディープキスをするかの如くぶつかった。その一撃を食らっては……もう生きてはいまい。
「狩猟完了ですっ!」
「凍土の狩猟になるといつにも増してとんでもない動きするな、あいつ……」
狩猟目的であるベリオロスの討伐を完了した四人。リオレイアを相手に全身全霊、正に生死を賭けて戦っていた四人は、この一月で飛竜相手に危ない場面はあったものの、確実に勝利を収められるほどに成長した。
「てかおい!リーシャ!飛んできた方向が俺だったから良かったものの、お前何サラッと味方に牙飛ばしてんだよ!ヤマトかシルバの方に飛んでたら盾で受け流せなかったぞ!」
「大丈夫ですよぉ、ディンさんの方を狙って飛ばしましたし」
「尚悪いわ!誰もいない所に飛ばせ!」
「ほら二人共帰り支度するよ!凍土から村まで帰るの時間かかるんだから!」
あーだこーだ、とリーシャに文句を言うディンだが、彼もリーシャが本当に無茶な動きはしない、本当に仲間を危険な目に合わせるような行動はしない、ということは重々承知している。言わばじゃれ合いのようなものだ。
ディン、リーシャの二人も、ベリオロスの骸にナイフを入れていたヤマトに続いてナイフを取り出す。狩猟の証となるベリオロスの鱗や牙を剥ぎ取る為だ。
「……悪いな、自慢の牙、折っちまって」
ボソッとディンが呟く。彼は必ず狩猟したモンスターから何かを剥ぎ取る際に、心の底から感謝し、そして先程まで命のやり取りをしていた相手に弔いの言葉を送るのだ。彼が、「誇り高き狩人」でありたいが為の、自然への感謝の意である。
最後に全員で骸の前で合掌をする。四人で行う狩猟の、決まった行動だ。
「……さ、帰ろうか」
一行はベースキャンプへ帰るために足を運び始めた。
〜〜〜
凍土ベースキャンプから竜車に乗り、ユクモ村に到着したのはもう夜更け過ぎだった。
昼間の賑わいはフッと消え、静かな夜道を提灯が照らす。時たま見える紅色はひらひらと舞っている紅葉だろうか。狩りに疲れた四人を、藍色と紅色が静かに迎え入れてくれた。
「……そういや、始めてリーシャと狩りに行った時もこんな時間に帰ってきたな」
ふと、思い出したようにヤマトが呟く。現在ヤマトが愛用している防具、フロギィシリーズ。その防具を揃えるために初めてドスフロギィと戦ったあの時が、ヤマトとリーシャの出会いとなった狩猟なのだ。
「あれ?そうでしたっけ?あんまりよく覚えてません」
「……まあお前すっげえ眠そうにしてたしな」
きょとんとした顔をするリーシャを見て軽く溜息を付くヤマト。この四人で狩猟を始めてから薄々気付いたことがあるのだが、リーシャはかなり、変わっている。天才は変人が多い、とは言うが、リーシャはその典型だろう。
シルバは兎も角、ヤマトとディンも相当な天才であるのだが、リーシャは二人を遥かに超える才能を持っている。これもまた四人で狩猟を始めてから気付いたことだ。
しかし、だからこそ心配な事がある。
彼女はその少し変わったキャラクターと恵まれた見た目で様々なハンターから好かれている。
だが、その才能を羨み、妬み、知らず知らずのうちに敵を作ってしまうことだって大いに有り得るのだ。事実、リオレイア討伐まではシルバはリーシャの才能が羨ましくて仕方が無かった。
アマネ程、経験も豊富で最強級の実力があれば話は別なのだが、まだリーシャはルーキーの枠を出ない。
今が、最も危険な時期なのだ。
「……まぁ、杞憂だといいんだけど」
少し心配するシルバ。
少し前なら、こんな事は考えなかっただろう。
「さぁ!報告行きましょ、皆さん!」
当の本人は天真爛漫な笑顔で階段をぴょんぴょんと駆け上がる。それに付いていくディンとヤマト。シルバも苦笑しつつ、その後を追った。
如何だったでしょうか?
今回メインに据えられるのは……まあ読めばわかりますよね。リーシャです。
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