目が覚めたアルヘイムが目にしたのは自分の右腕が消えたことだった。しかし、目
の前に吸血鬼がいるため『こんなにおいしそうな肉』を放っている訳がないと思い対
してパニックにもならなかった。
「...。何をしている。アルカード。」
自分が守ると決めて守ることのできなかった少女。忌々しい存在はその死体を穢そ
うとしていた。
「貴様...!」
アルカードはこちらを睨む。
「我は主の子。右手には主を脅かす魔を打つ車輪を。左手には主より授かりし金貨
を持つ。我は主の子。我は魔を打ち破りし”13番目の使徒(ユダ)”なり。」
アルヘイムは下を向きながら歌うようにそう諳んじてみせ、銃を構えた。
+
あちらこちらで火の手が上がっている。その戦火の中心で血に濡れ、銃を構える神
父たちがいた。周りに存在する死体の山は”13番”と、軍隊が殺しあったなれの果て
だ。
「こちらの被害は?」
バイムイストが問いかける。
「125人中残存兵23人です。」
「...そうか。」
「(奴は無事なんだろうか...。?)」
その日の昼暮れに出立した紅い髪の一人の少女の顔を浮かべる。その時、殺した
はずの敵の死体が動き出す。
「「「「「異端者には死を!!我らは原罪の象徴”EDENN(エデン)”なり」」」」」
「「「「我らは魔を打ち破りし”13番目の使徒”なり」」」」」
2つの宗教は互いにいがみ合い血を流し争いを続く。
「さぁ!人間のなれの果て共よ!かかってこい、我ら”13番目”はお前たちを脅威と
認識した!!!」
怒号、銃声が鳴り響く。
+
一発の銃声が響く。しかし、それを放ったのは『アルス=マグナ』ではなかった。
「血に飢えし逆十字の異端者よ。我、『ケイオス』の前には何物も無力だ。」
そう言って、片手で構える一丁のマスケット銃『ケイオス』。そして無くなった右手の付け根から血で形作られた荊が影を蝕むように広がる。
「くそっ...。」
アルカードはその場から離れ、銃弾をかわした。
「無駄だ。」
アルヘイムは短くそう告げた。その瞬間銃の軌道が赤く光り、でたらめにアルカード
を追いかけまわした。
「神の十字架の名のもとに貴様に告げる宣告を。」
その姿は、悪魔よりも悪魔らしくしかしそれは見まがうことの無い神に仕える神官だっ
た。
「美しく在れ。まるで、散りゆくバラのように。」
アルカードは悲鳴をあげる間もなく背後からの死神の一線によってその身を地に沈
めた。
+
「ハァッ...。ハァッ...。」
味方は全て不死の神の冒涜者によって殺された。最後に残った自分もそのようにな
るだろう。
「まだだ、私はここにいる、私はここにいるぞ...!」
全ての敵を相手に血で赤くなった神官はその身を戦場に捧げる。
「さぁ、私を殺してみよ!冒涜者共。私が死ぬ瞬間は貴様らが死んだ瞬間だ!」
無限に広がる敵を相手に紅い神官は黒の軍勢に挑む。
その様はなんと、愚かしく...
美しいのだろうか。
「私は死ねんぞ...ッ!あいつにまだ伝えてない言葉があるんだ...ッ!!」
+
とある一室にて。
「ははははは。なんと素晴らしい悲劇なのだろうか!この者が異教徒でなければ私
は、彼の命を乞うだろう!」
しかし、と紅い軍服の男は続ける。
「これは戦争だ。焼け!焼き尽くせ!我々は神の申し子!原罪を象徴する”EDENN"だ!!!!!」
全ての運命は、動き出した
お久しぶりのお方はお久しぶり、初めましてのお方は初めまして、どうも林檎です。今回は少し短くなってしまいました。
今回は書いててなんとなくHEKKSINGのアンデルソン神父を思い出してしまいました(笑)。
次回辺りにでもHELLSINGネタを混ぜていこうと思います。
【注】次回のネタばれあり
次回は中央都市戦、そしてつらい別れ。の二本建てで行きたいと思います。ではみなさん、また次回でお会いしましょう。