暁の約束   作:Rosen 13

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零菜の口調が迷走中。ストブラのアニメ見直そうかな。


その3

「ーーつまり無駄に権力と財力がある奴らにしつこく婚約を迫られてるから、それを断る口実として俺に偽の婚約者になってほしいってわけか」

 

 

『私の婚約者になってくれませんか? 』

 

 

 はじめは暁の意図を理解できなかったが、自分なりに暁の話を纏めるとようやく話の全容がつかめてきた。

 どうやらこの婚約者発言は告白でも嘘告白でもなく男避けの盾になってほしいということを意味してるらしい。

 よく考えれば昔馴染みとはいえ転入初日で嘘告白なんてありえないな。一番最初に嘘告白の可能性を持ってくるってどんだけ捻くれてんだ俺の思考は。でもそれを抜きにしても最初のフレーズだけ聞いて勘違いしなくてよかった。下手に舞い上がってたら黒歴史どころじゃなかったぞ。だから少しだけ残念だなんて思ってない。思ってないったら思ってない。

 

 

「その通りなんだけど、最初から聞いてくれてれば二回説明しないで済んだのに」

 

「それは悪かったって。でもその歳で婚約って流石皇族、やっぱり世界が違うんだな」

 

「そんなことないって。他はどうだか知らないけど、ウチでは私のパターンが特殊なだけだと思う。古城君やママからは身分なんて気にせず好きな人と結婚しなさいっていわれてるよ。それに皇族っていわれても古城君の代からだから歴史もなにもないし、逆に政略結婚は否定はしないけどあまりよく思っていないみたい。ほら、古城君って結構過保護な所があるから」

 

 

 ふと脳裏でかつて見た暁の帝国の主の姿を思い出した。カリスマ溢れる普段の姿ではなく、娘に相手されないことにいじけて正妃(雪菜さん)に説教されてる姿を。当時はあれが世界中から畏れられてる最強の吸血鬼だなんて信じられなかった。でもあれだな、

 

 

「過保護っていうかただの子煩悩じゃね? 俺も子供の時に殺気を向けられたことがあったわ」

 

 

 手加減されてたとはいえ、世界最強の吸血鬼の殺気を浴びてちびらなかった当時の俺を全力で褒めたい。今思えば子供にむける殺気じゃねえだろ。

 

 

「本当に? 子供に殺気むけるなんて古城君最低」

 

 

 古城さん、知らない内に娘さんからの評価がだだ下がりになってます。やられた身としては一切同情しませんけど。

 

 

「でもまあ古城さんの気持ちは分からんでもないな。 俺も小町に近づく奴に殺気むけるときもあるし」

 

「小町ってたしかはっくんの妹さんだっけ?」

 

 

 そうだが、暁に小町について話したことあったか? と聞くと暁は途端に挙動不振になりはじめた。

 

 

「ア、アハハハあったんじゃないかぁ……と、ところでなんでさっきから私のことを苗字で呼ぶの? 最初のときみたいに名前で呼んでよ」

 

「うぐぐぐ、ボッチにむかってなんて過酷なことを要求すんだ」

 

 

 異性どころか同性すら話す機会が滅多にないボッチにとって、異性を名前で呼ぶのは地雷原をサンバをしながら進むようなものなんだぞ。

 

 

「そんなに無茶なこといった!? ……それともはっくん私のこと名前で呼びたくないの?」

 

 

 暁のテンションが一気にシュンと沈んでしまった。さっきまで快活な印象だったのに今は庇護欲が湧きそう。ってちょっと本気で泣きそうになってるんですけど。そんなに呼ばれないのが不服なの?

 しかし暁の瞳は潤んだまま。いかん、このままじゃ美少女を泣かせたクソ野郎というレッテルが貼られてしまう。周囲から悪意をむけられるのは慣れているが、流石に学校中から悪意をむけられると居心地が悪すぎる。それに俺に女を泣かせる趣味はねえぞ。

 

 

「おーい、泣くなって零菜」

 

「あっ、ようやく名前で呼んでくれたね、はっくん」

 

 瞬時に零菜の表情が笑顔に切り替わり、へへへと舌を出して笑う。

 

 ……嘘泣きだったのかよ。

 

 

 

 

 

 

「それで婚約者の話は受けてくれる?」

 

 

 数分後、ようやく話題は婚約者云々に戻った。だが俺には受ける受けないを答えるより零菜に聞きたいことがあった。

 

 

「その前に聞きたい。なんで婚約者役に俺を選んだ? 他にも候補はいるんじゃねえのか?」

 

 

 婚約者といってもあくまで偽物だ。わざわざ疎遠になってた俺よりも近くにふさわしい人間はいると思うのだが。

 

 

「仲の良い男の人なんて全然いないよ。……それに婚約者だなんてはっくん以外に頼めるわけないもん」

 

 

 色々と気になる言い回しだが今回は後回しだ。

 

 しかし零菜の奴、もし俺に彼女いたりしたらどうするつもりだったんだ? まさか別れろとか言うつもりだったのだろうか。

 

 

「それは大丈夫。はっくんに彼女がいないってことは報告書で確認済みだから」

 

 

 うん? 報告書?

 

 

「待って、確実に大丈夫じゃない箇所があるんだけど。一応聞くけどその報告書って何の報告書? 」

 

「うん? はっくんについての報告書。ちなみに六年分あるよ」

 

 

 えっ……嘘だろ。

 

 しかしまさかの事実に呆然としてる俺を差し置いて零菜のテンションはドンドンと上がり、口調も段々早口になっていく。

 

 

「六年前、はっくんと会えなくなるって知った私が『はっくんに会いたい、はっくんに会いたい』ってずっと泣いてたから古城君がはっくんパパに頼んではっくんの写真とその成長記録みたいな日記を私にくれたのが始まり。最初はそれっきりだったんだけど、私が事あるごとに新しい写真とかを強請ってたから気づいたらはっくんパパや古城君の部下の仕事にはっくんの報告書作りが含まれるようになったんだ。今じゃ月に一度の頻度で報告書ができてるよ。だから私ははっくんの全てとはいわないけど、多くのことを知っている。彼女の有無や学校生活の様子なんてお茶の子さいさいってね」

 

 

 そして彼女は最後にこう言った。

 

 

「だからこそ、私はここに転入してきたんだから」

 

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