期待に添えるように頑張りたいと思います!
スターズ総隊長ルイン・シリウス
ルインがシリウスに任命されてから半年。
USNA内で事件が起こった。
その件についてベンジャミン・カノープスが報告を受けルインの部屋もとい彼が快適に過ごすために作らせた部屋の扉をノックした。
「ベンジャミン・カノープスです。上より任務の内容が知らされました」
「おーベンか〜入っていいぞー」
「失礼します」
ベンは部屋に入った時に驚愕に包まれた。
足の踏み場もないくらいに散らばった部屋は到底軍人が衣食住を過ごしている部屋とは思えなかったのだ。
軍服はだらしなくほかられ資料と思われるものはシワを作り読むのは解読と変わらなさそうだ。
そんな様子を見てベンはまたかと思い呆れた顔でルインに目を向けた。
「まずはルイン…片付けようか」
「えっ…お前それ本気?」
「本気です」
ベンは足元に落ちているゴミを拾うとそれをもはやゴミ箱として機能していない箱の中に入れた。
「ルインも早く」
「……わかったからそんな怖い顔しないでくれる?」
スターズでは確かに上下関係はあるが軍人としては少佐という地位でどちらかの言うことを一方的に聞くことはないのだがまだ若輩者のルインはベンの言う通りに部屋の掃除を始めた。
「凄い…これは一体?」
ベンは一つの今時珍しい手書きの設計図に目が行った。
そこに書かれているのは拳銃型のCAD。
一般に作られる物とは違い完全に自分に合わせ設計されてると思われる物だった。
「ん?あぁ〜それは俺のあの魔法の使用に合わせたCADだ。どうだ?カッコいいだろ?」
その歳に相応しく無邪気に笑う彼をベンはとてつもなく恐ろしく感じていた。
彼の俺の魔法というのは彼が持つ戦略級魔法のことを示すとして間違いない。
戦略級魔法とは使用難度が高くかなりのケースでそれは個人の専用魔法のようになることが多い。
「俺のデータとかを照らし合わせて作ったんだ。まぁまだツメが甘いところがあるがあと一ヶ月で出来そうだぜ」
キメ顔でサムズアップをとりまだ少し幼さが残る顔を輝かせる。
「しかし…これを一人で…」
確かに彼はわずか13でUSNA最強の称号を手に入れたがそれは軍人としてで魔工技師としてではない。
しかし彼はUSNAに現在いるトップクラスの魔工技師と同等かそれ以上のことをやろうとしているのだ。
「どうしたベン?もう片付け終わったぞ」
「あ、はい」
あれから数十分で片付けは終わりルインは事務用の机の前に座っていた。
その様子は年相応とは言いがたく見た目の印象も影響しているのか大人っぽく見える。
「USNA内で見たことない類の魔法を使役する者が現れた」
「見たことない?ベンがか?」
「はい」
ベンもそれなりに歳を重ねている分かなりの経験を積んでいる。
そのベンが見たことないというのはいささか引っかかる物がルインにはあった。
「今回の任務はこの魔法師の正体を突き止め可能ならば捕獲、最低でも抹殺が任務だそうだ。これが資料になる」
「捕獲ねぇ〜…まっ了解した」
ベンは軽く返事をしたルインに対し本当にこんな感じで大丈夫かと不安を抱いたが借りにもUSNA最強の魔法師、やるときはやってくれるだろうと思いながら退出した。
「犯行内容は傷害事件三件…どれもうちの上層部連中を狙った犯行か…通りで俺が使われるわけで」
ルインは苦笑いをした。これ以上自分たちの身が危険に晒されるのを避けるため最強戦力を導入してまで決着を早める。自分がまるで私欲のためにだけに使われているのではなかろうかと思ったのだ。
「ふむ…確かにここらじゃ見ない魔法だな」
一通り資料に目を通しルインは疲れを感じ身体を伸ばした。
「…うーん…どっかで見たことあるような感じなんだよなぁ〜」
ルインは少し考え込むように顎に手を当てる。先ほどの子供っぽい印象とはまた違い少し大人な感じを醸し出していた。
そしてその体勢のまま十分ほど経ちルインが席を立ち上がったところで誰かが扉をノックした。
「誰だ?」
「アンジェリーナ・クドウ・シールズです」
「?」
ルインはその名前に聞き覚えはなかった。
「入れ」
「はい」
扉を開け入ってきたのは綺麗な金髪を二つに纏めサファイヤのごとく蒼く輝く瞳は一瞬ルインの意識を持って行った。
「今回の任務においてスターズ総隊長ルイン・シリウス少佐の補佐をしろと命を受けましたアンジェリーナ・クドウ・シールズです」
はきはきとした声で告げる。
それにより意識を戻したルインはまた面倒ごとを押し付けられたと思っていた。
彼は自由奔放な性格であるが同じ部隊に所属している者たちからはその友好的態度から好かれる傾向があるが上層部は操り辛く煙たがる者が多いのだ。
そのため今回まだ軍人としては赤子同然のリーナを補佐につけられたのはルインにとって何も有益なことなどなかった。
「あースターズ総隊長ルイン・シリウスだ。えっとアンジー?」
アンジーとは一般的にアンジェリーナの愛称で使われることが多い。
そのためルインはあえてそう呼んだのだがどうもしっくりきていない様子だ。
「どうか…したのですか?」
「いやなんつーかアンジーって感じじゃないしどうもしっくりこなくてな…リーナなんてどうだ?」
「リーナ…ですか?」
「嫌ならいいが」
「大丈夫です」
その言葉を聞いてルインは軽く微笑み再び椅子に腰を下ろした。
「俺のこともシリウスじゃなくてルインで頼む。総隊長もなしだ」
「しかし…」
「まぁ緊張するのもわかるがまぁさん付けでいいから慣れてくれ。街中でシリウスなんて呼ばれたらエライことになる」
「…わかりました…ルイン…さん」
リーナはぎこちなく返事をした。
軍に入って間もないリーナにとっては上司との距離は取り難いものだが急に愛称で呼ぶなど馴れ馴れしく(?)その距離を詰めてくるルインに対しリーナは少しなからず苦手意識を覚えていた。
「それで…どのような対策をするんですか?」
リーナはまだ測りきれていない距離を慎重に調整しながら資料を見ているルインに話しかけた。
「ん…今はまだなんもしねえな」
「え?ですが上から命令が…」
「確か上からの命令は了解したが言われたのは捕獲か抹殺だ。その方法は俺に一任されてる」
ルインは命令は受けるがその方法については一切の口出しを許さない。ここが上層部に煙たがられる理由の大半だがそれでもその若さと相反するまるで歴戦の知将のような奇想天外な作戦は様々な場面でUSNAを高みへ押し上げてきた。
「リーナもあんまり気を張るなよ。いざという時に対応が遅れるからな」
「わかり…ました…」
いい加減にも見えるその対応にリーナは反感を覚えていた。その態度は仮にも総隊長という立場の軍人としてどうなのかと。
しかしリーナはまだルインの膨大な知識を若いながらもシリウスと呼ばれているその男の真価を知らない。
「もう時間遅いし飯食ってく?」
「…それではお言葉に甘えて」
ルインの部屋には自動配膳機が設置されている。基本的にこもって作業をすることが多いとあくまで表面的な理由で無理やりつけさせたものだ。
「ん!美味しい!」
「だろ?このスパイスがなんとも言えんないんだよな!」
二人揃って料理を頬張るその姿ははたから見れば誰一人軍人とは思わないだろう。
そんな和やかな雰囲気の中ルインの端末に連絡が入った。
それはベンによる非常回線であった。
「どうしたベン?」
『例の魔法師です。捕縛に向かいますか?』
「そうか…」
先ほどの声よりもワントーン暗い声はそれだけでリーナに緊張を走らせた。
ルインは思考を素早く回転させ今からでは捕縛は不可能であると予想し別の手段に出た。
「ベンは逐一俺に連絡をくれ。今回は様子見、俺が捕獲が可能と判断した場合動ける位置にいてくれ」
『イエス・サー』
ベンは食事を切り上げ軍服に手をかける。
「リーナはベンジャミン・カノープスと合流し一定の距離を保ち俺の後を追ってこい」
「イエス・サー!」
ルインは軍服を着用し変装用の魔法を使用した。
金色の瞳はその気配をなくし深海の如く蒼く冷徹な視線へと変化し透き通るようなプラチナの髪は眩い輝きから全てを呑み込む漆黒へと変貌を遂げた。
「その姿は…」
急な変貌にリーナは手で口を押さえ目を見開く。それほどまでにそこにいた彼は先ほどまでのイメージと異なっていた。
「これが俺のスターズ総隊長ルイン・シリウスとしての姿だ」
その声は重く冷たくリーナの身体の中にどしっと大きくのしかかるようなプレッシャーを放っていた。
これがUSNA最強の戦力…
それだけでリーナは彼との差を感じた。
まだ自分とさほど年齢も変わらないであるにもかかわらず開いている大きな差。
「行くぞリーナ!」
「い、イエス・サー!」
部屋から飛び出す彼のその大きな背中をリーナは必死に追いかけた。
どうでしたか?
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次回!例の人物との接触です!