元USNA軍最強の魔法師   作:メイス・ハイマツ

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過去編完結!

次回よりプロローグの続きとなります!


始まりの序章

 

 

謎の魔法師を追い詰めてから二日後。

 

「うーん…俺よりもベンの方がいいかもしれないな」

 

ルインは顎に手を当てながら思案顔を浮かべていた。

 

「ルインさん。どういうことですか?」

「俺はこんな見た目だしな。こういう交渉ごとはベンの方が適任だ。頼むぞ」

「イエス・サー」

 

やっと上から許可が下りたルインは日本に向かうにあたりベンとリーナ二人と予定を決めていた。

 

「こちらからある程度の情報は公開し交渉をする」

「交渉?相手方にとってはなんのメリットもないと思いますが…」

 

リーナの言うことは正しい。

今回の交渉において九重 八雲に情報公開の義務はない。

 

「まぁそうだが俺たちが捕獲を前提で話した場合相手に取っても不都合が生じる」

「…?」

 

ルインはリーナに回答を目で求めたがそれの返事は少し首を傾げただけだった。

 

「特に古式魔法とかは国によってはなかなか重宝される物だ」

「?」

 

その話だけでは要領をえなかったのかリーナはさらにわからなくなったような雰囲気を醸し出す。

 

「そこまで遠回しに言わないでもっとはっきりいってあげたらどうですか?」

「すまんすまん。ついな」

 

ベンの嗜めるような言葉にルインは悪い笑顔を見せて勘弁してくれと言うように両手を挙げた。

 

「?………っっっ⁉︎」

 

そこまで行ったところでやっと自分がからかわれていることに気づいたリーナは顔を赤く染めうっすらと涙を浮かべながら抗議の目をルインに向けた。

 

「そんな怖い顔でみるなって。せっかくのかわいい顔が台無しだぞ?」

「なっ⁉︎にゃっにを言ってりゅんですか⁉︎」

 

ルインの直に見るのは危険すぎる眩しい笑顔でそう言われリーナは今にも湯気が噴き出しそうな勢いで顔を真っ赤にした。

 

あまりに唐突だったせいかうまく呂律も回っていないようだ。

 

「はぁ〜〜…ルイン、今はおふざけの時間じゃない。貴方の辞書には反省という文字が」

「ない」

「ですよね」

 

ドヤ顔で言い放つルインに呆れた視線を向けつつベンは頭を抑える。

こればかりはどうしようもないとわかっているのだがやはりどうにかしたいという気持ちはあるようだ。

 

「とまぁそれはさて置き…リーナ」

「ひゃい⁉︎」

 

まだ心の整理が終わっていないリーナは突如として真剣な声で呼ばれへんな声を出してしまった。

 

「続けるぞ?」

「……はい」

 

顔を羞恥の色に染めて俯いているリーナに確認をとりルインは話を戻した。

 

「もし今回の逃走者が“ニンジャ”と関わりがあるならなんとしてでもその魔法の流出は避けたいはずだ」

「…つまり彼方にとって謎の魔法師の捕獲は魔法の流出に繋がるということですか?」

 

リーナの回答に満足したように頷きルインは続けた。

 

「こっちのジョーカーはその魔法師の抹消を約束することだ」

「それでは上からの命令に…」

「リーナ。総隊長とはそういうお人だ」

 

ベンから見たルインの人柄は自由奔放であるが軍務に対して真摯な向き合う。

そのため上層部と何度も揉めたりするがその結果が間違っていたことはなかった。

 

「さてと。んじゃ解散。また一時間後な〜」

「イエス・サー」

「ちょっとルインさん⁉︎本当にいいんですか⁉︎」

「いいのいいの〜気にしたら負けさ!」

「別にカッコよくないですよ!」

 

リーナの抗議に一切耳を傾けずにルインは部屋を退出した。

 

「カノープス少佐…大丈夫なんでしょうか?」

「ん?ルインとは彼が軍務に就いてからの仲だが私は今まで一度も彼が間違ったところを見ていない」

 

リーナはベンがルインに絶対的な信頼を寄せているのがその目を見てわかった。

 

「ベーーーン!リーナ!まずいぞ⁉︎」

「何があったんですか⁉︎」

「俺の…カップケーキがない‼︎」

「ルインさん!そんなことでいちいち騒がないでください!びっくりしましたよ!」

 

くだらないことで大声を出したルインにリーナがびっくりして損したと言わんばかりに声を上げた。

 

「カノープス少佐!なんとか言って…少佐?」

「…いや…そのすまんないルイン。美味そうだったんで」

 

ベンは気まずそうにルインから目を逸らして盗み食いを自白した。

 

「この野郎!確かに俺の冷蔵庫の中のもんは食っていいて言ったが!スイーツはだめっつたろ!」

「ま、まぁ日本には“ワガシ”というスイーツがあるそうだ」

「何に?それは本当か⁉︎よし!すぐに日本に行くぞ!」

「イエス・サー!」

 

まだ見ぬ日本に心を躍らせながらルインは目をキラキラさせる。

ベンも話が逸れたこの気を逃さまいとそれに便乗する。

 

「…本当に大丈夫なのかしら?」

 

若干目的が変わりつつあるスターズトップツーをよそ目にリーナがそう言ったのは仕方がないことだろう。

 

「どうしたリーナ?行くぞ?」

「あ、はい」

 

そうしてその日のうちにルインたちはUSNAから日本へと向かった。

 

 

 

 

「どうも初めまして。USNA軍のベンジャミン・カノープスです」

「こちらこそ。住職の九重 八雲です」

 

ベンと八雲は一定の距離を保ち挨拶を交わす。ベンの顔は少し緊張しているようにも見えるが目的を達成するという意志を感じる。

 

しかし八雲の視線はなんとも言い難い探るような物だ。

 

「後ろの方は?」

「私の部下ですよ。さすがに一人で来るのは不用心だと思いましてね」

 

八雲の視線は後ろに控えている変装しているルインとリーナに移る。二人は軽く会釈をしその視線を流した。

 

「僕はてっきりスターズ総隊長ルイン・シリウス殿が出てきてくれると思ったんだけど」

 

ベンはまさかと笑い飛ばすように八雲の言葉を受け流すが八雲は一人の微妙な動揺を見逃さなかった。

 

「連れてくる部下はしっかりと選んだほうがいいと思うよ。ルイン・シリウスくん?」

「…はぁ〜」

 

八雲が全てを見通すように勘付いてルインへと確信めいた視線を向けた。

それに対しルインは軽く息を吐き大人しくベンの前に出た。

 

「騙すような真似をして失礼した。自分がスターズ総隊長ルイン・シリウスだ」

「っ…ルイン」

「下がれベン」

 

凄みの効いた声で言われたベンはリーナの横までその位置を動かした。

 

「参考にどうしてわかったか聞いても?」

「そこにいるお嬢さんが君の名前を言った時の僅かな動揺と一瞬だけど視線もそっちに行っていたことからかな」

「お見それした。さすがはかの忍術使い、九重 八雲殿ですね」

 

突如として予定が狂ってしまったルインだったがすぐさまその状況を呑み込み対処に動いていた。

 

「あまりお時間を頂戴しても悪いので早速本題に移っても?」

「構わないよ。USNAに侵入した謎の魔法師についてだったかな?」

「はい。その件についてこのようなものに見覚えはないですか?」

 

ルインは先日逃走者が残していったクナイを取り出し八雲に見せる。

 

八雲はそれを受け取るとジッと観察した後ルインに返した。

 

「確かにそれは日本の物だね。妙な手が加えてあるけどある家の《煙苦無(エンクナイ)》と呼ばれる道具だよ」

「そうですか」

 

ルインは一瞬なんのためらいもなく情報を話したことに若干驚いたがすぐに気を持ち直し話を続けた。

 

「そのある家については…」

「その前にUSNAよ目的について聞いてもいいかな?」

「…自分たちに下された任務はその魔法師の捕獲及び日本の古式魔法の解読のための情報を得ることです」

 

ルインは嘘半分真実半分の内容を告げる。

上がどう考えているかは知らないが恐らくはという仮定の話をあたかも真実のように話し上に抹殺の意図はないことをアピールした。

 

「僕はもう俗世に興味はないんだけどそれは僕たち伝統ある古式魔法使いにとってあまりいい話とは言えないね」

 

八雲は顎に手を添えてある考える素振りを見せる。ルインはその裏に気づいていた。

 

「情報提供していただけるなら自分の権限である程度の処理はできます」

「取り引き成立だね」

「協力感謝する」

 

今まで不自然に開いていた距離を詰め二人はお互いの手を交える。

 

「僕は少し君に興味が湧いたよ。ルイン・ウォーレスくん」

「…自分も今のであなたに興味が湧きましたよ…八雲 和尚さん」

 

この二人は互いに相手はこちら側のことをほとんど調べ終わっていると判断したが敵対する意思はないということをこのやりとりで伝えた。

 

 

 

「すみませんでした!私の失態です…」

 

八雲の元を後にし一泊する予定の宿でリーナはルインに頭を下げていた。

 

「私が未熟者だったせいでルインさんの正体が…」

「ああ。そうだな。あの時に僅かでも動揺したリーナ…お前に責任がある」

「っ!…ほんとうにすみませんでした」

 

リーナは悔しさを押し殺しながら頭をさげる。リーナの僅かな動揺によってルインの正体が八雲にばれてしまったと思っているからだ。

 

「しかし元から無理のある提案でもあった…第一こちらも九重 八雲という男を甘く見ていたようだった」

「…?」

「あっち側もすでに俺のことについて調べ終えていたよ。俺の本名がルイン・ウォーレスであることもな」

「っ⁉︎」

 

ルインの正体は特殊機密に分類されるものであり本来は自国のものですら知れることではないのに関わらず八雲は知っていたのだ。

 

「今回は完全にやられた。俺たちの負けだ」

「…はい」

 

ルインは参ったと言わんばかりの表情を見せリーナは若干の悔しさを含んだ顔をしていた。よっぽど自分の失態が悔しかったのだろうとルインは思っていた。

 

「ルイン。“ワガシ”というものを買ってきた」

「本当か⁉︎よくやったぞベン!」

 

ルインはベンから箱を受け取るとすぐに開封して中にある物を口にした。

 

「ん!これはうまいぞ!なんていうスイーツだ⁉︎めっちゃ伸びるぞ!」

「“ダイフク”と呼ばれる甘味だそうだ」

 

満足そうに頬張るルインをベンは買ってきてよかったと自分の息子のように眺めリーナは…

 

「ん?どうだ、リーナも食べるか?」

「え、いいん……いえ大丈夫です」

 

欲しがるような視線を向けながらもリーナは欲求をこらえて言った。

そんなリーナにルインはやれやれと近づいて行って無理やり大福を口に加えさせた。

 

「ふむっ⁉︎」

「疲れた時は甘いもんが一番だ。遠慮しないで食え」

「……ふぁい」

 

リーナは若干戸惑いながらも大福を口に含みその全体に広がる甘味を感じていた。

 

「美味いか?」

「…はい…美味しいです」

 

やっと笑顔を見せたリーナを見たルインは満足そうにしてもう一つ大福を食べた。

 

「…んぐっ⁉︎んんっ!グッ!み、水!」

「ル、ルインさん⁉︎大丈夫ですか⁉︎」

「ルイン!これを!」

 

ルインはリーナに背中をさすられながらベンから受け取った水を勢いよく飲み干した。

 

「な、なんて危ない食べ物だ…今までで一番命の危険を感じた…」

 

ルインは若干恨めしそうな視線を大福に向けたがどうにもその味がクセになったようで帰国する際もちょくちょく口にしていた。

 

 

 

「どうゆうことだね⁉︎私たちは君に捕獲を命じたはずだ!」

「できればですよね?自分はこれ以上我が国に被害を加えられる前に消したまでです」

 

帰国してすぐにルインは例の逃走者のことを処分した。

 

最初の時とは違い目的が抹殺であったために時間はかからずほぼ一瞬の決着となった。

 

「失礼します」

 

上層部への報告を終えたルインはその場を後にする。

 

この件をキッカケにリーナはルインの正式な補佐官としての地位に就いた。

 

そして上層部がルイン・シリウスを目障りに感じ始めたのはこの一件が原因でもあった…

 





お気に入りありがとです!

次回からはいよいよ日本での物語になります!
リーナの登場は来訪者なので時間が…

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