元USNA軍最強の魔法師   作:メイス・ハイマツ

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新たな出会い

達也との有意義な模擬戦を終えいい汗をかいたルインは学校へと向かうためにシャワーを浴びていた。

 

その間に考えるのは今日八雲に紹介された兄妹のことだった。

 

(司波 達也か…ただもんじゃないな)

 

ルインはUSNA軍内でもそれなりに体術は修めたほうであった。

 

そんな自分とあくまで魔法を介さない試合ではあるが全くの互角で立ち合った達也の実力は本物であり同時に彼が自分と同じタダの高校生ではないと直感的に感じ取っていた。

 

「まぁ今となっては俺に関係はないがな」

 

キュッと蛇口を捻り水を止めるとルインはその艶のある金髪を撫でるようにタオルで拭く。

 

達也がタダの高校生であろうがなかろうがタダの高校生になった守王 ルイには関係はなかった。

 

彼は今『降りかかる火の粉は払うが余計なことには首を突っ込まない』という理念のもと生活している。

 

つまりあちらから何か仕掛けてくるなら話は別だがこちらからは良き友人・好敵手(ライバル)として接していくということだ。

 

「少し早いけど…まぁゆっくり行くか」

 

ルインは制服を着用してCADを腕にはめた。

基本的に校内でのCAD携帯は一部の生徒しか許されていない。

そのためそれは一時的に預けることになる。だから彼が携帯しているのは例のCADではないものだ。

 

「うし!行くか‼︎」

 

入学式を除けば今日から本格的な高校生活、ルインにとっては初めての学校生活でもあるためその心情はかなり上向きだ。

 

 

 

家を出て間も無くルインは第一高校に到着した。家が近いため思ったよりも始業まで時間があるようだ。

 

ルインはひとまず自分が今日から過ごす1−Aの教室に足を運んだ。

まだ人はまばらだが数人はすでに到着しているようだ。

 

(俺の席はっと)

 

ルインは情報端末で自分の席を確認すると自分の隣の席にすでに人がいることに気がついた。

 

「うわ〜綺麗な髪の毛…」

「うん。そうだねほのか」

 

ルインが颯爽とした様子で席に腰掛けるとその一般的な金髪よりも透明感のある金髪に目を惹かれ隣の女子生徒二人が思わず言葉をこぼした。

 

「?」

「はわっ⁉︎え、えっと!グッモーニング?」

 

ルインがそれに不思議そうに首を傾げながら笑顔を向けると最初に髪を綺麗だと言った女子生徒が何を勘違いしたのか英語で挨拶をした。

 

「ははっ大丈夫だ。日本語で構わない」

「あっ…うぅ」

 

早とちりをしたことが恥ずかしかったのか顔を赤くしてその少女は俯いてしまった。

 

「俺は守王 ルイだ。祖父が日本人のクォーターでな。日本語もこの通り何の問題もなく話せるから気軽にファーストネームで頼むぜ」

「私は北山 雫。それでこっちが私の親友の」

「み、光井 ほのかです!さっきはすみませんでしたっ‼︎」

 

ほのかが勢いよく頭を下げると鈍い音がなった。謝罪に真剣になりすぎて机に額をぶつけたのだ。

 

「お、おい…大丈夫か?」

「大丈夫だよ。ほのかはおっちょこちょいだから」

 

親友が頭を抑え涙を堪えているのにもかかわらず涼しげな雫を見るにいつもこんな感じなのかとルインは思った。

 

「も、もう雫!余計なこと言わないでよ!」

「余計なことじゃなくて本当のことじゃないのか?」

「す、ルイくんまで⁉︎もう二人ともやめてよぉ〜」

 

ほのかが本格的にうなだれると雫とルインは顔を見合わせて笑った。その際若干雫の顔が赤かったのはルインの顔が予想のほか近かったからだろう。

 

ルインも自分の容姿がそれなりにどころかかなり整っていることを自覚している。

彼が街に繰り出せば送られる憧れや羨望の視線を彼自身敏感に感じ取っているのだ。

 

だからなぜ雫の顔が赤くなったのか、ほのかに笑顔を向けた時慌てたのかも理解した上であえて鈍感を演じた。

 

「チッこれだからイケメンは…」

「俺たちだって女子と話したいのにな」

 

二人との会話を終えて席に着いたルインに聞こえてきたのは男子生徒の嫉妬の声だ。

 

彼に向けられるのが好意的な視線だけとは限らない。その中には嫉妬などの負の感情も含まれているしそれにルインが気づかないはずがない。

 

しかし元軍人であったとしても彼はまだ高校生、そんな視線を向けられて優越感を感じることもまた嫌いではなかった。

 

「おはようございます」

 

ルインに視線を向けてたほとんどの生徒の目が入り口あたりに集中する。

 

そこには10人、いや100人に聞いても全員が美少女や美人と答えるに違いない容姿の女子生徒。ルインと朝食を共にした司波 深雪が淑女の様な挨拶をして教室に入ってきたのだ。

 

(スゲェ目立つなぁ〜…まさかリーナと同じレベルの美少女がこの世にいるなんてな)

 

ルインは改めて司波 深雪という女性の魅力を感じた。その上でリーナと同じレベルといったのだからルインにとってリーナはそれほどまでに大きな存在なのだろう。

 

深雪の登場にざわついてきた教室の中でその張本人も目が合いルインは軽く会釈した。

その後ルインは話し声を遮断するために無線型のイヤホンを取り出して一人ひっそりと音楽を聴き始めた。

 

 

 

1−Aの教室内は担当教師の話も終わり授業見学のことで賑わっていた。

先ほどは男子生徒に一緒にと誘われていた深雪だったがほのかの助けによりその状態から抜け出してもう一人の友人を呼びに行った。

 

「ルイさん」

「…」

 

しかし深雪の呼びかけにルインは答えずに腕を組んだまま少し頭を下げている。

もしやと思い深雪が優しく肩を揺すると

 

「ん…なんだ…?なんかあったのか?」

「寝てたんですか?今から授業見学ですよ」

「マジか…起こしてくれてありがとな」

「気にしないでください。でもしっかりと話は聞かないとダメだと思いますよ」

 

深雪の柔らかい注意にルインは面目ないと言わんばかりに謝罪をしている。深雪は本当に反省しているのかどうかわからないといった様子だな特に追求はしない様だ。

 

「ルイと司波さんは知り合い?」

「んー…まぁそうなるかな?」

「私の兄がお世話になっている人の知り合いで知り合ったのよ」

「そんなところだ。それよりも今からの内容について聞いてもいいか?歩きながらでいいからさ」

 

別にルインと深雪が知り合いということはそこまで掘り下げる必要もない話だったため雫もほのかもルインに今からの大体の流れを話した。

 

「ルイさんも一緒にどうですか?」

「俺は魔法の授業には興味ないな…工房にでも行ってみる。誘ってくれてありがとな」

「いえ、気にしないでください。それではまた」

「またねルイ」

「ルイさん気をつけてください!」

 

ほのかの言葉に一瞬ルインは何を気をつければいいのか気になったがさして興味もなかったので突っ込むことはせず爽やかに笑顔を浮かべて別行動に移った。

 

「おっルイじゃないか」

「Hiya レオ」

 

そこでたまたまレオと居合わせて二人は挨拶を交わした。

 

「ん?ルイか」

「達也も一緒だったのか?それに後の二人は…」

 

そこには達也もいた。

その後ろにはルインの見知らぬ二人の女子生徒がいた。

 

「俺のクラスメイトだ。千葉さん、柴田さんこいつは」

「守王 ルイだ。こんな見た目だが日本語は全然オッケーだから気にしなくていいぜ」

 

突然の金髪美青年登場に一瞬驚いた様子を見せたがすぐに愛想よく笑いルインに視線を向けた。

 

「私は千葉 エリカよ!よろしくね守王くん」

「柴田 美月です。よろしくお願いしますね」

「ああ。よろしくな」

 

短く自己紹介を済ませてルインはそのまま達也たちと工房見学を共にした。

 

(やっぱり日本の技術力は凄いな…)

 

ルインが工房に来た理由は彼自身が日本に来てから感じた魔法技術の高さだった。

 

日本は立派な魔法大国であるがその根底を支えてる技術力はルインが今までに学んできたものをはるかに凌駕していた。

 

「それにしてもルイは一科だろ?なんでまた工房に来たんだ?」

「一科の生徒なら講師の方の説明が受けられましたよね?」

「それはちょっと気になるかな。せっかくの機会なのにどうしてなの?」

 

達也を除いた面々がレオの言葉をきっかけにずっと聞きたかったことを口にする。

 

「確かにそうかもしれないけど俺は魔法自体よりもその魔法を使用するための技術ってのが気になったんだよ」

「確かにCADを代表として魔法を補佐するものはたくさんあるからな。ルイがこっちに興味があるのもおかしくはないだろう」

「そーゆーこった」

 

ルインの言葉に達也が補足をしたところで理解したのか妙に納得顔をしたレオとエリカに二人の意見に賛成するかの様に首を振っていた。

 

「そろそろ昼食の時間だな。ルイも一緒にどうだ?」

「んーじゃそーすっかな」

 

達也の誘いに快く応じてルインも四人との昼食の席を共にすることになった。

 

「工房見学楽しかったですね〜」

「有意義な時間だったな」

「こっちに来て正解だったとつくづく思ったよ」

「あんな細かい作業俺にできっかな」

「あんたには無理よ」

 

五人の話題は先ほどの工房見学のことだった。ルインもだが他の面子もそれなりに満足している様だ。

 

「お兄様!」

「深雪」

「私も今から食事なんです。ご一緒してもよろしいですか?」

 

達也は断る理由もないのでそれを承諾するが深雪の後ろにいた一科の生徒たちは納得していない様で深雪の説得を続けている。

 

「いい加減にしたらどうだ?深雪さんも嫌がってるだろ」

 

そんな状況に腹が立ったのかルインの注意する声はいつもの明るい声よりも幾分か低くなっていた。

 

「司波さんは一科生、なら同じ一科生同士で食べるのが当然だろ?大体君だって一科生のくせにプライドはないのか?」

「プライド?生憎とそんなくだらないプライドは持ち合わせてないんでな。それにそんなどーでもいいプライド欲しいとも思わん」

 

ルインは席を立ち他の一科生の面々と対峙する。その瞳はまるで相手を威嚇する様に光りを増していた。

 

「お前たちのくだらんプライドはこの際どうでもいいが深雪さんに迷惑だとは思わないのか?」

「ぐっ…!そ、それは!」

「ルイの言う通り。私たちに司波さんを好きにする権利はない」

「司波さんもお兄さんと食べると言ってるんだから私たちは別の場所で食べればいいだけだよ!」

 

ルインのことを擁護する様な発言をしたのは雫とほのかだ。この二人も何かと思うところがある様子だ。

 

「っっ…あっちに行こう」

 

リーダー的存在の男子生徒は正論を言われて言葉に詰まりその場を後にした。

 

「二人ともありがとな」

「ううん。私もああいうのは嫌いだから」

「ルイさんがズバッと言ってくれてスッキリしました!」

 

二人ともある程度の優越感はあれど差別をするまでのものはない様だ。

 

「ほのか。私たちも別のところで食べよう」

「うん。もう時間も少ないし急ごっか」

 

雫とほのかがその場を離れ別の席を探し始めたところ深雪がルインの前で頭を下げた。

 

「先ほどはありがとうございました」

「気にすんなって俺が勝手にやったことだしな。礼ならあの二人にも言ってやれよ」

「ええ。もちろん」

 

ルインは差別を好まない。

確かに多少の優劣はあるかもしれないが人それぞれ違った努力をしていてその形があるのだ。それを否定することは何があってもしてはいけないというのが彼の考えだ。

 

「飯食ったらどこ行く?」

「次は三年生の実習なんてどうですか?」

「三年生か…どのくらいのレベルなんだろうな」

 

だから彼はたくさんの人との関わりを持ちたいと思うのだ。

 

他人の努力に触れることで自分をまた新たに見つめ直す、それが彼を高みに押し上げた最大のものだった。

 




どうでしたか?
いつもより長くなってしまいました…

それはそうと九校戦に向けてアンケを取ろうと思ってます!
活動報告にのせる予定なので見てってください。

感想などなどよろしくです!

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