羽休めに。   作:ほたて竜

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とあるヤンデレ愛好家の人に影響されて書いた。
後悔も反省もしてない。


クーデレ?:1

 

 まぁ、所謂一目ぼれという現象は存在する訳で、俺は『彼女』を一目見ただけで惚れてしまった。

 

 外見は悪くない。いや、むしろ間違いなく美少女だ。

 

 肩にふれる程度に短く整えられた、艶のある黒い頭髪。『彼女』の意思の強さを表す理知的で澄んだ瞳。『彼女』は言葉を発する機会が少ないからあまり知られてないが、声も耳を透き通るように綺麗だ。

 

 このように、『彼女』の美しさを形容するのは本当に容易い。逆に容姿において『彼女』を否定する材料など皆無に等しい。しかし、俺が『彼女』に惹かれたのは何も外見だけではないのだ。

 

 とはいえ、最初は美少女である『彼女』がクラスの男子内で噂になって、一目見ようと野郎どもと共に『彼女』のクラスに赴いたのがきっかけだった。その時の『彼女』は読書に集中していて(或いは気づいても敢えて無視していたのかもしれない)、もう近づくなと雰囲気で示していた。

 

 今でも忘れられない。

 

 あの時の凛とした表情。その醸し出す雰囲気のせいか、『彼女』と同じクラスメイトでも『彼女』に近づく者もいなかった。しかしながらそんなことなど気にも留めず、無表情で本の世界に浸る『彼女』。

 

 純粋に尊敬した。

 

 自己を貫き通すというのは、人が思っているよりも難しい。無論、ただ自分の意見を突き通そうとするだけでは我儘と何も変わらない。真に『彼女』が凄いのは、決して社交性が皆無という訳ではないことだ。

 

 話し掛けられたら人並みの反応はするし、必要であれば『彼女』から話を持ち出すこともある。それが他人から見たら少々素っ気ないように見えるだけで、きっと『彼女』は特に意識している訳ではないのだろう。

 

 何にせよ、俺はそんな『彼女』に一目惚れしてしまった。

 

 容姿もそうだが、何よりも『彼女』の在り方が美しかったのである。とても俺には出来そうにない。群れることの楽さを知ってしまった俺に、『彼女』の様に強く在れる気がしなかったのだ。

 

 強さが欲しいと言うんじゃない。ただ強い人が好きだった。自分にない力を持つ『彼女』の様な存在が、俺にはたまらなく尊く思える。

 

 ――――――だから今日、『彼女』に告白したのは勢いなんかじゃない。

 

 そう自分に言い聞かせる。因みに俺と『彼女』が知り合ったのはつい一か月前の話である。

 

 現在、俺の目の前にいるのは冷たい眼差しでこちらを見据える件の『彼女』。面白い事に『彼女』の絶対零度の視線を受けても、俺は身体が動かなくなるなどという醜態をさらすことはなかった。

 

 俺は返事を待ちながら『彼女』を真っ直ぐ見つめ、『彼女』は何を考えているのかは分からないが、ただ俺を無言で見る。そんな状況が数分続いた頃である。

 

 「……そうですね。貴方がどうしてもというのなら、仕方がないですね」

 

 「へ?」

 

 思わず耳を疑った。なんなら間抜けな声が漏れたくらいだ。

 

 「だから、付き合ってもいいと言っています」

 

 俺の反応を見かねてか、『彼女』は「ふんっ」と鼻を鳴らして小馬鹿にするように告げた。『彼女』のその態度はさも当然と言わんばかりだ。

 

 それでようやく、俺は自分の告白が受け入れられたのだと自覚した。

 

 「え、いや、本当に?」

 

 OKの返事を貰えたのは素直に嬉しい。そう、本当に、今自分が冷静でないと理解できる程度に、俺は超興奮している。自分の事だ、身をもってそれを実感している。

 

 だがそれ以上に驚きを隠せないのも事実。言うなら俺は玉砕覚悟で彼女に告白したわけで、本当は『彼女』の良い返事なんて期待できないと思っていた。

 

 『彼女』と知り合って一か月と言ったが、その間だってまともに会話ができていた訳ではないのだ。俺が話し掛ける度に「なんですか?」と白い目で見られ、なんならキツイ言葉も食らったことがある。

 

 それでも告白したのは、やはり勢いだったという他ない。自分の気持ちに嘘など付けなかった。好きなのだから、好きだと告白するしかないように思えたのだ。

 

 「自分から告白しておいて酷い話だけど、本当に俺でいいのか?」

 

 俺の問いに『彼女』は「しつこいです」と素っ気なく答えて、そのまま流れるような動作で背を向ける。それはいつも通りの彼女の姿だった。

 

 そんな彼女の後姿を見つめながら、頭の整理が追いつかない俺はボーっとその場に立ち尽くしていた。すると、ふと『彼女』はこちらに振り返る。

 

 「何してるんですか。帰りますよ」

 

 放課後の廊下。

 

 どこからか部活の元気な掛け声が聞こえてくる中、窓からは夕方の太陽の光が漏れだし『彼女』の顔を照らす。相も変わらない『彼女』の美しい顔は、夕日によって朱色に染まっていた。

 

 

 ――――――ああ、やっぱり綺麗だ。

 

 

 そんな言葉が口から零れた。俺も意識していた訳ではない。ただ自然とそんな風に思って、自然と本音が口から出てしまっただけの事。何もおかしなところはない。

 

 『彼女』にも俺の呟きは聞こえたのだろう。呆れる様に息をついて、またも俺から目を反らすように背を見せた。

 

 「馬鹿なことを言ってないで、早く帰りますよ」

 

 そう呟いた彼女の台詞の中に喜びの色が感じられたのは、果たして俺の自惚れか。いや、きっと気のせいではない。不思議とそう確信できる。

 

 心が温かくなるのを感じながら、俺は『彼女』に駆け寄る。

 

 

 

 そう言えば、これは余談ではあるがこの日を境に俺は彼女と下校することになった。

 

 あの時『彼女』がわざわざ俺に「帰りますよ」と言ったのは、実は俺と一緒に帰りたかったからだという。後になってそれを知った俺は、素直じゃないなぁと思いながら『彼女』をより一層好きになった。

 




こんな作品を、しかもあとがきまで律儀に読んでくれるだなんて、貴方も物好きですね。
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