RE:世界一可愛い美少女錬金術師☆   作:月兎耳のべる

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進まなぁい。


第十三話 待ち人は知識の探求者なのか?

 声が木霊する程のだだっ広い空間に、見渡す限りに敷き詰められた大量の書棚。読み切るには数十年は掛かりそうな程の書物に囲まれるは、一人の少女。外界から切り取られたその空間は静謐の一言に尽き、聞こえてくる音といえば頁をめくる、乾いたか細い音だけ。

 

 その場所の名前は禁書庫。

 そしてその場所の主は「ベアトリス」と言った。

 

 ベアトリスは契約に従い、今日も書庫を外敵から守り続けている。しかし幸か不幸か、彼女が契約した日以来書庫を襲う存在は一人として居ない。そんな彼女のする事と言えば、自分しか居ない書庫の中でひたすら本を読み耽り、時折紅茶や茶菓子を摂取するだけ。

 

 本を読み、休憩し、そして眠る。その日々の繰り返し。

 

 この日々は一体何回繰り返されただろうか。

 千の昼も万の夜もとうに過ぎ、数える事も馬鹿らしい程に時は経っていた。

 

 精霊にとって契約の遵守は絶対だ。契約の通り「待ち人が来るまで、書庫を守る」。異論はないし、ベアトリスはそれを今後も守り続けるつもりだ。しかし待ち人も襲撃者も現れずに、毎日を書庫で過ごし眠る日々は、如何に人の理から外れた精霊といえど少しずつ摩耗するような感覚を覚えてしまう。

 

 だから彼女は本を読み耽った。自らの恐ろしい想像をかき消すために、読み切れぬ程の大量の本を読み続けた。

 当然、終わらぬ時と違って書物は有限で、時折増える本も含め彼女は全ての本を読み切ってしまう。そうしたらもう一度と、読んだ本を全て再度読み直す。如何に無為な行為だとしても、兎に角何かをしないと恐ろしい想像が浮かんでしまうから。

 

「――」

 

 ベアトリスは幾度となく読んだ手元の本を小さなテーブルの上に置くと、すっかりと冷えてしまった紅茶を口に運ぶ。季節も時間も分からない、静寂だけが支配するこの空間ではカップがソーサーに触れる音でさえも大きな音に聞こえた。

 

 思う。

 いきなり現れたあの二人組のことを。

 

 何度となく扉渡りを見破る、失礼過ぎるコミュニケーションを取る、スバル。そして一癖も二癖もありそうな得体の知れない少女、カリオストロのことを。もしかしたら今度こそ、あの二人のどちらかが。いやあの二人が待ち人なのだろうかと。

 

 思う。

 契約が果たされ、この屋敷から出られる日の事を。

 

 しかし期待は膨らませた傍から尽く萎びてしまう事を何度も体験している。また期待して、勝手に裏切られるのか――気付けばテーブルの上で手慰みに書いていたメモをぐしゃぐしゃと羽ペンで書き乱していた。本の修正箇所も落書きのパックの絵も。一緒くたにぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃと。

 

 

 期待するな。願うな。望むな。念じるな。見込むな。どうせ裏切られるんだ。どうせまだ待つのだ。どうせ、どうせ、どうせ、どうせ、どうせ――!

 

 

「お母様。ベティーはあと、どれだけ」

 

 

 自らの口から漏れた言葉で、ベアトリスは正気に戻る。メモ書きは縦横無尽に走り回る黒でいっぱいになり、落書きのパックでさえも今やうっすらとその形が見えるくらいになってしまった。こんな事ではいけない、弱音を吐くなと顔をぷるぷると横に振ったベアトリスは再度本を手に取ろうとして――

 

 

「カリオストロ様、こちらがベアトリス様のお部屋でござーい」

「わぁ……、これが禁書庫……☆ 素敵っ☆ ありがとう執事のスバル君☆」

 

 

 二つの声が書庫を満たしていた静謐をかき消し、ベアトリスは手を止めざるを得なかった。現れたのは屋敷に転がり込んできた、件の二人。赤い貴族服をまとったカリオストロ。そして執事服で、何故か額にたんこぶをつけたスバルだった。

 

 

 

 § § §

 

 

 

「……お前、ほんっとうに憎たらしい奴なのよ。雇われてる立場の下郎が、ベティーの書物にずけずけと入って良いと思っていいのかしら」

 

「ベアトリス様、ベアトリス様。誤解であります。わたくしめはただ部屋の掃除をしようとしたら、たまたま! そう、たまたま! ベアk……ベアトリス様の部屋に出くわしてしまった訳でありまして! 要するに俺無罪。そんなところに扉繋げてるベア子が悪い。おっけー?」

 

「お前さっき確信持ってベティーの部屋だって言ってたかしら!? 敬意も途中から感じられないし、何がたまたまかしら、白々しい!」

 

「女の子がたまたまって……卑猥な」

 

「お前の誘い水なのよ!? あーもう、鬱陶しいのよ!そいつごと一緒に出ていくかしら!」

 

 スバルの非常に鬱陶しい煽りにベアトリスは一瞬で沸点を超え、片手を翳してスバル達目掛けて不可視の衝撃破を放つ。それは直撃すれば二人を問答無用で部屋の外へと弾き出す程の威力を持っており、一度マナドレインを受けたスバルが慌てて腕で顔を覆い衝撃に備える。が、その前にカリオストロが冷静に手を翳せば衝撃は何かに阻まれ立ち消えてしまった。

 

「む」

 

「スバルはいいとして~、カリオストロは許して欲しいなっ☆ 私はベアトリスにどうしても用事があるのっ☆」

 

「お、おぉ。さっすがカリオストロだぜ。というか俺も許して頂きたいんだけどな?」

 

「スバルは許す許さない以前にまだ他に仕事があるでしょ? ほらほら仕事しなきゃ☆ レムとラムに怒られちゃうよ☆」

 

「案内させるだけさせておいてポイかよぉ!? 横暴だぜカリオストロよぉ!」

 

「エミリアの誤解、解いてあげようと思ったんだけどな~☆」

 

「それではわたくしめはここで。カリオストロ様、後程茶菓子を用意させて頂きます。ごゆるりと」

 

「紅茶と甘~いケーキでお願いね☆」

 

 見事な手のひら返しを見せるスバル。腰を90度に曲げて恭しくお辞儀をした彼はその姿勢のまま音を立てること無く部屋から出ていき、その場には小さな錬金術師と、小さな精霊が取り残された。

 

「……はぁ。お前も一緒に出ていくかしら」

 

「言ったよね? カリオストロには用事があるって☆」

 

「お前にはあるかもしれないけど、ベティーにはないのよ。ロズワールの客人であって、ベティーの客ではないし、応える義務なんてないかしら。強制的に屋敷の外に放り出されたい?」

 

「ふふっ、それがあるんだよね~☆ その義務が☆」

 

「……へぇ、そうなのかしら。なら参考までにどういう理由か聞かせて欲しいのよ」

 

 足音を立ててカリオストロが悠然とベアトリスに近づいていく。睨みつけるベアトリスに対してカリオストロの顔は、あどけない無垢な笑顔。その体躯と相まって非常に可愛らしいものだった。しかし彼女から感じるマナといい、そして巡るマナの動きといい、それらは今まで見てきた人間にも精霊にも当てはまらないものだ。今のベアトリスには目の前の存在がとても、とても大きく見えていた。

 

 気付けば、気圧されたかのようにベアトリスは彼女の顔がすぐ近くに迫るまで接近を許してしまい――

 

「――マナ、私達から勝手にドレインしてるでしょ?」

 

「……!」

 

「分かるよ? スバルはともかく私は天才だから。屋敷に居る人全員からすごーく分かりづらいけど、ほんの少しずつマナを補充してる事ぐらいね…☆ 知ってたかな書庫さん☆ 人の許可なくマナを徴収する、これって~ど・ろ・ぼ・う☆ だよね?」

 

「……」

 

 ベアトリスはただ睨みつける事しか出来なかった。カリオストロの言うとおり、彼女は屋敷に住まう住人から少しずつ少しずつマナを徴収していた。気付かれない程小さく、か細く。毎日、毎日、雀の涙ほどのマナを自らの糧にしていたのだ。

 数百年の時の中で気付くものはほとんど居ない。だがカリオストロはそれを一日で看破した。それは本人の才覚か、熟達の錬金術師としての力か。何であれ、ベアトリスはますます目の前の少女を警戒せざるを得なくなった。

 

「沈黙は肯定とみなすけど?」

 

「はぁ……別に否定するつもりはないかしら。この屋敷に住むのに必要な、小さな小さな宿代、と考えて欲しいのよ。お前達が気付かないほどの量なら、何も咎める程ではないと思うけど?」

 

「量の問題じゃあないんだよベアトリスっ☆ 分かるでしょ? 効果はともあれ、"人の許可なく、他人へ魔法を行使した"という事実。それが一番の問題☆ 人によっては喧嘩を売っていると取られてもおかしくないよね?」

 

「あのちっぽけなマナがそんなに大事だったのなら、ノシつけて返してあげるのよ」

 

「そんなので私が納得すると思ってる? 違うよね、思ってないよね? ――なあに、そんなすごい対価を要求なんてしないよベアトリス☆ 今ごねて私と敵対するより、その要求を呑んだ方が手っ取り早くて楽だと思うけどなぁ☆」

 

 カリオストロが顔を覗き込む。薄く透き通った紫色の眼で見詰められながら、あくまで可愛らしい口調は崩さず、だが内容は理路整然に事実だけを連ねて追い詰めるカリオストロに、ベアトリスは眉を顰めるしかなかった。

 

「聞くだけ、聞いてあげるのよ」

 

「ありがとうっ☆ 要求は簡単☆ 知識の提供、ただそれだけ☆ カリオストロがベアトリスに聞きたい内容を本を渡すなり、口頭なりで伝えて欲しいのっ☆ あ、勿論提供出来ない知識に関しては提供はしなくていい、ベアトリスが与えてもいいと思った内容を教えて☆」

 

「……提供するのが今で、一度限りなら別にいいのかしら」

 

「ダメっ☆ 期日指定なし、回数なしの無制限☆」

 

「ふざけるなかしら! ベティーの時間と都合を何の権利があって奪うのよ!」

 

「あれあれ~☆ これでも譲歩してるんだけどなぁ……――言いふらしちゃおっかな、パックに」

 

 

 それはカリオストロが用意した特大の爆弾。ベアトリスはその呟きに内心、大いに動揺し、紅茶を飲みながら努めて冷静に振る舞った

 

「ふ、ふん。にに、にーちゃに告げ口しても、に、にーちゃならきっと……た、多分笑って許してくれるのよ」

 

 否、振る舞えてなかった。好機と見たカリオストロは、更にベアトリスを追撃する。

 

「え~でも、言い方次第だよね☆ 仲のいいベアトリスが、パックの大事なエミリアに勝手に魔法を行使してますって☆ "無許可"で。もしかしたら"命に関わるかもしれない"魔法を。パックもひょっとしたらベアトリスの見る目、変わっちゃうかも~☆」

 

「ぐ、ぐぬ、ぐぬぬぬぬぬぬ……!」

 

「というかベアトリスってぶっちゃければ~、いつも暇でしょ? カリオストロにそれくらい時間割いてもいいと思うのっ☆」

 

「!? …ひ、暇なわけがないのよ! 何を言ってるのかしら、ベティーは書庫の管理で忙しいのよ! そりゃ比較的緩やかな時間も続くけど、その間もベティーは気を緩めることなく――」

 

「そのメモに書かれたのはパック? かな~? 可愛いのにぐしゃぐしゃにしちゃうなんて、本当勿体ないなぁ~☆」

 

 にこにこと机の上を覗き込むカリオストロ。パックの落書きをしたメモは、顔を真っ赤にしたベアトリスの手で瞬く間に乱雑に丸められて魔法で消滅させられた。

 

「あ☆ あと毎日スバルにモーニングコールさせてあげるね☆ 暇そうなベアトリスの絶妙な暇潰しに成ること請け合い――」

 

「分かった! 分かったかしら! 仕方ないから教えてあげなくもないのよ!」

 

 ダメ押しのスバル派遣を仄めかせば、とうとうベアトリスが折れた。カリオストロは「交渉成立だね☆」と満足そうに笑い、ベアトリスはかなり不満そうにしながらもしぶしぶ頷く他なかった。

 

「その代わり! 絶対にーちゃに言うんじゃないのよ。あの魔女臭いあいつも、連れてくるんじゃないのよ!」

 

「勿論、カリオストロちゃんと約束は守るから☆ 聞きたい情報を伝えてくれる限りはちゃーんと…………ん? 魔女臭い?」

 

「……あぁ、お前は気付いてなかったのかしら。あいつ、ベティーに出会った後から更に魔女の残り香が強くなってるのよ。最悪の香りかしら。魔女に見初められたか、目の敵にされたか……何れにしろ、厄介者に違いな」

 

「ベアトリス。その話詳しく聞かせて」

 

 もう一度。ぬるくなった紅茶を口に運ぼうとしたベアトリスに、カリオストロが食い気味に問う。先ほどとは180度違う雰囲気に驚いたベアトリスは、渋々とカップをテーブルに置いて、向き直る。

 

「詳しく話すと言っても、何をかしら」

 

「魔女のこと。そして残り香のこと」

 

「あいつの残り香が強くなった理由なんて、知ったこっちゃないかしら。魔女の事なら少しは説明は出来るけれども、お前の持つ常識的な知識とあまり変わらないのよ」

 

「カリオストロはその常識さえ今はない状態だから、一から教えてくれると嬉しいね☆」

 

「……どこの田舎から来たのかしら。全く」

 

 椅子から下りたベアトリスが、確かな歩みである書棚に近付き、一つの本を取り出す。それは彼女の手からふわりと離れれば、カリオストロめがけて飛んで行った。カリオストロは投げつけられた難なく受け止めると、その場で確かめ始める。中はどうやら絵本のようで、おどろおどろしい挿絵が随所に見受けられた。

 

 ぺらぺらと内容を一通り眺めたカリオストロは、ふむふむ、と頷いて本を閉じると、

 

「ベアトリス」

 

「何かしら」

 

「実はカリオストロ、この国の文字が読めないの☆ だから概要だけ教えて☆」

 

「――はぁ!?」

 

 さしものベアトリスもその言葉に呆れるしかなかった。こいつ、本当にどこから来たんだと目を見開かせて驚き、続けてはぁーっと大きくため息をつく。そして、カリオストロの本をテーブルの上に置かせて、ひとつひとつ説明し始めた。

 

 嫉妬の魔女「サテラ」が銀髪で、

 ハーフエルフだったという事を。

 

 他の6人の魔女を自らの糧にし、

 世界を敵に回した大罪の事を。

 

 賢者と龍と、剣聖の力を持って、

 滅することも出来なかった事を。

 

 そして今も大瀑布という場所に封じられている事を。

 

 

 カリオストロは時折湧いた疑問点はすぐさまベアトリスに聞き、ベアトリスは質問に都度、淀み無く答えた。

 

「ふんふんふんふん。なーるほどね☆ 確かに大きな爪痕を残したかもしれないけど、でももう封印されて400年ぐらい経ってるんでしょう? 流石にそこまで時間が経ってると、今の人がそこまで毛嫌いするとは考えられないなぁ☆」

 

「それは魔女教徒による所が大きいかしら」

 

「魔女教徒?」

 

「そうなのよ。嫉妬の魔女を崇拝する、頭のおかしい集団。そいつらがちょくちょく、あの魔女が封印されてる間も人々に壊滅的な程の被害を及ぼしてるのよ。……理解頂けたかしら?」

 

「少しは☆」

 

 魔女教徒は神出鬼没で、騎士団でも中々討伐出来ず、尚且つ起こす被害がいちいち甚大らしい。故に人々からあれ程までに恐れられているのだな、と理解したカリオストロは、続けて残り香について問う。

 

「ベアトリスはスバルの匂いに気付いてるっていったよね? いつから?」

 

「いつからも何も、この屋敷に来てからずっとなのよ。その口ぶりだとお前も気付いているようだけど」

 

「あそこまでの異臭を漂わせられると、流石にね~……☆ じゃあ気付く人と気付かない人が居るのは何でかなって☆」

 

「さぁ? そんな違いなんてベティーにも分からないのよ。何かしらの理由はあるだろうけど、それを暴けるほどの確証も何も持ってない。知りたければお前が探って見るといいのよ」

 

 興味なさそうに机に肘鉄をつきながら答えるベアトリス。カリオストロはスバルと自分を送り込んだあの手が、その魔女の力によるものだと推測出来たが、思考の途中にある一つの疑問に辿り着き、続けて質問を重ねた。

 

「ねえねえ、貴方ってもしかして――魔女教徒、あるいは魔女に会った事ある?」

 

「――」

 

「スバルの匂いを魔女の残り香と断定したってことは、()()()()()()()()()()()()()()()って事だもんね?」

 

 彼女は真っ先にスバルの匂いを魔女の残り香と断定した。魔女教徒や魔女が実際にそのような香りを出すかは分からないが、それはつまり準ずる存在と出会って、その香りを嗅いだ経験があったという事実に他ならない。その質問に対してベアトリスの目の色と雰囲気が変わった。

 

「……答えることは出来ないかしら」

 

「含みがある回答は、肯定したのと一緒だけど?」

 

「それでもなのよ。第一、お前との契約では答えることの出来ない内容は伝えないとなっているはずなのよ」

 

「知ってる。だからもう追求はしないよっ☆」

 

 二人の間で視線が交錯する。ベアトリスの拒絶の色が目に浮かんでおり、カリオストロは何があったのかを聞きたくなったが、今はそれが急を要する情報ではないと考えていたため、あっさりと諦めた。

 

「ふんっ。……む。何だか外でお前の事を探し回ってる臭い奴がいるのよ、お昼か何かじゃないのかしら。今日はたくさん質問したからもう満足の筈なのよ、さっさと出ていくかしら。しっしっ」

 

「え~つれないなぁ☆ ……あ、最後に二点だけっ☆」

 

「ほんっとうにがめつい奴なのよ!? いいからさっさと行くかしら!」

 

「すぐ済むから☆ まず一つ目が、この国の文字を学ぶための簡単な本とか貸して頂戴☆」

 

 返事もせずにベアトリスがばっと片手を振ると、ノータイムで書庫から2つの本が飛んでいく。飛んできたそれをカリオストロは余裕しゃくしゃくで受け取り、最後の質問も投げかけた。

 

「で、これが最後の質問です☆ ベアトリスって、異世界とか信じてる~?」

 

「……異世界? お前、一体何を言ってるのかしら。そんなものある訳がないのよ」

 

「――あはは、そうだよねっ☆ ありがとベアトリス☆ それじゃカリオストロは昼食に行くね? また分からない事があったら聞きにくるから~☆」

 

 カリオストロはその質問に満足そうにすると、受け取った本を持って、可愛らしく片手を振って禁書庫を退出した。

 

 

 

 

 

「はぁ。全く。何なのかしら、あいつ」

 

 ベアトリスは嵐のように来て嵐のように去っていった彼女に辟易し、疲れきった様子で机に突っ伏した。そしてあんな契約をしてしまった事を後悔した。あぁ午後、また来るであろう彼女を考えないといけないなんて! 

 そう悪態をつきながらも、ベアトリスは部屋の隅に積まれている椅子をもう一組、魔法で浮遊させて持ってきていた。

 

 これは椅子が無いと文句を言われるだろうから、面倒な事を避けるためだからだ。そう理由付けをするベアトリスは、久々に訪れるであろう騒がしい日に、若干の高揚を感じていることを否定出来なかった。




《魔女》
昔はサテラ以外にも色々居た。
大罪を冠した称号を持っており、全員が全員厄介過ぎる力を持って怖れられた。

《契約》
精霊は契約に非常に重きを置いている。
契約を破るというのはそれこそありえないレベルらしい。

《魔女教徒》
嫉妬の魔女を信望する狂気の集団。
大罪司教と言う複数のリーダーがおり、魔女の名の元にはた迷惑な殺戮劇を行って、各地に爪痕を残している。
魔女教徒は人々の中に隠れているらしい。

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