「! カリオストロ!」
カリオストロがふらついたのを見て、慌ててエミリアが傍に駆け寄った。ふらついたカリオストロは"周囲から見れば"一瞬で顔を真っ青にし、今にも倒れそうな表情に変わった。その様子にはさしものロズワールも目を見開いた。
「う、ううん、大丈夫☆ ちょっと立ちくらみが……☆」
「立ちくらみって……そんな顔真っ青にして」
「……こぉーれは申し訳ない。長旅の直後だというのに無理強いをさせてしまったようだぁーね。レム、ラム。すぐにお客人を然るべき場所へ……」
「これくらい平気平気☆ それよりも、スバルのところに行かせて?」
「でもカリオストロ……」
「お願い」
心配するエミリアにふらつくカリオストロが嘆願する。二の句を告げさせない真剣な表情であった。ロズワールもそれには折れざるを得なかった。
「案内を」
「「はい、ロズワール様。お客様どうぞこちらへ」」
先導してレムとラムが案内し始める。傍目に見て少し危なかしい動きで後へついていこうとすれば、何者かによって労わるように優しく背中を支えられた。カリオストロが感触に驚き振り返れば、案の定それはエミリアによるものだった。
「もぉ、エミリアったら☆ カリオストロは大丈夫だって」
「こんなに説得力のない大丈夫は初めて見たわ。スバルが心配なのは分かるけど、私は今のカリオストロの事も心配。だからせめて、支えることぐらいさせて」
「……」
心からの言葉なのがよく分かった。その美しい眉目を下げて、小さくも、さりとて確かな声でそう告げるエミリアに、カリオストロも何も言い返すことは出来ず、言われるがままに背中を支えて貰いながら移動した。
無言で通路を進む一行は程なくしてスバルが居る部屋に辿り着く。レムとラムが扉を開ければ丁度スバルが目を覚ましたようだ。半身を起こして不思議そうに辺りを見回している。そしてスバルはすぐに四人に気付き顔を綻ばせた。
「おっはようエミリアたんにカリオストロ! そしてラムにレム! それで、えー、早速聞きたいんだが……俺なんで部屋移ってんの?」
「え? 部屋を移る?」
「?」「?」
4人のうち3人がスバルの台詞に疑問を浮かべ、揃って首を右に傾げた。残りの1人はそんなスバルの様子を少し悲しそうな、どこか悔しそうな目で見ていた。
「いやいやいや、俺ってほら、いつも使用人の部屋に居たじゃん? 何か朝起きたら超綺麗な寝室に居たから、何か俺の待遇がいきなり上がったかと……んん!? あれ!? 何か寝巻きまで変わってる!? 実は昨日寝てる間に病気で倒れたとか!?」
「使用人の……部屋? スバルはここに来たのは初めて……よね? うーん、スバルは病気ではなくて怪我では倒れてたけど……それにしても、スバルってばいつの間にレムとラムの名前を知ったの? 知り合い?」
「いいえエミリア様、お客様とは初めて出会います。姉様なら出会った覚えはあるかもしれません」
「いいえエミリア様、お客様とは初めて出会います。レムなら出会った覚えはあるかもしれません」
「怪我ァ!? オイオイ俺って闇討ちされたのか!? っていうか幾らなんでも冗談きついぜレム、ラム!エミリアたんも! そう言うネタ振りは元引きこもりの俺には大ダメージだから! 今すっごい傷ついてるから!」
エミリア達の素振りを茶化されたのだと判断したスバルだが、肝心の三人は何を持って冗談としているのかが理解できておらず、首を傾げるばかり。撤回する気配もなく、スバルの表情が段々と不安げなものへと変わっていく。
「本当に大丈夫スバル? やっぱり盗品蔵での怪我の影響で……」
「姉様姉様。どうやらお客様は混乱しているようですね」
「レムレム。どうやらお客様は混乱しているようね」
「え、いや……エミリアたん。ラム、レム。本当に冗談だよな……? は、はは、みんなして俺を騙してるんだろ?」
「――スバル☆」
今まで口を閉ざしていたカリオストロがスバルへと声を掛ける。いつもと変わらぬ、鈴の音のような清らかなソプラノボイスに、狼狽していたスバルはすがるような眼差しを向けてきた。顔はいつもの小悪魔スマイルを浮かべていたが、なぜだかそれが悲しみを湛えているようにしスバルは感じた。
「カリオストロ……。な、なぁこれは何かのドッキリ――」
「ねぇエミリア、ラム、レム☆ ちょっと席を外して貰っていーい? スバルはどうやらあの件で混乱してるみたい☆ だから二人でちょっと話し合わせてほしいなって☆」
「「畏まりましたお客様」」
「え、ええ。分かったわ。何かあったらすぐに言ってねカリオストロ」
「あ……」
スバルの台詞を食い気味に遮って提案すれば、エミリアは心配そうに、そしてレムとラムは恭しくも他人行儀な振る舞いで一礼して部屋を出て行き……あっという間にスバルとカリオストロだけが残された。
「……」
「……」
室内は痛々しいまでの沈黙に包まれた。スバルは沸いた激情を消化しきれぬ、何かをこらえる様な顔で三人が出て行った扉を、じっと見詰め続けていた。
その顔はこれから残酷な真実を突きつけようとしたカリオストロを躊躇わせるには十分だった。だが告げなければならない。覚悟を決めて口を開こうとする──しかし、先に沈黙を切り裂いたのはスバルだった。
「……ようやく、ようやく二人とも打ち解けられたんだよ」
「……」
「野菜の皮剥きとかさ、最初は手を何度も傷だらけにして、見るも無残な残骸を作り上げちまったんだ。ラムはその度に俺の事を罵倒して、得意げに自分の皮むきを見せ付けて」
ぽつり、ぽつり。零れる思い出。誰に言うでもなく呟かれるそれは、事実を知るカリオストロにとってあまりにも重い告白だった。
「レムはそんなラムを褒め称えて、俺には何もフォローなし。最初は流石に酷いと思ったぜ? でもそのうちラムもレムも。段々仕方ないなって感じで教えてくれるんだよ」
「……」
「庭や屋敷内の掃除も。洗濯だってそうだ。手際悪くて失敗ばかりする俺を何度も叱りながら、あいつらはそれでも決して手を抜いて教えたりしなかった。ラムは気付いたら俺の事を勝手にバルスって呼んでさ、毎回毎回心を抉る罵倒するけど……何か友達感覚でさ。レムは最初は睨んでばっかりだけど、そのうち俺の事をスバル君って呼んでくれるんだよ。段々と気安く、親しく。知ってるか? レムって笑うとすっげーかわいいんだぜ? エミリアたん一筋の俺がぐらつくくらいのスマイル! 昨日一緒に出かけた時に見たんだけどやばかったぜ。本当、毎日死ぬほど忙しいけど、それこそ疲れが吹き飛ぶ笑顔って言うか?」
「……スバル☆」
「ベアトリスとは正直まだまだ壁があるな。あいついっつも俺に会うたびに鼻つまんでしっしっって、酷くねえか!? だからお返しに毎回おやつとか紅茶渡すたんびに居座ってやった。あんま弄りすぎると部屋から追い出されるけど、何だかんだであいつって優しいよな。俺の馬鹿な話でも、いつも蔑ろにしないでちゃんと話付き合ってくれるし。まあベア子とは追々仲良くなっていくしかねえな」
「スバル」
「それにエミリアたんもそうだ。事あるごとにカリオストロ、カリオストロって言うのは……正直面白くねえ。だから俺だって毎日暇なときに話しかけてさ、つい最近になってパックと交えて話してたら、すっごく笑ってくれた。あと……あーこれは言うつもりは無かったんだけどな、いいや。言うぜ! 自慢したいし! 実は俺。昨日の夜に念願のエミリアたんとのデート、取り付けた! 今日アーラム村に一緒に出かけるって約束をさ。エミリアたんは乗り気じゃなったけど、ゴリ押ししたらいつも頑張ってるからってさ。昨日の夜はマジで嬉しくてて寝れなくて――」
「スバル!」
あまりにも幸せで、あまりにも微笑ましく――そして、あまりにも聞くに堪えない独白に、カリオストロは気付けば肩を掴んで強く揺さぶり、それを中断させていた。
スバルの脳は現状を把握しつつあった。だが彼の心は現状を理解出来るほど強くはなかった。故に彼は現実から抗うために、
「――夢、なんだよな……?」
それは突けば脆く崩れてしまう、儚い防壁だった。
吐息がかかる程の距離においてスバルの表情は歪で、今にも壊れてしまいそうな笑み。気が付けばスバルはカリオストロの手を震える手で掴み返していた。
「今見てるのは、悪い夢なんだよな? は、はは。なあカリオストロ。俺の頬、引っ張ってくれよ。夢の、夢のカリオストロに頼むのはおかしいけど、そっちの方が効きそうだしさ。早くこんな悪い夢目覚めないとさ……なぁ、頼むよ。夢なら目覚めさせてくれ――なぁ!」
「夢じゃない」
カリオストロは即答していた。
「お前は何者かに殺され、世界はオレ様達が屋敷に来た日に戻った。これは現実だ」
現実は薄っぺらな防壁を容易く貫き、が守りたがったものを完膚なきまでに破壊した。
守るものを失ったスバルは強い無力感に囚われ、体を支える力すら失ってしまう。しかしベッドに自らの身体が投げ出されそうになる前に、カリオストロが優しく抱きとめていた。自身の体より大きい筈のスバルの体は、今はとても小さく感じた。ともすればこのまま壊れてしまうのではと思うほど頼りなかった。
カリオストロは無意識にその背中に手を回し、壊れないように優しく包み込んだ。吐き出される苦しみも、嗚咽も。小さな錬金術師が余すことなく受け止め、部屋の外に漏れることはなかった。
§ § §
疲れ切ったスバルを寝かせた後。昼食を挟み、別の客室でカリオストロがひとまず休んでいると、エミリアが顔を覗かせ、椅子に座って二人でお茶をすることになった。
「……大丈夫?」
「それはどっちが?」
「当然カリオストロとスバル、両方よ」
二人が同時にカップを机に置く音が響くと、エミリアがカリオストロへと問うた。
「ん……まあ大丈夫だ。オレ様はもう休んだから平気だし、スバルもあんな怪我を受けて少し混乱しちまってただけだしな」
お茶を啜りながら何気なく告げるとエミリアがきょとんとしていた。その様子はカリオストロの表情を歪ませるのには十分だった。
「なんだよ」
「ご、ごめんなさいちょっと驚いたの。今まで私に男口調で話しかけてた事なかったでしょ? でも自然にその口調で話しかけられたから……あ、でもでも! そっちのほうが個人的には私も嬉しいかなって。……カリオストロ?」
"……だから私も、出来るならカリオストロに男言葉で話しかけて欲しいの"
「……あぁ。何でだろうな。つい素が出ちまった」
ふと、ありえた筈の未来を思い出したカリオストロは、湧き上がる感情を落ち着かせるために、再度紅茶を口に運んだ。何気ない会話から浮き彫りになる記憶との齟齬が、この世界が巻き戻ったのだという事実をまざまざと見せ付けてくる。
それは心に小さなトゲが突き刺さった気分だった。口内に広がる苦味では痛みを打ち消すことは到底出来ない。どうしても気分転換がしたくて、カリオストロは会話をしながら、今回の出来事を反芻し始めていた。
新たに発生した謎は2つ。
ループ地点の変更。
そしてスバルの死因だ。
ループ地点の変更については、理由云々は置いて正直助かったと考えるべきだろうか。スバルの死によって再度盗品蔵の事件発生前に戻されていたとすれば、もっと自分達のダメージは大きかったであろう。
しかし何故ループ地点が変更されたのか? 推測しか出来ないが、あの1件が正しく解決できた事によって、首謀者の狙い通りに進んでいるから変更されたというのが一番理由として通る。ただ理由としては通るが、非常に癪である。首謀者は神になったつもりなのだろうか。自分達を実験動物よろしく監視して弄んでいるとしか思えない。
次に、スバルの死因。様子を見るに、彼は死んだ事に気付いていないようだった。死亡当時に漂うはずのあの甘い臭いを感じることが出来なかったのは、自分が隔絶された禁書庫に居たのが要因だろうか。
(だとすれば惜しい。せめてもの発生場所が特定できていればよかったが……)
推測出来る殺害方法は寝込みを襲われての暗殺か。遅効性の毒殺か。その下手人で最有力なのは当然レムにラムであろう。ロズワールが直々に手を汚す可能性は限りなく低いと見ているし、エミリアには到底殺せるとは思えないし、殺す動機もない。パックはエミリアに害さえなければ無害だと感じているので論外だ。
しかし殺害方法よりも謎なのは「何故殺されたか?」である。スバルを殺すことは基本デメリットしかない筈。けれども現実問題あいつは殺された。それは殺される程の理由が出来たに他ならない。そう、例えば屋敷の秘密を期せずして知ってしまったとか。
(他の外的要因ももしかしたらあるかもしれないが、今考えられるのはここまでか。当事者のスバルにはあとで詳しい話を聞くとして……今回、二回目は念を入れてあいつは働かせずに同じ食客の身分にするしかねえな。そして可能な限り、ラムやレムとは接触させない。ベアトリスは……どうだろうな。個人的にはシロだろうが信じすぎるのも――)
「――ストロ。ねえカリオストロってば。聞いてる?」
「うん」
「1+1は?」
「へえ」
「……頭撫でていい?」
「あぁ………………いきなり何すんだお前」
不意に髪に感じた重さにカリオストロは驚いた。気付けば隣に座ったエミリアが自分の髪をさらさらと梳かしていたのだ。抗議の目で見ると、逆にふくれたエミリアが抗議の目で見返した。
「カリオストロが撫でていいって言ったから撫でてるだけよ。私が話しかけてもずーっと上の空。ちょっぴり失礼しちゃう」
「あー悪い、ちょっとぼんやりしててな。許してくれ」
「ふんだ。許してあげない。代わりにずっと撫でさせて貰うんだから」
怒りながらも撫でる手はやめないエミリアに、やれやれとため息をつくカリオストロ。為されるがままにエミリアに好きにさせていると、やがてぽつりとエミリアが呟いた。
「……ごめんなさい。スバルにあんな怪我を負わせてしまって」
「あれはお前のせいじゃない」
「いいえ。元はといえば私が徽章を盗られたりしなければ……それに私があのエルザって人の不意打ちに気付いていれば!」
「いいか。もう一度言うがあれはお前のせいじゃない。責があるとすれば、このオレ様だ。あいつが死んだと見誤ってみすみす攻撃のチャンスを与えちまったのが悪い」
「カリオストロ……」
事実その通りだろう。魔物相手であれば更に追撃を掛けただろうが、人間の尺度で考えて、あの一撃で満足してしまった。体を文字通りひと捻りされて生きてると誰が思うであろうか。しかしあの殺人鬼はそこまでされても、怪我の素振りもなく生きていた。あいつは人間ではない。人間であるとすれば、そいつは既に人間を止めている。
「気に病むなとは言わない。王様候補になったのなら、今回の不祥事は原因が何であれお前の不手際になる。オレ様から言えることはひとつだけだ。次は気をつけろ」
「……はい。ごめんなさい……いいえ、ありがとうカリオストロ」
「ふん」
話がひと段落済み、沈黙が部屋に降りる。その間もエミリアはカリオストロを労わるように、いや、どこか甘えるように髪を撫で続けていた。
しつこい程撫でられて流石に拒もうとしたが、手を退けようとする度に子犬のような目で見られて渋々と許していた。するとしばらくして客室にノックの音が転がり込む。ノックの主はラムだった。彼女は一瞬、室内の光景を見て固まったが、すぐさま再起動して恭しく報告し始めた。
「……失礼します。カリオストロ様、エミリア様。夕食の用意が整いました。それと、スバル様も目を覚まされました」
「本当? 容態は?」
「今は落ち着いておられます。顔色も良さそうですし健康と言っていいでしょう。空腹を訴えてらっしゃるので、夕食に来られるようです」
「ありがとう、すぐ向かうわラム」
ラムはその言葉に頷くと「失礼します」と丁寧に一礼して下がっていった。
「スバルが落ち着いてよかったわ。ね、カリオストロ。……カリオストロ?」
何故か沈黙し続けるカリオストロ。顔は赤くなり、震えている。その理由がエミリアには皆目見当がつかなかった。カリオストロはすっくとその場を立ちあがると未だに撫で続けていたエミリアの手から離れた。
「エミリア――しばらくオレ様にべったりするの禁止な」
「え、何で!?」
誤解されかねないからだ! と顔を真赤にしながら客室を後にするカリオストロに、エミリアは何のことだか分からず、追随してその理由を問い続けるのだった。
§ § §
「おぉ、エミリアたん!そしてカリオストロ! 悪いなさっきは取り乱しちまったぜ!」
夕飯時。そこに姿を表したスバルはとても元気そうで、普段と同じようなテンションで皆と話していた。予想以上に元通りになっていたスバルを見て、カリオストロもほっと胸をなでおろした。きっと吐き出すだけ吐き出して落ち着いたのであろう。これなら当分は大丈夫だ、カリオストロは手を振りつつ微笑みを返した。
そしてロズワールやレム、ラム、そしてエミリアにベアトリスが一同を介する食卓で(パックは既に眠ってしまっている)宴が始まる。何度も味わったが、何度味わっても飽き足りないレムの料理に舌鼓を打ちながら、皆で何気ない話で盛り上がる。話は二転三転し、やがて一周目と同じく話は王選の話へ。そしてエミリアを助けた事への報酬の話に向かっていった。
「もしキミ達が望むなら報酬はお望みのまま、どーんな願いでも叶えてあげよう」
一周目と同じく懐の深さを見せるロズワールに、カリオストロは当初の考え通り、二人共食客にして貰おうとする。
「本当? じゃあ私とスバルの願いは~☆ 二人を食客に」
「――俺をここで働かせてくれ!」
被せるように、スバルが立ち上がってそう告げた。カリオストロはその言葉にとても驚き、つい絶句してしまう。
「……いーいのかぃ? わーたしが口を出すことじゃないが、もっといい条件でも文句はなーいんだけどねぇ」
「男に二言はねえぜ、俺はここで働く! カリオストロは今回の功労者だしな、カリオストロの方は食客に――」
訝しげに聞き返すロズワールに、強く頷くスバル。絶句していたカリオストロだったが、しばらくして再起動。慌ててロズワールへと弁明しだす。
「待って☆ ちょ、ちょっと待ってロズワール☆ あ、あははは……☆ どうやらスバルはまだちょっと混乱してるみたい☆ もう一回言わせて貰うね☆ 私とスバルの願いは」
「いーや。混乱なんてしてねえし、休んで頭脳スッキリさっぱりだぜ」
「……と、本人は言ってるよーぅだけど?」
ここまで断定されてしまえば上手い言い訳が浮かぶ筈もない。ぱくぱくと抗議も出来ずに口を開くカリオストロに、スバルが言い放つ。
「悪いなカリオストロ。もう決めた事なんだ。俺はここで働く」
本人の意志はとても強く、最早撤回出来そうもない。何より願いを聞き入れる本人が、その啖呵を聞き遂げてしまっていた。カリオストロは力なく項垂れ他なかった。
おっさんにバブみを感じてオギャる。それは最高に尊い!