RE:世界一可愛い美少女錬金術師☆   作:月兎耳のべる

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書きたい話になると相対的に筆の速度早くなるね!
グロテスクな表現があるので気をつけて読んでくださいね!



第五十二話 取り返しの付かない世界(前編)

 王都ルグニカの繁華街は今日も大繁盛だ。石畳が敷き詰められた道を竜車が引っ切り無しに通り、種族の壁など無いかのように人々は日々の糧のために働いている。だだっ広い道の左右には露天が立ち並んで、行き交う人々の興味を買おうと店主が声を張り上げている。

 空は冴え渡り、鳥はさえずり、子どもたちは元気を発散しようと周りを走り回っている。活気に満ち溢れた平和そのものの光景だと言っていいだろう。

 

 だがそんな光景を見てもカリオストロの気分が晴れることは全く無かった。

 

 彼女はさんさんと降り注ぐ陽光の下、街灯に背中を預けて市井に冷めた目を向け続けている。

 脳天気に行き交う市民の誰も彼もがこれから大騒動が起こることなど毛ほども信じていないだろう。なにせ自分ですら信じていない――いや、信じたくないのだ。他でもない自分の世界の産物が別の世界を破壊する光景など。

 

 

 噂話で盛り上がる主婦達が、吹きすさぶ暴風で悲鳴をあげる間もなく吹き飛ばされる姿が。

 

 2階の窓から洗濯物を干す親子が、巨大な剣で家ごと叩き潰される姿が。

 

 昼間から酒を飲んで騒ぐ男達が、陸で発生した津波を前に店ごと流されてゆく姿が。

 

 迷子の子供を引率する騎士が、地割れから発せられる高熱によって子供ごと灰になる姿が。

 

 大量の商品を竜車で運ぶ商人が、地竜と共に荷車を残して骨と皮だけになる姿が。

 

 広場の露天に群がる市民達が、天から降り注ぐ無数の光の剣を前に、跡形もなく飛び散る姿が。

 

 

 向けた視線の先々で起こりうるであろう未来を、彼女の脳は鮮明にイメージしてしまう。当然前回の死に戻りとは流れが違うのだ、今回は起きないという可能性もあるだろうが……彼女にはどうしてもそう言った未来がほぼ確実に起こってしまうのでは、という予想があった。

 

 あの草原での惨劇から2日が過ぎ、時刻は昼の鐘が鳴り響いてから半刻程。この広大なルグニカの街中で、カリオストロは日常の崩壊が起こる瞬間を待っていた。

 

 それはあの日の提案に乗ったラインハルトも同じだ。彼が派遣した捜索隊は未だ結果を得られず、兵士を伴ってこの街中で待機をしている。しかして彼らは内心に矛盾を抱えて苦悩していた。人を助けるための行動ではあるが、大勢の命に関わる大事件が起きると知りつつも事前に市民達を避難させるという最善の行為がとれないのだから。

 

 それも当然なのかもしれない。なにせ情報源はスバルの死に戻りから得た情報だ、未来の夢を見たのだと言って初見で信じる人こそ珍しく、また過去に同じ行動を辿っていない以上起こる可能性も低いのだ。確実性のない情報を前に市民を大量避難出来るのかと言えば……答えはノーである。今それを信じているのはこの世界ではエミリア達とラインハルト、そして数十人の兵士達だけだ。

 

 狂言でもいい。今すぐにここで騒ぎを起こして市民を避難させてやろうかと何度思い至った事か。しかしそんな逸脱した行為を取ることはさらなる未来の変化を起こすだけではと考えると、到底カリオストロの手は動かない。

 

 八方塞がりとはこの事か。魔女教の企み、と言うより運命を弄る何者かによって自分とスバルの両方に、悪意をたっぷり詰め込んだ運命になるように仕向けられているように感じてしまう。以前であれば一笑に付した考えも、今ではそれが真実であると思い始めかけているカリオストロは、その目を更に細めて周りを見渡し続け――、

 

「カリオストロ」

 

「なんだラインハルト。……いや、本気でなんだこれは」

 

 市井の様子を睨みつけていた彼女の隣にラインハルトが近づいたかと思えば、彼はその手に持っていたものを手渡してきた。掌サイズで丸みを帯び、陽光を浴びて赤く輝く果実。それは、

 

「リンガさ」

 

「そういう事じゃなくてだな」

 

「昨日からずっと食べていないだろう、栄養補給は必要の筈だよ」

 

「一日二日の絶食程度でオレ様が……はぁ、いや貰う。ありがとよ」

 

 今は到底食事を取る気分にはなれなかったが、意固地になって断って口問答になるのも面倒だった。カリオストロは差し出されたリンガをむんずと掴むと、しゃく、と小さな口で頬張る。

 口の中に広がる酸味と甘味、そして喉を潤す瑞々しさは確かに心地よい。疲れの溜まった体が欲していたのかは知らないがカリオストロは二口、三口と無言で食べ続けていく。

 

「お代わりもあるけどどうするかい?」

 

「……オレ様の完璧かつぷりちぃなボディを見ろ、一気に2個も食べられると思うか?」

 

「客観的な目線で言わせて貰うなら、万人が完璧と言うにはいささか無理があるようにも思えるね」

 

「異を唱える奴らはオレ様を実際に見ていないんだろう。全空一可愛いオレ様を見た瞬間に愚民どもは評価を180度変えることだろうよ」

 

「ボクもひと目見てキミに完成された美を感じたけど、普段のキミを見れば完璧か、という点には少し首を傾げさせて貰おうかな」

 

 隣に立つラインハルトの脚にカリオストロの力の篭ってない蹴りが突き刺さるも、ラインハルトは小さく笑うだけで堪えた様子はない。そんな他愛のない戯言の応酬。だがカリオストロには時間を無駄にしたという怒りは全く起こらず、逆に少しは冷静になれた。

 事件が起こるにしろ起こらないにしろ、不安や焦燥に駆り立てられている状態ではまともな行動も出来なかっただろう。カリオストロはためらいがちに小さく口を開いた。

 

「……まあ、なんだ。ありがとよ」

 

「リンガのお礼はもう頂いてるよ」

 

 分かっているだろうに、どこまでもキザな返答だ。だがラインハルトが言うと嫌味がなくてどこか心地よい。普段のあり方すらも忘れかけていたカリオストロはその場で深呼吸をすると、改めて現状確認を始める。

 

「状況はどうなってる」

 

「急な連絡ではあったが管轄の兵士達はルグニカの広域に配置完了。非常訓練という体で普段より多めに警邏に回って貰っている。何かがあれば警笛を思い切り鳴らすようには仕向けているから、異変があればすぐ分かる筈だ」

 

「上出来だ。対応が後手後手に回ってしまうのが正直心苦しいが、やらないよりはマシだろう」

 

「検問も普段より厳重に行っているし、不審な人や物などあればすぐに取り押さえる事が出来るが……キミに教わった事件では、王都に現れるのは見上げる程大きな魔獣なのだろう? どうやったらそんな存在がこの王都に現れるのかが不思議だ。もしやとは思うが同時にキミが探して欲しいと言った青髪の少女に関係するのかい?」

 

 カリオストロの反応は沈黙だったが、ラインハルトはその反応を肯定と見ていた。隣に立ったまま視線を向け続ける彼に、たっぷり5秒程時間を置いて彼女は語りだした。

 

「……聞いてはいると思うが、そいつはルリアと呼ばれている。オレ様がかつていた……まあ、傭兵団のメンバーだ。ルリアは契約した魔獣を従え、命令させてその力を奮う事が出来る。しかしながら魔獣使いとは完全に別物で、その場に魔獣が居なくとも召還して戦わせる事が出来るっていう滅茶苦茶な奴さ。当の本人は心優しく、人を疑うことを知らないどこまでも純真な奴なんだが」

 

「なるほど。それは凄まじい力だね。ただキミの人物評を聞く限りではそのような暴挙を取るとは思えないが……可能性があるとすれば」

 

「そうだな。ルリアが誰かに脅されているか、騙されているのであれば話は別だ」

 

 ルリアは心優しいが故に人を無視するという事が出来ない。相手が善人であろうと悪人であろうと丁寧に対応してしまう。その善意は美徳だが善意故に付け込まれ安い。過去彼女が攫われかけた事案が何度あった事か。

 

 しかしながらそんな事件の九割九分九厘は未遂止まりになっている。それは何故か?

 

「だがその可能性も正直な所大分薄いと見ている、ルリアの傍にはほとんどアイツが一緒に居るからな」

 

「アイツとは?」

 

「グランっていう少年だ。ありとあらゆる武器に精通し、(あまね)くほとんど全ての才能に秀でた世紀の天才だ。それも天才を自称するオレ様ですら唯一隣に立つことを許してやってもいいくらいのな。あいつに勝てる奴は両手どころか片手の指でも数えられる程しかいないだろう」

 

 ――そう、ルリアの隣にはグランが居る。

 

 まだ団を立ち上げる前に死にかけたグランは、ルリアと半ば魂を分け与える事により生き長らえた。そのため、彼らは常に近くに居なければならないという制約があった。説明した通り全天空の中で一、二を争う強者であるグランが隣にいる限り、ルリアが脅かされるという事はまずありえない。あの魔女教の力を目の当たりにしても、パックの真の力を目の当たりにしてもグランが負けるというイメージがカリオストロには浮かばなかった。

 

「偶然にもその彼が隣に居なかったか、それとも彼を打ち負かす程の敵だったか」

 

「あるいはそうだな、別の誰かを人質に取られたとかか? ルリアもグランもよく言えば優しく、悪く言っちまえばお節介焼きだからな。全然関係ない相手でも全力で救おうとするのは目に浮かぶ、が……一人を救うためにこの街の住民達に被害を与えるのを許容するとは到底思えねえな」

 

 それに前回のループの最後にカリオストロが見たのは、ルリアが好んで使用する星晶獣達が6体同時、いや7体同時に暴れまわる姿だった。それは今までの彼女の召喚スタイルを思えば可笑しいの一言だ。多種多様な星晶獣を召喚できることは事実であるが、同時にそれらを召喚しているところはいまだかつて見た事がない。召喚するたびに多大なエネルギーを消費するとも本人から聞いている以上、出来ないと考えてもよいかもしれない。そうなればルリアの仕業ではない可能性も考慮せねばならないだろう。

 

(ただ、そうだとすると王都で星晶獣が現れた理由が説明できなくなる。ヴァシュロンの野郎があいつらを一気にこの場に呼び寄せたとでも言うのか? 生息する島の違う星晶獣達を一つ一つ? それこそありえねえ、そんな手間隙をかける理由が奴のどこにある。ヴァシュロンはただでさえ弱りかけていたし、人を飛ばす力はあっても星晶獣を飛ばす力が残されてるとは到底思えん)

 

 思考をすれどもまだ答えは見えない。肝心な何かが不透明なままであるという予感がしている。こういう時は考えても無駄で、出たとこ勝負であるとカリオストロはいつも考えている。論理に重きを置く彼女であるが、それでいて徹底した実践主義者なのだ。

 思考を断ち切った直後、並んで町を眺めるラインハルトが躊躇いがちに質問をしてきた。

 

「……ところでカリオストロ。エミリア様は今は?」

 

「ん。あぁ……あいつはロズワールの屋敷に戻した。流石にこの場に連れていく訳にもいかねえしな」

 

「キミが傍に居てあげなくても良かったのかい」

 

「本音を言えばそうしたい。だが、今はあいつのそばに居ても声をかける事ぐらいしか出来ないんだ、あいつを励ます暇があれば治療方法を探しに行く方が合理的だ」

 

 淡々と述べるカリオストロ。彼女の表情は先ほどから変わらないのは見て取れるのだが、この話題に入った瞬間、その雰囲気が少し(かげ)りのある物に変わった事をラインハルトは気付いていた。だからこそ彼はこう提案し始める。

 

 

「唐突な提案にはなるかもしれないが……この場は僕に任せてくれないかい?」

 

 

 さしもの提案に思わずラインハルトの方を向いて目を見開いてしまうカリオストロ。だが彼女はすぐさまその目を細めて、いつもの険のある目で否定を始める。

 

「馬鹿を言うなラインハルト、敵はかつてない程の強大な魔獣だぞ? それも最低で7体は居るって言うのに」

 

「自分の力に自惚れている訳ではないが、当代一の剣聖としての力はあると自負している。慮外の敵など僕には存在しりえない」

 

「お前に一騎当千の力であること認めてもいいが、この広大なルグニカを1人でカバーするつもりか? ただでさえ人手が足りないのにオレ様が居なくなるのは」

 

「君も知っている通り僕は有り余る程の加護を保有している。『早駆けの加護』。それがあればどこで何があろうと直ぐ様現場に急行出来るだろう」

 

「だとしても」

 

「いいかいカリオストロ、この件は僕一人でもきっと討伐出来うるだろう。僕も君の力は認めるに足りうると考えているが、同盟を組んだ今君という存在が万が一でもこの戦いで無くなってしまうのは、余りにも大きすぎる損失なんだ。それに今のエミリア様にはキミという存在が必要の筈、だから――」

 

 ぐしゃっ。

 

 言葉を(さえぎ)るように何かが潰れた音が響き渡る。

 思わず口を閉じたラインハルトが音の発生源を辿った先では、カリオストロが手に持つ潰れたリンガがあった。彼女は(うつむ)き、その矮躯を小さく震わせながら、絞り出すように言葉を紡ぎ始める。

 

「――だから、エミリアの傍で御伽噺のような奇跡が舞い降りるのを座して待てと? ラインハルトに任せて、自分は安全な場所で吉報を待てと? 自らの不甲斐なさを噛み締めながら、失意の底にあるエミリアを根拠もない、ただ耳障りの良い言葉を並べて励まし続けろと、お前はそう言いたいのか」

 

「……」

 

「エミリアを壊されて、ラムが殺されて、スバルが攫われたって言うのに。大切な奴らを誰一人守れてねえって言うのに、ただじっとしてろって言うのか。そんな事」 

 

 そんな事オレには到底耐えられない。

 

 自らに言い聞かせるように呟けば、カリオストロはそれっきり黙り込んでしまう。

 いつもの自信に溢れたカリオストロの姿からは到底考えられない、弱りきった彼女の姿を見てラインハルトもまた口を開くことを忘れてしまう。いつもはその小さな体からは考えられない程理知的で、老獪な女性というイメージを受けていたが、今の彼女はその体型相応の弱々しいイメージがぴったりであった。そう、それはまるで行き場をなくした迷子のような――、

 

 

「!」

 

 ぴくり、とラインハルトの耳が何かを捉える。日々の喧騒の音に紛れて聞こえたのは、紛れもなく警笛の音。距離はこの場所から二区角先、噴水のある公園であることが察せられた。

 

「カリオストロ、余計な事を口走った事を謝罪しよう。それよりも、異常事態が発生したようだ」

 

「!……場所は近いか?」

 

「あぁ。二区画先、さして時間もなく駆けつけられる。掴まってくれ」

 

 言うが早いかラインハルトはカリオストロをいわゆるお姫様抱っこの体勢で抱えると、その場から跳躍。彼女の見る景色は地上から一気に空へと移り、風切りの音がごうごうと耳を(さいな)む。ラインハルトは重力に任せて一度民家の屋根に到達すると、再度跳躍し、目的の場所へと急いでゆく。

 

「あれか」

 

 腕の中に収まったカリオストロが視線を向けた先では、噴水の近くで民衆が逃げ惑う姿と隆々とした熊のような魔獣が雄叫びをあげている光景があった。憲兵達は民衆を誘導しながら、突如現れた魔獣へと一斉に剣を向けている。

 既に魔獣は手負いで、半狂乱になって兵士達を威嚇している。しかしながらカリオストロはその魔獣の様子がどうにもおかしいように思えた、それはまるでどうして自分がここにいるか、どうして囲まれているのかが理解できていないようにも思えて――、

 

「カリオストロ、もしかしてあれは」

 

「……お前も勘付いたか、急げ。手遅れになるぞ」

 

 しかしラインハルトが再度屋根を蹴るのと、憲兵達が距離を詰めるのは同時の事であった。

 「よせ!」とカリオストロが叫んだが、事態はその時には既に遅く、背後から振りかざされた剣は、魔獣の背中に大きな傷をつけており、痛みに怯んだ魔獣の腹を正面から3つの槍が貫いていた。

 

「っ、キミ達やめるんだ!」

 

「ラインハルト様!? そんな、この街中に現れた魔獣を生かしておける筈が」

 

「どけ! その魔獣は――」

 

 兵士達の後方に降り立ったラインハルトが憲兵達に制止を呼びかけ、腕から飛び出したカリオストロもまた魔獣を治療しようと急ぐ。だが致命傷を負った魔獣は血に塗れながらも兵士を吹き飛ばそうと、その大きな爪を振り上げており――

 

「君!? くっ――ゴーア!」

 

 飛び出したカリオストロを救おうと兵士達の魔法が魔獣を直撃、狙いすました複数の火球は魔獣の頭部に直撃し、半ば頭部を破損した魔獣は弱りきった雄叫びを上げたかと思えば、そのまま倒れ込んでしまう。

 

「なんて危ない真似をっ……! 危うく魔法が間に合ったから良いものを一体何を考えてっ――――!?」

 

 眼の前で倒れ伏す魔獣の死骸を見て怒りに打ち震えるカリオストロに、兵士は叱ることも忘れてしまう。助けたと言うのに、その反応が反省でもなく、怯えでもなく怒りなのは一体どういう事か。困惑する周りをよそにラインハルトもまた悔しそうに顔を(しか)めると、

 

「キミ達、この魔獣は唐突に現れたで間違いはないかい? ……そうか、ならこの街に唐突に現れた魔獣だが、原因は魔女教徒によるものである可能性が非常に高い。信じられないだろうが魔女教徒の中には人を魔獣に変える力を持っている存在がいる」

 

「そ、そんな馬鹿な……では、今倒した魔獣もまさかただの一般市民だと……そ、そう言いたいのですか!?」

 

 どよめきが伝播する。兵士達が一様に視線を向けた先にあるのは凶悪な魔獣の死骸。だが今のラインハルトの一言がそのイメージを180度転換させてしまう。弱者を守るための剣を、他でもない弱者に向けて放ってしまったのか、と互いの顔を見合わせて困惑を(あらわ)にしてしまう。

 

「……今となってはもう分からない、だがこの町中で唐突に現れた魔獣に関しては疑ってかかって欲しい。いきなり攻撃をするのではなく大人しくする方向でお願いしたい」

 

「いきなり、そう言われても……」

「何か見分ける方法はないのですか?」

「向こうが攻撃を仕掛けてきてもただ守り続けろとおっしゃるのですか」

 

 兵士は縋るようにラインハルトへと質問を投げかけていく――が、それに悠長に答える時間は既に残されていなかった。

 

「――! この音」

「警笛だ。西の方――いや、東も。南も……なんだ、到るところで笛の音が!?」

 

 街の到るところから立ち上がった異常を知らせる笛の音達が不快な合唱を初めだす。事切れた魔獣の傍で伏せていたカリオストロは、ラインハルトに目配せをしたと思えば、そのまま笛の音に導かれるがままに駆け出す。

 

「とりあえず片っ端から異常を片す! 何かあったらまた呼べ!」

 

「分かった! カリオストロ、無事を祈っている!」

 

 カリオストロはラインハルトの声に振り返ることなく起こりつつある異常事態に戸惑う市民を掻い潜って移動していく。奥に進めば進むほど普段の喧騒とかけ離れた悲鳴、魔獣の声、衝撃音が耳に入る。進行方向から逆へと逃げようとする大量の市民とすれ違い、曲がり角を抜け次の区画に入った先で彼女が見た光景は、混沌の一言であった。

 

 普段は買い物客が立ち並ぶ露天の至る場所から人程の大きさがある巨大な蠍、狼、猪のような魔獣達が、商品や木箱を撒き散らして暴れており、取り囲む兵士達が剣や槍を向けてなんとか包囲しようとしている。既に魔獣にも兵士にも死人が出てしまっているのか、地面に新鮮な血溜まりを作り初めていた。

 

「おい、お前らやめろ! その魔獣達は元市民の可能性がある!」

 

「――」

 

「聞いているのか!?」

 

「――煩い小娘、こいつは俺達の同僚を殺したんだ! そんなのが市民な訳、ねえだろうがよっ!」

 

 カリオストロの制止の声も効かず、冷静を欠いた兵士らはそのまま魔獣へと襲いかかってゆき、魔獣達もまた殺されてたまるかと雄叫びを張り上げて牙を剥く。カリオストロはどちらを止めるべきか一瞬迷ってしまい――その致命的な隙の間に、彼女の眼の前で更なる血と悲劇が呼び寄せられてしまう。

 

 唖然とする間にまた一人、また一匹と()()()()によって死骸が積み重なってゆく。その光景はカリオストロを絶望させるには十分だった。

 

 到るところで起きつつある惨劇は、最早誰にも止めることは出来ないだろう。

 兵士達へ情報を十分に共有する時間もなかったのが拍車をかけてしまったか、一度どちらかがどちらかを傷つけてしまえば悪感情の応酬はどんどん大きくなっていく。一度入った亀裂が広がるしか道がないかのように、互いを敵とみなしてしまった兵士と魔獣達は、片方が全滅するまで止まらないだろう。

 

「――ッ」

 

 街に投じられた一石の悪意が様々な人達の意志を巻き込んで、巨大な悪意へと成り代わる。

 反射的な敵意は明確な敵意となり、最後には殺意へと進化してゆく。

 傷がさらなる傷を呼び、治すことも出来ない傷へと変えてゆく。

 一滴の筈の血の雫が、大雨が振ったかのような血だまりになってゆく。

 

「畜生」

 

 カリオストロは知らぬ内に乾いていた喉を鳴らし、折れかけていた心に発破をかけると無理矢理両の手足に力を込めて動き始める。暴れまわる兵士を、暴れまわる魔獣を等しく吹き飛ばして回る。

 

「畜生、畜生ッ」

 

 それが死にかけていれば治癒をし、尚も暴れまわるのであれば少なくない怪我をさせて行動を封じた。最早自分が何をしたところで焼け石に水だと分かっていても、彼女はただ一心にこの混沌を終わらせるつもりで矛盾の孕んだ行動を取り続ける。

 

「畜生、畜生、ちくしょう――ッ!」

 

 終わりの見えない敵意の応酬。

 箱庭の中で繰り広げられる無為なる行為。

 悪辣なる者が垂らした一つの黒い染みが、隅々まで広がっていく感覚。

 

 それはお前に出来る事など何一つないと、そう言っているようで。

 だがそれを否定しようとカリオストロは我武者羅に街を走り回り続けた。

 

 

 

「カリオストロ」

 

 

 

 だから悲鳴と怒号と血飛沫の音の中に紛れて聞こえてきた声を聞いたときは、それを幻聴だと思った。しかしてその声は自分の意識を揺さぶるには十分過ぎて。声の方向に顔を向けてしまえば、もうその脚を止めるしかなかった。

 

 そこに居たのは精悍な青年だ。

 見覚えのある青い服、プレートメイル、篭手、そして柔和と真面目さを取り入れた顔に、赤茶けたショートヘア。彼は腰に剣を下げて、カリオストロに視線を向けていた。

 

「グ、ラン……?」

 

 カリオストロの驚愕を置き去りにして彼はゆっくりとこちらへと歩み寄り、彼女の直ぐ側まで寄ると視線を合わせるために膝立ちになる。カリオストロはまだ眼の前に居る存在が信じられないのか、わなわなと小さく手を震わせながら絞り出すように呟く。

 

「どこを……どこをほっつき歩いていやがった」

 

「……」

 

「オレ様を探すのがあまりにも遅すぎるだろ、もう一ヶ月以上も経っちまってるだろうが」

 

「……」

 

「大体こっちに来ちまったのはヘマしたお前が原因だって言うのに、あんまりにも迎えが来ない物だから――オレ様の方から迎えに行こうと思っちまったくらいだったぞ」

 

「……」

 

「何とか……何とか言えよっ。オレ様が、このオレ様がこの世界でどういう気持ちで過ごしてきたのか。それが分からねえ訳でもない癖に――!」

 

「うん、ごめん」

 

 度重なる悲劇、度重なる苦悩、度重なる痛み。

 数千年と言う永き人生を送っていく中で作り上げた頑強な器も、この世界で徐々に積み重なった重荷を支えきれず限界を迎えつつあった。既に弱りきってしまったカリオストロは無意識に彼の腕の中に包まれてしまい、今まで堪えていた心が歯止めを無くしたかのように、自然と彼の背に手を回していた。

 

「本当に遅くなってごめん。まさかキミがこんな場所に居ただなんて」

 

「……」

 

「大変だったね、辛かったね……でも、もう大丈夫だ。僕が来たんだ、遠慮なく僕を頼って欲しい」

 

 耳朶を打つ安心させる言葉に心の重荷が徐々に取り除かれていく感覚を覚える。

 隣に頼れる存在が居る事の頼もしさはかけがえのないものだ。二本の脚が地を離れて、完全にグランに体を預けてしまう。彼の厚い胸板に頬をくっつけるだけで、どうしてこうも充足感を覚えてしまうのか、こうも多幸感を覚えてしまうのか。

 

「…………なあグラン」

 

「ん? なんだい」

 

「いつもの、してくれ。頭を撫でてくれ」

 

「……くすっ、この場でかい? あぁいいさ。好きなだけしてあげるよ」

 

「っ……! い、いや――悪い、確かに今は相応しくなかったな。まずはこの場を片さなきゃいけねえしな」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()カリオストロは慌てて彼を突き放すとぷい、とそっぽを向いてしまう。騒動収まらぬ街の中、グランにはその様子がまるで初恋に戸惑う純情な少女そのものに見えた。

 

「別に僕は構わなかったけどね……いいのかい?」

 

「楽しみはずっと後に回した方がいいだろう?」

 

 言えてる、と賛同したグランがカリオストロの隣に立ち剣を抜き離つ。

 カリオストロもグランをもう一度見上げると決意を心に秘め、召喚したウロボロス達にこの街の騒動を片付けるがために命令を出した。

 

 

「え?」

 

 

 その結果、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その胸元から飛び出しているのは朱いウロボロスの太い尻尾。それは元々の朱色の装甲を更に鮮烈な紅色で染め上げていた。

 

「ど、うして――」

 

「……」

 

 尻尾に貫かれたグランが高く持ち上げられ、ごぼごぼと口元から血泡と血反吐を零すグランは悲痛な表情でカリオストロに手をのばす。対するカリオストロはグランを一瞥することなく、明後日の方向を向いていた。

 

「か、リ」

 

 宙空で尻尾を引き抜かれたグランに目掛けて、朱と蒼のウロボロスが眩いばかりの虹色の崩壊の光を浴びせれば、グランはほんの少しの塵だけを残してこの世から消え去ってしまった。

 

「――」

 

 カリオストロは顔から表情というものを無くし、塵になった元グランに視線を向け続けていけば……()()()、残された塵がかすかに動き出し初めた。ぼこ、ぼこりとかすかな音を立てて肉片を増やしていくそれは二倍、四倍、八倍、十六倍と体積を増やしてゆき――十秒も経たないうちに塵は人の出来損ないのような肉塊となり、そこからは瞬きする間もなくある姿を形取った。

 

「どうして――分かっちまいましたか?」

 

 そこに現れたのは黒いドレスに身を包んだ妖艶な黒髪の女性――カペラであった、彼女は塵にさせられたというのに怒る事もなく、純粋に疑問なのか首を傾げている。

 

「途中まではテメェは完全に本物だと思いこんでいやがりました、とてつもない安心感と少なくない慕情を目に秘めて、完全に信頼を預けちまっていた筈です。なのにどうしてテメェはアタクシを殺しやがるんです? これがテメェなりの愛情表現とでも?」

 

「簡単だ。テメェの猿真似が上っ面すぎるだけだ」

 

「きひ。その上っ面に本気で騙されかけていた癖によくぞそんな口を利きやがりますねぇ。お前が求めていた雄肉の理想の姿を見せてやったっつーのに、あれでやがりますか? そんな()()()()()だから疼く子宮すら持ってねーって訳ですかね? それとももっと乱暴に責め立てて欲しいマゾ豚だったとかかぁ!?」

 

「品のねえ野郎だ、お前の言葉を耳にするたびに反吐が出る。いいか、お前は嗜虐趣味のクソ女郎で人の弱みに付け込む高尚な趣味をお持ちなんだろう? だったらここぞという時に心を折りに来るのは目に見えてる」

 

 心底軽蔑した目をカペラに向けるカリオストロは、吐き捨てるかのように宣言する。

 

「それならお前が取る手段は? これも容易に想像出来た。お前の力を駆使して親しい存在に化け、裏切り殺す。ほんっと額縁に飾りたいほどの悪趣味なことで。さぞかし愉悦を感じられるだろうな」

 

「そんな推測だけでアタクシを攻撃したと? 心底大事な相手を? それが本物であるかもしれねえってのに無謀が過ぎねえですか」

 

「はっ、そんなの半信半疑だったからカマをかけただけだ。頭を撫でるだと? そんな事習慣になってる訳がない、そもそんな提案したらアイツは恥ずかしがるだろーよ」

 

 まさかの真実にカペラは目を剥くと、直後にはぁ、と心底下らなそうに溜息をついて首を振った。

 

「あーぁぁぁぁやだやだやだ、グランとやらが惹かれた相手に手も出してねークソヘタレだとは思ってなかったですよ。いちいち糞童貞の考えを真似しなきゃいけねーなんて、死んでも御免です――おっと」

 

 肩がぶつかったくらいの気安い声を出したかと思えば、カペラの右腕がウロボロスによって食い千切られていた。ウロボロスはカリオストロに咥えたその腕を渡すと、彼女はその腕を掴んでまじまじと見つめ始める。

 

「クソ雌肉。アタクシの腕をもぎ取って何がしてーんです?」

 

「いや何、お前のその体はどういう風に出来てるのかが気になってな――あん? んだこれは」

 

 もぎ取った腕の断面から零れ出た血の雫がカリオストロの腕に触れた、と思えば、その触れた部分を起点にして黒い糸が血管に沿うように瞬く間に広がっていく。腕がびくびくびく、と勝手に跳ね回る感触にさしものカリオストロも目元を苦痛に歪めるが、躊躇なく自身の腕を半ばから崩壊させ、そして再度構成してしまう。出来たのは先程と全く変わらぬシミひとつない腕だった。

 

「随分変な血をしてるんだな、変性させる、っつーか過剰回復させてるように感じたが」

 

「あったりめーですよ。アタクシの血は龍の血。どんな病気もどんな怪我もたちどころに、()()()()()()治す奇跡の液体! 良かったらテメーの全身にぶっかけてやりましょーか? その人の目を惹く事しか考えねえ空っぽの体を、どんな人も目を背ける最ッッッッ高のアートな体にしちまってあげますよ?」

 

 ゲラゲラゲラと歯をひん剥いて下品に笑うカペラに向けて、カリオストロは土と石を変性させて槍、斧、剣を地面から形勢して串刺しにしようとするも、流石に二度目の奇襲は失敗、高く跳躍したカペラはその背に漆黒の翼を生やして空に浮かぶ。

 

「アタクシのせっかくのご厚意を受け取らねーなんて、恥知らずにも程がありやがりますねえ」

 

「自分の行いを客観視すら出来ねえ奴の方がよっぽど恥知らずだとは思わねーか?」

 

「万人に愛されるアタクシに他人の視点で見る必要はねえんですよ! きゃはっ、怖い怖い! 屑肉からかうのは楽しいですけど、カペラ様は忙しいんですよねー、お前と戯れるのはここまで。代わりに()()()()でも堪能しやがってください!」

 

 またどこかでお(会い)しちまいましょうねぇ、と楽しげに飛び去っていくカペラにカリオストロが魔法による攻撃を加えながら何とか追随しようとするも、直後背後から巨大な何かの気配を感じて、ウロボロスに抱えられるがままにその場から避ける。同時に彼女の居た場所を巨大な脚が踏みつけ、その衝撃に颶風が撒き散らされ、木屑や紙片といった小物が吹き飛ぶ。

 

「ちっ……! どこからこんな化物を用意しやがった……!」

 

 そこに居たのは数多の化物と対峙したカリオストロでさえ顔を背けたくなる存在で。一言で言えば全長10m程の醜い竜であった。

 鱗の代わりに全身を覆い尽くすのは水疱で、動く度にその水疱がぶちゅぶちゅと潰れては膿をほとばしらせる。肉塊を重ねたかのような歪な両足は歩みだすたびに揺れ、疎らに伸びた手の爪は不気味の一言。だらしなく開けた口からは舌が垂れ下がり、視線の定まらぬ目は黄色く淀んでいた。

 

 その竜とも言えぬ化物は続けてカリオストロへと向けて巨大な腕を横薙ぎに振るう。腕は石畳に深々と突き刺さり、肉が潰れる音と石同士が衝突する音を響かせてその延長上にある家ごと跡形もなく吹き飛ばす。

 当然、カリオストロはその攻撃を余裕を持って躱しており、躱したついでにウロボロスと共に攻撃をし、振り切った腕に崩壊魔法をかけていた。

 呆気なく消し飛ばされる化物の巨大な腕。痛烈な痛みを感じたのだろう、化物は綺麗に無くなった腕の断面から赤黒い血液をどばどばと零しながら天に向けて大口を開け、耳障りな悲鳴をあげ始める。

 

 

繧ゥ譁�ュ怜喧縺代ヱ繧ソ繝シ繝ウ讖溯�繝サ遐皮ゥカ�樞――――ッ!!

 

 

 その声は王都全域に伝わるほど大きく、聞くに堪えない悲痛な鳴き声だ。

 

 カリオストロもとっさに片耳を塞いでしまった直後、その全長を超える長い尻尾が彼女に向けて横薙ぎに振るわれていた。カリオストロは自身を守る分厚い被膜を作り出したと共に迫りくる自分の背丈を超える肉の壁を、またも崩壊させる。

 

 展開した被膜が赤黒い血で真っ赤に染まり、支えを無くした一軒家程ある大きさの尻尾の先が街角に突き刺さり巨大な音を立てる。またも体を無くした化物だったが、先程吹き飛ばしたばかりの腕の先から肉腫が形勢されて再生し始めていた。どうやらこの化物も龍の血が通った再生生物のようだ。

 

「だがな、デカくて再生するだけならオレ様の相手じゃねえ」

 

 喚き立てる化物にカリオストロは淡々と攻撃を繰り返す。再生する? それは結構。ならどれだけ再生できるか試してやると溜まった鬱憤を晴らすかのように熾烈な攻撃を浴びせ続ける。

 腕を分解した、尻尾を分解した、腹部を分解した、頭部を分解した。鈍重な化物は為す術もなくカリオストロに攻撃されては叫び、そして再生する。抵抗を試みようと手や脚を伸ばした先から分解されてしまうのだ、溜まった物ではないだろう。

 

 気づけば、化物は攻撃をする意思をなくしたのか背を向けて逃げようとしていた。だがそれを許すカリオストロではなく、魔法がその歪な両足を吹き飛ばして地べたに打ち転がす。ごぶ、ごぶ、とくぐもった喘ぎ声のような息をする化物は、ゆっくりと脚を再生しながら彼女から逃げようと這って移動する。その再生速度は顔合わせた直後より確実に遅くなっていた。

 

「はっ、どうした化物。テメェから仕掛けた勝負を放棄するっていうのか? 誰が逃がすかよ」

 

壹?繝ュ繧ー繝ゥ繝 繧偵h繧雁柑邇?

 

「もしくはお前はただの罪のない一般市民かもしれない、が……何にせよお前はここでおしまいにしなきゃいけねえんだ。お前を逃したら他の一般市民に被害が出る。――だから許せ。出来る限り早く終わらせる」

 

 ずりゅ。ずりゅ。ずりゅ。ずりゅ。

 歩くことを放棄した無残な肉塊が必死にカリオストロから距離を取ろうとする。彼女はそんな無様な姿を見て少し同情の目を向けながらも、全力の崩壊魔法をこの化物に施そうとして、

 

 

「――かり遉、繧定お、すと蜍慕噪ろ

 

 

 大きな鼓動の音が響いたかと思えば、一帯から()()()()()()()()()()()()()

 

 

「は?」

 

 

 その幾度となく嗅ぎ慣れたその臭いの発生源は、眼の前の化物から漂っているように思えた。

 いや、間違いなくこの化物から漂っている。

 思考停止に追い込まれたカリオストロは攻撃をすることも忘れてしまう。どうしてこの臭いがこいつから? それに、今こいつは何と言った? まさか自分の名前を呼んだ?

 

 

かり、お繧雁柑邇、ストロ、吶?ゅ?繝ュ繧ー繝ゥ繝かりおすと繧呈欠ろ、かりおすとろ、かりおす?ゅ?繝ュとろ

 

 

 聞き間違えではない、まるで何重にも設置された古びた蓄音機から流されるダミ声が、はっきりと彼女の耳に入る。彼女の理知的な脳はその2つの現実を突きつけられて、ある残酷な結論を導き出していた。それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――、

 

 

かりおォ蜀 螳ケすとろ、た繧カ繧すけて

 

 

 その場に居ない筈なのに、げらげらげらげら、とカペラの耳障りな笑い声が響いた気がした。




言っておきますがこの小説のグランはちゃんと童貞です(唐突)
大事な事なので二回言っておきます。童貞です。
おっさんとプラトニックなラブする以外は許さんからな。絶対にだ。

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