ようやく届いた!
瓦礫の海の中、息継ぎをするように這い出れば、視界に広がるのはほんのり赤らんだ夕焼け模様。
無用の長物となった身代わりのマントを投げ捨てれば、人の手の形をした消し炭が足元に転がっていた。ユリウスとかいう青年の一部だ。
多彩かつ正統派の剣技に精霊を駆使した波状攻撃。並々ならぬ強敵で、軽く100回以上は死ぬ羽目になった。最後の最後で自爆をするから、どうにもこうにも困っていたが……ようやく超える事ができた。
無傷に近い状態で勝たないといけないのが面倒だった。
何せ、この後にとっておきのボスが待ち構えているのだから。
「あ、あいつが何故生きて……!?」
「ユリウス様は……? し、死んでしまわれたのか……?」
ふぅー、と一呼吸つきながら、散歩感覚で雑兵に肉薄。
絶望を顔に刻んだ彼らは、次の瞬間私の足元でうずくまっている。
もうこの程度の相手なんかで死んでやれなくなってしまった。
単調な攻撃の軌跡なんて目をつむっても避けられるし、ナイフを少し翻らせるだけでみんなお陀仏だ。
本当、私って強くなっちゃったもんだ。
でも。千を超える死を迎えても尚、私が及ばない力があるのは本当に面白い。
「……ん。早いところいかないと」
ボサボサしてるとあいつが出てきてしまう。
都合300回挑んで一切の抵抗も出来ずに瞬殺されたあの化け物。
今から挑もうとしてる奴も大概にイカれてるが、あれは別格だ。まだ対策も出来やしない。
斬っても斬ってもどんどん湧いてくる雑魚を斬り崩し。
尻もちをついて自分が見下せるくらいに怯える兵士を、撫で斬りにしようとしたその時だった。
「──やめろッ!」
「!」
ナイフが弾かれたと思えば、次の瞬間何十もの矢が自分の周囲を取り囲むように突き立っていた。
魔法で象られた矢。林立した矢の中から横合いを向けば、そこには弓を構えた求めていたあの子達がいた。
「……それ以上は止すんだ。これ以上の暴走は僕が許さない」
青いシャツに簡素なプレートアーマーを来た、どこにでもいそうな青年。
そしてその背後に居る青髪ワンピースの少女と空飛ぶ赤いトカゲ。
幾度となく僕達の前に現れては邪魔をしてくる、とっても厄介なグループだ。
王都の崩壊は彼らが切欠になる。
無視したいのは山々だけど……予言に従って、コイツを倒さなければいけない。
「……グラン」
「僕の名前を知っている……? 君とは、どこかで会ったかな」
「……もう何度もね」
「すまないけど僕は君の事は記憶にないな。それに──今は君と仲良くできそうにない」
グランは既に腰の剣を真正面に構えていた。
ただそれだけで空気の質が変わる。
「ただのガキじゃねえのかぁ?」
「グラン……気をつけてくださいね」
「分かってるルリア。あの子はただの子供じゃない」
脱力し、腰の剣をだらんと下げたグランは、とんっ、とんとその場で足踏みをする。
既にグランは臨戦態勢。素人なら対峙するだけで腰を抜かすほどの圧が放たれているのが分かる。
けれど……私にとってそれは慣れっこだ。
「……ねえ、グラン。約束してもらってもいいかな」
「君と出来る約束は少ないかもだけど、聞くよ」
油断なく伺うグランに、私はこう告げた。
「……
「……なんだって?」
「……中途半端に生かそうとするとこっちが困る。これは殺し合い。手加減の余地はないと思って」
私は
グランは、それが祈りを捧げているように思えた。
彼独自のルーティーンなのだろうか?
はたから見れば何気ない行動だが、自身の勘はその何気ない行動に警鐘を鳴らしていた。
その行為を強く妨害すべきだ。
しかし何故? どうして妨害しないといけない?
その答えが出ず──つい見逃してしまう。
グランは、それが致命的なミスであることに最後まで気が付かなかった。
──そして祈りを終えてナイフを取り出した
「それじゃ、よろしくねグラン。楽しもうよ」
脱力。そして倒れ込む寸前で前傾姿勢のまま地を這い、一息でグランに猛追。そのナイフで首を
隙の無い見事なカウンターだ。ボールのように吹き飛ばされてどうにかして瓦礫の側面に着地。口内に溢れた血を吐き捨ててもう一度猛追しようとして──直後、頭部に攻撃を受けてしまう。
「ごめん。手加減はしたからさ」
(……やめろって言ったのに)
全身から力が抜ける。視界が暗くなっていく。
このまま意識を闇に預けそうになった瞬間。
僕は奥歯に仕込んでいた毒のカプセルを思い切り噛みしめた。
瞬間、全身に回る高電流。嘔吐感と頭痛。心臓が破裂しそうな程脈打ち、その後バラバラになるような痛みが全身を走る。
異変を察したグランが横たえたこちらを介抱しようとするが、もう遅い。
致死性の毒は即座に周り、僕は薄れる意識の中、悲しそうな目をするグランとルリアに冷たい視線を向け続けていた。
§ § §
「それじゃ、よろしくねグラン。楽しもうよ」
脱力。そして倒れ込む寸前で前傾姿勢のまま地を這い、一息でグランに猛追。そのナイフで首を
首筋への攻撃は囮。そう気付いたグランはすぐに距離を取れば、剣先を向けて突きの体勢に。そして一息分の余白も与えない神速の連続突き。かろうじて判断出来たのは肩と、手首と、右ひざへの狙い。その3つに関しては避けるかナイフで逸らす事は出来たが、残り2つに関しては避けれなかった。二の腕と足の甲。それが遅れて熱を持つ。
(あの一瞬で五段突きなんて、ホント馬鹿げ過ぎた才能だよ──!)
痛みに
「降参しないかい? 無意味に痛めつけたくはないんだ」
その言葉にあまりにもむかついたのて、もう一度突貫した所で先ほどと同じように後頭部に衝撃が来て、僕はまた毒カプセルを噛み締めた。
§ § §
「……」
脱力。そして倒れ込む寸前で前傾姿勢のまま地を這い、一息でグランに猛追。そのナイフで首を
首筋への攻撃は囮。そう気付いたグランはすぐに距離を取れば、剣先を向けて突きの態勢に。そして一息分の余白も与えない神速の連続突き。肩と、手首と、右ひざ、二の腕、足の甲。
感じたのは分厚いゴムだ。重さのあるそれが僕の前に立ちふさがっているような感覚。
体当たりをして、失敗に気付く。グランの体幹が
それを支えているのは稀に見る程の高密度の肉体。
こんなの効くはずもないと分からされてしまった。
蚊ほどでもないと言わんばかりに逆に胸を張られて吹き飛ばされ、直後。紫閃が舞う。一瞬で武器が真っ二つになり、更に両手と両足に深い斬りこみが入っていた。
極限まで圧縮された世界の中、おおよそ短剣とは思えぬ異形の武器を構えたグランと目が合った。
相も変わらず悲しそうな目をするいい子ちゃんぶりに吐き気がする。
僕はまた毒カプセルを噛みしめた。
§ § §
「君が何を考えているのかは知らないが、これ以上好き勝手はさせない」
腰のベルトを切り飛ばし、短剣を封じ込んだと思えば今まで感じた事のない衝撃を覚えた。
顎への攻撃。視界が揺らぎ、立つことも出来ない僕のナイフは拳で弾き飛ばされ。直後、全身を抜けるような乱舞が舞った。肋骨が砕けた。腕が折れた。左脚は関節から折られ、多分自分は糸のない操り人形のように地べたに転がる事だろう。
砕けた顎では悪態すらつけれない。
僕はまた毒カプセルを噛みしめた。
§ § §
「無駄だよ」
武器破壊に徹しようとして愚策を悟る。
グランが持つ武器は、その1つ1つが至高の……いや、天上の一品だ。
今も短剣同士かちあっただけなのに、鍔競りあいも出来ずにバターのように愛用のナイフが斬られていく。
紫電が光る、禍々しいナイフ。まるで災厄から削り出したかのようなその短剣は、軌道を逸らすことなく僕の左脚を弾き飛ばした。
僕はまた毒カプセルを噛みしめた。
§ § §
前と条件が違うのがこんなに面倒だなんて。
前はクラリスとかいう、簡単に殺せる仲間がいるから楽だったのに。
こいつは、どうしようもないお人よしだ。
だからこそ付け入る隙もあったのに、それがないとなると……地獄も地獄だ。
「――!」
華美な長剣。ひょっとすれば儀礼剣にしか見えない黄金のそれが空振るだけで颶風が巻き起こり、局所的な嵐が巻き起こされる。
こちとらただのナイフしかないし、飛ぶような斬撃なんて起こせないし、魔法もないのに。卑怯じゃないかと罵りたくなる。
嵐に見舞われ、瓦礫に捕まる僕に余裕を持って見せつけてきたのは――長弓。翠玉の美しいそれを、矢もなく引いたと思えば、魔力で象られた数十の蒼の線が自分めがけて向かってきたのが見えた。
瓦礫すら貫通する一撃のそれが、正確に掌、肩、腹部、脚など見事に急所を除いて通り抜けてゆく。
本当……嫌になる。
僕はまた毒カプセルを噛みしめた。
§ § §
「!? 待て、どこへ行くんだ!」
狙いを変えた。グラン単体を突き崩すのは一旦置いておこう。
まずはそこらで戦闘を眺めていた兵士だ。
ルリアという少女を狙えればよかったが、グランは特にルリアに固執している。
故に別の弱い奴を狙う事にした。唐突に狙われた兵士は呆けた顔でこちらを見ており、まさか殺されるなんて微塵も思っていない。首元にナイフが振るわれ、あと少しで首が飛ぶ――ところでグランの妨害が入った。
「──やめろ!」
盾代わりに侵攻を阻む長剣。
やっぱりだ。と僕はほくそ笑む。
律儀に回り込んで、見知らぬ誰かの為に身を呈している。
彼の手をつま先で蹴とばして無理矢理かちあげれば、僕のナイフの進路が出来る。
空気を裂く音。グランの頬に一筋の傷が浮かぶ。咄嗟に首を傾けたせいで直撃とはいかなかったが、都合10回目の試行でようやくひとつ傷をこさえることが出来た。
「おっと」
反撃の膝蹴り。喰らえば昏倒は免れないそれを後ろに跳びのく事で避ける。
さてはて、この路線で続けていこう。
このまま続ければきっと致命的なミスもいずれ露呈する事だろう。
再びグランではなく別の駒に狙いを定めて駆けだそうとして。
途端にすっ転んだ。
「……え?」
見れば、自分の両足に深々と突き刺さっている謎の棘。
地面が変成したものだ、と気付いた時には遅かった。
魔力光がまたたいたと思ったら、両手と腰に土の拘束具がはめられていた。
憎々しく睨みつけた先には歪な杖を構えるグランの姿がいた。
あのカリオストロという少女が従えていた龍をモチーフにしたような杖。それが淡く光をまとっているのが分かった。
「……はぁ……やり直しだ」
僕はまた毒カプセルを噛みしめた。
§ § §
──前までの戦いで、手の内は全部暴いたと思っていた。
「どうしてこんな事が出来るんだ……!」
長剣、短剣、弓、拳。杖だったかな? それを使ってたのは知ってたんだけど、展開が進めば進む程別の武器が出てくる。
例えば兵士の群れの中に飛び込んでやたらめったら殺戮して回っていた時は、途中で異質な音が奏いたと思ったら、武器は粉々に砕かれ、僕は地べたに倒れていた。琴だって? 楽器を武器にするなんて聞いたことがない! リセット。
「逃げても無駄だよ」
別のケースではまずは姿をくらませ、不意打ちする事にしてみた。何だかんだ小柄な体は身を隠す所が多い街中では有効に使える。同じように弱い奴から狙ってそこから隙を見出そうとしたけど、途中、銃声が響いたと思ったら、肩と足を打ち抜かれていた。家屋の中に居た自分を壁越しに打ち抜く千里眼には舌を巻いてしまう。リセット。
「君は危険だ。反省して欲しい」
先端に突起のついた禍々しい槍。それを手足のように操るグランに、腕を強かに打ち据えられ武器を弾き飛ばされればこれまた急所を裂けて腹を突き刺してくる。
リーチが異常過ぎるし、防御なんてする時間もない。リセット。
「君とも仲良くしたかった」
優美な曲線を描く紅と黑の斧を思い切り大地に叩きつけたかと思えば、地面が冗談のようにカチ割れて、僕の足場ごと吹き飛ばされてしまう。そして次の瞬間自分の眼前に差し迫る斧が、防御したナイフをかち割って僕を弾き飛ばした。真っ二つにならず、体の至るところが折れてるだけで済んでるのは相変わらず手加減してるせいか。むかつく。リセット。
「これ以上悪事を重ねちゃいけない」
納刀のポーズのまま微動だにしないグランの背後から攻撃をしてみたら次の瞬間グランは消えて。僕の両手と両足が切り刻まれていた。抜刀術、って言う奴だっけ。斬られてからようやくその攻撃を視認出来た。でたらめすぎる攻撃をして尚涼しい顔をするグランに苦々しい顔をするしかない。リセット。
――人間武器庫か何かじゃないかな。本当に。
都合10個の武器を所持しておいてどの練度も達人、いや超人クラスまで引き上げているのだから手に負えない。武器は街売りのそれとは違う、至高の一品……いや、神器と言える程性能の高い物なのが分かった。
迂闊に鍔競り合いも出来やしないし、一度でも攻撃が当たったらそれでアウトだ。
けどそれ以上に……何よりむかつくのは奴の甘ちゃんぶりだ。
執拗にこちらの命を取ろうとしないため、都度自殺する必要がある。つまり、僕はまだグランの本気に辿りついていないのだ。
流石に矜持が傷付く。こちとら命のやり取りをする気満々なのに、まだ勝負の土俵に立ててないと言われてる気がしてならない。
それが不利を招くとしても知ったことか。
もう何百回と殺り合ったのだからそろそろ見せてくれたっていいだろう?
でもどうにかして奴の本気を取り出すためには、工夫が必要だった。
例えば──グラン以外の誰かを傷つけるとかね。
「あ、か……ァ……」
「ビィ!」「ビィさん!?」
「あ、相棒ぅ……あ、ぎぃっ!」
とりあえず──うろちょろと飛び回るトカゲを狙う事にした。
予備ナイフを兵士に投げつけてグランに守らせて隙を作り、ビィを袈裟斬りにしてやった。
狼狽するグランに見せつけるようにその首を飛ばしてやれば、グランの目が見開いた。
やれやれ、ようやく本気を見せてくれたようだ。そう思った次の瞬間、僕の横で圧力が増した。
「よくも……ッ!」
――忘れていた。
7つの化け物を内包する彼女が、その尋常ではない破壊の切っ先を向け、僕は跡形もなく消滅してしまった。
§ § §
武器破壊――失敗。
不意打ち――失敗。
人質――失敗。
死んだふり――失敗。
懐柔――失敗。
逃亡――失敗。
うんざりするくらいの死を重ねて、ようやく方向性が固まった。
楽な道なんて無い。小細工は抜きに正攻法で行くしかない。
正面からぶつかって、単純な技量でこの化け物を殺す。
万の針の穴を通すような可能性を連ね、重ね、そして辿り着くしかない。
これは僕の命をベットして、グランを死に導くゲームだ。
ゲームの勝利条件はただ1つ、グランを殺す事だけ。
ベット出来るコインは無限。
無限に続くゲームの中、たった1回だけグランを殺せればいい。簡単な話だ。
「……なぜ笑っているんだい?」
十の死を重ねてかすり傷1つ。
百の死を重ねて軽傷1つ。
千の死を重ねて重傷1つ。
「だって楽しいから。徐々にキミが攻略出来てると実感出来るから」
死んで、死んで、死んで、死んで、死んで、死んで。
加えて死んで。尚死んで。殊更死んで。絶えず死んで。変らず死ぬ。
でも僕の死の1つ1つがグランの死というゴールに向かっている。
「すごい――キミは強いね。もう手加減なんてしてる余裕はなさそうだ」
キミは一人かもしれないが、僕は無限にいる。
無限の僕が前より確実に強くなってキミに立ちふさがる。
ようやくグランから本気を出させることに成功をさせても、僕がやることは何も変わらない。
はるか先にあるゴールめがけ、一歩一歩を積み重ねる。
ただそれだけだ。
何回死んだって僕の心は折れない。
折れてあげない。
――試行すること3002回目。
初めてグランに致命傷を与えられた。
両腕を肩から吹き飛ばされ、口元に咥えたナイフで首筋を一突き。
しかし同時に、僕の腹部にも刀が深々と突き刺さっていた。
「がっ……!」
「……え、へへ。へ……!」
とうとう手が届いた。
やった。ようやくグランを殺せた。辿り着いたんだ。
瞬間、僕はその言い知れぬ高揚感と全能感に絶頂していた。
満足した僕はそのまま意識を沈ませた。
――試行すること4111回目。
何とか死にかけ程度でグランを殺すことに初めて成功する。
背中に矢傷を受け、全身は血まみれ。片目も潰れたが、代わりにグランの首をすっ飛ばした。
「……ふぅーッ、ふぅーっ……!」
喋るのも億劫だったけど、それ以上に高揚感が身を包んでいた。
ようやく同士討ちじゃなくてこの化け物を殺せた。
じゃあ次は、そこの小娘とトカゲを――え?
気付けば僕はトカゲに押し倒され、喉元を噛みちぎられていた。
熱い血潮が顔と全身を濡らす。
「よくも、よくもオイラの相棒をォッ!」
(そんな事ってある……?)
半狂乱になったトカゲに執拗に攻撃され、僕は息絶えた。
――試行すること4523回目。
ようやくグランの殺害方法をパターン化することができてきた。
受ける傷も減って、半死半生じゃなく成ってきたのは幸いだ。
「グランっ、グラン──!」
ルリアという小娘が暴走するケースはわかっている。
ビィが死ぬと彼女は怒り狂う。
その怒りは自分に対して撒き散らされる。
しかしグランが死ぬと、彼女は怒りを通り越して不安定になる。
余程彼そのものに信頼を預けているんだろう。
まさか愛しのグランが死ぬと思っていなくて、またそれが信じられないようだ。
「相棒っ……相棒ぅぅ……ッ、なんでだよぉっ、オイラを置いていくなよぉ…っ!」
飛びかかってきたトカゲを弾き飛ばせば、障害はクリア。
これでようやく予言が達成出来る。
王都は他ならぬルリアの暴走で滅び、消える。
でもそれとは別に、僕は不満を覚えていた。
僕の左腕がぶらぶらと、今にも千切れそうになっている。
それだ。それがどうしても……満足いかない。
「オイラは……オイラはお前のことを絶対に許さないからな! 絶対に、絶対にお前の事を殺してや……え?」
恨み節を零すトカゲを前に、僕はナイフを自分の胸にあてがい……そして突き刺した。
慣れ親しんだ命が途切れて行く感覚。
こっちを見るトカゲの滑稽な表情といったらもう、笑えて仕方がない。
「お、前……な、なんなんだよぉ……ッ!」
(だってどうせ勝つなら……完璧に勝ちたいじゃん)
だから僕は、もう一度ベットする。
§ § §
──そして祈りを終えてナイフを取り出した僕は、グランと同じように構え始める。
「……」
けど、僕は直前でそれを辞めた。
怪訝そうにこちらを伺うグラン達。
「なんだぁ? 怖気づいたのかよぉ?」
「いや……なんかここまで長かったなって思って」
「……?」
分かる筈がないか……でもやっぱり寂しいな。
あれだけ死線を繰り広げて尚理解してくれないなんて。
数多の死を繰り返して、僕は不思議とグラン達に友情を感じていた。
キミの一手が愛おしい。キミの一足が狂おしい。研究され考えられた技の極致。無限とも思える引き出し。一手違えば即詰みになる、果てしなく続く闇夜に影を探すような攻防。それは僕にとって至福の時間だった。その証拠は僕の体には残されていないけど、心にははっきりと残っている。痛みと苦しみの残滓が、どうしようもなく僕に伝えてくれている。
だからだろうか……僕は無性に感謝をいいたくなった。
「4695回」
グランを指して。
「508回」
ルリアを指して。
「2回」
ビィを指して。
「……?」
「なんだぁ? 何が言いてぇんだアイツ」
「ありがとう。グラン。僕はこれ以上なく満ち足りた。だからこれが最後だと思うと……本当に寂しいよ」
「……ッ」
「それじゃあ……ラストワルツだ。最期まで一緒に楽しもうよ。グラン」
なおグラン君の武器編成はこうなっております。
剣:七星剣
短剣:バハムートダガー・フツルス
槍:グラーシーザー
斧:ソル・レムナント
杖:ウロボロス
銃:ジョン・ドゥ
格闘:ノーフェイス
弓:ヘラクレス
楽器:絶対否定の竪琴
刀:無銘兼重
これらの武器についてはにっちさんぎょう様(@BxOTmz9QCylUur4)に相談して決定させていただきました!
にっちさんぎょう様、改めてありがとうございます!