本作『バトルスピリッツ
……とは言え、プロットも何もなく、思い付きで書き始めた作品ですので、あまり過度な期待はせず、暇潰し程度に読んで頂けたら嬉しいな、程度の気持ちでお送り致します。
タグにも追加しましたが、作者はバトスピについては全くの初心者です。
一応アニメは、少年激覇ダンから現在放送中のダブルドライブまで目を通してはいますが、ルールや裁定について、認識の間違っている部分があるかもしれません。もし、何かおかしな所を見付けられましたら、お手数ですがご報告頂けると助かります。
また、カードの内容やバトルの描写などは、連載を続けながら固めていこうと考えています。なので、最初の内は、回によって表現にばらつきがあると思いますが、目を瞑って頂けると助かります。
ちなみに、今回のバトルでは、下のような方式で表現しています。
[カードの説明]
・Lv2スピリットの例
カード名
コスト(軽減シンボルコスト)/系統/種別/シンボル
<コア数> Lv1BP <コア数>Lv2 BP
[バトル中の各種表現]
ターン(ターン数):ターンプレイヤー
手札:手札の枚数
ライフ:ライフ残数
リザーブ:リザーブのコア数
トラッシュ:トラッシュのコア数
スピリット/ネクサス/ブレイヴ/アルティメット:
カード名 <コア数>レベル
変化前→変化後
【非ターンプレイヤー】
上でも書きましたが、これは仮決めなので、次回以降表現が変わるかもです。極力、分かりやすい表現を心掛けますが、既にバトスピssを書かれている方、あるいはバトスピプレイヤーの方で、もっとこうした方が良いと言う方がいらっしゃいましたら、アドバイス頂けると嬉しいです。
長くなってしまいましたが、前置きはこれくらいにして本文に進みたいと思います。
本作は少年激覇ダンやブレイヴのような異世界物ですが、序盤の何回かは主人公達の住む世界が舞台となります。
ここである程度、主人公や主要キャラの人となりを描ければと思っています。
それでは、ここまで飽きずにお付き合い頂きました方々、大変お待たせ致しました!
私、GGGが描くバトスピssをどうぞお楽しみください。
序章Ⅰ いつもの日常
バトルスピリッツ――。
6色の属性からなる様々なカードを用いて戦うこのトレーディングカードゲームは、発表されるや瞬時に世界に広がり、今や只のカードゲームの枠を越えた一大ムーブメントとなった。
子供達は勿論、大人達も熱狂し、各国でプロリーグ、そして世界大会も開催されている。
特に、発祥の地とされるここ日本の人気とLvは高く、アマチュアの中にも即プロで通用する逸材も少なくない。
この物語の主人公も、そんな逸材の一人である。
『ピンポーンッ』
朝の陽射しが照らす住宅地の一角で、呼鈴がなった。時を同じくして、中ではドタドタと慌ただしい物音が響く。
「ヤバイヤバイ、遅刻だぁ~!!」
騒がしく家中を駆け回る少年。彼こそ、この物語の主人公、『
黒みを帯びた赤髪が特徴の彼だが、今は寝起きであることを物語るように乱れていた。
「えっと、靴下靴下……って、これ穴空いてる!?あぁ~もう!」
「紅葉~!何してんの!?『シオン』ちゃん、待ってるんだよ!?」
「分かってるって!もう、何でもっと早く起こしてくれなかったんだよ、母さん!」
「何度も起こしたのに後5分を連呼してたのアンタでしょ!」
ほぼ毎朝繰り広げられる
「ちょっと、紅葉!お弁当忘れてる!」
「ヤベッ……って投げんなよ!?」
投げ渡された包みを受け止めると、乱暴に鞄に詰め込み、少年は改めて踵を返す。
「じゃ、行ってくる!」
「ハイよ。いってらっしゃい!」
気っ風の良い声に背中を押され、少年は外へ駆け出していった。
「悪い、シオン!遅くなった!」
外に出た俺は、家の前に立つ良く知った顔を見つけ、目の前で手を合わせた。
「おはよう、コウくん。」
怒ることもなく、朗らかな笑顔で迎えてくれたのは、俺の幼馴染み、『
家が近所で幼稚園の頃から現在まで家族ぐるみの付き合いをしている。こうして毎朝俺を迎えに来てくれるのも、最早当たり前の事だった。
「フフッ、今日もドタバタだったんだね。ネクタイも髪の毛もグチャグチャだよ?」
そう言うなり、シオンは俺の首許に手を伸ばし、ネクタイを整えてくれる。これもほぼ毎朝の事で、近所のおばちゃん連中に見付かると問答無用でからかわれるから恥ずかしいが……悪くない。うん。
「よし、ネクタイOK。次は……」
慣れた手付きで直ぐ様ネクタイを御手本のような形に整えると、今度は髪を整えるべく、爪先立ちになって手を伸ばしてきた。否応なしに目の前にシオンの顔が来る。
長い睫毛に大きな目をした整った顔立ち。10人が見たら満場一致で可愛いと称するだろう。
撫でるととても柔らかく触り心地が良い紫がかった銀髪も、中学に上がってから伸ばし始め、今では肩よりも長くなっている。昔からの『可愛い』という評価が、最近では『綺麗』へと変わってきたのも、髪型によるところが大きいのかもしれない。
頭の両側で髪を結っているのは変わらないが、それが可愛さと綺麗さを同居させていた。
こんな容姿だから、当然男子連中からの人気は凄い。しかも、性格も穏やかで優しいから同性からも好かれてるしな。
……斯く言う俺自身にとっても、シオンは特別な存在だ。
見てくれが良いからって理由じゃないぞ?……まあ、全く違うとも言い切れないかもだけど。
こいつは、俺が辛い時、いつも一緒にいてくれた。母さんと同じ……いや、それ以上に俺を支えてくれたんだ。
そんな存在を、特別な目で見るようになっちまうのは、当たり前だろ?
「……はい、髪もOK。格好良くなったよっ」
うおっ!?
「……コウくん?どうしたの?」
「な、何でもない!ほら学校行こうぜ、遅刻する!」
「あ、待ってよ、コウく~ん!」
俺は動揺を隠すように歩き出す。
全く、人の顔覗き込みながら変なこと言うなよ。……シオンの欠点を挙げるとすれば、何の気なしに人前で今みたいな事を口走る事だな。
良く勘違いされるが、俺達の関係は幼馴染み以上ではない。
そりゃあ、今より上の関係性を想像したことはある。……けど、実際にその関係になるべく一歩踏み出す事は出来なかった。
所謂、今の関係を壊したくないっていうヘタレた考え。だけど、今まで普通にあったものが無くなるかもしれない事に恐怖を感じるのはおかしなことじゃないだろ?
だから、俺は現状を維持している。
いつか踏み出す時が来る。その時を待てばいい。……なんて甘い考えを抱きながら。
「あ~……何で土曜日なのに学校行かなきゃいけないんだろうな」
鞄を肩に担ぎ、気だるそうに呟くと、隣に並んだシオンが苦笑いしながら答えた。
「しょうがないよ。決まりなんだから」
「でもなぁ~、ちょっと前までは土日休みは当たり前だったろ?何で今になって……」
「近年の日本の学力低下に歯止めをかけるためだ!ってニュースでは言ってるよね。あと、お父さんが言うには、バトスピブームが学力低下の原因って考えてる偉い人もいるみたいだよ?」
「世知辛いねぇ~」
バトスピばっかりやってバカが増えたってか?そんな事言ってたら、世界を舞台に戦ってる日本人バトラーに失礼だぜ。
……バトスピバカの一人である俺が言っても、お前が言うな!って言われそうだけど。
「でもほら、毎週ってわけじゃないし、半日だけだから頑張ろうよっ」
「……そうだな」
前に回り込んで胸の前で両手を握りながらいうシオンの笑顔に頷く。……ほんと、癒し系だよな。
朝の出迎えだけに留まらず、こんな風にいつも励ましてくれるシオンに、俺は頭が上がらなかった。
……もっとも、最近では別の理由も影響してたりするんだけど。
「……ところで、コウくん、さ。朝ご飯、まだだよね?」
考え事をしていた俺に、シオンは遠慮がちに訊ねてくる。
当然、慌ただしく家を出た俺に、優雅な朝食の時間などありはしなかった。
「いつも通りな。……もしかして」
俺は期待に満ちた目でシオンを見る。
朝飯を食べずに出てくることの多い俺に、シオンは朝飯まで作ってくれているのだ。たまに……いや、ごく稀に時間通りに出られることもあるので、毎日ではないが、最近は作ってきてくれる日が多い。
それが今日も賜れるのかと目で訴えると、シオンは恥ずかしそうに顔を赤らめながら頷いた。
「うん……。すぐ食べられるようにっておにぎりを……あ、期待しないでね?」
簡単なやつだから、などと言いますがねシオンさんや。期待せずにはいられませんよ。
あまり料理には自信が無いというシオンだが、俺に言わせれば十分美味い。何というか、家庭の味って感じなんだよな……。
「いつもすまないねぇ」
「それは言わない約束だよ?」
「「……ぷっ」」
幼馴染みならではの息のあった掛け合いに、どちらからともなく笑いが込み上げた。
笑い合った後、シオンは鞄の中から彼女らしい可愛い包みを取り出すと、俺に差し出す。
俺は礼を言いながらそれを受け取ろう手を伸ばし――ん?
「せんぱ~い!!」
「グヘッ!?」
「コウくん!?」
手を伸ばしかけた俺は、近付いてくる足音に気付いてそちらを振り向こうとしたのだが……それよりも一瞬早く、脇腹に衝撃を感じ、悶絶した。
驚きながらも心配そうに声をかけてくれたシオンの視線は、俺の脇腹に移動すると、ピタッと止まる。
倣うように俺も目を向けようとするが……いや、見なくても既に正体は分かってるんですけどね。
脇腹から感じるのは、女の子特有の柔らかさと良い匂い。こんな往来の真ん中で堂々とこんなことをしてくる
「ま、マキナちゃん……」
「むふぅ。おはようございます、クロノせんぱい☆」
うん、おはよう。でも抱き着く、もとい飛び付くのはやめようね?恥ずかしいし痛いから。いやマジで。
キラッと輝くようなウィンクと共に挨拶してきたこの娘は、『
同じ学校の一年下の後輩で、小柄な身体と亜麻色のセミロングヘアーが眩しい学校のアイドル(級友談)。
何故そんな娘と知り合いかと言うと……正直あまり思い出したくない記憶が関係している。所謂黒歴史って奴だ。だから、これ以上語るまい。
今大事なのは、マキナちゃんもシオンと同じかそれ以上可愛いと評判で、俺のことを慕ってくれているってこと。
ほら、今も大きな目を細め、人懐っこい猫のように俺にすり寄って……ってやめなさい!俺も年頃の男の子だから!可愛い女の子にそんなことされると色々マズイことになっちゃうから!
「……コウくん?」
「ハッ!?」
背筋が凍るような殺気を感じ、ゆっくり首を巡らすと、そこには笑顔のまま異様なオーラを纏うシオンの姿があった。
「し、シオン、さん?」
「何かな、コウくん?」
「え、えっと……怒ってらっしゃいます?」
「そんなことないよ。ただ……」
「いつまでそうしてるつもりなのかな?って思っただけ」
ヒィ!?
笑顔なのに、全く目が笑ってない。怖すぎる!
これが最近、新たに見付けたシオンに頭の上がらない理由。シオンは怒ると、絶対零度の微笑みを浮かべながら静かな口調で詰問してくるんだ。
今までシオンの本気で怒った姿なんて見たことなかったけど、初めて目の当たりにしてからというもの、すっかりトラウマものになってしまった。
そして……この笑顔を主に見せる時の一つが、こうしてマキナちゃんがじゃれついて来た時だったりする。というか、マキナちゃんいい加減離れて!
こんなプレッシャーの中で良く続けられると感心する気持ちもあったが、それよりも早く離れて欲しい気持ちの方が強く、懇願するような眼差しを向ける。
するとシオンも、視線をマキナちゃんに移した。
「マキナちゃんも、いい加減に離れたらどうかな?」
「あ、紫桜先輩もいたんですね。おはようございます」
シオンの冷たい声に、マキナちゃんは俺に対するものとは明らかに違う淡々とした口調で応えた。
っていうか、そんな火に油を注ぐような態度はダメ!ほらシオンの顔、笑ってるのに目許がヒクヒクいってるじゃん!
「……最初からいたんだけど、私ってそんなに存在感ないかな?」
「すみませーん。クロノせんぱいのことしか見えてませんでしたー」
サラッとそんなことを言っちゃうマキナちゃん。ちょっと嬉しかったり……嘘ですシオンさん。心を読んで睨まないで下さい。
「ま、マキナちゃん、今日はどうしたの?」
「あ、そうでした~」
一転して満面の笑みになったマキナちゃんは、やっと俺から離れてくれた。……だが、俺に安堵の息を吐く暇はなかった。
マキナちゃんはバトスピのマスコット的存在であるスピリット、ペンタンのぬいぐるみを幾つも着けた鞄の中から小さな包みを取り出す。……ちょっと待って。
「……マキナちゃん、それってもしかして」
「はいっ。クロノせんぱいの為に、朝ごはんを作ってきたんですっ」
やっぱりかー!
マキナちゃんも俺が朝ギリギリに出ることを知っていて、時々差し入れしてくれる時があった。
その時は不思議とシオンとは被らなかったのだが、来るべき日が来てしまったらしい。
そんなことを考えていたら、マキナちゃんは取り出した包みを解いていた。
中から出てきたのは、小さなタッパー。透明なフタから覗くのは……サンドイッチだった。
「これなら歩きながらでも食べられますよね?どうぞっ」
「あ、ありがとう、マキナちゃん。でも……」
シオンからおにぎり貰ってるんだ……なんて、目の前の輝くような笑顔を見たら言えるわけない!例え、横から刺すようなプレッシャーに曝されようとも。
「どうかしました?味なら大丈夫ですよっ。朝早く起きて手間暇かけて作りましたから」
うん、知ってる。
マキナちゃんは、ギャルっぽい見た目とは裏腹に、料理が出来るのだ。しかも美味い。
だけどね、今心配してるのはそういうことじゃないんだよ。
「……あっ!もしかして食べさせて欲しいってことですか?ごめんなさい、気付かなくて……ちょっと待ってくださいね!」
「えっ!?いや……」
「歩きながら食べるなんてダメだよ?お行儀悪いし、落としたら勿体無いよね?」
予想の斜め上を行く結論に達したマキナちゃんにしどろもどろになる俺の代わりに、シオンが口を挟んだ。
確かに行ってることは正しいんだけど……シオンさん、俺が歩きながら買い食いしても笑ってたあなたはどこへ行っちゃったんでしょうか?
シオンの一言に、タッパーを開けようとしていたマキナちゃんの手が止まった。
マキナちゃんはその格好のまま顔を上げる。……その顔はシオンと同様、恐い笑顔を浮かべていた。
「そんなお堅いこと言わなくて良いじゃないですかー。朝ごはん食べられないなんて、クロノせんぱいが可哀想ですー」
「心配要らないよ。コウくんの朝ご飯はわ・た・しが作ってきたから。学校で授業が始まる前に食べられれば問題ないよね?」
「えー学校に食べ物持ち込むのもルール違反じゃないんですかー?」
「今日はお弁当の日だから大丈夫だよね?」
「早弁もいけないことだと思いまーす。ね?クロノせんぱい」
「そ、そうだ――「コウくん?」――いや、その……」
相対して言葉の応酬に火花を散らしていた二人の注意が俺へと向けられた。いやこれどうしろっての?
こっちを立てればそっちが立たない。というか、二人とも俺のためにしてくれているんだ。なら、取るべき答えは一つしかない。
「じ、実は今日は一段と腹減っててさ。良かったら二人の弁当、両方とも貰って良いか、な?」
頼む!これで収めてくれ!
祈るような想いで二人の顔を交互に見る。すると……
「もう……コウくん」
「相変わらずですね、クロノせんぱい」
シオンもマキナちゃんも、呆れたような顔をしながらも、顔を見合せ、本来の笑顔を浮かべてくれた。
「ごめんね、マキナちゃん。意地悪なこと言って……」
「こっちこそです、紫桜先輩。ごめんなさい……」
謝り合う二人。会えばバトルになることが多いけど、仲が悪いって訳ではない。仲良く話をしている時だって多いんだ。
……そんな二人が何故バトルになるのか、女の子は分からないな。
「二人とも、そろそろ学校行こうぜ。マキナちゃんのは、着いたら有り難く頂くよ」
「はいっ。……ホントは、すぐに感想聞きたかったんですけど、自業自得ですね」
アハハと笑うマキナちゃんだけど、その顔は本当に残念そうだった。
可愛い後輩にそんな顔をさせたくない。俺はサンドイッチをしまうと、マキナちゃんにある提案をする。
「マキナちゃん、昼飯はどうするつもりなんだ?」
「え?お弁当を持ってきてるので、学校で食べようかと……」
「なら丁度良いな。俺達も昼は弁当だから、一緒に食わないか?その時に、朝飯の感想も言うってことで」
俺の提案に、マキナちゃんは驚いた顔になった。……そんなに変なこと言ったか?
今日の授業は昼前には終わり、学校で飯を食うか家に帰ってか食うかは各人の自由だ。学年が違っても一緒することに問題はない。
「……良いんですか?」
「勿論。な、シオン?」
不安げに訊ねてきたマキナちゃんを安心させようと、ハッキリ頷く。シオンにも目を向けると、笑顔で同意してくれた。
「うん。一緒に食べよう、マキナちゃん」
「紫桜先輩……はいっ!」
笑顔に戻ったマキナちゃん。良かった。
さぁ、気を取り直して学校へ……
「じゃあ、早く学校行きましょ、せ~んぱい♪」
「はい?」
マキナちゃんは楽しそうに言いながら、何と俺の手に腕を絡めてきた……っていやいやいや!マキナちゃん何やってんの!?咄嗟のこと過ぎて、間の抜けた声が出ちゃったよ!
しかし、そんな俺のことなど意に介さず、マキナちゃんはグイグイと腕を引っ張りながら前を行こうとする。
やめてマキナちゃん!そんなに動かないで!動く度に柔らかいものが触れて、俺のライフがガンガン減っていく!しかも、マキナちゃん華奢なのに意外と……ハッ!?
背中に再びの殺気を感じ、壊れた人形のような不自然な動きで振り向くと、そこには笑顔さえも消し、完全に不機嫌な顔となったシオンの姿があった。
「コウくん……な に し て る の か な ?」
ヒッ!?だから恐いって!そもそも俺に落ち度無くないか!?
そんな心の叫びが届いたのか、シオンは矛先をマキナちゃんに向けてくれた。いや、それもマズイんだけどさ。
「マキナちゃん、何でコウくんと腕組んでるのかな?」
「え~、良いじゃないですかぁ。マキナとせんぱいの仲なんですしー。ね、せ~んぱい?」
「あ、いや、その……」
「コウくん!」
「クロノせんぱい。マキナの腕、振りほどいたりしないですよね?」
不機嫌なシオンと潤んだ瞳で上目遣いに見つめてくるマキナちゃん。いや、どうしろってのこの状況。
なんて迷っていたのがミスだったと、俺は次の瞬間後悔することになる。
離れる気の無いマキナちゃんに業を煮やしたシオンは、何ともう一方の俺の腕に抱き着いてきた!
「し、しししシオンさん!?」
「紫桜先輩、何してるんですか!?」
「ま、マキナちゃんが離れないから、私もコウくんにくっ付く事にしたの!これなら問題ないでしょ!?」
あるわ!寧ろ問題しかない。
両手に花と言えば聞こえは良いが、そんな生易しいものじゃない。またしても火花を散らす視線に挟まれるのだから、火傷ものだ。
「むむ……やりますね、紫桜先輩」
「……私だってやる時はやるよ。負けないもんっ」
「それは私だって同じですっ」
何だか良く分からないやり取りの後、二人は腕の力を強くした。だからやめてって!
特にシオン!明らかにマキナちゃんのより強調されてて、大きさ丸分かりだから!……マキナちゃんも身動ぎしないで、色々とマズイ!
理性というライフが残り1になりながらも何とか踏み留まる俺。
正直誰かに誉めて貰いたい。だって、学校でトップクラスの女子二人に挟まれて理性を保ってられるんだから。
でも……それもそろそろ……限界……
「見付けたぞ、黒野紅葉!」
「「「!!!」」」
とても話し掛けられる状況に無い俺達に向かって放たれた怒鳴り声に、シオンとマキナちゃんも動きが止まった。話しかけてくれた人、マジでありがとう!
聞き覚えがあったから知り合いには違いない。俺は二人の腕から脱出しつつ、救世主の顔を一目見ようと目を向ける。
だが、今日俺はとことん神様に嫌われているらしい。目の前にいたのは、正直今はあまり会いたくない人物だった。
「げっ、あおい!」
そこにいたのはまたも知り合いの女子で、名前は『
思わず嫌そうな口調になってしまった俺は慌てて口を噤むも、既に後の祭り。あおいは口調に違わぬ恐い顔となって突っ掛かってきた。
「げってなんだよ!ヤキいれるぞコラ!」
ヤキって……おいおい益々ヤンキー具合に拍車かかってるぜ、あおいよ。
このあおいも、大人しければ綺麗系のルックスなのだが、ご覧の通りのヤンキー姐さんなのだ。その実力たるや、この近辺のレディースを束ねる程で、男でも勝てる奴は限られる。
背はスラッと高く、顔も整っているが、吊り目気味でしかもガンくれている為、鋭さばかりが強調されている。
俺達とは違う制服は着崩れ、リボンをせずに大きく開いた胸元からは、明らかに両隣の二人より大きいと分かるモノが覗いている。
スカートも所謂スケバンとは異なり、長い足が覗くばかりか少し屈めば見えそうな程短く、目のやり場に困る。……命が惜しいから見ないが。
唯一まともに見れる女らしさと言ったら、腰まであるペールブルーの長髪をポニーテールに結わえている事くらいだろう。出会った頃は、髪を下ろし、手入れもあまりしていないようだっただけに雲泥の差だ。
そんなことを考えてすぐ応えなかったのが更に感情を逆撫でしたようで、あおいはまた噛み付かんと口を開きかけるが、それより先に両隣の女子二人が話しかけてしまった。
「嵐谷さん」
「
「誰が嵐子だ、泣かすぞコラァ!」
二人の……と言うよりマキナちゃんの一言に、あおいは激昂した。……マキナちゃん、誰彼構わず火に油注ぐのやめようね?
嵐子というのは、あおいに対する不良達が付けたアダ名だ。由来は単純、名字の嵐谷と女子を足しただけ。
他にも乱暴と掛けてたりするらしいが、ようは男勝りな性格と腕っぷしを面白く思わない奴等が、あおいって女らしい名前に当て付けただけだ。
当然、あおいはこのアダ名を快く思っておらず、目の前で使おうものなら、男なら半殺しだろう。
マキナちゃんの場合、悪気はなく、可愛いからという理由で呼んでいるらしく、それを聞いたあおいは怒りこそすれ、殴るような真似はしなかった。
現に今も、マキナちゃんを睨み付けるだけで、手を出そうとはしていない。……十分恐いんスけどね。
「ったく……。朝っぱらから女二人も同伴で登校なんて良いご身分じゃないか!」
「おい、人聞きの悪いこと言うなよ!」
マキナちゃんへの怒りまで俺に向けるのやめてくれませんかねー。
そんな俺の思いなど届くわけもなく、あおいの責めは更に続いた。
「事実だろ?さっすが、『黄昏の暴君』様は凄いね~」
「おいぃぃぃ!?」
それはマジでやめて!黒歴史が蘇ってくるからぁぁぁ!!
口と心の両方で俺は絶叫した。
……そうです。少し前までの俺は、ちょっとやんちゃしていました☆あおいと出会ったのは、そんな黒歴史の時代。
初対面の時に色々揉めて、お互い痛い目を見たんだけど、いつの間にか意気投合した。当時の一匹狼だった俺に合わせて、あおいも自分の仕切るグループを下のに任せて、二人でツルんでたっけ。
で、その時に付いたのが、さっきの通り名なんだが……どこをどう回ったのか、厄介な事にバトスピにおける今の俺の二つ名にもなってしまった。
お陰で忘れたい気持ちとは裏腹に、大会等では実況が大声で叫び、今や全国にまで飛び火している……。
「良いじゃん、別に。そんなに悪くないし」
「そうですよ、クロノせんぱいっ」
「私も格好良いと思うよ、コウくん」
そんなフォローいらねぇ……。
「……で、何しに来たんだよ、あおい。人の古傷抉りに来たって訳じゃねぇだろ?」
そうだったら、マジ久しぶりに
だが幸い?にもあおいの用件はからかいでは無かったらしく、思い出すやまた表情を険しくした。
「そうだった!紅葉!今からあたしと決闘しな!」
「はぁ!?」
まさかの
「って、バトスピ?」
拍子抜けする俺に対し、あおいは更にヒートアップして捲し立てる。
「そうだよ!あたしと闘るって約束、忘れたとは言わせないからな!」
「いや、忘れちゃいないけどお前……」
「嵐子先輩、それ今回の大会が始まった時に言ってましたけど、先輩と戦う前に負けちゃったじゃないですか」
「うぐっ」
痛いところを突かれたあおいは、押し黙ってしまった。
マキナちゃんの言う通り、今月からこの街のバトスピ大会が開催され、ここにいる4人全員がエントリーしていた。
俺達の住むこの街は、バトスピ発祥の国である日本の中でも特に人気・レベル共に高く、施設も充実している事から全国大会の舞台にもなっている。
だから、一都市の大会でも、全国ネットでテレビ中継されるほど注目度が高かった。
ちなみに、シオンもマキナちゃんもあおいも、中々優秀な成績を残している。シオンはベスト4、マキナちゃんはベスト8、そしてあおいは、バトスピ歴約一年にも関わらずベスト16に食い込んだのだから大したもんだ。
あと突っ込みが遅くなったけどマキナちゃん?いい加減に火に油注ぐのやめようね?そろそろ先輩も怒るよ?
「惜しかったよね、嵐谷さん」
「仕方無いですよ。何たって相手があの『女王』様だったんですから」
「う、うるさい!あの時あんたと戦えてればあたしが勝ってた!だから、その決着を今ここで着けてやる!バトルだ!」
「いや、無理」
「ハァァァ!?」
即答した俺に、あおいは転倒しそうな勢いで詰め寄ってきた。
「なんでだよ!?バトラーのくせに売られたバトルから逃げんの!?」
「いやバトルは良いけどよ……俺達これから学校だから」
「……コウくん、そろそろ急がないとマズイかも」
「ていうか、嵐子先輩も学校あるんじゃないですか?」
俺達3人の指摘に、あおいは完全に固まってしまった。どうやらバトルの事以外忘れていたらしい。
次第に赤くなるあおいの顔を見ると、何だか気の毒に思ってしまった。
「良いぜ。そのバトル受ける」
「コウくん!?」
「せんぱい!?」
俺の宣言に女子三人の視線が一気に集まった。シオンとマキナちゃんの目からは「学校は?」という問いが感じられる。勿論、忘れていませんよと。
「ただし放課後な?今日は半日で授業終わるし。そうだな……2時に前紹介したショップでどうだ?」
俺の答えに、シオンとマキナちゃんも胸を撫で下ろした様子だった。問題はあおいの方だけど……
「本当か!?」
「お、おう。バトルの申し出とあれば、買うのが礼儀だからな」
「そうか……そうかそうか!」
食い気味に確認してきたと思ったら、嬉しそうな顔になるあおい。普段の強面とのギャップから、不覚にも可愛いと思ってしまったり……。というか、バトルが決まってそんなに喜ぶなんて、そんなにバトルしたかったのか?
「2時だな?逃げるなよ、紅葉!」
「……何だか嬉しそうですね、嵐子先輩」
「なっ!?べ、別に嬉しくねーよ!お前も勘違いすんなよ!?」
何をだよ?
そんな心の中の突っ込みなど知る由もないあおいは、俺達に背を向けると一目散に走り去っていった。
「……何なんだよあいつは」
「コウくん……」
「……せんぱい、いつか刺されますよ?」
何故?誰に?恐いこと言わないで欲しいんだけど。
二人の思うこととは検討違いな考えをしていた事が伝わったのか、シオンとマキナちゃんは同時に溜め息を吐いた。……やっぱり仲良いよね、君達。
「ホント、クロノせんぱいは罪作りですね~」
「いやいや、流石に法に触れることはしてない……と思うよ?」
「そういうことじゃなくてですね……。というか、今の間と疑問系なのが気になるですけど?」
「……あ!コウくん、マキナちゃん!そろそろ行かないとホントに遅刻しちゃうよ!?」
「え?…………やべぇ!」
シオンが差し出してきたスマホの時刻表示を見ると、予鈴まで10分程しかなかった。歩いていては、絶対に間に合わない!
「二人とも急ぐぞ!」
「え?」
「あっ!」
俺は返事を待たず、腕を組んだままだった二人の手を掴むと、引っ張るように走り出した。いきなりだったが、二人ともちゃんと付いてきている。
だがこの時、二人の手がとても熱くなっていたことに、俺は気付かなかった。
時は流れて放課後――
「クロノせんぱい、ホントに嵐子先輩とバトルするんですか?」
俺とシオンは約束通りマキナちゃんと合流すると、屋上で弁当を食べていた。お喋りしながらの昼食も佳境に入った頃、不意にマキナちゃんが朝の事を思い出す。
あ、ちなみにあの後、俺達はギリギリ遅刻せずに登校できた。ただし、朝飯を食う時間はなくて、一限目は地獄だったけど。
休み時間にやっと、シオンのおにぎりとマキナちゃんのサンドイッチにありつく事が出来た。二人共とても美味かったです、はい。
「そのつもりだけど何で?」
「だって、クロノせんぱいは明日の決勝戦を控えてるじゃないですか」
マキナちゃんの言う決勝戦とは、あおいとの話しでも出た都市大会の事である。
そう、実は俺は決勝まで勝ち残っていたのでした。
「色々調整だってしなきゃなのに、わざわざ人目につく所でバトルしなくても……」
「あ~その点は大丈夫じゃないかな?あおいと闘る時は今のデッキを使うし。それに秘密にしたところで、ある程度こっちの手は読まれてるだろうしね」
「そうだね。コウくんだってある程度出方を知ってるし、情報よりも駆け引きが重要になるんじゃないかな?はい、コウくんお茶」
「サンキュー」
シオンに貰ったお茶を飲みながら、俺は明日の対戦相手の事を思い浮かべる。
この街で、いや全国的に見ても最強と言って良いバトラーだ。一つのミスが敗北に繋がる。
だから、手の内が分かっていても、慣れていないカードに手を出すのは危険と俺は判断していた。
……でも、ぶっつけ本番ってのもリスク高いから、な。
そう思った俺は、食事を終えたタイミングでシオンとマキナちゃんにあることを切り出す。
「シオン、マキナちゃん。あおいとのバトルが終わったら、少し時間を貰えないかな?明日のバトルを想定してデッキが回るかチェックしたいんだ」
いきなりのお願いだったが、二人は二つ返事で頷いてくれた。
「喜んで協力しますよ、せんぱい!」
「私も。コウくんならそう言うかなって思って、実はもうデッキも組んでるんだ」
「ええっ!?」
「流石だな、シオン。じゃあ、マキナちゃんの準備が出来るまで頼むわ」
「任せなさいっ。……ふふっ」
「うう~(先を越された……。やっぱり紫桜先輩手強い!)」
得意気に胸を張るシオンの横で、マキナちゃんは何やら唸っていた。
もしかして、デッキを組んでこなかった事を気にしてるのかな?いきなりお願いした俺が悪いんだから、気にしなくて良いのに。
「……こうなったら、応援で挽回します!クロノせんぱい、今日も明日も絶対勝ってくださいね!」
「?おうっ」
「……そろそろ時間だし、行こうか?」
シオンのスマホを見ると、約束の時間まで30分といったところだった。今からなら、ゆっくり歩いても余裕で間に合うだろう。
「そうだな。待たせるとまたうるさいだろうし」
「もう、そんなこと言っちゃダメだよ?」
「女の子を待たせる男は嫌われますよ、せんぱい」
おおぅ。思いの外注意されてしまった。
シオンにもマキナちゃんにも嫌われるのは嫌だからな。俺は素直に謝ると、笑って許してくれた二人を伴って、あおいとの闘いの場へと向かうのだった。
「遅いっ!!」
俺達がショップに着くと、既に店の前に立っていたあおいから開口一番放たれた言葉がそれだった。
っていやいや、まだ2時10分前だからね?
「俺達が遅いんじゃなく、お前が早すぎんだよ。何時から待ってたんだ?」
「う、うるさい!女を待たせた時点で、男の方が悪いんだよ!」
「何だその理不尽は……(つかこういう時ばっかり女振るなよ。ゴリラも逃げ出すくらい凶暴なくせに――)」
「あぁん!?あんた今、失礼なこと考えなかった!?」
「べべべべ別にぃ!?」
いきなり心の内を言い当てられたものだから、吃ってしまった。
こいつ、勘良すぎだろ。マジで恐ぇわ。
とにかく、中に入った方が良いな。あおいの大声の所為で往来の人達の視線が刺さりまくってる。
俺は店に入るべくあおいを宥めようとするが、それよりも早く店のドアが開いた。
「お、誰かと思えば、やっぱり紅葉くんじゃないか!」
「店長!」
中から出てきたのはこのショップの店長だった。
歳は中年真っ盛りで、長身に丸メガネに髭面と、知らない人が見れば怪しさ満点な容姿だが、とてもおおらかで気の良い人だ。
頭に着けた『BS』のロゴが入った赤いバンダナの通り、バトスピを専門に扱っており、協会から公式認定も受けている。品数も多く、十分な広さのフリーバトルスペースも完備と、まさにバトラー御用達のショップであった。
まあ、ぶっちゃけ、バトスピが盛んなこの街では珍しくは無いんだけど、店長の人柄に惚れた部分もあって、俺はここをホームにしている。
「紫桜ちゃんにマキナちゃんも!」
「こんにちわ、店長さん」
「こんにちわでーすっ」
「こんにちわ。皆揃って来てくれるなんて嬉しいよ。……もしかして、明日の紅葉くんのバトルに備えて、何が探しに来たのかい?」
「残念ながら今日来たのは買い物じゃないんだ。ちょっとこいつとバトルすることになってさ」
申し訳なく思いながら、あおいを指す。店長は気にしてないと言わんばかりの表情で指の先を追うと、あおいを見るや納得したような顔になった。
「そうか!あおいちゃんはやっぱり、紅葉くんを待ってたんだね」
「て、店長っ!」
「あ?やっぱりって?」
店長に向かってシーッと指を口の前に立てるあおいを遮りながら訊ねると、店長はしげしげと語り出した。
「いや~30分くらい前に、店の前にいるあおいちゃんがいるのに気付いたら、中に入るよう勧めたんだけど、待ち合わせだって言うからね。おそらく相手は紅葉くんかなと思っていたらズバリだったよ」
「あ、うう……」
店長の言葉に、後ろであおいが項垂れる気配を感じた。
30分前って……お前どんだけバトル楽しみにしてたんだよ。
「店長の言う通り、中で待ってりゃ良かったじゃねぇか。中でも俺達が来たら分かるだろ?」
「そ、それは……うう」
振り返り様に問い掛けると、あおいはこいつには珍しく言い淀みながら俺と店内へ視線を往復させた。
……ははぁん、なるほど。何となく、中に入らなかった理由が分かったぜ。
「お前、子供に囲まれるのが嫌だったんだろ?」
「ぐっ」
ズバリ図星を突かれたようで、あおいは言葉に詰まった。
そう、こいつは子供が苦手なんだ。嫌いって訳では無いらしいが、あおいは4人兄妹の末っ子で上3人は皆男らしい。
そんな家庭環境も影響してこんな男勝りな性格になったらしいが、末っ子故に自分より下の子供に対する接し方が分からないと言っていた。
ショップに来る客は、当然ながら子供の割合が多い。そして、今大会でベスト16に入ったあおいは、強いカードバトラーを目指す子供達からすれば憧れの的であり、目の当たりにすれば、一気に集まってくることは想像に難くなかった。
ったく、いつもは根性座ってるくせに。こういう時だけ弱々しいところを見せるんだよな。……しゃーねぇ。
「ほら、行くぞ。一人じゃなくて4人で入れば少しはマシだろ?」
自意識過剰だが、決勝まで勝ち残ってる俺の方にも子供達が寄ってくるだろうしな。それに、シオンとマキナちゃんもいる。一人頭の囲まれる数は、少なくなるはずだ。
俺の言いたいことを理解したあおいは、安堵の表情になった。そして俺に近寄ると小さく、「ありがとな」と呟く。……ったく、ホント感謝しろよ?
「後は、『バトルシステム』に入っちまえば良いんだからな。……店長、システムの方、使わせてもらっても良いかな?」
『バトルシステム』とは、認定ショップや大会会場に設置された、バーチャルシミュレーターのことだ。
これを使うと、バトラーは
ただその分人気は凄まじく、ショップには1台しか無いため、順番待ちが常であった。
ダメ元で聞いてみると、店長は顎髭を擦って思案した後、頷いた。
「多分大丈夫だと思うよ。並んではいるけど、紅葉くんがバトルするってなれば、皆順番を譲ってくれると思うし」
「そっか。なら、一戦だけ使わせてもらうぜ」
申し訳無い気持ちはあるが、これも強者の特権という事で甘えさせてもらおう。
「じゃあ、早速行こうぜ」
俺は女子三人を促すと、店長に続いて店内に入った。途端、熱気と喧騒が押し寄せてくる。
フリースペースでバトルする者、
店内にいる全員が、バトスピに熱くなっていた。
そんな中、近くにいた小学校低学年くらいの男の子が、俺の方へ目を向け、目があった。すると……
「コウヨウだ!」
その一言に、ショップ内の全員が反応した。皆、直前まで夢中になっていた手を止め、俺の姿を認めるや、一斉に駆け寄ってくる。
「コウヨウ!」
「よう。やってるな、お前等」
「あったり前だろ!」
瞬く間に俺を囲むチビッ子達。元気が良くて何よりだ。呼び捨てなのは大目に見てやろう。
目を向けると、シオン達もチビッ子に囲まれていた。
「シオンお姉ちゃん!」
「マキナちゃんもいる!」
「あおい姉ちゃん、久しぶり~!」
「ふふっ。みんな、こんにちわ」
「やっほー。元気いっぱいだね~っ」
「よ、よう。って、ストップストップ!少し落ち着けってお前等!」
押し寄せるチビッ子達に翻弄されるあおいに対し、シオンとマキナちゃんは明るい笑顔で応じていた。
やっぱりあの二人は子供からも大人気だな。俺よりもいっぱい集まっている。……寂しくなんか無いよ?
あと君達、何で3人は呼び捨てじゃないのかな?
「今日は何しに来たの、コウヨウ?」
「もしかしてバトル?」
「まあな」
俺が答えると、子供達は一段と盛り上がった。
「やった、コウヨウのバトルだ!」
「ねえ、相手は誰?」
「シオンお姉ちゃん?それともマキナちゃん?」
「あいつだよ」
俺の指差した先の、子供に揉みくちゃにされて早くも疲労困憊のあおいを見て、子供達はまたも騒ぎ出した。
「あおい姉ちゃんか!」
「スッゲー熱いバトルになりそう」
「フッ、期待以上のものを見せてやるよ。……で、相談なんだけど、バトルシステム使わせてくれないか?」
俺は店の奥に設置された装置を見ながら訊ねた。
バトルシステムの装置は、外見は普通のゲームセンターにもあるような筐体だが、その裏ではとても大きな機械が稼働している。バーチャルリアリティーを実現するのが、どれだけ大掛かりか良く分かるな。
俺の問いに、子供達の一部が視線をある場所に集中させる。そこにいたのは、小学校低学年の女の子二人組だった。
どうやら、次はこの子達の順番らしい。見るからにバトスピを初めて間もないといった感じだ。
そんな子達から順番を横取りするような真似は、正直気が引ける。……だが、そんな俺の心中とは裏腹に女の子達は仲良く頷くと、俺に笑いかけてきた。
「……譲ってくれるのか?」
近寄りながら訊ねると、女の子二人は同時に頷いた。そして、俺から見て左側の女の子が、もう一方の子の背中を押すように俺の前に立たせる。
「この子ね、クロノお兄ちゃんのファンなの!」
「俺の?」
聞くと、前に出た女の子は恥ずかしがりながら頷いた。
「……わたし、最初はバトル怖かったの。でも、クロノお兄ちゃんのバトルを見て、恐いって気持ちよりカッコいいって気持ちの方が強くなったのっ」
「それ以来、クロノお兄ちゃんと同じ色のデッキ使ってるんだよね~?」
「うんっ!」
友達に言われ、元気良く頷く女の子。……正直、滅茶苦茶嬉しい。「お兄ちゃん」って敬称を付けてくれることを抜きにしても。
俺のバトルをここまで称してくれる子の為にも、下手なバトルは出来ない。俺は、自分の中で闘志が燃え上がるのを感じていた。
「……ありがとな。なら、遠慮なく使わせて貰うよ。そして、絶対勝つ!」
「うんっ!」
「頑張って!」
「おう!」
女の子二人の頭を撫でると、俺は後ろを振り返った。……シオンとマキナちゃんが、何か言いたげに見えたけど気のせいだよな?
俺はあおいに視線を向けると、あおいも既に復活しており、挑戦的な眼差しで応えてきた。
「準備は万端……って顔だな」
「あんたも、凄い闘る気になってるね」
「おう。……一発、派手なの見せてやろうぜ!」
「ああ!」
あおいは勢い良く頷くと、俺と共にバトルシステムの前に立った。
そして、目の前のデッキリーダーに互いのデッキを置くと、再び頷き合い、バトルスピリッツにおける開戦の合図を口にした。
「「ゲートオープン!」」
『界放ー!!』
最後はその場の全員の唱和となった言葉がトリガーとなり、俺とあおいの身体は光に包まれた。あまりの眩しさに、目を閉じずにはいられない。
そして、光が収まり目を開いた時、目の前にあるのは筐体ではなく、円形の広大なフィールドであった。
これこそが、バトルシステムが生み出した闘いの舞台。フィールド内に何もないのは、これから現れるスピリット達にとっては邪魔にしかならないからだ。
俺は一歩進み出ると、目の前に座すテーブル状のボードに目を落とす。
ボードには、既にデッキとライフ、最初の持ちコア4個がスタンバイされている。バトル中、コアステップでは自動的にボイドからコアが置かれ、リザーブからトラッシュへの移動も自動で行われる。
これも、バトルシステムの特徴だった。
『コウくん!』
『頑張って下さい、クロノせんぱい!』
システムを通して、外のシオンとマキナちゃんの声援が聞こえた。
バトルの様子は店内のモニターで観戦出来る他、少人数なら筐体を通して応援することも出来た。勿論、手札やデッキは写し出されないなど、不正行為やアドバイスへの対策は取られている。
「おう!サンキュー!」
応援してくれる二人に応えると、俺は対戦相手のあおいに向き直った。
あおいは気合い十分な様子で、胸の前で掌に拳を打ち付けている。喧嘩じゃねぇっての。
「先攻は譲るぜ。来いよ、あおい!」
「随分余裕じゃないさ。じゃ、今回はお言葉に甘えさせてもらうよ!」
あおいの声を合図に、俺達は初期手札4枚を引き、あおいの先攻でゲームが始まった。
「あたしのターン!スタートステップ!」
ターン1:あおい
スタートステップに合わせ、あおいのボードが光る。ターンが自分に回ったことの合図だ。
「1ターン目はコアステップもリフレッシュステップも無いからね。ドローステップ!そしてメインステップに行くよ!」
手札4→5
「先ずは≪豹人ベルセルカス≫を召喚!」
手札:5→4
リザーブ:4→2
トラッシュ:1
スピリット:
豹人ベルセルカス <1>Lv1
豹人ベルセルカス
1(青1)/獣頭/スピリット/青
<1>Lv1 2000 <3>Lv2 4000 <6>Lv3 6000
あおいがボード上にカードを置くと、円形のフィールドに見るからに気性の争うな獣人が現れた。何度見ても、その姿や動きは本物と見紛うリアルさがある。
「まだ終わらないよ!あたしは更にネクサス、≪鉄壁なる巨人城塞≫を配置!」
手札:4→3
リザーブ:2→0
トラッシュ:1→3
ネクサス:
鉄壁なる巨人城塞 <0>Lv1
鉄壁なる巨人城塞
3(青2)/ネクサス/青
<0>Lv1 <1>Lv2
Lv1・Lv2
自分のネクサスが破壊されたとき、このネクサスを疲労させることで、
破壊された青のネクサス1つを疲労状態でフィールドに残す。
Lv2
系統:「闘神」を持つ自分のスピリットすべてに
“【粉砕】『このスピリットのアタック時』
相手のデッキを上から、このスピリットのLvと同じ枚数破棄する”を与える。
ネクサスの配置より、あおいのフィールドに古代ローマを思わせる城が現れる。
ベルセルカスに鉄壁なる巨人城塞、いずれも青のカード。あおいの奴、やはりいつもの青デッキで来るみたいだな。
「先攻は最初のターン、攻撃できないからね。あたしはこれでターンエンド!」
スピリットにネクサスと、次のターンへの布石としては十分すぎる。こいつは、気を抜けないな。
「俺のターン!スタートステップ!」
ターン2:紅葉
「コアステップ、ドローステップ」
リザーブ:4→5
手札:4→5
「メインステップ!≪ピストジャサウルス≫をLv1で召喚!」
手札:5→4
リザーブ:5→4
スピリット:
ピストジャサウルス <1>Lv1
ピストジャサウルス
0(0)/地竜・溶魚/スピリット/赤
<1>Lv1 1000 <3>Lv2 3000 <4>Lv3 4000
俺が呼び出したのは甲冑魚を思わせる溶岩を纏ったスピリット。コスト0の為、序盤の展開にはもってこいのカードだ。
「更にネクサス、≪黄昏の暗黒銀河≫を配置!」
手札:4→3
リザーブ:4→0
トラッシュ:0→4
ネクサス:
黄昏の暗黒銀河 <0>Lv1
黄昏の暗黒銀河
5(赤2緑1)/ネクサス/赤緑
<0>Lv1 <2>Lv2
Lv1・Lv2『自分のアタックステップ』
系統:「地竜」を持つ自分のスピリットすべてをBP+3000する。
Lv2『自分のエンドステップ』
系統:「地竜」を持つ自分のスピリット3体を回復させる。
あおいに倣うように俺もネクサスを配置すると、頭上におどろおどろしい赤い星の渦が現れる。
こいつは二色のシンボルを持ち、展開を大いに助けてくれる。効果も優秀で、俺の戦術には無くてはならないカードだ。……同時に、俺のトラウマを抉るカードでもあるんだが。
「地竜に黄昏の暗黒銀河……やっぱりいつもの地竜デッキか。あんたらしいね、『黄昏の暴君』さん?」
「だからやめろって、それ!」
見ろ、やっぱり弄ってきやがった。
そう、こいつは俺の黒歴史を象徴する通り名の由来となったカードの一つなのだ。でもだからと言って抜くという選択肢を取りたくはない。
何ともジレンマに溢れるカードになっちまったな……。
「ったく……気を取り直して行くぜ!アタックステップ!黄昏の暗黒銀河の効果により、系統:「地竜」を持つスピリットのBPを+3000だ!」
ピストジャサウルス BP1000→4000
これでBPはLv3相当。このまま攻める!
「ピストジャサウルスでアタックだ!」
「チッ、ライフで受けるよ!」
あおいはブロックせず、ダメージを選択した。
ピストジャサウルスは口から炎を吐きかける。すると、あおいの前に青色のバリアーのようなものが展開され、炎を受けて砕け散った。
これがバトルシステムにおける、ライフで受ける時の演出である。
【あおい】
ライフ:5→4
リザーブ:0→1
「くっ!?……相変わらず、ゲームとはいえバカに出来ないね」
ライフが砕けた瞬間、あおいは僅かに顔を顰めた。
そう、ライフダメージは、衝撃となってプレイヤーを襲う。……と言っても、怪我をするようなものじゃなく、強い風に吹かれるような感じだ。
そうでもなきゃ、子供達には危なくてしょうがないしな。
「ターンエンドだ」
「あんたらしく攻めてきたね……。なら、あたしもガンガン行くよ!スタートステップ!」
ターン3:あおい
「コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ!」
手札:3→4
トラッシュ:3→0
リザーブ:1→2→5
「メインステップ!鉄壁なる巨人城塞をLv2にアップ!」
リザーブ:5→4
ネクサス:
鉄壁なる巨人城塞 <0>Lv1→<1>Lv2
「まだまだ行くよ!≪光の闘士ランダル≫を2体、Lv1で召喚!」
手札:4→2
リザーブ:4→0
トラッシュ:0→2
スピリット:
豹人ベルセルカス <1>Lv1
光の闘士ランダル <1>Lv1
光の闘士ランダル <1>Lv1
光の闘士ランダル
3(青2)/闘神/スピリット/青
<1>Lv1 4000 <3>Lv2 6000
Lv1・Lv2【強化】
自分の「相手へのデッキ破棄効果」の枚数を+1枚する。
あおいが新たに召喚したのは、青く筋骨隆々の肉体を持った闘神スピリット。ちなみに、とあるXレアスピリットのリメイクでもある。
「並べてきたか……」
この状況、血の気の多いあおいなら……
「アタックステップ!あんたの懐はがら空き!一気に殴り込むよ!」
やっぱりフルアタックか!
「鉄壁なる巨人城塞Lv2の効果で2体のランダルは【粉砕】を発揮!相手のデッキを1体につき1枚破棄するよ!更にランダルの【
おまけに青得意のデッキ破壊。……厄介だな。
「ライフで受けるぜ!」
俺に向かって拳を繰り出すあおいに続き、ベルセルカスとランダルが猛然と突っ込んでくる。
そして、三者とも自慢の剛腕を振り翳し、展開された俺のライフを叩き割った。
「ぐあっ……!」
【紅葉】
ライフ:5→2
リザーブ:0→3
『コウくん!』
『クロノせんぱい!』
思わず仰け反った俺に、外の二人から心配そうな声が届く。
「……大丈夫だ、二人とも!寧ろ燃えてきたぜ!」
ライフを削られることはピンチでありチャンスでもある。砕かれたライフは、反撃の火種となるからな。
だが、そんなルール的なこと抜きに、追い詰められるこのプレッシャーに俺は熱くなった。
「借りは返させて貰ったよ!三倍返しでね!」
「だが良いのか?今度はお前の防御ががら空きだぜ?」
「そう思うんなら、攻め込んできな!ターンエンド!」
挑発を返してきやがった。おもしれぇ、お望み通り攻め込んでやる!
「俺のターン!スタートステップ!」
ターン4:紅葉
「コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ!」
手札:3→4
トラッシュ:4→0
リザーブ:3→4→8
「メインステップ!≪ダーク・ディノニクソー≫を2体召喚!」
手札:4→2
リザーブ:8→6
スピリット:
ピストジャサウルス <1>Lv1
ダーク・ディノニクソー <1>Lv1
ダーク・ディノニクソー <1>Lv1
ダーク・ディノニクソー
2(赤2)/地竜/スピリット/赤
<1>Lv1 2000 <2>Lv2 4000 <4>Lv3 6000
Lv2・Lv3
このスピリットは緑のスピリットとしても扱う。
呼び出したのは、黒い身体の小さな恐竜。腹部と背中に名前の由来である丸鋸状の突起を備えるが、円らな瞳が可愛い俺のお気に入りスピリットだ。
「今日も頼むぜお前等!」
俺の声に、振り返り様に飛び跳ね、可愛らしい応えを飼えず2頭の小竜。俺は頷き返すと、更なるカードを切る。
「更に、≪プテラスラッシャー≫を召喚!」
手札:2→1
リザーブ:6→2
トラッシュ:0→2
スピリット:
ピストジャサウルス <1>Lv1
ダーク・ディノニクソー <1>Lv1
ダーク・ディノニクソー <1>Lv1
プテラスラッシャー <2>Lv1
プテラスラッシャー
4(赤2)/地竜/スピリット/赤
<1>Lv1 3000 <3>Lv2 5000
Lv1・Lv2『このスピリットのアタック時』
このスピリットをBP+3000する。
【連鎖:条件《緑シンボル》】
(自分の緑シンボルがあるとき、下の効果を続けて発揮する)
《緑》:ボイドからコア1個をこのスピリットに置く。
ダーク・ディノニクソーに続いて繰り出したのは、鶏冠と翼に刃を備えたプテラノドン。
アタック時に自身をパワーアップさせ、条件次第ではコアも増やせる為、使い勝手が良い。そして、次が最後の仕上げ!
「黄昏の暗黒銀河をLv2にアップだ!」
リザーブ:2→0
ネクサス:
黄昏の暗黒銀河 <0>Lv1→<2>Lv2
これで攻撃準備完了。
あおいのライフは残り4。一気に決めるぜ!
「アタックステップ!黄昏の暗黒銀河の効果で、俺のスピリット全てにBP+3000!」
ピストジャサウルス BP1000→4000
ダーク・ディノニクソー BP2000→5000
ダーク・ディノニクソー BP2000→5000
プテラスラッシャー BP3000→6000
「先ずはお前だ!行け、プテラスラッシャー!」
俺のアタック宣言に、プテラスラッシャーはあおい目掛けて滑空した。
「アタック時効果で更にBP+3000!更に俺のフィールドに緑シンボルがあるので【
プテラスラッシャー <2>Lv1→<3>Lv2 BP6000→9000→11000
「ライフで受ける!……くっ!」
プテラスラッシャーはそのままぶち当たり、あおいのライフを砕いた。
【あおい】
ライフ:4→3
リザーブ:0→1
「次だ!ダーク・ディノニクソー2体でアタック!」
疲労により着地してへたり込むプテラスラッシャーの横から、2体の小黒竜が走り出す。
これで残りライフは1。次のピストジャサウルスのアタックで終わりだ。
「させないよ!フラッシュタイミング!マジック、≪マーキュリーゴブレット≫!」
「何ッ!?」
あれは、相手の最もコストの低いスピリットを破壊するカード!
軽減とリザーブだけではコアが足りないが、あおいは、鉄壁なる巨人城塞をLv1にダウンさせることで確保していた。
マーキュリーゴブレット
5(青3)/マジック
フラッシュ:
相手のフィールドで最もコストが低いスピリット1体を破壊する。
【あおい】
手札:2→1
リザーブ:1→0
ネクサス:
鉄壁なる巨人城塞 <1>Lv2→<0>Lv1
トラッシュ:2→4
「あんたのスピリットで一番コストの低いのはコスト0のピストジャサウルス!激流に沈みな!」
マーキュリーゴブレットから逆巻く水流が放たれ、ピストジャサウルスは為す術なく飲み込まれた。
リザーブ:0→1
「くっ!……だが、ダーク・ディノニクソーのアタックは止まらない!ライフ2つ貰うぞ!」
2体のダーク・ディノニクソーは同時に飛び上がると、腹と背の刃を唸らせ、あおいのライフを砕いた。
【あおい】
ライフ:3→1
リザーブ:0→2
「うああっ!?」
「攻めきれなかったか……。だが、まだ終わりじゃねぇ!エンドステップ!黄昏の暗黒銀河のLv2効果!疲労状態の地竜を3体まで回復させる!」
頭上の赤い銀河が瞬くと、息を切らせていた俺のスピリット達は再び立ち上がる。
フルアタックしても次のターンのブロッカーを確保できる非常に強力な効果だ。
「チッ、相変わらず厄介な効果だね!」
「攻めるだけの単調なバトルじゃ、
「言うじゃないさ。……でも、あたしの拳はそんな守りじゃ止められないよ!」
「おもしれぇ……。なら次のお前のターン、俺は必ず守り切る!かかってこい、あおい!」
「行くよ!あたしのターン!スタートステップ!」
ターン5:あおい
「コアステップ!ドローステップ!……来たっ」
リザーブ:2→3
手札:1→2
ドローした途端、あおいの顔色が変わった。……こいつは、とてつもない大波が来るな。
「リフレッシュステップ!メインステップ!……コアも十分ある。このターンで決めるよ!」
トラッシュ:4→0
リザーブ:3→7
「立ちはだかる奴全て、その拳で打ち砕きな!≪英雄巨人タイタス≫!Lv2で召喚!!」
あおいはこのターンにドローしたカードをボードに叩き付けた。
すると、フィールドに天から光が射し込み、その中を赤い巨大な影が降りてくる。
その正体こそ、青属性のXレア、英雄巨人タイタス!光の闘士ランダルのリメイク元にして、あおいのデッキのキースピリットであった。
手札:2→1
リザーブ:7→0
スピリット:
豹人ベルセルカス <1>Lv1→<0>Lv0
光の闘士ランダル <1>Lv1
光の闘士ランダル <1>Lv1
英雄巨人タイタス <4>Lv2
トラッシュ:0→4
英雄巨人タイタス
8(青4)/闘神・勇傑/スピリット/青
<1>Lv1 6000 <4>Lv2 9000
Lv1・Lv2『このスピリットの召喚時』
相手のデッキを上から10枚破棄する。
Lv2『このスピリットのアタック時』
BPを比べ相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のデッキを上から10枚破棄する。
「不足コスト確保の為、豹人ベルセルカスは破壊される。だけど、こいつは召喚するのにそれだけの価値がある!英雄巨人タイタスの召喚時効果!相手のデッキを上から10枚破棄する!更に2チャージ追加で、破棄枚数を+2!合計12枚破棄するよ!」
タイタスは仁王立ちの姿勢から即座に構えを採り、ランダルの力で強化された拳を繰り出す。その風圧にも晒され、俺のデッキが12枚も破壊された。
「くっ、青お得意のデッキ破壊か。だが俺のデッキはまだ半分以上あるぜ!」
「勿論、こんなもんじゃ終わらないよ!アタックステップ!英雄巨人タイタス、殴り込みな!」
タイタスは、今度はボクサーのような構えで突っ込んでくる。
俺のライフは残り2つ。余り余裕は無いが、タイタスのLv2効果も貰うのはキツイ。……ここは、
「ライフで受ける!」
「フッ、そう来ると思ったよ!タイタス、ライフを叩き割りな!」
「ぐっ!?」
【紅葉】
ライフ:2→1
リザーブ:1→2
あおいの拳の動きに連動し、タイタスの巨腕が俺のライフを粉砕する。そのプレッシャーは、衝撃をより強く錯覚させた。流石はXレアのアタックだぜ……。
だがここまでだ!あおいの残りアタッカーは2体に対し、俺には3体のブロッカーがいる。例え手札にマーキュリーゴブレットがもう一枚あっても守り切れ――
「残りライフ1つ!このまま取らせてもらうよ!ランダルでアタック!」
「何だと!?」
攻めてくる!?ブロックされると分かってて何故……!まさか!
「そう!あたしの切り札はタイタスだけじゃないのさ!フラッシュタイミング!マジック、≪
「しまっ――」
言い終わる前に、あおいの最後の
だが、蒼の衝撃はそれで収まらず、更に俺のデッキをランダルの【強化】分も含めた8枚破壊する。
油断した……。まさかそんなカードを隠していたとは。
……そうか。前のターンで使わなかったのは、わざとライフを多く打たせて、コアを貯める為だったんだな。
手札:1→0
蒼激ブレイズ
4(青2)/マジック
フラッシュ:
コスト4以下の相手のスピリット/アルティメット2体を破壊する。
この効果で破壊したスピリットのコスト1につき、相手のデッキを上から1枚破棄する。
【紅葉】
リザーブ:2→6
「不足コスト確保の為、タイタスはLv1にダウン。……これであんたに残されたブロッカーは1体になった!あたしにはアタック中のランダルを含めてアタッカーが2体!このバトル貰ったよ!」
スピリット:
光の闘士ランダル <1>Lv1
光の闘士ランダル <1>Lv1
英雄巨人タイタス <4>Lv2→<2>Lv1
トラッシュ:4→6
『コウくんっ!!』
「ダーク・ディノニクソー!ブロックだ!」
シオンの不安に満ちた声とほぼ同時に俺も叫んだ。ダーク・ディノニクソーは頷いて応え、ランダルを迎え撃つべく走り出す。
ダーク・ディノニクソーBP2000に対し、ランダルは4000。どう足掻いても勝ち目の無い戦いであった。
『や、やばいですよ!一体目のランダルをブロック出来ても、これでクロノせんぱいにはブロッカーがいなくなっちゃいます!そこにもう一体のランダルのアタックを受けたら……』
「そう、あたしの勝ちさ!」
マキナちゃんが言わなかった部分を、勝利を確信したあおいが代弁した。
フィールドでは、ランダルと激突したダーク・ディノニクソーがいとも簡単にはね飛ばされる。倒れるダーク・ディノニクソーにランダルが拳を振りかぶりながら迫った。
間合いに入った瞬間、ダーク・ディノニクソーは叩き潰される、そう誰もが思っただろう。……だが、
「まだ終わらねぇ!フラッシュタイミング!マジック、≪ファイアーウォール≫!」
「なっ!?」
ここでマジックが来るとは夢にも思わなかったのか、あおいは驚きの表情となった。
そんな彼女の前で、やられる寸前であったダーク・ディノニクソーの身体が炎に包まれる。
炎は瞬く間に勢いを増し、巨大な炎の壁となって、ランダルを押し返した。
「このマジックは、自分の赤のスピリット1体を破壊することで、このバトルが終了した時、アタックステップを終了させる!ランダルとダーク・ディノニクソーのバトルは、ダーク・ディノニクソーの消滅によって終了。よってあおい、お前のアタックステップは終了だ!」
【紅葉】
手札:1→0
リザーブ:6→4→5
トラッシュ:2→4
ファイアーウォール
4(赤2白1)/マジック
フラッシュ:
自分の赤のスピリット1体を破壊することで、このバトルが終了したとき、アタックステップを終了する。
この効果は、『相手のアタックステップ』でしか使えない。
「まさか……そんな捨て身の方法で切り抜けるなんて……。くっ、あたしはこれでターンエンド!」
そう。これは死中に活を見出だす捨て身の策。
大切な
そんなカードを使う以上、俺はスピリット達にあることを誓っている。
お前達の犠牲を無駄にしないため、絶対に勝つと!
「ダーク・ディノニクソー。お前が繋いでくれたこのターンで、必ず決着を着ける!俺のターン!スタートステップ!」
ターン6:紅葉
俺の手札は0。この引きに全てを懸ける!
「コアステップ!ドローステップ!」
こいつは……!一か八かだが、こいつに賭けてみるしか無いな。
リザーブ:5→6
手札:0→1
「リフレッシュステップ!メインステップ!」
トラッシュ:4→0
リザーブ:6→10
「来い、闇の赤きソードブレイヴ!≪暗黒の魔剣ダーク・ブレード≫、召喚!」
赤い稲妻と共に現れたのは、炎を模したように湾曲した剣。俺のフィールドに刺さり、禍々しい雰囲気を放っている。
リザーブ:10→4
トラッシュ:0→5
ブレイヴ:
暗黒の魔剣ダーク・ブレード <1>Lv1
暗黒の魔剣ダーク・ブレード
6(赤3)/剣刃/ブレイヴ/赤
<1>Lv1 5000 <0>合体+5000
Lv1『このブレイヴの召喚時』
相手のネクサス1つを破壊する。この効果でネクサスを破壊したとき、自分はデッキから1枚ドローする。
合体条件:コスト5以上
【合体時】『このスピリットのアタック時』
相手のスピリット1体を指定してアタックできる。
「暗黒の魔剣ダーク・ブレードの召喚時効果!鉄壁なる巨人城塞を破壊する!」
「くっ!」
ダーク・ブレードから放たれた炎が、城塞を跡形もなく焼き払った。だが、ダーク・ブレードの効果はまだ終わりじゃない。
「更にこの効果でネクサスを破壊した時、俺はデッキから1枚ドローする!」
この引きに全てがかかっている。……頼む、来てくれ!
手札:0→1
祈る思いで引いたカードを確認する。
そこに描かれたスピリットを見た瞬間、俺は勝利を確信した。
「来てくれたかっ!待ってろ、今呼び出してやる!黄昏の暗黒銀河をLv1にダウン!」
ネクサス:
黄昏の暗黒銀河 <2>Lv2→<0>Lv1
リザーブ:4→6
「……ネクサスのレベルを下げた?」
怪訝な顔をするあおいの前で、俺は準備を整える。
さぁ、出番だぜ!
「来い、俺のキースピリット!闇に君臨する、漆黒の絶対王者!その力で全ての敵を薙ぎ倒せ!」
「召喚!≪闇龍ダーク・ティラノザウラー≫!!」
俺は魂を込めてカードを繰り出した。
すると、フィールドが大きく割れ、砂礫を巻き上げながら黒き巨体が姿を現す。剣のような背鰭を持つ雄々しきその姿は、闇の暴君に相応しい偉容であった。
手札:1→0
リザーブ:6→0
トラッシュ:5→9
スピリット:
闇龍ダーク・ティラノザウラー <2>Lv1
闇龍ダーク・ティラノザウラー
6(赤3)/地竜/スピリット/赤
<1>Lv1 5000 <3>Lv2 7000 <4>Lv3 10000
Lv1・Lv2・Lv3『このスピリットのアタック時』
このスピリットのBP以下の相手のスピリット1体を破壊する。
【連鎖:条件《緑シンボル》】
(自分の緑シンボルがあるとき、下の効果を続けて発揮する)
《緑》:BPを比べ相手のスピリットだけを破壊したとき、相手のライフのコア1個を相手のリザーブに置く。
Lv2・Lv3『自分のアタックステップ』
系統:「地竜」を持つ自分のスピリットすべてをBP+3000する。
「ダーク・ティラノザウラー!?このタイミングで!?」
フィールドで吼えるダーク・ティラノザウラーに、あおいは心底驚いている様子だ。
無理もない。ライフ1、手札もスピリットも尽きた状況からXレアが出てきたんだからな。
……ちなみに、こいつも黄昏の暗黒銀河同様、俺の通り名の由来となったカードだったりする。
「まだ驚くのは早いぜ!俺は暗黒の魔剣ダーク・ブレードを、闇龍ダーク・ティラノザウラーに
ダーク・ティラノザウラーはフィールドに刺さるダーク・ブレードを器用にも尻尾で抜き、そのまま装備した。
合体したことでBP+5000、そしてダーク・ブレードのコアが加わり、ダーク・ティラノザウラーはLv2にアップする。
スピリット:
闇龍ダーク・ティラノザウラー【合体:暗黒の魔剣ダーク・ブレード】
<2>Lv1→<3>Lv2 BP5000→7000→12000
「BP12000!?」
「これで必勝の手札は揃った。見せてやるぜ、俺の地竜デッキの真髄を!アタックステップ!黄昏の暗黒銀河の効果で、ダーク・ティラノザウラーのBPは+3000!そして、ダーク・ティラノザウラーLv2の効果で、更に+3000だ!」
スピリット:
闇龍ダーク・ティラノザウラー【合体:暗黒の魔剣ダーク・ブレード】
BP12000→15000→18000
6000ものパワーアップを果たしたダーク・ティラノザウラーは、ダーク・ブレードを掲げながら咆哮した。
これが地竜の強さ。自身を、仲間をパワーアップさせ、破格の攻撃力で敵を蹂躙する。
手札の尽きたあおいに、この圧倒的パワーを防ぐ術はない。
「行くぜ、あおい!ダーク・ティラノザウラーで
「くっ!」
【あおい】
リザーブ:0→1
「更に
「キースピリットを倒して勝つ……か。嫌いじゃないよ、そういうの!受けて立ちな、タイタス!」
背鰭を飛ばしてランダルを瞬殺したダーク・ティラノザウラーは尚も進撃する。
目標となったタイタスは疲労状態であったが、迫る敵に対して即座に起き上がると、拳を構えながら突進してきた。
フィールド中央でぶつかり合う両者。
だが、力の差は歴然で、タイタスが繰り出した拳をダーク・ティラノザウラーはその大顎で受け止めると、宙に放り投げ、尻尾に携えた魔剣で一刀の元に斬り伏せた。
【あおい】
リザーブ:1→3
「この瞬間、ダーク・ティラノザウラーの【
「最後のライフも、これで破壊だ!」
ダーク・ティラノザウラーは緑のオーラを纏い、巨大な火球を放つ。
アタックと同様、ライフにぶつかる火球。そして、爆散と共に最後のライフを破壊した。
【あおい】
ライフ:1→0
「うわっ!?……やっぱりやるね、紅葉!あたしの負けだぁ!」
ライフを全損し、足場から弾き出されたあおいは、最後に潔く負けを認め、笑顔でフィールドから退場する。
勝利を噛み締め拳を上げる俺に続き、勝利を称えるようにダーク・ティラノザウラーの咆哮が轟いた。
「やったね、コウくん!」
「格好よかったですよ、クロノせんぱい!」
「おう!二人とも応援サンキューな!」
仮想空間から戻った俺に駆け寄るシオンのマキナちゃんに、俺は笑顔で応じた。二人に続き、店内のあちこちからも称賛の声が上がる。
声援に手を挙げて応えていると、先に仮想空間から戻っていたあおいが近付いてくるのを見付けた。
「あおい……。良いバトルだったな」
「フッ、そうだね。でも、次は負けないよっ」
「いつでも受けて立つぜ。次に勝つのも俺だけどなっ」
そう笑顔で言葉を交わした俺達は、拳を突き合わせる。すると、店内から再び大きな歓声が巻き起こった。
「いやいや、やっぱり凄いね、紅葉くん」
「店長……。今回は運にも助けられたけどな」
「運も実力の内だよ。ラストターンでキースピリットを呼び寄せるなんて、並外れた勝負強さの証さ」
「流石は、去年の全国大会優勝者だよ」
店長はそう言うと、店のカウンターの置くに飾られた大きな写真に目を向けた。
額に入れて飾られる写真に写っていたのは、優勝トロフィーを持つ俺と、応援に来てくれたシオン達の姿だった。
そう、俺は去年行われた全国大会に街の代表の一人として出場し、優勝を手にしたのだ。
去年の大会は、色々な意味で特別だった。激闘の中で、自分のバトルを貫いた俺は、やがて一つの境地に辿り着いた。
上手く表現できないが……敢えて言葉にするなら、"強さの深み"が相応しいかもしれない。
優勝を果たしてからも、更なる強さを求めるべくバトルを続けている。……アニメに登場した歴代のバトラー達のように。
「……紅葉くん?どうかしたかい?」
「ん?ああ、いや……。去年の優勝者として、明日は恥ずかしくないバトルをしないとって思ってな」
「それは頼もしい。期待しているよ。正しく明日は、去年の決勝戦の再現とも言えるからね!」
物思いを誤魔化す意味も込めて言った俺に店長が返した言葉を聞き、気持ちが引き締まるのを感じた。
店長の言う通り、明日の対戦相手は、俺と同じく代表として全国大会を戦い、決勝で優勝を争った相手なのだ。
あのバトルの光景は、今でも昨日の事のように鮮明に頭に浮かび上がる。
あんなバトルをもう一度。そして、更なる強さの深みへ。
その為にも、やれることは全てやっておかなければならない。
「店長、悪いけど今日はこれで失礼するよ」
「おや、もう帰るのかい?」
「ああ。明日に備えて、デッキを調整しておきたいからな」
「……そっか。頑張れよ!必要なカードがあれば言ってくれ!お得意様価格で提供するよ!」
「サンキュー。その時はよろしく頼むよ」
店長とそんな話をした俺は後ろを振り向く。するとそこには、俺を待つようにシオンとマキナちゃん、そしてあおいが立っていた。
「行くんだよね、コウくん?」
「ああ。悪いが、付き合ってくれな?」
「もっちろんです!」
「あ、あたしも手伝うよ!その……大事なバトル前なのに時間使わせちまった詫びとして、さ」
あおいも調整に付き合ってくれるらしい。三人とも、明日の対戦相手とはバトルスタイルが違うけど、その方が思わぬものが見えてきそうだ。
「じゃあ、よろしく頼むわ」
「お、おう!任せときな!」
「プフフ。嵐子先輩、ホントはそれが目的だったんじゃないですか?全く、素直じゃないですね~」
「なっ!?へ、変なこと言うんじゃないよ!泣かすよ!?」
「フフッ、まあまあ」
イタズラっぽく言うマキナちゃんに、真っ赤になって怒るあおいと、それを宥めるシオン。……こんな調子で調整は大丈夫だろうか?
賑やかな調整となることを半ば確信しながら、俺は落ち着いた3人を連れて、店を後にするのだった。
第1話はここまで。いかがだったでしょうか?
……思ったより長くなってしまいましたね。。すみません。
今回、主要キャラ4人を登場させました。
一人は主人公、黒野紅葉。
ノリの軽いところはありますが、バトルに対する情熱は人一倍で、追い込まれた時の勝負強さは歴代のアニメ主人公にも引けを取りません。
過去に色々あったようですが、その辺りの設定はこれから描いていきます。
お気付きの方も多いかと思いますが、彼のデッキはソードアイズでツルギが使った闇の赤デッキ(リアルで言うところのダークネスファング)を基にしています。キースピリットも同様に闇龍ダーク・ティラノザウラーです。
理由は、作者が恐竜やドラゴンが好きなのと、アニメでの活躍とBGMに惚れたからです。
他では、ダーク・ディノニクソーがお気に入りですね。愛くるしい瞳と鳴き声にやられました(笑)
これからも、この2体は出番が多いですので、好きな方はご期待ください。
二人目はヒロインの一人、美山紫桜。
主人公の幼馴染みで、一応彼女をメインヒロインとして設定しています。ただ……意外と書くのがむずかしい。主人公にとってはなくてはならない存在なので、そこのところをこれから掘り下げていきたいです。
今回バトルはしませんでしたが、紫の使い手です。使用カードはまだ秘密です。
三人目もヒロインの一人、神楽坂マキナ。
主人公の後輩で、甘え上手ですがトラブルメーカーな一面もあります。また、ヒロインの中で最も明確に好意を示しているのも彼女ですね。書いててとても楽しいキャラです。
彼女も今回バトル無しでしたが、黄色デッキの使い手です。
四人目もヒロインの一人、嵐谷あおい。
主人公とは違う学校の生徒で、性格や親しくなった経緯などかなり特殊なタイプの女性キャラです。ただ、性格だけを見ればかなり主人公と波長が近いので、そこはシオンやマキナには無い武器とも言えますね。
そんな彼女が、記念すべき最初のバトル相手となりました。
使用デッキは、青の闘神を主力としたもので、デッキ破壊を得意としています。
彼女のデッキを考えるに辺り、ブレイヴのキャラクターであるベネルドをイメージしました。闘神ではないベルセルカスが入っていたり、キースピリットがタイタスであったのもそれが理由です。……ホントは俊星流れるコロッセオを使わせたかったのですが、バトルの展開を考慮し、今回は見送りました。
今後のバトルでは、是非使わせたいと考えています。
とりあえず、こんなところですかね。
世界観やキャラ設定などは、設定集等を設けて紹介したいと思います。
それでは最後に簡単な次回予告。
紅葉は、都市大会の決勝戦に出場します。その相手は、『女王』と呼ばれる昨年の全国大会準優勝者。
事実上の日本一決定戦で、紅葉のバトラー魂が燃え上がります。
そんな第2話でまたお会いしましょう。今回はご覧頂き、ありがとうございました。