長門型とただ駄弁るだけ。 作: junk
その日、金剛はその鎮守府に着任した。
普通はその場で建造により産まれるか、海域で保護され所謂ドロップするのが普通なのだが、この金剛はちょっと違う。
何故かそのあたりの砂浜に打ち上げられていたところを保護された、いわば捨て艦だったのだ。
民間人に保護され、大本営に送られ──そこから紆余曲折あって、ここ横須賀鎮守府に着任することが決まったのである。
提督がいる執務室の前、金剛は満面の笑みを浮かべて立っていた。
第一声はもう決めていた。
「英国で生まれた帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」
自分の名前と出身を言いつつ、性格も出たいい挨拶だ。
いよいよ金剛がドアを開けようした瞬間、中から声が聞こえてきた。
どうやら、提督と秘書艦が金剛について話しているらしい。
一体どんな事を話しているのか……よくない事だとは思いつつも、金剛は耳をドアに当てた。アホ毛は少しの油断もなく、辺りを注視している。
「これが金剛か……かわいい子じゃないか」
「第一声が“かわいい子”って、どこぞの悪役か、お前は?」
どうやら、事前に送っておいた金剛についての書類に目を通している様だ。なんとなく恥ずかしい。金剛は頬が赤くなった。
「しかし和服か。この鎮守府には和服の艦娘は鳳翔さんくらいしか居ないが、やはりこの金剛という艦娘も大和撫子なのだろうか」
「ふむ……やはりそうなんじゃないか? 摩耶や天龍、木曽といったやんちゃ娘ばかりのこの鎮守府に清涼剤が増えるのはいい事だな」
「いや、長門。お前もやんちゃ娘筆頭だから……。こないだお前がやった「ドキ☆ 艦娘だらけのガチ逃走中!」のせいで私がどれだけ始末書書いたと思ってるんだ?」
「アレは白熱したな。この長門、ビッグセブンとして恥ずかしくない逃げっぷりだったと自負している」
「ああ、そう……いやしかし、大和撫子か。それは嬉しいな」
赤くなった顔が、みるみる青ざめていく。
提督が期待しているのは、大和撫子。
もし、もしさっきの様な挨拶をしたら───
◇◇◇◇◇
金剛は勢いよく扉を開け、大声を上げて自己紹介をした。
「英国で生まれた帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」
「なにぃ!? 全然大和撫子じゃないじゃないかぁ! こんな艦娘要らねえよ、ファッキン! お前ら、この子にぶぶ漬け出してやりな!」
「サー・イエッサ!」
ゾロゾロと艦娘達が部屋に入ってくる。
彼女達は金剛を取り押さえ、縄で縛った。
「提督、待ってくだサーイ! 私、提督の為に頑張りマスカラ!」
「うるせえ! 俺は大和撫子系艦娘しか要らねえんだよ! 鳳翔さんの爪の垢をたらふく食べてから出直しな!」
「提督! 提督ゥーーー!」
金剛の叫び声が虚しく響いたが、提督は見向きもしない。金剛はそのまま連れ去られ、鎮守府の外に捨てられた。
その後の金剛の足取りを知る者はいない。人として暮らしているとも、深海棲艦となっているとも言われているが……
どうしてこうなってしまったのだろうか?
あの時、キチンとした自己紹介が出来ていれば、あるいは──
◇◇◇◇◇
───などということになりかねない。
それならここはやはり、大和撫子系の挨拶をするのが良いだろうか。
「英国で生まれた金剛です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます」
自分の名前と出身もいいつつ、大和撫子感が出たいい挨拶だ。
いよいよ金剛がドアを開けようとした時、中からまた声が聞こえて来た。
「見ろ、長門! どうやらこの子、英語が話せるみたいだぞ!」
「ほう。生まれはイギリスか。ならこの巫女服は、外人の間違った日本人感からくる、こすぷれの様なものなのかもしれないな」
「確かにな。……しかしイギリスの艦か。ウチにはまだ海外艦は居ないからな。これは楽しみだ。やっぱり、最初の自己紹介も英語なのだろうか」
「そうだろうな。な、なんと返せば良いのだ?」
「普通にハローで良いんじゃないか?」
顔がみるみる青ざめていく。
提督が期待しているのは、英国艦。
もし、もしさっきの様な挨拶をしたら───
◇◇◇◇◇
静かに扉を開け、はんなりとした声で自己紹介をした。
「英国で生まれた金剛です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます」
「ぬわぁぁにぃ! ぜんっぜんっ! これっぽちも英国感がねーじゃねーか! 英国で生まれたんなら、英語で自己紹介しろよぉぉぉおおおお!!! こんな英国生まれの日本育ち艦娘要らねえよ! お前ら、緊急輸送の手配だ!」
「サー・イエッサ!」
ゾロゾロと艦娘達が部屋に入ってくる。
彼女達は金剛を取り押さえ、縄で縛った。
「お待ちください、提督! わたくし、提督の為に精一杯努めますから!」
「じゃあかわしいんじゃボケェ! 俺が欲しいのは海外感ある海外艦のみ! それ以外は不要ッッッ!!!」
「提督! 提督ーーーー!」
金剛の叫び声が虚しく響いたが、提督は見向きもしない。金剛はそのまま連れ去られ、鎮守府の外に捨てられた。
その後の金剛の足取りを知る者はいない。人として暮らしているとも、深海棲艦となっているとも言われているが……
どうしてこうなってしまったのだろうか?
あの時、キチンとした自己紹介が出来ていれば、あるいは──
◇◇◇◇◇
───などということになりかねない。
それならここはやはり、海外艦勢の様な挨拶をするのが良いだろうか。
「ハロー、アドミラール! ブリティッシュでビルトされたミーこと金剛と一緒に、バーニングラァァヴゥ!」
自分の出身国と名前を言いつつ、海外艦感も出したいい挨拶だ。
いよいよ金剛が扉を開けようとした時、中からまた声が聞こえて来た。
「見ろ長門。この子は産まれこそイギリスだが、その後は日本で活躍しているらしい。いや海外艦だというのは、早計だったか」
「ふぅむ。すまんな提督よ、私の練度がもっと高く『長門』としての記憶を十全に引き出せたのなら、金剛の事がもっと分かったんだが」
「いやなに、分からないこそ楽しい、という所もあるだろう。未知を楽しむ程度の矜持はあるさ」
「流石は提督だ。それなら、私が提督の部屋に仕掛けた“アレ”も楽しめる事だろう」
「ああ。──いや待て、お前なにをした?」
「ふはははははは」
「笑って誤魔化すな。しかし、この子は長女でもあるみたいだな。もししっかりした性格だったら、お前の代わりに秘書艦に置くのもありか」
みるみる顔が青ざめてくる。
提督が期待しているのは、しっかりした艦娘。
もし、さっきの様な挨拶をしたら──
◇◇◇◇◇
ぶっ飛ばすほどの勢いで扉を開け、イントネーション良く自己紹介をした。
「ハロー、アドミラール! ブリティッシュでビルトされたミーこと金剛と一緒に、バーニングラァァヴゥ!」
「ファック! てめえの芸名はルー金剛か、あ゛あん? ここは日本だぞクソ外人が! 落ち着きの“お”の字も感じられねえ〜なぁ、おい! お国に帰ってフィッシュ&チップスでも揚げてな! お前ら、緊急輸送の手配だ!」
「サー・イエッサ!」
ゾロゾロと艦娘達が部屋に入ってくる。
彼女達は金剛を取り押さえ、縄で縛った。
「プリーズウェイト、アドミラール! コンゴウはアドミラールと一緒にファイトするから!」
「お口にチャックしな! 俺はしっかりした性格の艦娘以外要らねえんだよ、お分かり?」
「アドミラール! アドミラーーーール!!!」
金剛の叫び声が虚しく響いたが、提督は見向きもしない。金剛はそのまま連れ去られ、鎮守府の外に捨てられた。
その後の金剛の足取りを知る者はいない。人として暮らしているとも、深海棲艦となっているとも言われているが……
どうしてこうなってしまったのだろうか?
あの時、キチンとした自己紹介が出来ていれば、あるいは──
◇◇◇◇◇
──などということになりかねない。
それならここはやはり、しっかりとした自己紹介をするのが良いだろうか。
「こんにちは、提督! 私英国で建造された金剛です! どうぞよろしくお願いします! あっ、軍帽がズレてますよっ! 提督ったら、そそっかしいんだから! わかるわ」
自分の出身国と名前も言いつつ、しっかりした性格を出したいい挨拶だ。
いよいよ金剛が扉を開けようとした時、中からまた声が聞こえて来た。
「まあどんな艦娘でも良いが……一つだけ、こうあって欲しいというのがあるな」
「ほう、なんだ?」
「着飾らない、素直な艦娘だと嬉しい。摩耶も天龍もアホだが、真っ直ぐに生きてる。次来る娘も、そんな子がいい」
「そうだな。素直なことはいいことだ」
「……お前はもう少し、節度を持って欲しいがな」
ふぅ、と息を整える。
そして扉を勢い良く開け、大声で自己紹介をした。
「英国で生まれた帰国子女の金剛デース! ヨロシクオネガイシマース!」