デスマーチからはじまる迷宮都市狂想曲   作:清瀬

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 デスマとダンまちのクロスは他の方も書かれていましたが、こちらはサトゥーのソロ転移となっております。
 拙い文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。


01話:もう少しサービスのいい夢を見たいと思うのは間違っているだろうか

 「明晰夢」という言葉をご存知だろうか?

 自分で夢だと自覚しながら見ている夢の事だ。

 オレは今、ボッロボロの教会らしき建物内の地面に倒れている。床は固く、埃っぽい。安眠できるような環境ではないだろう。

 

「もう少しサービスのいい夢を見たいと思うのは間違っているだろうか」

 

 思わず、そんな言葉が出たのは仕方がないと思う。

 

 時は少し遡る。

 オレはデスマーチ中のゲームプログラマーだった。炎上プロジェクトをなんとか処理し、会社の机の下で30時間ぶりの安眠についた。

 気が付くと荒野にいて、視界にはメニューや周辺警戒用のレーダーなどといったガジェットが見えた。それらから、オレはこれが夢であると判断した。実はデスマーチ中にデバッグの夢を見ることは初めてではない。

 思考でメニューを操作し、自分のステータスを確認すると、いつも使っている『サトゥー』という名前と、レベル1であることが確認できた。

 初心者用サポートの使い捨て「全マップ探査」などを使って、しばらく周囲を見回していると、レベル50のリザードマンっぽい集団が接近してきて、矢を射かけてきた。

 レベル50の集団にレベル1が勝てるのか、どう考えても無理である。

 オレは、隠れていた岩を削る赤く光る矢の雨に恐怖しながら、初心者サポート用に実装したマップ内の敵を殲滅する【流星雨】を3つとも使用した。

 100を越える隕石の雨、それが地形を変えていく様子を呆然と見ていたが、突如頭が割れるような、全身が引き裂かれるような激痛にさらされ、隕石による土埃の津波を目の前にして意識を手放した。

 

 そして、気づくとこの謎の廃教会に倒れていたというわけだ。

 やけに体がだるく、夢にしてはリアルすぎる気もするが、相変わらずメニューなどが表示されているこの状況を現実というほうが変だろう。

 どうせなら、美人のシスターさんとイチャつく夢をみたいなどと思いつつ、再び意識を手放し眠りについた。

 

 

 

「*******」

 

 聞いた覚えのない、言葉が聞こえる。

 目を開けると夕日なのか、天井に空いた穴から見える空が赤くなっている。

 視線を横に向けると、黒髪をツインテールにした美少女がオレを心配そうに見つめていた。年齢や背丈にそぐわずとても胸が大きかった。ロリ巨乳というのだろうか。思わず、目線が謎の紐で強調された胸に向いてしまったのは許してほしい。

 

「*******」

 

 再び心配そうな声色で声がかけられる。聞いたことのない言語だ。何か意思疎通の手段はないかとメニューを探すと、レベルが1から310まで上がっていた。

 

「え?」

「*******」

 

 漏れた言葉に反応してか、再び声がかけられるがまったくわからない。

 急激なレベル上昇は置いてくとして、会話が可能になる一縷の望みを託し、スキル欄を見た。荒野で確認したときは一つもなかったのに、「術理魔法:異界」「召喚魔法:異界」「恐怖耐性」「苦痛耐性」「自己治癒」「監視」「古鱗族語」「共通語(コイネー)」が取得可能になっていた。

 スキルレベルは1から10で、1ポイントでレベル1上がる仕様らしい。

 どちらの言葉に振るか一瞬迷ったが、「古鱗族語」というのはオレを襲ったリザードマンの言葉だろう。

 残スキルポイントが3100もあるので、とりあえず「共通語(コイネー)」にスキルポイントを10振ってみる。

 

「大丈夫かい?どこか痛むかい?」

 

 おお、言葉が理解できるぞ。

 

「大丈夫です。少しボーっとしていました。ご心配をおかけして申し訳ない」

 

 上半身を起こそうとすると、慌てて手で支えてくれた。少女に不釣り合いな豊かな胸がオレの腕にあたる。

 

「一体どうしてこんなところで倒れてたんだい?そんな土埃だらけで?」

 

 さすがに心配そうにしてくれている彼女にニヤけた顔を見せるのはどうかとおもうので、表情が崩れないよう意識しながら答える。

 

「……仕事を終えて、眠りについたことは憶えているのですが、気が付いたらここに倒れていました」

 

 色々飛ばしているが嘘は言ってない。

 顔が緩まないように気を付けたためか、スキル欄に無表情(ポーカーフェイス)が追加されていた。すぐさまスキルポイントを振った。

 

「……人さらいにあったのかもしれないね。ここは、迷宮都市オラリオの北西と西のメインストリートの間の区画にある教会なんだが、自宅まで帰れそうかい?家族の方、心配してるんじゃないかい?」

 

 支えが要らないと判断したのか彼女は背中から手を放しながら、オレに尋ねる。

 少し残念だが、無表情(ポーカーフェイス)のおかげで、その残念さは表情にでていないはずである。

 

「迷宮都市オラリオですか……?聞いたことがないです。

 すでに家を出て、実家から離れた場所で一人暮らしをしていたので、家族は心配していないと思いますが……。これから、どうしたものでしょうか……」

「嘘は言ってないね。迷宮都市オラリオといえば世界の中心ともいえるほど発展し、有名な都市なんだが、まさか本当に知らないとは……」

 

 これは本当に夢なのだろうか?

 耳から聞こえる音も、適当な音の羅列ではなく、法則性があるように聞こえる。いくら夢とはいえ、オレの貧相な創造力でこんな言葉を作れるのだろうか?

 

「ああ、自己紹介が遅れたけど、ボクは神、ヘスティア」

 

 おっと、なんだか急に夢っぽくなってきたぞ。目の前の少女が神様って……。こちらを心配してくれている彼女には悪いが、どうにも胡散臭い。

 

「……神様ですか?私はサトゥーと申します」

 

 名前は本名の鈴木一郎か、ステータス欄のサトゥーか迷ったが、とりあえずサトゥーにしておいた。

 

「君さえ良ければ、ボクの眷属(ファミリア)にならないかい?

 元いた場所を探そうにもしばらく時間がかかるだろうしね。君みたいな子供をほっておくのはボクの神としての沽券にかかわるのさ」

 

 アラサーなのだけど子供扱いされた。神様からすれば人間は子供みたいなものだろうけど。

 失礼と一言断りポケットを探ると、あるのはガラケーとカロリーバーだけだった。ガラケーは電波が立っていない状態だ。仮にこれが現実だとして、金もなく、身寄りもなく、常識もない状態で生き抜けるのだろうか?誰かの庇護下に入ることは必要だろう。

 しかし、目の前の少女を信じていいのかどうか、というのも気になる。

 

「私は迷宮都市オラリオの常識に疎いようです。こちらの常識を知るまで回答を控えさせていただいてよろしいでしょうか?ヘスティア様」

 

 とりあえず、眷属(ファミリア)などの謎ワードも知らないし、答えを先送りにすることにした。

 

「君は慎重だね。うちのベル君はすこし素直すぎるというか、人を疑わないところがあるから、君がいてくれると助かるんだけど……。

 まぁ、今日のところはうちに泊まっていきなよ。お金もないようだしね」

「……お言葉に甘えさせていただきます」

 

 このまま見知らぬ都市を歩くのもどうかと思ったので、その提案に飛びついた。

 それと一応、ある程度の敬意を示すように丁寧な口調で返すことにした。万が一、神様だとしたら怖いからね。

 

「立てるかい?ゆっくりでいいよ。よし、こっちだよ」

 

 体のだるさはかなりなくなっていたので、問題なく立てた。

 ヘスティア様は、廃教会の奥にゆっくりと進んでいく。あれ、進む方向おかしくない?と思っていると、自称神様は地下に進んでいった。ついていくと、古ぼけたソファーなどがある生活感のある部屋があった。

 

「ようこそ、ヘスティア・ファミリアのホームへ」

 

 笑顔でヘスティア様が告げる。

 どうも、この廃教会が神ヘスティア様の家らしい。この自称神様はどうやらなかなか苦労しているようだ。

 

「とりあえず、シャワー浴びておいでよ。これ着替えとタオル。ベル君のだけど多分サイズは大丈夫だと思うよ。服も土埃でいっぱいだし今着ているのは洗濯してあげるからさ」

 

 土埃まみれで、ちょうど体を洗いたいと思っていたところだ。ありがたく、シャワーを借りた。

 鏡を見て気付いたのだが、どうも高校生くらいの顔になっていた。改めて鏡を確認すると身長も縮んでいる。10センチ以上縮んでいるのに、特に違和感がないというのも変な話だ。

 体を洗いながらも、メニューに関して調べていく。

 魔法欄を見ると、荒野の時は空欄だったのだが「全マップ探査」と「流星雨」が登録されていた。使用不可となっていたのだが、スキル欄の「術理魔法:異界」「召喚魔法:異界」にスキルポイントを振ると、魔法が使用可能になった。

 試しに「全マップ探査」を発動してみる。迷宮都市オラリオのマップがお手軽に手に入った。

 どうやら、この「全マップ探査」はそのマップ内にあるすべての詳細情報を得られるようだ。今使っているこのシャワーは魔石製品のシャワーという情報がわかった。

 ついでに、近くにいる自称女神のステータスを確認すると、種族が神になっていた。どうやら、自称神ではなく、本物の神らしい。失礼がないように注意しておこう。脳内の呼び方もヘスティア様にしておこうか。

 マップを確認すると、他にもかなりの数の種族:神が存在している。ちょっと神様多すぎじゃないかな?

 都市内の強者のレベルを確認すると最大でレベル7だった。このレベル欄が空欄になっているものも多数いる。このあたりはよくわからない。あのリザードマンの集団がレベル50近くだったことを考えると、いくらなんでも低すぎると思う。

 情報を求め、ログを確認すると、「ようこそ我らの世界へ」ログから始まり、初心者サポートの使用ログ、リザードマンの撃破ログ、そして竜の谷の支配者らしき竜の撃破記録が残っている。その間に、竜殺しなどの称号やレベルアップのメッセージが並んでいた。

最後に「イレギュラー発生、別世界に転移しました。」とのログが出ている。

 どうも、異世界Aに転移した後すぐに異世界Bに転移したらしい。異世界Aでレベル310とはいえ、こちらで通用するかはわからない。争いに首を突っ込む気はないが、慎重に行動したほうがいいだろう。

 結構重要な情報もあるし、ログも常時表示したほうがよさそうだ。メニュー設定を弄ってログを視界の片隅に数行ほど常に表示しておく。

 

 しかし、オレの夢にしては、オレの想像力を超えた事柄が多すぎる。少なくとも現実と仮定して動いたほうがいいだろう。

 無一文だし、なんらかの金稼ぎの手段を見つけるのが最初にすべきことか。

 ある程度安定したら、この都市を観光がてら見て回りたい。迷宮都市、魔石製品、うしなわれた中二心が刺激される事柄がおおい。ゲームクリエイターとして、このゲームっぽい世界には興味がある。ゲームクリエイターとしての糧としていきたい。

 最後に元の世界だが、帰りたいといえば帰りたいが、デスマーチが終わったところである。少し休みたいというのも本音だ。戻ったらクビになってるかもしれないが、先に退職した先輩方にはたっぷりと貸しがある。再就職先には困らないだろう。

 プライベートのほうも彼女に振られて久しいし、実家の両親も姉夫婦と仲良く同居している。

 神様が大量にいるので、そのあたりが少し怖いが、大人しく観光している分には神様も天罰を下すようなことはするまい。

 さぁ、まずはヘスティア様から話を聞いて、安定した生活を目指そうか。

 




◆サトゥーの持ち物
流星雨で竜の谷の敵はほぼ壊滅状態ですが、瀕死のリザードマンが残っている状態でダンまち世界に転移したため、自動回収が発動せず、大量の金銭、聖剣をはじめとした装備、アイテム類は所持していません。
転移直後に持っていたカロリーバー、ガラケーのみ所持しています。
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