デスマーチからはじまる迷宮都市狂想曲   作:清瀬

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03話:サトゥーの力

 目覚めると、会社の机の下ではなく、ヘスティア様のホームのソファーの上だった。いや、家族(ファミリア)となった以上、オレのホームでもあるのか。

 周囲を見ると、ベル君が朝食を作っていたので手伝った。基本、外食なりインスタントでロクに料理なんてしたことがなかったのだが、先輩だけに作らせるのも悪いしね。

 ベル君の指示の元、料理を手伝ったが、もしかしたらベル君一人でやったほうが早かったかもしれない。ごめんね。

 

>「調理」スキルを得た。

 

 ログを見ると、スキルが取得可能となっていた。先輩であるベル君に迷惑をかけないために、マックスまで振っておくか。

 しかし、随分と簡単にスキルが手に入るものだ。体のスペックを確かめると同時にスキル取得できそうな行動をとってもいいかもしれない。

 

 朝食後、ヘスティア様はジャガ丸くんのアルバイトへ、ベル君とオレはオレの冒険者登録を行うためギルドへ向かった。ベル君はわざわざギルドに案内してくれるそうだ。優しい子だね。

 そういえば、初めて教会の外に出たがなかなか素敵な街並みだ。石づくりの建物やレンガ造りの建物が多いようだ。道も石で舗装されている。中世ヨーロッパはかなり衛生観念がひどかったらしいが、ゴミが当たり前に転がっているということもない。

 魔石製品で、シャワーや調理用のコンロ、冷蔵庫まである世界だ。同じと考えるほうが間違っているのだけれどもね。

 

「世界で有数の大都市だけはあるね」

「すごい街ですよね。僕も初めてオラリオに来た時はとても驚きました」

 

 ギルドはローマのパンテオンだったか、あのような姿をしていた。ギルドでは冒険者や迷宮の管理や魔石の売買、果てはオラリオの都市運営にまでかかわる組織だそうだ。

 一種の公的機関と考えてもいいんだろうか?

 

「エイナさーん!」

「あら、ベル君」

 

 見知った顔がいたのか、ベル君が受付にかけていく。オレもその後に続いた。エイナさんは尖った耳が特徴的な、眼鏡をかけた美人さんである。

 これはもしかして、あのファンタジーで有名な種族、エルフなのか!情報を確認すると、彼女の種族はハーフエルフらしい。

 

「今日はどうしたの?」

「新しくヘスティア・ファミリアに加わってくれた人がいまして、その方の冒険者登録に来たんです」

 

「新しくヘスティア様の眷属(ファミリア)となった、サトゥーと申します」

「ベル君の担当アドバイザーをしている、ハーフエルフのエイナ・チュールです。よろしくね」

 

 その後、エイナさんの指示に従い、書類を書き、ナイフと防具、バッグなどをギルドからの借金で買い、オレは、はれて冒険者となった。

 

「今日から、ベル君と一緒にダンジョン探索するの?」

 

 エイナさんが訪ねてきた。

 

「いえ、今日は少し街を見て回ったあと、ロクに武器を使った覚えもないので軽くナイフの素振りでもしようかと思ってます。ベル君は金銭的な理由でダンジョン探索する予定ですが」

「いきなり戦いに挑むのではなくて、練習してからいくのね。いいことだよ。

 サトゥー君は慎重みたいだし、ベル君は少し危なっかしいところがあるからサトゥー君と一緒に探索してくれると少し安心ね」

「僕、危なっかしいですか?」

「ベル君は、ちょっとまっすぐすぎるところがあるからね。それがいい点でもあるのだけど、心配になるかな。

 とにかく、ベル君は今日も第二階層までね。後輩ができたからって無理しちゃだめよ」

「わかりました」

 

 その後、エイナさんからダンジョンに関する注意点などの説明を受け、解散となった。ギルド前でベル君と別れて、適当に屋台なんかを見る。興味はあるのだが、余計なお金はない。ダンジョンである程度稼いでからまた見に来よう。

 少し体を動かすため人気のない空き地を探す。このあたりは「全マップ探査」が非常に役立った。

 

 空き地につき、「全マップ探査」で周辺に人がいないことを確認する。実験中も定期的にマップをみたほうがいいだろう。

 さて、まずは今の身体のスペックを確かめる。

 適当な石を、人差し指と親指でつまんでみた。壊そうと力を籠めると簡単に石が砕けた。

 手のひらサイズの大き目の石があった。軽くつついてみると、固い感触が返ってくる。失敗すると突き指しそうだなと思いつつも、多分大丈夫だろうと力を込めて人差し指で石をついてみた。石に人差し指が突き刺さった。痛みはまったくない。

 体の頑丈さや力はすごいことになっているようだ。指をかけるような段差がない垂直な壁だろうと、指で無理やり穴を作って登れる気がする。さすがに街の壁に穴開けるのはどうかと思って試してないけど。

 次は、垂直に少し力を込めてジャンプしてみた。少し力を込めた時点で、2階建ての屋根に登れる程度のジャンプ力があることが判明した。当然、その高さから落ちても特に痛みはない。

 速度については慎重に行うことにした。速度を落としきれずに壁にぶつかるとかいやだからね。

 少しづつ速度を上げては止まってを繰り返したが、速度はもっと上げられそうだが地面がえぐれそうな気がしたので、途中でやめることにした。

 どの程度の速度が出ていたのかはわからないが、かなりの速度は出てたし、壁走りとかできるかなーと軽い気持ちでやってみたら普通にできた。ついでにアクションゲームであるような壁を使った三角飛びも簡単にできた。ちょっと楽しかったので何度か壁走りや三角飛びを繰り返した。

 

>「疾走」スキルを得た。

>「跳躍」スキルを得た。

>「立体機動」スキルを得た。

 

 思ったよりもレベルの補正がすごい。本格的な慣らしはダンジョンでやったほうがよさそうだ。

 次は適当にナイフの素振りをすることにする。この調子だとナイフスキルが簡単に手に入るはずだ。

 しかし、ナイフを順手で持ち、突きや斬撃を繰り出しても、逆手でやってもスキルが入手できない。空気抵抗的なものを感じる程度に結構本気で振ったりしてもスキルを手に入らない。

 武器系のスキルはないのか、それとも実戦で使う必要があるのか?

 実際に何かを切ればスキルが手に入るのかと思い、ナイフで空き地の端に生えていた草を切ってみた。

 

>「草刈」スキルを得た。

>「採取」スキルを得た。

 

 残念ながら、ナイフスキルは手に入らなかった。

 しかし、草刈はわかるけど、採取はどういうことだろうか?雑草にしか見えないのだけれども、と思いつつ草を眺めてると、情報がAR表示みたいにポップアップされた。

 

  ナレナ草

  鎮痛作用があるが弱い毒性を持つ

 

 また、ポップアップと同時にログが流れた。

 

>「鑑定」スキルを得た。

 

 うーん、全マップ探査で十分な気はするんだけど……。

 それはそうと、この草は製薬スキルのようなものがあれば毒を消し、痛み止めの薬にできるのかもしれない。けど、現状は使い道が思いつかない。

 いや、「恐怖耐性」や「苦痛耐性」があるんだし、「毒耐性」もあるのかもしれない。このイージーモードっぷりなら食べれば「毒耐性」を得られるかもしれない。ただ、毒物食べる勇気もないんだよね。

 ……保留にしておこう。そういえば、アイテム収納のストレージは試していなかったなと思い立ち、草を収納するように念じると草が消えた。

 メニューを操作して、ストレージを確認すると、空だったストレージにナレナ草が追加されていた。出すように命じると手元に草が現れた。

 なかなか楽しかったので何度か出し入れを繰り返してみた。ついでにガラケーとカロリーバーの包装もストレージに保管しておいた。

 ストレージに収納していると、時間が停止したようになるみたいだ。ガラケーの時計がストレージに入っている時は、まったく動いていないことから確認できた。

 調理済みの温かい食事を入れておけば、いつでも温かい食事がとれるということだろうか?鮮度が落ちないなら、かなり使い勝手がいいようだ。

 しかし、便利なことは便利なのだが、悪目立ちしそうである。ギルドで用意してもらったバッグはそこそこ頑丈そうではあるが、普通のバッグだ。いくらでも物が入る不思議なバッグがあるのかもしれないが、少なくとも初心者冒険者が持つような代物ではないのだろう。使い方には気を付けたほうがよさそうだ。

 

 さて、そろそろ色々なスキルの習得を試してみるか。

 まずは、手で土を掘り返して、小さな畝のようなものを作る。

 

>「開拓」スキルを得た

>「耕作」スキルを得た。

 

 「開拓」スキルは意外だったが、「耕作」スキルは予想通りだ。

 近くの木の細い枝を切ってみる。

 

>「伐採」スキルを得た。

 

 細い枝をナイフで削って、刃のように加工してみる

 

>「木工」スキルを得た。

>「武器作成」スキルを得た。

 

 細い枝をもう何本か切り、枝の皮を薄く削りヒモ状にする。そのヒモで枝を結び、手甲のようにしてみた。

 

>「防具作成」スキルを得た。

 

手甲を板に見立て、ナイフで適当に文字を刻んでみた。

 

>「彫刻」スキルを得た。

 

 削りカスを手で集め、端のほうへ寄せておいた。

 

>「清掃」スキルを得た。

 

 うーん、次はどうしたものか。

 土に木の枝で文字を書いてみる。『1+1=2』っと。

 

>「算術」スキルを得た。

 

 だったら、『E=mc2』ならば……。

 

>「逸失知識」スキルを得た。

 

 へのへのもへじをサラサラ~っと。

 

>「絵画」スキルを得た。

 

 これで絵画なら、鼻歌でも大丈夫か?

 

「フンフンフ~ンっと」

 

>「歌唱」スキルを得た。

 

「なまむぎ、なまごみぇ」

 

 おっと、かんだ。もう一回。

 

「なまむぎ、なまごめ、なまたまご」

 

>「早口言葉」スキルを得た。

>「滑舌」スキルを得た。

 

「……あれ……声が……遅れて……聞こえて……きたぞ」

 

>「腹話術」スキルを得た。

 

 腹話術は我ながら非常に無様な出来だが、問題なく取得できた。

 

「ぶるぁぁぁぁぁぁ!」

 

>「変声」スキルを得た。

 

 まったく似ていない物真似だったためか、物真似スキルではなく声を変えるやすくなるようなスキルが手に入った。異世界の物真似だからダメという可能性もあるか。

 

 そろそろ思いつかなくなってきたぞ。

 ……一人で○×ゲームを地面に書いてみた。

 

>「遊戯」スキルを得た。

 

 ネタ切れだし、そろそろスキル取得にも飽きてきた。というか、取得可能になったのはいいが、使えそうなスキルがほとんどないぞ。これらスキルとったはいいけど、どうしよう?別にポイントを振らなければ、デメリットはないだろうけど……。

 「武器作成」「防具作成」は将来有望そうなのだが、如何せん道具もなければ素材もない。ダンジョン内で素材を集められたとしても設備を整えなければならないことを考えると、店売りのものを買ったほうが安くつくだろう。

 スキル取得祭りが楽しかったから、それでよかったとするか。

 とりあえず、戦闘で使えそうな「苦痛耐性」「自己治癒」「疾走」「跳躍」「立体機動」にスキルポイントを振っておいた。

 「恐怖耐性」は迷ったものの、無鉄砲になり危ない目にあっても困るのでとりあえず保留で。

 ついでに、ダンジョンで素材を拾うのに役立ちそうな「採取」と、ホーム内で役立ちそうな「清掃」、迷ったが「鑑定」にもポイントを振っておいた。

 なんだかんだで結構いい時間だ。お昼ご飯を食べに行くか。




デスマWEB版の廃村でのシーンの雰囲気が結構好きだったりします。
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