アーマード・コア for Answer -mutiny by infinity-   作:銀塩

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長らくお待たせしました。


非公式模擬戦

 「一夏はアタシと白黒と緑! セシリアと箒は真鍮のを!」

 

 鈴の号令に従い、三人とも飛び出す。

 

<なるほど、距離を補い合って万能な陣形を、ということですか>

 

<そちらは大丈夫ですか?>

 

<ああ、距離さえ取らせなければいい>

 

 三機とも短く通信を取ると、距離をとる。それを見ているアルバートは、やはり顔色を変えない。

 

――――――――

 

 「さっさと落とす!」

 

 そう言って双天牙月で突撃する鈴から一夏へ通信が入る。

 

<白黒のは機動戦闘が得意なはず。それに比べて緑は明らかに機動戦闘はできないタイプ。そっちを重点的に攻めるわよ!>

 

 確かに、白黒のは見れば細めの機動戦に向いたシルエットである。対して、緑のは太く装甲を売りにしたようなシルエット。ISは基本的に機動戦闘を行うため、動けないというだけでいい的になる。

 

「いきなり行くわよ!」

 

 双天牙月の一閃と龍砲による砲撃の三連撃。いきなりこれを浴びせられるのはかなりの痛手だろう。

 

<まだまだ甘いですね>

 

 しかし、メイはそれをいともたやすく避けた。リンクスにとっては常識で、IS乗りにとっては高等技術にあたる技術、すなわち、ネクストのクイックブーストもしくはISのイグニッション・ブーストで。

 

「嘘だろ?!」

 

 次いで突っかけようとしていた一夏があわててブーストを抑える。

 

<この程度、ただの基本でしょう>

 

 そう言って一夏の上空からレーザーライフルとアサルトライフルを叩き込む。一夏はイグニッション・ブーストを退避に使いことを余儀なくされる。

 

<ビンゴ>

 

 そして、突如襲った衝撃に相当のシールドエネルギーを持っていかれる。すぐさま目をやれば、そこには鈴を無視して一夏に銃口を向けたメリーゲートがいた。

 

「無視してんじゃないわよっ!」

 

<こちらも二人ですので>

 

 突っかける鈴に、アンビエントのライフルが向けられた。

 

 

 

「くそっ、なんて速い!」

 

 何度タイミングを合わせて切りかかっても、すぐさまそれを避けるレイテルパラッシュに業を煮やす箒。

 

<速さだけではないのだがな>

 

 回避と同時にパルスマシンガンPC01-GEMMAをばら撒き、箒を牽制する。セシリアはその牽制を中断させるべくスターライトmkⅢでレイテルパラッシュを狙う。

 

<ほう、思っていた以上によく狙う>

 

「どうして、当たりませんの・・・・・・!」

 

 しかし、それでもただの一回も当たらない。それどころか掠めることすらもない。

 

「セシリア! 包囲攻撃!」

 

 端的な箒の叫びをいち早く理解したセシリアはスターライトmkⅢの狙撃を中断、意識を集中させて遠隔無線誘導兵器ブルー・ティアーズを操る。そして箒は再びレイテルパラッシュに切りかかる。

 

<ふむ?>

 

 箒の剣戟の合間を縫って死角から放たれるレーザーをかろうじて避けながらそれを観察する。ほかへ一切の意識を向けさせない濃密多彩な箒の剣戟、そして剣戟に合わせ的確に死角からレーザーを撃ち込むセシリアのブルー・ティアーズ。およそ十代前半と言えないほどの技量にウィンは感心していた。

 

<なるほど、なかなかやる>

 

 ウィンは箒の剣戟をLB-ELTANINで受け止めてはじき返すと、一息に距離をとる。レーザーの残滓がきらめき、消える。

 

<では、次はこちらの番だな>

 

 

 

 

 

 「・・・・・・ふむ」

 

 

 ところ変わってアリーナ観客席。その中でも一番よく見える場所に陣取ったアルバートは、カラードたちと専用機持ちたちの戦闘を眺め、それをいろいろと評価していた。

 まず、カラードの面々の動き。ネクストとは大きく異なり、実際に身体を動かして操るISだと言うのに、その動きはネクストとほぼ変わりない。いつもどおりの彼女らの得意な距離を、得意な戦法を駆使して専用機持ちを翻弄している。次に、専用機持ちたち。数度にわたって彼女らの動きは観戦していたが、やはり十代前半とは思えないほどの錬度を持つ操縦術には感服する。とはいえ、それは十代前半にしては、でしかない。カラードの腕には程遠く、彼女らが手加減しているにもかかわらず、全く追いついていない。アルバートは懐から携帯端末を取り出して少々打ち込むと、再び懐にしまって観戦を再開する。どうやら、終局に向かっているようだ。

 

 

 

 

 

 

 「なんで、どうして!」

 

 一切当たらない攻撃にいらだちながら叫ぶ鈴。一夏は叫ぶ余力さえないのか、苦しげな表情のまま鈴と入れ替わり立ち代りメリーゲートを攻撃している。対するメリーゲートは攻撃のすべてをクイックブーストで避けつつ、エネルギーが少なくなるとアンビエントが牽制してその回復に努める、というサイクルで危なげなく立ち回っていた。それが、さらに鈴のいらだちと一夏の焦燥を誘う。

 

<まだまだ未熟ですね>

 

<こうやって誘われるくらいですから>

 

 そして、一瞬メリーゲートが見せた隙に誘われて飛び出した一夏を蹴り飛ばして、鈴にぶつける。

 

「っく!」

 

「しまった・・・・・・!」

 

 結果、鈴と一夏が動けなくなる。そこへアンビエントの高追尾ミサイル063ANPMとレーザーライフル067ANLR、メリーゲートのライフルGAN01-NSS-WRと多連装ミサイルWHEELING03、連動ミサイルMUSKINGUM02の過激な火力が叩き込まれ、一瞬でシールドエネルギーを削り取られてしまう。

 

<これでこちらは終わりですね>

 

<実力はしっかり見極めることができました>

 

 たたずむアンビエントとメリーゲートと、ISを解除されてISスーツのまま横たわる一夏と鈴になった。

 

 

 

 

 <さて、あちらも終わったことだし、こちらも終わらせようか>

 

 もう一方が終わったことを確認したウィンが、わざわざそう呟く。それを聞いた箒が一瞬詰め寄るのをためらったが、それが悪手となった。その隙に再び距離をとったウィンはハイレーザーキャノンHLC09-ACRUXを展開し、チャージ完了後すぐに箒に向けて射出。その弾速に反応しきれず、たった一撃で意識を刈り取られる箒。その光景にやはり一瞬気をとられたセシリアは、見事にウィンを見失ってしまう。

 

「しまっ・・・・・・!」

 

<残念ながら、いまだ未熟だ>

 

 容赦なく振り下ろされるレーザーブレードLB-ELTANINに、叩き落されるセシリア。踏ん張る暇もなくこれまた意識を失ってしまうのだった。

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 「・・・・・・さて、怪我はないな?」

 

 その後、気絶した専用機持ちを全員ピットへと運び診察したのちに適当に横たえたカラードは彼らが起きるのをゆっくりと待っていた。そして彼らが全員起き上がるのを確認して、アルバートが口を開く。

 

「・・・・・・怪我がないようならこのまま話を続けよう。まず、各自よく戦った。それぞれ上には上がいることを、そしてまだ自分が未熟であることを理解してもらえたと思う」

 

 その言葉は労をねぎらうものでありながら、多少なりとも腕に覚えのある二名にとっては屈辱の、そしていまだ触れた期間の短い二名にとっては再確認となるものだった。

 

「・・・・・・勘違いしないでほしいのは、今日の目的はお前たちをただ叩きのめすためでも、ただ腕を確認するためだけでもないということだ」

 

 アルバートのセリフに不思議そうに顔を上げる専用機持ちたち。その中で一夏が口を開く。

 

「なら、いったいなんのためにこんなことをしたんだよ?」

 

「・・・・・・お前たちの現在の腕を確認するとともに、お前たちに提案があってな」

 

「提案、ですか?」

 

「・・・・・・ああ、提案だ。お前たち、これからの放課後、俺たちに鍛え上げられるというのは嫌か?」

 

 セシリアの疑問に、突然の提案を返す。専用機持ちたちが絶句するには充分すぎる提案だった。

 

「ほ、ほんとにそんなことしてくれるの・・・・・・?」

 

 おずおずと聞き返す鈴に、鷹揚にうなずくアルバートとカラードたち。それに顔を見合わせる専用機持ちたち。そして再びセシリアが口を開く。

 

「でしたら、お願いできるでしょうか」

 

「・・・・・・分かった。今後はアリーナが確保できればアリーナを貸しきって、そうでない場合はハンガーにあるシミュレータを介して訓練を行う」

 

「なぁ、アルバート、いったい何をするんだ?」

 

「・・・・・・無数の条件下における対処とそれに伴う戦略眼の育成だ」

 

「あの、それはいったいどのような・・・・・・?」

 

 一夏の確認に応えるアルバート。そして箒がいまいち合点がいかないのか、聞き返す。

 

「要は、お前たちがいくつか設定された条件に基づいて作戦を行う、ということだ」

 

「たとえば、敵の殲滅、拠点制圧、敵地からの退避です」

 

「それ以外には、味方だった部隊の裏切り、情報と異なる状況などが挙げられますね」

 

 ウィンが少し詳しく答え、リリウムとメイが例を挙げる。その例に再び絶句する専用機持ちたち。

 

「・・・・・・ISとは兵器であり、ISが出撃する局面において敗北は絶対に許されない。まだ実戦に立つことのない身だからこそ、それを叩き込む」

 

 アルバートが告げた言葉に、目を見開く。そして、一夏が口を開く。

 

「アルが俺たちを鍛えようとしてくれてるのは分かった。けど、いったいどうして? なんのメリットもないだろう?」

 

 その言葉に、アルバートはふっと笑う。

 

「・・・・・・今は、まだな。ただし、将来的にこれはメリットになる」

 

 アルバートの思惑は、今はまだ専用機持ちたちには理解できなかった。




なんか久しぶりにえらく長くなりました。

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