アーマード・コア for Answer -mutiny by infinity-   作:銀塩

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長らくお待たせしました。


Rampage

その日、彼女は苛立ちを隠せなかった。自らが纏うものに対するあまりにも腑抜けた周囲の認識に、

彼女の焦がれる畏敬の存在が持つ汚点の不甲斐なさに。

 

だからこそ彼女らを見つけたとき、悪意が鎌首をもたげた。彼らの指導を受ける彼女らの拙さをもって、

彼らの至らなさを証明するために。

 

―――――――――

 

「まぁ、なんてーの? 最近はずっとシミュレータだったからさすがに甲龍を動かしてあげないとねって」

 

珍しくアルバートが自主訓練をするようにと一年専用機組に伝えた放課後、これまた珍しく鳳鈴音とセシリア・オルコットがアリーナで遭遇した。

 

「たしかに、ずっとシミュレータを使っていますが、やはりどうしても実際に動かすのとはワケが違いますものね」

 

アルバートが使っているシミュレータはほぼ100%、機体の性能や挙動を再現できるが、それはあくまでも「ほぼ」であって完全ではない。だからこそたまには動かす必要があったのだ。アルバートがどう思っているかはともかくだが。

 

「ねぇ、ちょっと付き合ってよ。あたしは近接向けで、セシリアは遠距離特化。お互いにちょうどいい訓練になると思うんだけど」

 

「あら、いいですわね。ぜひそうしましょう」

 

「じゃ、負けたほうが明日の学食おごりでどう?」

 

「あらあら、ではいまのうちになにを選ぶか決めておかないとですわね」

 

鳳のちょっとした挑発に、これまた軽く乗るセシリア。

準備運動がてらにISを動かす。瞬間。

 

 Lock-On Alert !

 

直感に従いすぐさま飛びのく2機。一瞬遅れてなにかが、いや、弾丸が彼女らのいた場所を貫いた。

そして、わざわざロックオンを仕掛けた機体を、シュヴァルツェア・レーゲンを見上げる。

 

「いきなり撃ってくるなんてずいぶんじゃない。わざわざ喧嘩吹っ掛けに来たってわけ?」

 

「ふん、知れたこと。NEXTの教練を受けているお前たちの実力がどんなものかと思っただけだ」

 

「あらあら、ドイツのウサギさんはずいぶんと粗野で粗雑なようですね。淑女たる振る舞いを知らないとお見受けいたしますわ」

 

売り言葉に買い言葉。はっきりわかるほどに空気の温度が低下していき緊張が高まる中、巻き添えを恐れた生徒が少しずつ離れていく。

 

「……そこまでにしておけ、未熟者ども」

 

ただし、その緊張が爆発することはなかった。なぜなら、より巨大かつ強固な圧力で蓋をされたからである。

 

「……貴様らに最初に叩き込んだことを、貴様らはどうやら忘れているようだな」

 

そこにいたのはアルバート・ティーア。件の教練を課している人物。彼のドスの聞いた声にかろうじて震えださないだけの気力をなんとか維持していた鳳とセシリアの肩が、まるで怒鳴られた子供のごとくビクリとはねる。

 

「……ちょうどいい。一夏、シャルル、篠ノ之もあわせて2時間後に校門に集まるように言っておけ。……どうやら、まだまだ甘かったらしいからな」

 

そして、こちらを凝視するラウラへ目を向ける。

 

「……貴様もついてこい。身の程を教えてやる」

 

しかし、気丈にもラウラは挑発する。知らないがゆえに。

 

「ふん、ならいまここで披露するがいいだろう。それとも、怖いのか?」

 

「……校則を知らんようだな。ISでの私闘は禁じられている。だからこそ貴様を招待している」

 

「校則がどうした。見つからなければ問題ないだろう」

 

「……粋がるなよ、小娘。ISを与えられ特殊部隊を率いた程度で一流のつもりか」

 

明確な侮辱。普段は温厚なアルバートとは思えない物言いにあっけにとられる鳳とセシリア。

 

「貴様、言わせておけば!」

 

「……喧しい。身の程知らずが粋がるな。……その身の丈を教えてやる」

 

そしてそのまま立ち去るアルバート。思わず追いかけそうになったラウラだが、続いて聞こえた織斑千冬の声に足を止めざるを得なかった。

 

―――――――――

 

「それで? どこに行くんだ?」

 

ラウラの不機嫌極まりない沈黙とセシリアと鳳の張りつめた表情につられて沈黙していた一同だったが、アルバートがそこに合流するとまず一夏が声をかける。

 

「……カラードの倉庫のひとつだ」

 

「え、そんなところに行っていいの?」

 

驚きの声を出すシャルロット。

 

カラード。アルバート・ティーアを社長として設立された傭兵派遣私設軍事企業。篠ノ之束の護衛としてIS業界では知らぬもののない企業で、天災の呼び声高い篠ノ之束らしく一切の情報が秘匿されその全容を知るもののない企業。そんな企業が倉庫とはいえ保有する施設に他者を呼び込むのだ、各国政府はおろか企業人すらその情報をなんとしてでも手に入れようとするだろう。

 

「あくまでも倉庫の一つだ。備蓄物資は置いてあるが重要な施設はないからな」

 

「それでもいままで秘匿していた施設の一つをほぼ公にさらすのはまずいんじゃ……」

 

「大丈夫ですよ、問題ありません」

 

どうしようと迷っているシャルロットに胸を張るメイ。それを尻目にリリウムは手元にある携帯端末に目を落とす。

 

「そろそろ到着いたします」

 

「……了解」

 

振り返るアルバート。その目に感情は浮かばない。

 

「……さぁ、行くぞ」




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