アーマード・コア for Answer -mutiny by infinity- 作:銀塩
「インフィニット・ストラトス……?」
聞き覚えのない名称。そのつぶやきに、博士は鷹揚にうなずいた。
「そう! 〝果てなき大空〟と名付けたこれは、宇宙空間での活動を想定し開発されたマルチフォーム・スーツなのだ! ちなみに開発者は私なんだけど、発表後にちょっとした手違いで日本が射程距離内にある全ミサイルが発射されちゃってねー、その時に最初の機体に処理してもらって、それを捕獲しに来た戦闘機やらも排除しちゃったりして、今じゃ核に代わる世界の抑止力として認識されてる飛行型パワードだよー」
いろいろと明かされる秘密。それに絶句する一同。
「いや、博士、それは……」
「悪質なマッチポンプですね……」
セレンとリリウムの戦慄の言葉がすべてを表している。しかし、その言葉にニッと不敵な笑みを浮かべる博士。
「やだなー、なにかの偶然だよ、偶然。それに、ISの中核パーツのコアは467個を配って以降作ってないからねぇ」
「まぁ、それはそれでなかなかなことなんですが……」
「とりあえず、これでわかったことがあるよね」
メイの言葉を遮り、博士は浮かべていた笑みを消し、顔を引き締める。それに合わせ、首輪付きの顔も険しくなる。
「……ありえない話、というより昔からあるSFチックな話だが、おそらく、それが正しい」
「うん、そうだね」
「君たちは、まったくの異世界に飛んできたんだよ」
――――――――
そのあと、それを更に裏付ける証拠を探すのに奔走した。
まず、各地の地名だ。これには多くが一致していて、似たような世界であることが分かった。次は国だ。首輪付きたちの世界――以後はAC世界と呼称する――は、昔起きた国家解体戦争によってすべての国という枠組みがなくなり、代わりに企業というものが国家の様相を成していた。なので、まったく国がないAC世界とこちらの世界では、国というものがある時点で大きく違う。そしてその企業すらも存在しない。唯一有澤重工はあったが、IS部品の下請け程度の会社なので、想定している企業とは全く違う。調べれば調べるほど裏付けされる差異。それが、この上ない決定打だった。
「では、どうしたものか……」
世界地図を眺め、考えるウィン。博士は意気揚々と世界を飛ぶ際に必要なエネルギーと現象を調べていた。
「元の世界からの救援は困難でしょうね。どんな偶然でここに来られるのか、全くわかりませんから」
「かといってこの世界でどう生きる? 国家という枠組みがある以上、戸籍なども管理しているようだ。我々は無戸籍となってしまう」
だが、立ち直るのは早い。原因不明の状況が突拍子のない事実などが知らされ困惑していたものの、戦場を駆け回っていた都合上、すぐに頭を切り替えることができる。
「……流石に、戸籍改竄は無理だろうな」
「国家が管理しているサーバですから、企業ほどではないとはいえ、そのプロテクトは強固なものでしょうね」
「色々と前途多難だな…」
セレンの嘆息。そう、頭を切り替えた所で、どうにもならない問題なのだ。
「ん? それくらいなら私がどうにかするよ?」
そう、彼らだけなら。
「なに? そんなことができるのか?」
「まぁねー。これでもISの開発者だから、どこの政府も私とコンタクトしたがるからこれくらいなら要求飲ませられるし、ハッキングして気づかれないようにっていうのも可能だよー」
驚くセレンにさらっとすさまじいことを言ってのける博士。
「なるほど……だが、さすがにそこまでしてもらうのはな」
「そう? 私は構わないんだけど」
躊躇するセレン。と、首輪付きが彼女に向き合う。
「……では博士。我々を雇うつもりはないか」
首輪付きの提案。それは、傭兵らしいものだった。
「ふーん? どういうこと?」
「……我々はこの世界で動く足掛かりがほしい。なので、その足掛かりを作ることができる博士に依頼したいが、金銭的、物的対価が出せない。なので、我々リンクスという力を取引材料として提示したい」
「へぇ……」
まっすぐ見つめる首輪付きに、こちらもまっすぐ見つめる博士。しばしにらみ合いが続くと、博士がにっこりと笑った。
「うん、いいね。君たちを雇って、存分にその力を発揮してもらおう!」
首輪付きは、ぺこりと頭を下げる。
「じゃぁ、まずは会社設立だよ!」
後日、その会社が世界を揺るがすのだが、それを知るのは、今は誰もいない。
2016/03/06 句読点を変更、一部内容を加筆修正