アーマード・コア for Answer -mutiny by infinity-   作:銀塩

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始動

 強い風とともに舞い落ちる白い欠片。ここはフランスの山間部。毎年多くの雪が積もり、女性の体が埋まってしまうことも珍しくない。そんな厳しい冬の丘の上に、一つの影があった。女性というよりも少女らしい背格好で、髪は金、普段なら快活な彼女も、さすがにこの寒さの中ではなりを潜めていた。

 

「ここで、待ち合わせのはずなんだけど……」

 

 彼女はジャケットの中に隠れていた腕時計を見つつ、周囲を見回す。しかし、周囲には人影の一つどころか、小動物の一匹も見えず、ただただ白い帳が下りていた。

 

「ほんとにここでいいのかなぁ……」

 

 そして思い返すのは、数日前のことだった。

 

 

――――――――

 

 

 ある日、とある理由から家にいても閉塞感を感じているだけなので、その息抜きのために家から出たときに偶然見た、数台の大型トラック。近くに住んでいる人々はフランスにある世界第三位のIS開発企業であるデュノア社のものだとして気にしていなかったが、彼女はそれが違うのではないかと感じていた。本来ならドラックの車体のどこかに必ず書いてあるデュノア社のロゴマークが一切なく、車体自体も真っ黒な塗装がなされているだけだったからだ。なぜそこまでわかったかというと、彼女もここ、フランスにてISに従事するものだからだ。ゆえに、自国の量産型ISを生産、整備している数少ない会社のトラックを見間違えることなどないのだ。

 少女は気づかれないように車列をある程度まで尾行し、その行先を調べて家に戻って自室にこもった。そしてその付近に工場やそれに類するものを探した。衛星写真から公式情報に至るすべてを使って。そして、それに類するものが公式的に存在しないことを確認すると、ただちに文書を作成、したところで一通のメールが入る。

 

<ハロハロー。今君が調べていたことについて、少し知りたいことがあるからちょーっと教えてくれないかなー?>

 

 全く知らないアドレスからのメール。しかし、その内容は偶然にしてはできすぎている内容だ。一瞬だけ、自分が知らないうちに何者かに監視されているのかと思って周囲を見回すも、それらしいものは一つも発見できない

 

<ああ、安心して。別に君のことを監視してたわけじゃなくて、ただ妙な事を調べてる動きがあったから連絡しただけだから>

 

 再びのメール。そして、少女は意を決したかのように返信する。

 

<一体なんのことでしょうか? 特に不思議なことはしていないつもりですが>

 

<とぼけなくても大丈夫。なにかあったっていうのはわかるから。私はそれについて教えてほしいだけ>

 

 何が起きたかまではわからないにしても、何かが起こっていることは確実につかんでいるであろう相手。そして、少し考え、その情報の裏付けとして、多少情報を流すことにしたのだった。

 

 

――――――――

 

 

 そんなメールの相手が指定してきた日時と場所まで、あと数分。向かうという4人の姿は見えない。と思われていた時、後ろから声がかかる。

 

「君が、情報をくれた人物でいいのかな」

 

 振り返れば、そこにいるのは長身の女性とみられる人物が三人、同じくかなり長身の男性が一人の四人だった。全員が大きなリュックを背負っている。

 

「あ、はい……」

 

「私たちは例のメールの者から派遣されたものだ」

 

 話しかけた女性からの握手に応じる。よく見れば、この四人は防寒着が同じ意匠で、異なる点は色と、つけられているなにかしらのロゴだろうか。目の前の女性は真鍮色をメインとしてロゴは西洋剣、別の女性は若干蛍光色系の緑をメインとしてロゴは緑色のスマイリーマーク、もう一人の女性は白をメインとして白百合だった。

 

「私はレイテルパラッシュだ」

 

「私はアンビエントです。どうぞよろしく」

 

「わたしはメリーゲートです。よろしく」

 

 そして、男性と向き合う。上背は高く、体も身体も防寒着から見てわかるほどにがっしりとしている。黒を基調とした防寒着が男性をより大きく強調する。それだけでなく、男性の胸についたロゴが鬼のようなものなのもより強調する原因か。

 

「……ストレイドだ。よろしく」

 

 元来無口なのだろう、言葉少なに語る男性と握手を交わし、さっそく案内する。四人もそれについていき、数分後、問題の場所にたどり着く。

 

「ここが、例のトラックが向かった場所です」

 

 案内された場所で、さっそく何かを懐から出すアンビエント。なにかの検査器具なのは確かなのだが、見たこともない道具なので、少女にはなんなのかは判別がつかない。

 

「……わかりました。反応はありませんでした」

 

「なるほど、ではタイヤ痕を調べよう」

 

 そう言いつつ、レイテルパラッシュも先ほどとは違う器具を出し、地面を見始める。

 

「……ふむ、なんとか残ってたみたいだな。これで追えるぞ」

 

 そして、器具をしまったかと思えば、次に取り出したのは自動小銃だった。

 

「えっ?!」

 

 さすがにこの展開は予想していなかった少女は、驚きを口にする。

 

「さて、あなたはここまでで大丈夫なので、帰宅して構いません」

 

「むしろ、我々としては帰宅することを勧めるな」

 

 口々に帰宅を、というよりは避難を勧められる。それだけで、なにをしでかすかが容易に想像できた。

 

「あ、あなたたち、テロリストですか?!」

 

 すぐに数歩飛びのいて距離を取る。四人の一挙手一投足を見逃さないように。その様子に、四人は顔を見合わせ、やがて男性が口を開く。

 

「……明日知らされる情報を元に、自分で考えるといい」

 

 すなわち、止めても無駄だと。そして、四人は自動小銃を構えたまま、タイヤ痕を追って行った。

 

――――――――

 

 すっかり姿が見えなくなってしまった一向を茫然と見送る少女。すでにあれから十数分が経過している。

 いったい何者なのか、何が目的なのか、メールの主は誰なのか。そういった疑問が浮かんでは消え、そして。

 

 

     ッドォォオォォォオォォォン!!!!!

 

 突如、眼前にて発生した大爆発にかき消された。

 

「ッ?!」

 

 少女はハッと我に返ると、すぐに状況を調べた。分かったのは、目の前にあった山の裾野が目視にて半径約1000mほど消し飛び、山崩れを引き起こしていたことだった。この時幸いだったのが、その近くに町や住居が一切なかったことだろう。すぐさま、事態を通報せんと携帯を手に取って山を見やり、再び絶句する。

 爆煙を斬り裂き、上空へと駆け上がる流星が四つ。その大きさやシルエットから推測される答えは、

 

「IS……?」

 

 そう、IS。しかし、少女は思案する。ISのコアは全部で467個しかなく、それも各国で厳重に管理されている。自国のISが攻撃するメリットがなく、そもそも演習場所でもなく、かといって他国の攻撃と仮定すると、国際的な規定に違反するためありえない。

 と、四つの流星が急激にその進路を変えた。向かう先はそう、少女のいる位置。

 

「なっ」

 

 少女もすぐさま通報のため、携帯をプッシュするも、次の瞬間には、周囲を囲まれていた。

 

「……」

 

 緊張が走る。少女は身じろぎすらできず、取り囲むISも身動き一つしない。そんな沈黙を破ったのは、真後ろにいた機体だった。

 

<我々はカラード>

 

「ッ!」

 

 すぐさま、そちらに向き直る。

 

<我々は傭兵であり、ある意によって動く>

 

<君が口にしてよいことは、我々がカラードであること>

 

<そして、強大な戦力であること>

 

 その声はマシンボイスだったが、そこで少女は気づく。胸部パーツに、鬼のようなエンブレムがついているのを。それに気付くと、すぐに周囲を囲む残りの三機を確かめる。そして、それぞれに先ほどの四人のエンブレムがついているのを確認する。

 

<我々はカラード。ある意によって動く傭兵なり>

 

 言い終わると、急速上昇し、すぐに見えなくなる。

 

「カラード……」

 

 あとに残されたのは、少女、シャルロット・ブロンだけだった。




現状でも、あくまでストレイドに対する描写は伏せます。

エンブレムだけですが、発覚しました。

P.S. ブロン姓はオリジナルです

2017/03/06 句読点を変更、一部内容を加筆修正
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