さいきょーの主夫   作:樽薫る

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第1章【幻想入りから一年経って】
第1話『妖精と妖怪と人間と』


 ―――朝。

 

 ここは人間と、“表の世界”で忘れられたものたち、妖怪、妖精などが共存する楽園『幻想郷』。

 その幻想郷にて人々が群れて暮らす人里、そしてそこから離れた山の麓にある霧の湖。さらにそこから少し離れた森の中に小さな一軒家が建っていた。

 森の中の一軒家から、良い香りが漂う。

 

 一軒家の中、台所で料理をしている男が一人。

 手際よく皿を用意して料理を乗せると、皿を持って居間へと向かう。とは言うものの表の世界で言う1Kの家では持っていくというほどの距離でも無いのだが……。

 

「ふう……」

 

 居間のちゃぶ台に料理を置くと息を吐く男は、満足気に笑みを浮かべると台所に戻って二つの茶碗に米を盛る。

 そうしていると、居間に敷いてある布団から誰かが起き上がった。

 それは年端もいかぬ水色の髪の少女。

 

「チルノさんおはよう」

「んう……おはよ」

 

 チルノと呼ばれた少女が男の声に返事を返す。

 男は茶碗を持ってチルノの寝ている布団から少し離れた場所にあるちゃぶ台へと乗せた。

 朝食が並べられるとチルノが布団から立ち上がり背中を伸ばしながら洗面所の方へと向かう。

 

 少しして、欠伸をしながら洗面所から出てくるチルノは服装が変わり、青いワンピースを着て青いリボンをつけている。

 

「さ、食べますか」

「うん、いただきます!」

「はい、召し上がれ」

 

 男がそう言うと、チルノは太陽のように眩しい笑顔を浮かべて食事を始めた。

 それを見て男は満足気に頷く。

 

「やっぱりリョウのご飯はさいきょーね!」

「チルノさんいっつもそれですね」

 

 ハハハと爽やかに笑う男。

 この家に住んでいるこの二人。

 一人は氷の妖精、氷精チルノ。もう一人は人間、リョウ。

 かたや幻想郷に住んでいた妖精、そしてもう一方は外からやってきた外来人と呼ばれる者。

 

 二人がこうして一緒に住むまでには色々とあったがそれはまたの機会に語れば良いだろう。

 ともかく、二人がこうして同居していて幻想郷は今日も平和、という事実こそが大切なのだ。

 

「チルノさぁん!」

 

 ご飯を食べ終えて洗い物を終えた。そんな時に女の声と共に扉が勢い良く叩かれる。

 リョウが先程までの笑みを止めて顔をしかめつつ、扉を開いた。

 生温い外気が家のなかに入ってくると、今度はチルノも顔をしかめる。

 

 そして扉の先には、黒い翼をもった少女がいた。

 

「どうも!」

「酷くやらしい射命丸文じゃないですか」

「清く正しい射命丸ですよ」

 

 ニコニコして相対する射命丸文と呼ばれた少女とリョウの二人。

 

「え、汚名丸?」

「射命丸ですよ。このチルノさんにつきまとう羽虫さん」

 

 瞬間、二人の額に血管がビキビキと浮かび上がる。

 一歩後ろに下がるリョウ、一歩踏み出して家に入る文。そこでチルノが文の存在に気づいて箸を持った手を軽くあげた。

 

「あやだ、いらっしゃい」

「お邪魔しますチルノさん! 今日も可愛らしい!」

 

 リョウと相対する時とは正反対に心からの笑顔を浮かべる文。

 台所でなにか始めるリョウの横を通って文はチルノの元へと加速。

 すさまじいスピードでチルノの隣へと座った。

 

「チルノさんチルノさん! 今日も可愛いですね! 大事なのでもう一度言いました!」

「ありがと、あやもね」

「くぅ~! これはオッケーという」

 

 ダンッ、という音と共に文の前に湯飲みが置かれる。

 置いたのはニコニコと笑顔を浮かべているリョウであり、置かれた文も笑顔を浮かべてリョウに視線を向けた。

 

「粗茶ですがこのロリコンクソ烏」

「あなたにだけは言われたくありませんよロリコンクソ召使い!」

 

 二人が止まる。そしてクワッと目を見開くリョウ。

 

「……誰がロリコンだ誰が!」

「あなた以外いないでしょうがこの性異常者!」

「テメェにだけは言われたかねぇんだよロリコンドマゾ記者! ぶち転がすぞ!」

「表に出なさい決着つけますよ!」

「おう良いぜ!」

 

 リョウがそう言うと文はほどよくぬるいお茶を一気に飲んで立ち上がる。

 

「行きますよ!」

「洗い物するからちょっと待てや!」

「先に待ってます! 辞世の句でも用意しておくんですね!」

 

 怒声を上げながら家を出ていく文。

 リョウは文が使っていた『射命丸』と書かれた湯飲みを洗うと、家の鍵を締めてチルノの正面に座った。

 別段驚くでもないチルノはこんな感じの光景を見慣れている故だろう。

 

「ふう……」

「リョウ、良いの?」

「良いんだチルノさん、あんなロリコンと一緒にいたらこっちまでロリコンになってしまう」

「でも魔理沙がリョウはロリコンだって」

「あの白黒、今度絞める」

 

 目を細めて呟くと同時に、家の扉が叩かれる。

 誰かなんて考える必要もない。

 チルノとリョウはゆっくりお茶を飲む。

 

「ええい、騙しましたね!」

「うるせえ!」

「あんまりです! 私を倒せないからってぇ!」

「烏天狗に勝てるか! 常識的に考えて!」

「あんまりだぁぁぁ!」

 

「リョウ、開けてあげれば?」

「……はぁ、チルノさんがそう言うなら」

 

 そう答えるとリョウが扉を開ける。

 プンスコ怒っている文の文句を適当に聞き流しつつ、リョウは再びお茶を淹れ始めた。

 台所で言い争う二人の声を聞いてチルノは笑う。

 

「ホント、仲良いのよね」

 

「そんなわけないでしょう!」

 

 チルノの声が聞こえたのか二人からの抗議が家のなかにひびく。

 それがおかしかったのか、今度はチルノが楽しそうに笑う声が家に響いた。

 なんら変わり無い、いつもの風景。

 

 




あとがき

一応言っておくと、ロリコンじゃない
オリ主も作者も
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