さいきょーの主夫   作:樽薫る

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第13話『協力者』

 人里に着いたリョウが文と別れてまずやったことは里の権限者らを集めることだった。

 何人かに声をかけてそこから里の集会所に先に入り座っている。

 徐々に人里の中でも一定の権限を持つリーダー各が集まり始めた。

 

 こういう時に、喫茶店をやっていてなおかつ人当たりしていた甲斐があるというものでほとんどの人間が友好的に挨拶をしてくるし集まってもくれる。

 そうしていると、関わりが深い者たちも現れた。

 そしてその中の1人の少女に声をかける。

 

「ああ、ちょっといいか小鈴」

「リョウさん、どうしたんですか一体……なんでかこんな偉い人ばっかの場所に私を呼んで」

 

 ツインテールの少女、本居小鈴に声をかけた。

 パタパタと小走り混じりで近より隣に座る小鈴に、そっと顔を近づける。

 男とそこまで接近することに慣れてないのか顔を赤くしながらリョウの言葉を待つ小鈴。

 

「お前、八雲紫になにか頼まれたか?」

「えっああ、はい、妖魔本について聞かれて……ある本について探して読んでくれと」

「……タタリか」

「え、なんでそれを」

「後で話す」

 

 その言葉に小首を傾げた後にハッとした表情を浮かべた。

 みるみる内に彼女の顔が青くなるので軽く背中を叩き微笑を浮かべながら頷くと少しばかり顔色も良くなる。

 状況がわかっていればこうもなるだろう。

 

「揃いましたか?」

 

 そんな声が響いた。

 発言したのは人里の賢者“稗田阿求”であり、隣には慧音が立っていた。

 阿求が話を始めると一同すぐに沈黙し、集会所には静寂が訪れる。

 

「えーこれで全員ですね。ではリョウさん、緊急事態ということで召集をかけましたが理由を」

 

 その言葉に立ち上がるリョウ。

 注目が集まり少しばかり気にもなるがそう言っていられる場合でもない。

 

「急なことでしたが集まってくれてありがとうございます。まず召集をかけた理由ですが……明後日、異変が発生する予定です」

 

 その言葉に、集会所がざわつく。

 もちろん訝しげな表情を浮かべている阿求と慧音。

 

「予定?」

「オーケー言いたいことはわかる。歯医者や接骨院じゃあないんだからってことなら、もうそんな感じの流れはやった」

 

 手を出してそう言うと、阿求が首を傾げてリョウの言葉を待っているがその前にリョウは咳払いして頷く。

 場の雰囲気がピリピリし過ぎていても困る。

 どちらにしろピリピリはするだろうけれど、話やすさが欲しい。

 

「そもそも今回の異変は起こされたものというより、曰く“現象や災害”の類いとのことです」

「災害って……台風や大雪みたいな?」

「まぁそういうことらしく、八雲紫曰く“タタリ”」

 

 その言葉に誰もが正確に“祟り”を想像したが、それとこれは似て非なるものだ。

 だが、すぐに理解するのは稗田阿求、数千年を輪廻転生した者。そして『一度見たものを忘れない』という能力を持つ者。

 そんな阿求が顔を青くして頭を押さえる。

 

「阿求さんはわかるか」

「ええ、そうですかそういうことですか……対策は?」

 

 その言葉は既に知っているリョウに向けられたもの。

 八雲紫から聞かされているということは、対策済みなのだろうという大凡の予想をつけてのものだ。

 それも当然、リョウが無策でここに“一般人”を含めたものを呼ぶはずがない。

 策も無しに事実だけ伝えればパニックもいいとこだ。

 

「対策というか作戦はあるから、とりあえずタタリについての説明をしておこうか」

「では、それは私から」

 

 そう言うと、阿求が説明を始めた。

 話を終えるまで座ることにしたリョウだが、服の裾を引かれる感覚を覚えて振り替える。

 引っ張っていたのは小鈴。

 

「どうした?」

「た、対策があるっていうのは本当ですか?」

「阿求さんが言ってただろ、対策もなしに集めたりはしないさ」

 

 なまじ詳細を理解しているからこその恐怖なのだろう。

 数々の大妖怪や神が敵で、殺しに来るかもしれないのだから。

 良い意味で適当に、小鈴に慰め程度の言葉をかけながらその頭をそっと撫でると、安心したような表情を見せる。

 

「そろそろ終わるか」

 

 呟き周囲を確認するが誰もが顔を青くしていた。

 冷や汗を書いたり、口を押さえて震えていたり、中には今すぐ逃げ出したそうで一杯の者もいる。

 今までの異変とは違うい、明確にこにらを殺しに来る異変。

 

「以上がタタリについてですが、リョウさん」

「ええ、阿求さんが話されたもので相違はないですね。タタリとはそういうもの、らしいです」

 

 そう言うリョウは不敵な笑みを浮かべていた。

 対策は絶対ではない、だがここで不安そうな顔をしていればそれこそ混乱の元だ。

 

「とりあえずいつも通り、慧音さんにこの里の歴史を食ってもらって隠します」

「それで安全とはいかないでしょうね。里の人を狙うそれらが慧音さんを狙いかねない、知能があるかはわかりませんが“現象”そのものというぐらいですし」

「ああ、だから護衛に着く……」

 

 全員、“力が強い神や妖怪”では意味がない。

 相手の戦力の増強になりかねず、同等の力の相手プラス余計な敵がいればより不利である。

 それは既に全員、承知しているだろう。

 

「俺と……皆さんご存知チルノ、魔理沙、それと大妖精でいくつもりです。場合によっては増えますが」

「待て他のところも戦場になっているならこちらにそこまで戦力を割いて良いのか?」

 

 慧音の言葉にリョウは首を横に振る。

 微笑を浮かべて、人差し指を立てて言う。

 

「人里優先です。ほかのとこならまだ拮抗してるからまだ良いがこっちはどうなるかもわかりませんし、なによりチルノさんが犠牲が出るってのは許さないでしょうし……知ってるでしょ?」

「まぁ……そうだな」

 

 そう言って慧音も微笑を浮かべた。

 チルノは伊達にガキ大将をしていたわけではない。リーダー各をキープするというのは力だけでなくそれなりのカリスマが必要になり、それ故の孤独すらも耐える強い心が必要になる。

 孤独な者ほどそれを理解できるからこそ、慧音は頷いた。

 

「とりあえずその戦力で向かってくるタタリ全てさばきます」

「その戦力で、本当に可能なんでしょうか?」

「よそにも一応、戦力はありますからね……早く片付いたとこの者に援軍に来てもらう予定です。早い話時間が稼げれば良い」

 

 阿求が頷いて、ホッとしたような表情を浮かべた。

 他の面々も同じくと言った表情で、リョウの方を見ているのだが、不安そうな者もいないでもない。

 だが、こればかりは口で言って安心させる以外の方法はないのだ。

 

「とりあえず明日また集まってもらいます」

「もっと詳しいことはそこで、と?」

「ええ、まぁ年密な計画を立ててここにいるわけだし、人里を守るということでそれなりに一致してる。安心しておいてください」

 

 そう言って、リョウは笑顔を作り言った。

 別段パニックが起こることもなく終わり、慧音が話を閉めてそれぞれ出ていく。

 仕事が途中だった者は小走りで出るし、そうでない者も早く伝えなくてはと出ていった。

 

 小鈴もリョウに手を降って去っていき残されるのはリョウ、慧音、阿求の三人。

 そんな三人も少し雑談を交えつつ集会所から出てその前で止まる。

 

「お、きたか」

「射命丸?」

 

 集会所の前には文が立っていたが一人ではない。

 慧音は文のことを言ったがその隣には不服そうに腕組みしてたっている少女。

 リョウが笑みを浮かべて頷く。

 

「来たか、はたて」

 

 腕組みしていた少女、姫海棠はたてがリョウの前まで近づく。

 身長差は約20センチぐらいだろう。

 そんな下からの強い視線に苦笑する。

 

「来たか、はたて……じゃないわよぉ! なんで私だけ連れてこられたの!?」

「俺のプランにお前は必要不可欠なんだよ」

「なにそれ」

 

 訝しげな表情をするはたてに、リョウは少しばかり申し訳なさそうな顔をしていた。

 それを見てはたても少しばかり表情を和らげる。

 

「頼むよ、人里の方にはお前が必要だ」

「なっ、なによ! てか私だって烏天狗なんだからぁ」

「コピーぐらいでてくる、だろ?」

 

 はたての言葉に続けて言うリョウ。

 飄々とした表情で言う彼に、はたては目を細めた。

 

「私の実力、舐めてんの?」

「そういうわけじゃないさ、ただ……敵でお前が出てくるより、お前を連れた方が間違いなく利口だと思ったんだよ」

「買い被りすぎじゃなくて?」

 

 そんなはたての言葉にリョウは頭を振って、慧音と阿求はそれを見守っている。

 文は腕を組んで少しばかり眉をひそめていた。

 

「鴉天狗だろ、もうちょっと自信もて……てか俺は搦め手が好きなんだよ」

「搦め手って、あの戦闘スタイルで?」

「それは関係ないだろ」

 

 そう言って後頭部を掻くリョウに、慧音と阿求が笑って歩き出す。

 

「それではリョウさんまた明日」

「え、ああ、また明日、慧音先生も」

 

 去っていく二人、残されるのはリョウと文とはたての三人。

 溜め息をついたリョウが軽く髪をかきあげた。

 雰囲気が変わる感覚を覚えるはたて。

 

「とりあえず頼むわ」

「なんか急に雑になったわね」

 

 そんな言葉にリョウはバツの悪そうな表情を見せた。

 

「今回に限っては文も出せないからな。こいつが敵で出たら地獄に行っても見れないようなおもしろ殺戮ショーが始まるからな」

「まあ、片手間に殺されるわよね……あ、でもあんた」

「デモもストもないさ、一対一でさえないんだ。だからお前に頼る」

 

 なんとなく彼の作戦に自分が必要なのは理解してはきたのだが、なんだかつっかえる。

 文がその場にいて、静かにこちらを見ているというのも気にかかった。

 

「なんか腑に落ちないのよねぇ」

「えーと……じゃあ愛故に」

「すっごい雑な愛!」

「おもしろそうな素材発見!」

「お前変なこと書いたらぶっ殺すかんな!」

 

 そんな言葉に文がケラケラ笑って返す。

 どことなくいつもの雰囲気になり、はたては何の気なしにホッとしてしまい、そんな自分を自分で疑問に思う。

 だがどことなく、リョウを信用する気にはなった。

 そもそも本気で彼をそこまで疑っていたわけでもないのだが……。

 

「わかった。とりあえずあんたの言う通りにする」

「サンキューはたて」

「おお、はたてがリョウの愛に応えた」

「変な言い方するんじゃないわよ!」

 

 少しばかり気恥ずかしくなり、顔が熱くなるのを感じる。

 行きつけのカフェのマスター、友人に過ぎないリョウだしそういう感覚で見たことなど一度もないのだが、そう言われると変な感覚を抱く、が……。

 

「……いやないか」

「なんだよ?」

「ないない」

 

 そう言って笑うはたてに小首を傾げるリョウ。

 文は理解しているのかケラケラ笑っていた。

 少しばかりほのぼのした雰囲気の中、ふと気配がしてリョウのすぐ横に二人の妖精が現れる。

 額に指を当てて瞬間移動で戻ってきた大妖精、それとチルノ。

 

「ああ、おかえり大ちゃ」

「チルノさん!」

 

 幻想郷最速が最速で、公衆の面前でチルノを押し倒して馬乗りになる。

 無言の大妖精と呆れたような表情のはたて。

 チルノは突然のことに目をパチパチさせたあと、首を傾げる。

 

「チルノさんおかえりなさい! あなたのカキタレ(死語)射命丸文です!」

「死ね!」

 

 背後から射命丸の首に腕を回してゴキッとなるまで捻る。

 ぐったりした文を放ってリョウはチルノを立たせた。

 未だに状況が理解できてないのか首を傾げるチルノ。

 

「この万年発情クソ鴉が!」

「ねーリョウ、なにがどーなってるの?」

「気にしないでチルノさん」

「そうだよチルノちゃん、あんな天狗放っておこ?」

 

 なんだか文が悪いことをしたのだろうとは思うチルノはとりあえず頷いておく。

 

「あややや、痛い、ひどい」

 

 そう言って首をゴキッと戻して立ち上がる文に誰も驚かないあたり慣れがあるのだろう。

 はたても呆れたようなに溜め息をついて四人に近づく。

 文がチルノに抱きつこうとしているのを片手で頭を押さえて止めているリョウ。

 

「とりあえずルナたちはオッケーだって!」

「意外とはやかったですね」

「大ちゃんが説得した」

「大ちゃんなんて言った?」

「協力しなきゃリョウさんがキレてお嫁にいけなくするって」

「大ちゃんさん!!?」

 

 驚愕するリョウ。

 爆笑する文。

 着いていけないはたて。

 

「まぁそれは良いじゃないですか、協力は決まりましたよ」

「良くないけど」

「やーいロリコン犯罪者!」

「お前には言われたかねぇんだよ!」

 

 くわっと表情を変えて言うが文はどこふく風。

 

「とりあえず次行くぞ次」

「次ってまだ協力者いるの?」

「ああ、いるさ」

 

 そう言って笑うリョウがトントンと自分の頭をつつく。

 理解した文が『なるほど』と手を叩き大妖精が苦笑を浮かべた。

 

「バカを集める」

 

 その言葉に頷いたはたて。

 歩き出すリョウに着いていく面々。

 

 二日後、近づく決戦でできることは全てする。

 リョウの目的は一つ、人里を守るなんてそのついでにすぎない。

 文も妖怪の山なんてどうでも良い。

 大妖精だって同じだ。

 

 “彼女(チルノ)”の“望み(異変解決)”を叶えるのみ。

 

 

 

「そういえば幻想郷バカまみれだけど」

「違いない」

「あやや、言われてますよリョウ」

「お前もだよ」

 

 

 




あとがき

結構シリアスになってしまった
とりあえず安易にフラグを建てないようにしつつ
もうしばらくしたらなんか短編みたいの書いてキャラ毎に焦点当てたりしたいっす

そんじゃ次回もお楽しみにー
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