さいきょーの主夫   作:樽薫る

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第16話『降雨』

 人里であった場所で、山ほどいる妖怪たちを相手取るチルノと魔理沙。

 氷が地を走り、その先で氷の針が飛び出る。

 魔理沙が八卦炉からレーザーを放ち一掃。

 

「キリがないぜ!」

「リョウが頑張ってるんだ! あたいだって!」

 

 だが二人とも肩で息をしている。

 数時間のぶっ続けの戦闘、魔理沙もノーダメージではなく、チルノとてまた然り。

 額から流れる汗を拭い、魔理沙は後方のリョウを見る。

 

「死なないだろうなアイツ、こっちがなんとかできるもんでもないだろ?」

「うん、タイマンで頑張ってもらうしかないのよさ」

「チッ、歯痒いな」

 

 そして魔理沙は八卦炉を向けて敵へと突っ込む。

 

 リョウが両足を地につけて目の前に迫る風の刃を“拳で拡散させる”とさらに接近してくるはたての分身体の蹴りを回避、その顔面に拳を打ち込んで吹き飛ばす。

 空中で回転しながらも、体勢を整えるはたて分身体に、さらに接近しその腹部に拳を叩き込む。

 

 それを見ていたはたてが顔をしかめる。

 

「容赦ないじゃない」

「しかし勝負になってきたんだ。手を抜くわけにはいかないだろう……きっとまだ続く」

 

 違いないが、はたてとしては自分と同じ姿のものが友人である彼にしこたま殴られて鼻血やら流しながら吐血していたりする姿は快いものではない。

 どこもそうなのかもしれないが、自分じゃなくて友人がそれをやっているのが気になる。

 

「かわいそうじゃないと抜けないタイプかしらねぇ」

「ぬっ!? そ、そういうことを言うな!」

「意外に、いや初心っぽいか」

 

 そう言いながらリョウから目を逸らして、迫る妖魔を風で吹き飛ばす。

 だがまだ敵は多い。

 その時、すぐ前に現れるのは大妖精。

 

「よし帰ったわね!」

 

 そしてそんな大妖精と共にいるのは三人の妖怪。

 誰もがボロボロではあるのだが、戦うつもりのようですぐに構えた。

 

 ミスティア・ローレライ。

 リグル・ナイトバグ。

 ルーミア。

 

 チルノの友人三人組。

 先ほどリョウがはたてに念写させて戦闘終了を確認させ、さらに大妖精に連れてこさせた。

 そもそもそういう作戦ではあったのだ。

 三人のコンビネーションがそこそこなのを知っていたリョウが、さらにこの二日でそれを実践レベルにまで上げて一対一で戦うよりもさらに効率良くした。

 故に、ここ一番の速度で自身の分身体を殲滅が可能となったということだ。

 

「いくよ三人とも、チルノちゃんの援護!」

「わかってるよ。ホントもう、チルノばっかだね大ちゃん」

「今さらでしょ……あ、リョウさん戦ってる」

「わはー、相変わらず血生臭いなー」

 

 大妖精、リグル、ミスティア、ルーミアの四人が同時に動き出す。

 リグルが放った蟲が敵を貫き、また別の蟲が弾丸を放ち弾幕を形成する。

 さらにミスティアが歌を口ずさみながら弾幕を放つ。

 ルーミアは敵に接近してその喉仏を引っ掻き削る。

 

「ハッ! よーやくきたわね!」

 

 そう言って笑うチルノの隣に立つのはルーミアとリグル、背後にはミスティアと大妖精。

 それを少し離れた位置から見て、慧音は苦笑を浮かべた。

 いつもの五人、クラスのムードメーカー。

 

「さいきょー五重奏(クインテット)よ!」

 

 誰が呼んだか大妖精を除いてバカルテット。

 チルノとルーミア以外はそこまで頭が悪いわけではないし、最近はその二人だってわりと頑張ってはいるのだが印象が変わるわけでもないし、態度とかは間違いなくバカと呼ばれるだけある。

 その二人を制したり時には一緒にイタズラをしたりする故に、バカルテット。

 だがこと弾幕ごっこ(戦場)においては五人揃えば大妖怪も面倒がるレベルにもなるだろう。

 

 そしてそんな五人の保護者の様な扱いになっている一人の人間こと、リョウは鴉天狗こと姫海棠はたての分身と戦闘を続けている。

 先ほどと違い、今度は偽はたてが連続で放つ風の刃を凌ぎ続ける防戦一方状態で、全てを捌けずに切り傷を作っていく。

 

「くそっ……裏目に、ぐっ、出たなっ」

「リョウ大丈夫なの!?」

「大丈夫じゃねぇよ! 大丈夫なのが不思議なぐらいだっ!」

 

 はたての心配する言葉に応えて、風の刃を凌いでいるとリョウは一瞬の隙を見つけて走る。

 偽はたてがさらに風の刃を放つが、横にとんで回避するとさらに地を蹴り加速、その加速度は今までの比ではない。 

 

「せえやぁ!」

 

 その加速度のまま、リョウは偽はたてに接近。

 拳が放たれるもそれを回避しつつ、通り過ぎる要領で横に避けつつ、腕を横に伸ばしその首に引っ掻ける。

 今日何度目かのこの技。

 

「ラァリアットォ!」

 

 偽はたてがそのまま地に倒れるも、リョウは素早く倒れている敵に追撃をかけるべく足を振るう。

 しかし、偽はたては翼を翻し素早く回避する。

 リョウの目が光、逃さんとばかりに左腕を伸ばしてその翼を掴み引き寄せた。

 

「死ねェッ!」

 

 見ていたはたてがゾッとするような、魂のこもった言葉と迫力。

 偽はたてはそのままリョウへと引き寄せられながら風の刃を放つも、リョウは構わず翼を引いた左腕の勢いそのまま右腕を再び伸ばし偽はたての首にかける。

 

  ―――驃符『レインメーカー』

 

 首を借りとるように腕を振るって、そのまま偽はたてを地面に叩きつける。

 偽はたての後頭部から血が吹き出すと同時に、リョウの胸元から血を吹き出す。

 

「リョウ!?」

 

 叫ぶはたてが、先程の風の刃による攻撃のダメージであると理解したときには遅い。

 さらに倒れた偽はたての首に紅い輝く気弾。

 

 はたてが驚愕に顔を歪めるが、刹那―――爆散。

 

 砂煙が巻き上がり、リョウはその中に消える。

 先程の技は元々そういう近距離で弾幕を叩き込み拡散させる危険なものでもあるのだが、本来は撃った後に素早く距離を取るものだ。

 それができる余裕が彼にはない。

 

 砂煙が晴れるが地には血溜まりのみ。

 すぐに血の雨が振る。

 

「あっ、あぁっ……」

「なに情けねえ声、出してやがるっ……」

「ッ!!?」

「俺は、鉄華団だんちょ」

「余裕あるわね!?」

 

 そこにはふらつきながら立っているリョウ。

 血塗れで今にも死にそうな、そんなリョウの横に彼に手を添えて焦ったような表情をしている大妖精。

 息をついて、安堵した表情を浮かべる彼女を見て状況を理解し頷いた。

 

「ま、間に合った……」

「サンキュー、大ちゃん」

「無茶しすぎですよ」

「殺さなきゃならないとなりゃこっちも殺されそうになるだろ」

 

 そう言いながら座らないのは、座れば起き上がれないと理解しているからだろう。

 だが、はたてはもう休ませようと近づいていくが、迫る影。

 狼の妖怪の分身。

 

「なっ!」

「ッ!」

 

 はたても慧音も大妖精も反応が遅れる。

 だが、地から伸びた氷の槍が狼を貫いて消し去った。

 そこに立つのはボロボロの蒼き少女。

 

「チルノさん……」

「やだチルノちゃんほんと素敵」

「大ちゃんぇ……」

 

 顔をしかめるリョウと、苦笑する慧音。

 はたてはホッとしたように地面にしゃがみこむ。

 だが戦闘はまだ続いているようで、チルノが両手に氷の剣を生成して放つ。

 

「俺、そろそろ寝ても」

「いやお疲れ様よ、良いわよ寝ててぇ」

「そういうわけにも、また念写を」

「はいはいすぐに……て、あれ?」

 

 はたてが止まると、リョウは首を傾げて次に慧音を見るが慧音も止まっていた。

 まさか、と思い振り返って理解すると苦笑を浮かべつつ大ちゃんの頭を撫でて、チルノにてを伸ばして引き寄せる。

 驚くチルノをそのままに、さらに慧音の腕を掴んで引き寄せた。

 

「なる、ほど」

 

 つぶやく慧音に首肯くリョウ。

 視界に映る“人里”は慧音が隠したはずだが、今“暴かれている”のは慧音の力を相殺させた者がいる。

 思い浮かぶのはただ一人、“上白沢慧音”に間違いない。

 なぜなら彼女とて半分妖怪、なのだから……。

 

「大ちゃん!」

 

 すぐにハッとした表情を浮かべて、大妖精が指を額に当ててリョウ、チルノ、慧音を連れて瞬間移動で消えた。

 はたてはポカンと口を開けていたのだがすぐに頭を振って立ちあがり、振り返った。

 

 ルーミア、ミスティア、リグル、魔理沙の四人はまだ戦っている。

 はたても羽団扇を出して風を発生させた。

 

「頼んだわよ……ここで失敗しちゃ、全部おしまいなんだからっ!」

 

 背後に在る“人里”を守るように鴉天狗は吠える。

 

 




あとがき

スペルカード(殺人技)
見た目はたてだから酷いことしてる気がする
まぁまともなヒーローじゃないから多少はね?

タタリ編が終われば日常回で短いけど色んなキャラと絡ませれるはず

それではまた次回ー
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