さいきょーの主夫   作:樽薫る

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第3話『寺子屋と先生と頭突きと』

 時は過ぎて夕刻。

 リョウは自分の茶屋こと『レインメーカー』の扉を閉めて鍵をかける。

 昼過ぎにやってきた霊夢も一時間もしない内に帰り、リョウはたまに来る客と軽く話すぐらいであまり忙しくもなく……そのままこの時間になって店を閉めたというわけだ。

 

 外に出ると、上から誰かが降りてくる。

 リョウはなんの疑問も顔に出すことなく、手に持ったカバンの中からラップに包まれたサンドイッチを出した。

 それを、降りきるのと同時に受けとるのは射命丸文。

 

「ありがとう」

「100円」

「今度払いますんで」

 

 文の言葉に頷いて歩き出すリョウ。そんなリョウの横を歩いて着いていく文。

 隣でサンドイッチを食べながら歩く文と共に向かった場所は寺子屋だ。

 前に着くと同時に戸が開かれて、中から誰かが出てくる。

 

「ああ、リョウさん」

「こんにちは慧音先生、今日もありがとうございます」

「いえいえ、こちらも毎日できるわけではありませんから……」

 

 寺子屋は本来は人間の子供たちのために開いているものだ。

 故に、チルノのような妖精等の人外に寺子屋を開けるのは休日のみになる。

 

「慧音先生も休みたいでしょうに」

「私はあの子達がものを覚えていくのが楽しいんですよ、特にチルノが妖精なのにテストで良い点を取ると跳ねたくなりますよ」

「私もチルノさんが良い罵倒をくれると跳ねたくなります!」

「黙ってろ駄天狗」

 

 クスリと笑って言う慧音の言葉に笑みを浮かべて、文に罵声を浴びせた。

 そうしている二人を見て慧音が微笑むが、ハッとした表情になる。

 不思議そうな文をよそに、慧音はリョウの方を見て申し訳なさそうな表情を浮かべた。

 

「申し訳ない……『妖精なのに』なんて」

「ああいえ、慧音先生が悪い意味で言っているとは思ってませんよ」

「なら良いんですがその、リョウさんはその手の言葉に良い思い出が無いでしょうから……」

 

 確かにその通りではあるのだが、リョウは『気にしていない』と胸の前で手を振る。

 だがそれでも、幻想郷に来てからのリョウの身に起きた出来事の終始を知る者の一人としてはリョウにその類いの言葉は禁句だと思った。

 だが、リョウは苦笑しつつ頷くのみ。

 

「良いですよ謝罪なんて」

「そうですよ、リョウなんかに」

「このクソ烏唐揚げにすんぞ」

「この私を捉えられるならどうぞ?」

 

 ビキビキと、二人が額に血管を浮かび上がらせ笑顔で向き合う。

 笑っているが笑っていない。そんな二人を見て慧音が笑いだす。

 

「ハハハ、二人は本当に仲が良い」

「どこがですか……そういえばチルノさんたちは?」

「教室で話し込んでいましたがすぐに来ると思います。ミスティアに関してはあれで屋台で飲食店をやっているのが驚きですが」

「ミスティアは漢字と数字には強いでしょう」

「それ以外がからっきしですが……」

 

 そう言って肩をすくめる二人の元に、誰かが走ってくる。

 そんなミスティアよりダメなのがその走ってきて、そのまま跳んでリョウへと飛び込んだ少女だ。

 金髪と赤いリボンがリョウの鼻先で揺れる。

 

「ルーミア」

「リョウ、おはよう」

 

 ニパァッ、とか効果音が付き添うな笑顔を浮かべる金髪の少女ことルーミアに、笑顔を向けるリョウ。

 文は少しばかり悩むような表情をしてから、首を横に振る。そしてそんな文をジト目で見る慧音。

 そう言えばと、ルーミアがリョウの腕の中から退く。

 

「リョウと文と慧音はロリコンだって?」

「え?」

 

 そんなルーミアの言葉に、文とリョウがハッとする。それとほぼ同時に文の腕を掴むリョウ。

 顔をしかめる文に首を横に振りつつ慧音の方を見ると、唖然としていてそれ以上の反応は無い。

 

「私が教えてあげたのよさ」

 

 そう言って現れる氷の妖精チルノ。

 得意気にドヤ顔を疲労しながら現れるとビシッとリョウと文を指差した。

 片目を閉じてウインクをするように言う。

 

「世話好きな人をそう言うって二人に教えてもらったのよ」

 

 フフン、と胸を張って言うチルノに文が『かわいい』と言葉を溢す。

 そっと近づいた慧音が、まず文の頭を掴む。

 慧音の表情は前髪に隠れて見えない。

 仕方ないとは思う。今回のことは、慧音の名誉にも関わることだ。故に―――。

 

「お、お待ちになって!」

「なんだ?」

「わ、私たちは良かれと」

「子供に嘘を教えるな! しかも色々あぶない!」

 

 そう言うと同時に、慧音の頭が振るわれる。

 頭と頭がぶつかった鈍い音がして、頭突きを受けた文が倒れると『ひっ』と声がした。明らかにルーミアのものだ。

 ロックオンされたことを理解して、リョウが慧音の方を見た。

 

「慧音、なんで文とリョウを頭突きするのよ!?」

 

 チルノに、リョウが首を横に振る。

 その表情は穏やかで……。

 

「チルノさん、ロリコンのことは、その……嘘なんで、言いふらしちゃあダメだ。ダメなんだ」

「えっ、なんで?」

「あれは、その……」

「な、なんでそんな嘘を!?」

「チルノさんは、知らなくて良いことなんだよ」

 

 その言葉にさらに追及しようとして、チルノは止まる。

 リョウの悲しげな表情を見て、だ。

 頷いてフッ、と笑みを浮かべたリョウが慧音の方を見た。

 

「別れはすんだか」

「はい」

「待って慧音!」

 

 瞬間、頭が振るわれ、その一撃がリョウの頭部に直撃した。

 倒れるリョウ、チルノがリョウへと駆け寄る。

 ロリコンなんて言葉を覚えさせてはいけないという、二人なりにチルノを思っての行動だったのだ……たぶん。

 

「リョウー!」

 

 叫ぶチルノ、その後ろで悲しげな表情をしている慧音。その後ろでよくわからないという表情をしているルーミア。

 そして寺子屋から出てきた、緑髪をサイドポニーにした胸が豊満な妖精こと大妖精と夜雀のミスティア・ローレライ、さらに大妖精よりも深い緑色の髪を持ったショートカットの“少年のような少女”リグル・ナイトバグ。

 困惑するような表情を浮かべる三人だが、リグルが口を開いた。

 

「なにこれ」

 

 その言葉にハッとした慧音が顔を真っ赤にして頭を押さえる。

 

「なぜ私はこんな三文芝居をぉ!?」

 

 倒れてるリョウと文。

 二人の目は開かれており、額は赤くなっている。

 お腹あたりで顔を埋めているチルノを見つつ、リョウは呟く。

 

「痛みは本物だけどな」

「超痛いんですけど……てかチルノさんにくっつかれてるの羨ましいんですけど」

「うるせえロリコ……バカ烏」

「ストレートですねこの軟弱もやし」

 

 小声で悪口を言い合いつつも、二人が同時に起き上がる。

 そんな二人を見て、チルノが固まった。

 首をかしげる文とリョウ。

 

「あやとリョウが蘇ったぁ!?」

「本気で死んだと思ったんですか!?」

「はははっ、俺はまだ死にませんよ」

「早く死んでください」

「あ?」

「あ?」

 

 驚愕するチルノ、突っ込む文、笑うリョウ。そしてキレる文とリョウ。

 これもまた日常の1ページ。異変でもなんでもない日常。

 キレていたもすぐにいつも通りに戻るリョウが額を撫でる。

 

「にしても痛い、痛すぎる……」

「人間のリョウさんには手加減しましたけどね」

「え?」

 




あとがき

プロローグが終わらない不具合
とりあえず過去については小出しにしてく感じで

次回もよろしくです!
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