雁夜おじさんが○○を召喚しました   作:残月

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破壊のプリンス

 

 

間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。

 

 

一人は黒いパーカーを着た白髪の男。

 

 

もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人。

 

 

白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。

 

 

「ぐっ……がっ……」

 

 

呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。

 

 

体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に。

 

 

しかし雁夜は詠唱をやめなかった。

 

 

雁夜には果たさねばならない誓いが有った。

 

 

叶わなければならぬ願いが思いが有った。

 

 

守らねば成らぬ少女が居た。

 

 

それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた。

 

 

唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らした。

 

 

召喚に上手くいっていたのか、隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。

 

 

光が収まり、描かれた陣の中心には自身が召喚したサーヴァントが居た。しかし、光が収まるに連れてサーヴァントの影が妙に小さい事に気づく雁夜。

 

 

「なんだ……小さいのか?」

 

よく目を凝らし、その影が何なのかを確認する雁夜。

小さな影が、俯せになっている。頭には大きな三角の耳。お尻の辺りには尻尾。

 そこにいたのは、まるで影のような漆黒の毛をまとった、猫だった。

 

 

「……猫?」

 

 

雁夜はサーヴァントの召喚には確かに成功した。そこは素直に喜ぶべき点である。

 

しかし蓋を開けてみれば、召喚したのは小さな黒猫。当然、英霊でもなければ幻獣などではない。どこにでもいる、普通の、雑種の黒猫だった。

 

 

「そ、そんな……」

 

 

雁夜が抱いていた喜びと希望が、途端に絶望へと変わっていく。こんなサーヴァントでは桜を救うなど到底不可能だ。雁夜はこの黒猫がそもそもサーヴァントなのか?と言う疑問すら沸き上がってくる。サーヴァントの召喚には失敗して、此処に居るのは迷い混んだ近所の野良猫だという方が確率が高い気がしていた。

 

 

「カカカ……雁夜よ。貴様の才に多少なりと期待はしておったがとんだ肩透かしよの。サーヴァントどころか野良猫を召喚するとは。此度の聖杯戦争を勝ち抜けるとは到底思えぬわ」

「くそ……黙れジジイ!」

 

 

召喚された黒猫の首筋をヒョイと摘まんで持ち上げる臓硯。期待していたと言う言葉とは裏腹に愉快そうに笑っていた。馬鹿にされている事だけは伝わっている雁夜は苦痛と怒りに顔を歪ませていた。

 

 

「んだよ……また異世界か?」

 

 

しかし、その会話を絶ち切る様に雁夜と臓硯以外の者の声が聞こえる。この場には二人しかいないし桜は地下室には居ない。となれば導き出される答えは一つ。

 

 

「サーヴァント!?何処に居るんだ!?」

 

 

雁夜は自身の召喚が実は成功していたのかと周囲を見渡すが誰も居ない。そこで雁夜は気付いた。先程、自分は何を召喚したつもりになっていた?そしてソレは誰の手にある?

 

 

「つーかよ……さっきからオイラを摘まみ上げてんじゃねー!!」

「へぶっ!?」

「や、やっぱりか!?」

 

 

 

臓硯が摘まみ上げていた黒猫は、器用にも摘ままれた状態から臓硯のボディに重い一撃を与えていた。妙に腕が延びていた様に見えたのは雁夜の錯覚では、なかろうかといわんばかりだ。

 

 

「こ、この……畜生の分際で……は?」

 

 

殴り飛ばされた臓硯は目の前の黒猫に悪態をつこうとしたが言葉を失う。何故ならば目の前の黒猫は自身の腹をボコンと開けると、腹の中からドラム缶状のガトリング銃を腕に嵌め込んだのだから。

 

 

「オイラを怒らせると……どうなるか思いしれやぁぁぁぁっ!」

「ギャァァァァァァ!?」

 

 

そして、そのガトリングから放たれた銃弾は臓硯を撃ち抜いていく。地下室にはガトリングの銃声と臓硯の悲鳴で埋め尽くされ、雁夜はそれを呆然と見ていた。

 

 

「よっし。こんだけ脅しておけば当分は立ち直れないだろ」

「二度と立ち直れないの間違いだと思うけどな……」

 

 

散々ガトリングを撃った黒猫は満足そうにガトリングを腹の中へ戻した。実は臓硯には一発も当てておらずその周囲を撃っていたのだが、至近距離で銃弾を突き付けられる恐怖を散々味わわされた臓硯は口から泡を吹いて気絶していた。その姿を見た雁夜は胸がすく思いだったがそれは根本的な解決には至らない。

そう思った雁夜はバーサーカーに聖杯戦争は何かを語り、そして自身の戦う理由を明かした。

 

聖杯そのものには興味を示さなかったバーサーカーだが、複数の者を相手に暴れまわれると聞いた辺りからバーサーカーの笑みが変わった。そう、本来なら可愛らしい黒猫の筈なのに悪魔のような笑みを浮かべていたのだ。そしてソレは互いの為にとなる契約だった。

 

 

 

「俺の名は雁夜。バーサーカー、君の名は?」

「オイラの名はクロ。サイボーグのクロだ」

 

 

雁夜とクロは握手を交わした。

雁夜は桜を救う為、クロは気ままに暴れる為に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが後にクロと戦う事となるテロリストのK・Eはこう語る。

 

 

「え、アレが可愛い黒猫だって?冗談はよしてくれ。アレと対峙した時は心底震えたよ。一匹の猫が一個師団に匹敵する銃器を所持してるなんて誰が予想できる?はは……聖杯戦争の為に色々と準備していた自分が馬鹿らしくなったよ」

 




『クロ』

コミックボンボンで連載されていた『サイボーグクロちゃん』の主人公。
元はただの猫だったが物語冒頭でサイボーグに改造させられる。
自由気ままに生きていて、時折他人におせっかいを焼くこともあるが、決して「正義のヒーロー」には成り切れない存在である。
基本的に暴れるのが大好きで、誰かの手助けをする理由の半分は自分が暴れたい為。

腕はロケットパンチで尻尾からは小型ミサイルが飛ぶ。
腹の中にかなりの量の重火器を仕込んでいてガトリング銃やマシンガン等。更に巨大剣が入っている。
サイズ的には明らかにクロの体の許容範囲を越えていた。
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