雁夜おじさんが○○を召喚しました   作:残月

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十字架を背負ったテロ牧師

 

 

 

間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。

 

一人は黒いパーカーを着た白髪の男。

 

もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人。

 

白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。

 

 

「ぐっ……がっ……」

 

 

呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。

 

体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に。

 

しかし雁夜は詠唱をやめなかった。

 

雁夜には果たさねばならない誓いが有った。

 

叶わなければならぬ願いが思いが有った。

 

守らねば成らぬ少女が居た。

 

 

 

それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた。

 

唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らした。

 

召喚に上手くいっていたのか、隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。

 

 

 

「なんや、ここ……けったいな場所やな」

「……ぼ、牧師?」

 

 

其処に居たのは何故か関西弁を話すガラの悪い牧師だった。牧師は布に包まれた巨大な十字架を背負っていた。

 

 

「ワイの名はニコラス・D・ウルフウッド。バーサーカーなんて牧師のワイには合わんでまったく……」

「いや、その出で立ちで牧師とか言われても……」 

 

 

バーサーカー、ウルフウッドの自己紹介に雁夜は牧師ともバーサーカーらしくもないと感じていた。

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

日が沈みきった倉庫街にて二人の騎士がお互いの技と力をぶつけ合っていた

 

一人は長短異なる二本の槍を操るランサー。

 

対するは小柄で可憐な少女でありながらも最優のセイバー。

 

どちらも互いに英雄を関する名を持つサーヴァント。

 

戦いは一進一退の互角。

 

 

 

 

 

「流石だな、セイバー。最優のサーヴァントの名に違わぬ見事な力だ」

「貴殿の槍捌きこそ称賛に値する。貴方のような騎士との勝負に名乗りすら許されないことが悔やまれる」

「それは光栄だなセイバー」

 

 

 

互いの技を讃え合うセイバーとランサー。

しかし、その戦いに更なる乱入者が現れた。自分のマスターを引き連れて(無理矢理)現れたライダーである。

そしてライダーは驚くべき提案をする。

なんとライダーはセイバーとランサーを配下に加えようと勧誘したのだ。

 

 

「俺が聖杯を捧げると決めたマスターはただ一人。それは断じて貴様ではないぞライダー!」

「そもそも貴様はそんな事を言いに現れたのか。戯れ言が過ぎるぞ!」

 

 

 

ライダーの勧誘に二人の英霊は怒りと共にそれを断る。その時だった

 

 

「なんや、殺しあいと聞いてたんやけど交渉もありかいな」

「誰だ!」

 

 

暗闇にシュボッと火を灯す音とこの場にいる誰でもない声にセイバーが叫ぶ。他のマスターやサーヴァント達の警戒心も羽上がった。

 

 

「まあ、落ち着きや嬢ちゃん。そっちのイスカンダルちゅーのが言ったみたいに、まずは話し合いや」

「チ……チンピラ?」

 

 

暗闇からコツコツと足音を鳴らしながら歩いてきた人物は漸く明かりに照らされて、その姿を表す。

その風貌は着崩した黒ずくめのスーツにボサボサの髪型に無精髭、更に咥えたタバコがチンピラを思わせる姿だった。しかし、それ以上に目立つのが彼が背負っている大きな十字架だろう。

 

 

「誰がチンピラや坊主。ワイは職業は牧師やで」

 

 

男の自己紹介に、その場に居た者達は顔を見合わせた後に口を開いた。

 

 

「貴殿の姿から神に仕える身とは思えんのだが」

「そもそも神父や牧師がタバコを吸うな」

「と言うか牧師は職業じゃないよな」

「面白い男だな!」

「主よ、世間は偏見と思い込みに満ちています」

 

 

セイバー、ランサー、ウェイバー、ライダーの順番にコメントを溢し、ウルフウッドは嘆きとも拗ねた様にも聞こえる愚痴を溢した。

それをクスクスとアイリスフィールは笑ってみていた。

 

 

「なんや、姉ちゃん。ワイがそんなに面白ろいんか?」

「ああ、うん。違うの……知ってる人に凄く似てると思ったら、つい……アナタ程、お喋りな感じじゃないのに……不思議ね」

 

 

ウルフウッドの問い掛けにアイリスフィールはやんわりと否定をしつつ笑みを溢した理由を話す。

ウルフウッドと自身の夫である衛宮切嗣が何処と無く似ていると感じていたアイリスファール。

実際にそれは間違いではなく、どちらも幼い頃から血と硝煙の臭いのする場所で生きていたという事実がある。尤もウルフウッドの方が過酷な環境にいた事は知る由もないのだが。

 

因みに仲睦まじく話すウルフウッドとアイリスフィールを狙撃用のライフルのスコープから見ていた切嗣はウルフウッドに照準を合わせて狙撃しようとしていたりする。もっとも狙い撃ちした所でウルフウッドは確実に避けるのだが。

 

今回の聖杯戦争において切嗣は最大の敵となるウルフウッドをまだ甘く見ていた。

 

 

 




『ニコラス・D・ウルフウッド』

「TRIGUN MAXIMUM」において、主人公ヴァッシュ・ザ・スタンピードの相棒にしてもう一人の主人公と言える存在。エセ関西弁を喋り巨大な十字架を担ぎ、牧師業をしながら旅をしている。牧師を自称しているが劇中でそれらしい振る舞いはかなり少ない。通称『テロ牧師』

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