間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。
一人は黒いパーカーを着た白髪の男。
もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人。
白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。
「ぐっ……がっ……」
呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。
体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に。
しかし雁夜は詠唱をやめなかった。
雁夜には果たさねばならない誓いが有った。
叶わなければならぬ願いが思いが有った。
守らねば成らぬ少女が居た。
それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた。
唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らした。
召喚に上手くいっていたのか、隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。
「ほほう、このワシをバーサーカーのクラスで召喚せし者は貴様というわけか。ワシは東方不敗!マスターアジア!」
「お、お前は俺が召喚したサーヴァントなのか。し、しかしバーサーカーなのに会話が成り立つなんて……」
魔方陣の中から現れたのは銀髪のおさげ髪の老人だった。しかし、その老人の体は異常なまでに鍛えられた者であると、雁夜は一目で理解した。
「与太者にワシは狂っていると評されたから、あながち間違いではないか。して、マスター……いや、ややこしいな名を教えろ」
「あ、ああ……アンタも名前にマスターが付いてるならややこしいな。俺は間桐雁夜……お前のマスターだ」
東方不敗の問いに雁夜は名乗ると同時に自身の令呪を見せる。
「ならば、雁夜よ。ワシのマスターたる貴様に問おう。貴様は聖杯に何を望む?」
「お、俺は……桜ちゃんを助けたい……そして桜ちゃんを売った遠坂に復讐を望む!」
雁夜の叫びに東方不敗は瞳を閉じ、思案する様に口を閉じた。そんな雁夜の叫びを嘲笑うように臓硯は笑い声を抑えられなかった。
「貴様に雁夜の何が分かる……この叫びは魂の叫び、それが分からぬ愚か者が口を挟むでない、馬鹿者」
「使い魔ごときがほざきよるわ。精々、ワシを楽しませるが良いわ」
東方不敗と臓硯はバチバチと睨みあう。東方不敗は臓硯をウォンと同じく、利が一致している限りは協力関係にあるが決して心を許してはいけない存在と認識し、臓硯は東方不敗を只のサーヴァントではなく、この聖杯戦争最大の驚異と認識していた。
◆◇◆◇
倉庫街では激しい戦いが繰り広げられていた。
二人の騎士がお互いの技と力をぶつけ合っていて、一人は長短異なる二本の槍を操るランサー。
対するは小柄で可憐な少女でありながらも最優のセイバー。
どちらも互いに英雄を冠する名を持つサーヴァント。
戦いは一進一退の互角。
「流石だな、セイバー。最優のサーヴァントの名に違わぬ見事な力だ」
「貴殿の槍捌きこそ称賛に値する。貴方のような騎士との勝負に名乗りすら許されないことが悔やまれる」
「それは光栄だなセイバー」
互いの技を讃え合うセイバーとランサー。
しかし、その戦いに更なる乱入者が現れた。自分のマスターを引き連れて(無理矢理)現れたライダーである。
そしてライダーは驚くべき提案をする。
なんとライダーはセイバーとランサーを配下に加えようと勧誘したのだ。
「俺が聖杯を捧げると決めたマスターただ一人。それは断じて貴様ではないぞライダー!」
「そもそも貴様はそんな事を言いに現れたのか。戯れ言が過ぎるぞ!」
「よくぞ、言った!それでこそ人類史に名を残す偉大な英霊と言うものよ!」
ライダーの誘いを断ったランサーとセイバーの言葉を褒め称える大声。突如、会話に加わった人物にセイバーとランサーの警戒心が上がる。
「何者だ!」
「我が名は東方不敗マスターアジア!バーサーカーのサーヴァントよ!貴様等の闘いぶり実に見事なものよ。武人として血が沸き上がったわ!」
セイバーの問いかけに笑いながら答える東方不敗。ライダー同様に闘いに乱入されたという思いが強かったが、東方不敗は闘いそのものを誉めていた為にさほど反感は買っていなかった。
「ほう、強そうな爺様だ。どうだ、爺様も我が軍勢に加わらぬか?」
「ワシを従わせたくばワシに打ち勝ち、膝を折らせてみせよ。尤もワシに土を着けたのは我が弟子だけだがな」
「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」
「くっ……なんて圧だ……」
「東方不敗とは知らぬ名だが、この気配、ただ者じゃない……」
ライダーはセイバーとランサーに断られた直後にもかかわらず、東方不敗を自分の部下に誘おうとした。東方不敗はそれを断ると同時に闘気を高める。それを間近で浴びたウェイバーは腰を抜かし、セイバーとランサーは東方不敗が改めてただ者ではない事を再認識していた。
「いつまで、じゃれあっている雑種が。天上天下で唯一の王たる俺を差し置いて、その不敬。万死に値する」
「貴様がワシを殺すだと?直接向かい合うのが怖くて離れた位置から話し掛ける臆病者がか?ヌハハハハハハハっ!!」
一連のやりとりを見ていたアーチャーのサーヴァント、ギルガメッシュは高い鉄塔の上から東方不敗達を見下ろしていたが東方不敗に指摘された事にビキッとこめかみに青筋が走る。
「不敬を詫びるどころか笑い嘲るその態度、せめて散り様で俺を興じさせよ」
「やってみせい、未熟者が!この程度でワシを殺すとはな!笑止千万!」
怒りに震えるギルガメッシュはゲートオブバビロンから数多の宝具を解き放つ。しかし、一同はあり得ない物を見る事となる。
「フッハハハハハハハハハハハッ!!」
「飛んできた武器を足場にして空を駆けている!?」
「どんな修練を積めばあんな事が出きるんだ!?」
「爺様め、相当の英霊と見受けるぞ」
「めちゃくちゃだ!」
東方不敗は飛来する剣や槍、斧、矢……様々な宝具を足場に走り抜け、ギルガメッシュに肉薄する。
高笑いしながら空を駆ける東方不敗にセイバー、ランサー、ライダー、ウェイバーの順にコメントを溢す。
「な、なんだとっ!?」
「でぇぇぇいやぁぁぁぁぁっ!!」
更に東方不敗は腰に巻いた布を振るうとギルガメッシュの背後の宝具を払い落とす。と同時に、鉄塔に立っていたギルガメッシュを蹴り落とす。
「でりゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐほぉぁ!!?」
東方不敗は鉄塔から地面に叩き落とされたギルガメッシュを追って追撃の手刀を叩き込んだ。その威力はギルガメッシュは愚か、コンクリートの地面にすらクレーターを作る程だった。
「ふん、飛び道具にばかり頼るから、その様よ。トドメじゃ!!!」
「許さんぞ!許さんぞっ!我に傷をぉぉ!!!貴様は塵も残さん!エヌマ……」
《令呪をもって命ずる。王よ、撤退です。今すぐその場を離れて下さい》
東方不敗がギルガメッシュにトドメを刺そうとし、ギルガメッシュは自身の最大宝具を使おうとしたが、ギルガメッシュのマスターである時臣は令呪を使い、強制的に撤退をさせた。
「ふん、退いたか。手負いの獣は厄介になるから仕留めておきたかったが……貴様等はどうする?」
姿を消したギルガメッシュに舌打ちをしながら東方不敗は残ったセイバー、ランサー、ライダーに問い掛ける。
「今夜は退かせていただきたい。我がマスターも少々、気圧されてしまった様だ」
「主より、撤退を指示された。俺も退かせてもらおう」
「余も今夜は満足させて貰った。マスターも爺様の強さに気絶してしまったのでな」
「引き際を誤らぬも武人には大切な事よ。この決着は次の機会につけてくれる。貴様等、サーヴァント全員を倒した暁には東西南北中央不敗のスーパーアジアと名乗ってくれよう!」
セイバー、ランサー、ライダーに続戦の意思はなく、東方不敗も満足げに頷いた。更に東方不敗は過去に名乗ろうとした完全無欠の名を再び名乗ろうとしていた。
これが後に聖杯ファイトと呼ばれる聖杯戦争の始まりの夜だった。
『東方不敗/マスターアジア』
機動武闘伝Gガンダムの登場人物。
主人公ドモン・カッシュの師匠で流派東方不敗という拳法の流派を完成させた武道の達人で、その拳法の冴えは生身の体と腰布のみでモビルスーツを粉々に破壊するほどである。
全てのアニメキャラを強さでランキングした際に最強人類に確実にピックアップされるお方。
スーパーロボット大戦Fでは素手で機械獣を破壊するなど原作のインパクトをプレイヤーに与える。
新スーパーロボット大戦では異星人である事をカミングアウトした(今作のみのオリジナル設定)
スーパーロボット大戦Jに至っては生身で戦闘に乱入しアークエンジェルにダメージを与え、ナデシコに飛び移って攻撃を仕掛けるといったコーディネーターもビックリな事を仕出かす。
余談だがナデシコのディストーションフィールドを生身で突破したのは歴代シリーズでも東方不敗のみ。
次回、召喚するサーヴァントは?
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