雁夜おじさんが○○を召喚しました   作:残月

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オカマ拳法

 

 

間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。

 

一人は黒いパーカーを着た白髪の男。

 

もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人。

 

白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。

 

 

「ぐっ……がっ……」

 

 

呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。

 

体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に。

 

しかし雁夜は詠唱をやめなかった。

 

雁夜には果たさねばならない誓いが有った。

 

叶わなければならぬ願いが思いが有った。

 

守らねば成らぬ少女が居た。

 

 

 

それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた。

 

唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らした。

 

召喚に上手くいっていたのか、隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。

 

 

「アン、ドゥ、オラァ!」

 

 

すると何故か地下室には謎の歌声が響いてきた。

 

 

「な、なんだ……この歌は……」

「アン、ドゥ、クラァ!」

 

 

雁夜の呟きにその歌声の主は光の中から姿を現した。

 

 

「ジョーダンじゃ、ないわよう!」

「なんだ、お前!?バーサーカーかっ!?」

 

 

魔方陣から現れたのはバレリーナの用な格好をした大柄な男だった。

 

 

「がーはっはっはっ!そうよ、アチシはMr.2ボンクレー!バーサーカーとして喚ばれたわん!」

「オ、オカマ?」

 

 

雁夜はボンクレーの喋り方や仕草から思わず頭を過った単語を口にしてしまう。しかし、それはボンクレーを怒らせる言葉ではない。

 

 

「あーはっはっはっ!そうよ、アチシはオカマ!オカマは男であり女である=最強なのよーうっ!」

「こ、こんなんで戦えるのか……」

 

 

バカにされた筈の言葉に同意し、尚且つ自身を最強と叫ぶボンクレーに雁夜は不安しか抱けなかった。

 

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

 

倉庫街では激しい戦いが繰り広げられていた。

二人の騎士がお互いの技と力をぶつけ合っていて、一人は長短異なる二本の槍を操るランサー。

対するは小柄で可憐な少女でありながらも最優のセイバー。

どちらも互いに英雄を冠する名を持つサーヴァント。

戦いは一進一退の互角。

 

 

「流石だな、セイバー。最優のサーヴァントの名に違わぬ見事な力だ」

「貴殿の槍捌きこそ称賛に値する。貴方のような騎士との勝負に名乗りすら許されないことが悔やまれる」

「それは光栄だなセイバー」

 

 

互いの技を讃え合うセイバーとランサー。

しかし、その戦いに更なる乱入者が現れた。自分のマスターを引き連れて(無理矢理)現れたライダーである。

そしてライダーは驚くべき提案をする。

なんとライダーはセイバーとランサーを配下に加えようと勧誘したのだ。

 

 

「俺が聖杯を捧げると決めたマスターただ一人。それは断じて貴様ではないぞライダー!」

「そもそも貴様はそんな事を言いに現れたのか。戯れ言が過ぎるぞ!」

 

 

セイバーとランサーに断られたライダー。そしてそこに新たにアーチャーまで現れたのだ。黄金の鎧を身に纏ったアーチャーは『王の財宝』から無数の宝具を撃ち放ち始め、セイバー、ランサー、ライダーを追い詰め始める。圧倒的な力の前に満身創痍になり始めたセイバー達だが次の瞬間、アーチャーに迫る一つの影があった。

 

 

「白鳥……アラベスク!」

「ぐはあっ!?」

 

 

突如現れた人物に蹴り飛ばされたアーチャーは立っていた鉄塔から蹴り落とされる。現れたのはバーサーカーとして召還されたボンクレーだった。

 

 

「貴様……バーサーカーか。分かりやすい道化だな」

「あーら、かわいい顔して言うじゃないのよセイバーちゃん!」

 

 

突如、現れたのボンクレーが間違いなくバーサーカーだと判断したセイバー。これでキャスターだったらセイバーは間違いなく見る目がないだろう。

 

 

「この道化が……よくも我の顔に汚ならしい脚を叩き込んでくれたな!」

 

 

そう叫んだアーチャーの背後に数多の宝具が展開される。その光景にセイバー、ランサー、ライダー、ウェイバー、アイリスフィールも驚愕した。

その圧倒的な力に絶望したかと思えばボンクレーはコートを棚引かせながら背を向けた。

 

 

「……ここで逃げるは オカマに非ず!命を賭けて娘を助けようとしているダチを見捨てて、明日食うメシが美味ェかよ!」

「なんと……」

「他の誰かの為に命を懸ける……騎士その物ではないか……」

「なんと見事な男……いや、漢か」

 

 

ビシッとポーズを決めて叫ぶボンクレー。その義侠心にセイバー、ランサー、ライダーは感嘆に心を震わせていた。

 

 

「かかって、こいや」

「不愉快だ。せめて散り様で我を楽しませろ」

 

 

睨みを効かせたボンクレーが気に入らなかったのかアーチャーは宝具を放ち、放たれた宝具は次々にボンクレーの居た地点に着弾し、砂埃を舞わせる。

これはボンクレーの敗北は必須だろう、とそれを見ていた者全員が同じ感想を抱いていた。

 

 

「ジョーダンじゃ……ないわよぅ……」

「ほう……中々に頑丈なようだな」

 

 

数多の宝具を浴びて血だらけになりながら立ち上がるボンクレー。そのボンクレーをアーチャーは少し愉快な物を見た様に楽しそうにしていた。

 

 

「だが、無様だな。男にも女にも成りきれない愚かで、ちっぽけな存在にすぎん」

「無様でも構わないわん……でもねェ……アチシは助けたいのよ、桜ちゃんを……親に見捨てられて……捨てられた先でも苦しい思いをしていた、あの娘をね……」

 

 

フラフラと立ち上がったボンクレーは再び、ポーズを決めた。

 

 

男の道をそれるとも

女の道をそれるとも

踏み外せぬは人の道

散らば諸共、真の空に

咲かせてみせようオカマ道

 

 

そのポーズとセリフに何故かセイバー、ランサー、ライダーは涙が止まらなかった。何故かは分からないがボンクレーの言葉が心に響いたらしい。

 

 

「雑種……名を聞こうか?」

「Mr.2ボンクレー……親しい友達はボンちゃんって呼ぶわ」

 

 

アーチャーの問い掛けにボンクレーはオカマ拳法の構えを取りながら答えた。それが合図だったかのようにボンクレーとアーチャーの戦いが火蓋を斬って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散らば水面に いとめでたけれ友の華

 

 

 

 

 

 

 




『Mr.2 ボンクレー』
「ONE PIECE」に登場するオカマ。オカマの上に珍妙な格好や言動をしているためイロモノキャラ……と思いきや漢気溢れる性格をしている。

悪魔の実の能力は『マネマネの実』の物真似人間。
戦闘向きの能力では無い為に、その実力は身体能力のみで培われている。しかし、その強さは主人公各と勝るとも劣らない。

次回、召喚するサーヴァントは?

  • ロリコン神父
  • 深紅の呂旗
  • 地獄兄弟
  • 京都焼き討ち木乃伊男
  • 神の半身の悪魔

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