間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。
一人は黒いパーカーを着た白髪の男。
もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人。
白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。
「ぐっ……がっ……」
呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。
体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に。
しかし雁夜は詠唱をやめなかった。
雁夜には果たさねばならない誓いが有った。
叶わなければならぬ願いが思いが有った。
守らねば成らぬ少女が居た。
それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた。
唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らした。
召喚に上手くいっていたのか、隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。
その直後だった。光の中から何故かスクーターに乗った白髪頭の男性が飛び出してきたのだ。
男はスクーターに乗ったまま地下室の壁に激突し、痛みから地面をのたうち回っていた。
「ぐあっ!痛ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?なんでジャンプ買った帰り道が急に地下室?」
「おい……これがほんとうに英霊なのか?」
無様に転げ回る白髪頭の男に雁夜は不安しか感じなかった。
◆◇◆◇
「つまりなんだ……その聖杯戦争って奴で六人ぶっ殺しゃ願いが叶うってか?どんな物騒なドラゴンボールだよ」
「そんな世界中の大冒険みたいな話じゃない。兎に角、聖杯戦争に勝ち進まなきゃ俺の願いは叶わないし、お前も元の世界には帰れないぞ」
雁夜は自身が召喚したサーヴァント『坂田銀時』に聖杯戦争の何たるかを教えていた。通常、召喚された段階で聖杯戦争や現代の事は頭の中に教えられる筈だが、何らかの不備で銀時には情報が与えられなかったのだろうと雁夜は考える。
それらの理由があり、雁夜は銀時に聖杯戦争や魔術師の事を説明したが銀時は鼻をほじっていたので真面目には聞いていなかったのだろう。だが、帰れないと聞いた銀時は怒り狂う。
「ふざけんなよ、おい!呼び出した時点で強制契約って魔太郎でもしねぇわ!大体、なんだよ聖杯戦争って!中2病患者の集まりか!」
「俺だって、まさかお前みたいのを喚び出すだなんて思わなかった!なんだよ、江戸の町に宇宙人が闊歩してる世界って!」
叫ぶ銀時に雁夜も叫んだ。聖杯戦争の事を教えた後に銀時の正体が何者なのか確認した所、全くの異世界みたいな所から来たと言うのだ。
時代は江戸で宇宙人の来襲により侍は滅んだ。
天人と呼ばれる宇宙人が江戸の町を開拓し、ちょんまげのサラリーマンが町を行き交い、江戸の空には宇宙船が飛んでいるのだと。
この話を聞いた雁夜は三流SF映画の設定みたいだ、と思ったが銀時の説明から絵空事とは思えなくなってしまった。
「早く帰らないとマズいんだよ!TSUT○YAで借りてるDVD明日までに返さないと延滞料金が掛かっちまう!」
「それどころじゃないのはこっちだ!早く、聖杯を得ないと桜ちゃんが……」
銀時のふざけた発言にキレ気味の雁夜は口を滑らせてしまった。この事は黙っていようと思っていたので雁夜も口にしてから、しまったと手で口を塞いだが時既に遅し。
「そういや、何でも願いが叶うのに、雁夜の事は聞いてなかったな……あれ、聖杯の力を使って童貞捨てて大人になろうと……」
「話すから真面目に聞いてくれ……」
茶化そうとしてくる銀時を一発殴った後に雁夜は口を開いた。
間桐。蟲を使った魔術。桜。臓硯。遠坂。逃げ出した自分。桜を救うべく聖杯戦争に参加した経緯。脆弱な魔力回路を補うため、滅茶苦茶な修行を続け体がボロボロになった事の全てを。
全てを話し終えた雁夜が一息つくと、銀時は溜め息混じりで息を吐いた。
「なんつーか……初恋拗らせ過ぎだろ、アンタ。それに願いにしたって……桜を助ける、葵に笑顔を取り戻すだったよな。その為に時臣を殺すってんなら、完全に矛盾してねぇか?時臣は葵の旦那で、桜のオヤジなんだろ。ソイツを殺しちまって、本当にソイツ等が幸せに暮らせると思うか」
「そ、れは……」
銀時が指摘したのは雁夜の持つ矛盾した心だった。桜や凛、葵の幸せを願う為に父親を殺す。それは絶対に叶う事の無い願いである事を誰も指摘しなかった。否、出来なかった事だ。
臓硯は雁夜の苦しむ姿に愉悦を感じて何も言わなかった。心が折れた桜は何かを望む心が失われ、願望を口にしなかった。その環境下で雁夜に間違いを指摘する者が居なかったのだ。故に雁夜の思考は暴走した。
「ったく……坊主憎けりゃ傘まで憎いってか?」
「銀時……言いにくいが『傘』じゃなくて『袈裟』だ」
真面目な顔をした銀時に雁夜はツッコミを入れた。
「……………………まあ、アレだ。時臣を殺った所で事態は何も変わりゃしねーよ」
「だったら……俺はどうしたら……」
自分の間違いを全力で無かった事にしようとしてる銀時に雁夜はすがる思いで問いかける。
「アンタが桜の希望になってやりゃ良いんじゃねーか?雁夜オジさんよ。遠坂の家でマダオの親父の下に居るより童貞のオジさんに幸せにして貰えばよ」
「言葉のチョイスをちゃんとしてくれたら感動してたよ、間違いなく」
マトモな説得に掛かった筈の銀時の言葉は途中から茶化しと下ネタが混在していた。だが、そんな雰囲気も雁夜には頼もしく思えた。
「頼まれりゃ何でもするのが万事屋銀ちゃんだ。聞くぜ……雁夜、アンタの願いは何だ?」
「俺の、願いは………桜ちゃんの幸せだ」
雁夜の初恋や時臣への恨みを抜きにした純粋な想い。それを聞いた銀時はニッと笑みを浮かべた。
「そんじゃあよ、いっちょやってみるか……暗黒武術会って奴をよ。トロフィーの聖杯目指してな」
「聖杯戦争だ……どんどん離れてるぞ」
銀時が腰の木刀に手を添えて頼もしい雰囲気でそう告げた。雁夜はそんな銀時に笑みを溢さずにはいられなかった。
次回、召喚するサーヴァントは?
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ロリコン神父
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深紅の呂旗
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つぎ、次鋒でろ!
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京都焼き討ち木乃伊男
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神の半身の悪魔