間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。
一人は黒いパーカーを着た白髪の男。
もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人。
白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。
「ぐっ……がっ……」
呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。
体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に。
しかし雁夜は詠唱をやめなかった。
雁夜には果たさねばならない誓いが有った。
叶わなければならぬ願いが思いが有った。
守らねば成らぬ少女が居た。
それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた。
唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らした。
召喚に上手くいっていたのか、隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。
「クククッ……まさか、私が呼ばれるとはね。しかし、召喚する場所が地下で助かるよ。私は太陽が苦手なのでね」
「バ、バーサーカーなのか……?」
光の中から現れたのは金髪の英国人の様な男。黄色を基調とした服にハートの形の飾りが散りばめられた服。そして何よりも異様に感じる妙な色気が感じられた。雁夜は思わず、自身が召還したサーヴァントに跪こうとすら思ってしまう程のカリスマを感じさせた。
「そう。私の名はDIO。ディオ・ブランドーだ、マイマスター」
「あ、ああ……俺は間桐雁夜だ」
和かに、穏和な口調で雁夜に歩み寄るDIO。先程までカリスマを感じさせたDIOだが、今の雁夜は違う印象を与えていた。
「魔術か……このDIOも知らない『力』だ。どうだろう、一つソレを私に見せてみてはくれないかい?」
DIOの語り掛けてくる言葉は雁夜のささくれた心に入り込む様だった。心が安らぎ……危険な甘さがあると雁夜は直感的に感じてしまったのだ。
「あ、あ、ああ……」
「無様よな、雁夜よ。DIOと申したな。ワシが雁夜の代わりにマスターとして……」
「下がれ、下郎が。力ある者に擦り寄ろうとするクズめ」
DIOの恐るべしカリスマに恐怖して動けない雁夜に代わり、臓硯が歩み寄った。あわよくば目の前のサーヴァントを都合よく動かそうとしているのは明らかだった。しかしDIOは臓硯の欲に塗れた表情に嫌悪を示し、拒絶した。
「ふん、プライドが高い様だな。だが、ワシの命令に背け……がっ!?」
「私の『世界』は何者の支配も受けん」
突如、臓硯の体に穴が開く。ビデオ再生のコマ落としの様に突如、まるで拳に貫かれた様な形に抉られたのだ。端から見ていた雁夜ですら、何が起きたか理解不能だった。
そんな雁夜の恐怖心を感じ取ったのかDIOは雁夜に諭す様な口調で語り掛ける。
「雁夜よ。恐怖を克服することが「生きる」事なのだよ。私に仕えたまえ。何、不安がる事はない。私に仕えるだけで他の全ての安心が手に入るのだぞ」
「あ、ああ……」
雁夜は既にDIOから視線を晒す事が出来なくなっていた。DIOの発言が既に主従を逆転させる提案である事に雁夜は気付かず、その言葉に引き寄せられていた。
「私に任せたまえ。私に仕え、悩みを解消してくれる聖杯さえ有れば私はキミの願いを叶えてやれる。何を悩む事がある?永遠の安心感を与えてやろう。私の止まった『時』の中にキミも入れてやろうじゃないか」
DIOの語らいに雁夜は争う術を持たなかった。DIOのカリスマ。そして普通の人間では視認する事ができない筈のDIOの背後に浮かび上がる『スタンド』の姿を見てしまった雁夜に断ると言う選択肢は存在しなかった。
この契約は後に世界最狂のサーヴァントの誕生として受け継がれる事となる。
『ディオ・ブランドー』
『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズの黒幕的な存在。
見た目は英国紳士だが、内面は冷徹にして冷酷。石仮面を被り、吸血鬼と化してからは人を殺す事に躊躇いを感じなくなり、力による支配を目論む様になる。
また、悪のカリスマと称され、彼の力に引き寄せられた者も少なくない。
部下に寛容に接している風に見えるが実際には自身に逆らえない様に『肉の芽』と呼ばれる枷を植え付けるなど側近以外は信用をしていない。
第三部ではスタンド能力に目覚め、『時間を止める』能力を持つ『ザ・ワールド』で世界を支配しようと目論んだ。
ジョースター家と深い因縁があり、ジョナサン・ジョースターと死闘を繰り広げ(この際、相打ちになった)孫(ジョセフ)玄孫(承太郎)とも戦う。最後は承太郎に敗北し、吸血鬼の弱点である日の光を浴びせられ死亡。
どのシリーズでもDIOの影響が少なからずあり、物語の全ての元凶とも言える。
次回、召喚するサーヴァントは?
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ロリコン神父
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深紅の呂旗
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最強の指
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影の王子
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神の半身の悪魔