雁夜おじさんが○○を召喚しました   作:残月

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紙袋の闇医者

 

間桐家の屋敷の地下に二人の男の姿があった。

一人は黒いパーカーを着た白髪の男。

もう一人は和服を着たどこか化け物染みた雰囲気を纏った老人。

白髪の男は魔法陣らしきものに手をかざしながら呪文のようなものを詠唱していた。

 

 

「ぐっ……がっ……」

 

 

呪文の言葉を詠唱する度に、白髪の男『間桐雁夜』の体に激痛が走った。

体の至る所から血を流し、端から見ている者の方が気分を害してしまう程に。

しかし雁夜は詠唱をやめなかった。

雁夜には果たさねばならない誓いが有った。

叶わなければならぬ願いが思いが有った。

守らねばならぬ少女が居た。

 

 

それら全てが雁夜を突き動かし、今にも壊れそうな体を支えていた

唱えていた呪文が終わり、地下室に描かれた陣から光が増し、地下室を照らした。

召喚に上手くいっていたのか隣に居た老人『間桐臓硯』は皺だらけの顔を歪ませ笑った。

 

 

光が収まり、描かれた陣の中心には自身が召喚したサーヴァントが居た。

 

 

「ん、ここ何処だ?」

 

 

魔法陣の中心に現れたのは白衣を纏い、妙に身長が高い男。それ以上に際立っているのがサーヴァントの顔だった。

サーヴァントは顔に何故か紙袋を被っているのだ。

 

 

「はて……此処は……おや、そこのアナタ!」

「え……お、俺?」

 

 

サーヴァントは雁夜の姿を視界に納めるとツカツカと歩みより、雁夜の顔に手を添える。

 

 

「顔の半分以上が壊死しています。他にも体の節々にガタが来てますね……」

「お前……わかるのか!?」

 

 

一目見ただけで雁夜の体の様子を把握したサーヴァントに雁夜は驚愕した。

確かに雁夜の体は刻印虫で内外問わずにボロボロになっている。

 

 

「私は医者ですからネ。では、早速手術をしなければ!」

「え、いや!?ちょっと待て!」

 

 

言うや否やサーヴァントは雁夜の手を引いて何もない空間から扉を出して、その中へと入ってしまう。そして扉を閉めると同時に扉はスッと姿を消した。

その光景に驚いたのはその場に残された臓硯だった。

 

何もかもがイレギュラー。

そう言わざるを得なかった。

まず召喚したのがバーサーカーなら狂化のスキルで喋ることは出来ない筈。にも拘らず先程のサーヴァントは普通に喋る。と言うか寧ろ饒舌だった。

他にも雁夜の体を一瞬で診察し、何もない空間から扉を出現させて別の場所に移動するなど大魔術の領域だ。

それを先程のサーヴァントは事無げもなくごくナチュラルに使用したのだ。

これを驚かずして何を驚けと言うのか。

 

 

「はーい!手術完了です。保険証はいりませんよ?」

「し、信じられない……まさか体が元に戻るなんて……」

「な、なんじゃと!?」

 

 

そして臓硯は更に驚かされる事になった。なんと雁夜の体が元に戻っているのだ。雁夜の体には刻印虫と呼ばれる虫が寄生している。それが雁夜の魔術回路を形成しているのだが、このバーサーカーは刻印虫を取り除いた上に魔術回路のみを残すと言うビックリ手術を成功させているのだ。最早、出鱈目の領域である。

 

 

「そ、そうだバーサーカー!この家に助けたい娘が居るんだ!お前のその医者としての腕前に頼みたい!」

「そう言われて医者として断れませんネ。そして患者がいるなら赴くのが医者の本分です!」

 

 

そう言うと雁夜とサーヴァントは地下室から出ていってしまう。臓硯はビックリ手術を完工したサーヴァントに驚いたまま呆然としていた。

これが臓硯の命運を分けた瞬間だった。

 

雁夜とサーヴァントは寝ていた桜を起こすと簡単に事情説明。その後、即手術となった。

そして桜の体を治すと桜の体からとんでもない物が出てきた。虫である。

桜の心臓と同化する様に虫が寄生していたのだ。それを確認したサーヴァントは蟲を除去し、桜の心臓を蘇生した。

一方の雁夜は臓硯が桜を苦しめる為に虫を仕込んだと判断し、苛つきと共に桜に寄生していた虫を殺した。

 

 

「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「な、なんだっ!?」

 

 

雁夜が虫を殺すと同時に地下室に居た筈の臓硯の悲鳴が轟く。雁夜は知らなかった事だが桜の心臓に寄生していた虫は臓硯の体を形成している虫達の本体。つまりは臓硯唯一の弱点だったのだ。臓硯はそれを誰の目の届かない場所へと隠そうとしたのだが今回はそれが仇となった。

雁夜は知らぬ内に憎い敵の一人を討ったのだった。

 

 

「ふぃー……手術完了です」

「!桜ちゃんは!?」

 

 

紙袋の上から汗を拭う仕草を見せるサーヴァントに詰め寄る雁夜。

 

 

「もう大丈夫ですヨ。あの娘の中の虫は全て取り除きました。今は麻酔で眠っていますが起きれば元気になる筈です。しかし……」

「……何かあるのか?」

 

 

何処か含みのあるサーヴァントの発言に雁夜は眉を潜める。

 

 

「心の病は外科医じゃ治せません。後はアナタ次第ですヨ」

「…………やはり桜ちゃんは……」

 

 

先程、桜を起こした時にサーヴァントは桜に幾つかの問診をしていた。その時に桜の心が壊れかけている事に気づいたのだ。

 

 

「やはり桜ちゃんは葵さんの所に返すべきなんだ……」

「……それは違いますヨ」

 

 

グッと拳を握った雁夜だがサーヴァントはそれを否定した。

 

 

「あの娘……桜さんが今まで壊れなかったのは雁夜さん、アナタが居たからなんですよ。今さら、元の家に返したから治るとは思えません」

「なら……どうすれば良いんだ!?」

 

 

サーヴァントの発言に雁夜は声を荒立てる。するとサーヴァントは雁夜の肩に手を置いた。

 

 

「それはこれから見付けましょう。聖杯戦争の間なら私もお手伝いしますヨ」

「お前……」

 

 

紙袋を被っているから表情は伺えないが……雁夜には目の前のサーヴァントが微笑んでる気がした。

 

 

「おっと……そう言えば名乗ってませんでしたね」

 

 

雁夜に『お前』と呼ばれたサーヴァントは思い出した様に自分の手のひらにポンと拳を落とした。

 

 

 

「私の名は『ファウスト』クラスはバーサーカーです。こんな成りですが医者ですヨ?」

 

 

ここに契約は完了した。

闇医者のバーサーカーはこの聖杯戦争に何をもたらすのか。

今夜はその物語の序章に過ぎなかった。

 

 




今回は『GUILTY GEAR』シリーズより『ファウスト』でした
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