幻想はやがて現実に   作:のんびり+

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はい、どうものんびり+です。
久し振りの更新ですね。
はい!
それでは今回も、のんびりしていってね!


第七話 後ろの席の少女

 

 時刻は昼下がり。五時限目の授業も中盤に差し掛かろうかといったところだ。数学教師である石田が、抑揚のない声で淡々と問題の解説を行ってる。

 俺はそんな石田の解説を、いつ意識が飛んでもおかしくない極限の状態で聞いていた。

 

 五時限目は、最も奴の活動が盛んになる時間帯。午前を乗り切り疲れた心身、昼食で腹を満たし愉悦に浸った昼休み。そんな気の緩み、満身こそが奴の糧となる。

 奴は待っていたんだ、この状況を。自分のパフォーマンスが最高潮に達するその瞬間まで、静かに爪を研ぎ牙を磨き、確実に獲物を仕留める算段を立てて。

 そう、一度隙を見せれば最後。もう奴の独壇場さ。いかなる策も技も、奴には通用しない。後は時間の問題だ。じりじりと追い詰められる、崖っぷちまで。

 まるで、蜘蛛の巣に引っ掛かった蝶のように。深く絡まった糸に自由を奪われた蝶は、もう待つしかないのだ。忍び寄る捕食者の牙が、その身を穿つのを。

 

 もう……駄目だ。俺は背後で荒ぶる大波を見て悟った。後一歩でも下がろうものなら、俺は崖から落ちて荒波に飲まれる。下がらずとも、いずれは前方より迫り来るる捕食者(プレデター)の餌食になる。退路はない。完璧にチェックメイト、盤はひっくり返らない。

 しかし、負け方は選べる。同じ負けにしたって、意味は違う。

 結果が全てだと言い張る奴がいるが、俺はそうは思わない。結果へと辿り着くまでのプロセスにこそ、全てが詰まっている。

 そう、結果あっての過程ではない! 結果を築くプロセスがあるからこそ、結果は成り立つのだ!

 

 お前に決定権はない。俺の最後は俺が決める! 貴様なんぞに終わらされてたまるか!

 覚悟を決め、俺は跳んだ。思いっきり、ベッドに倒れ込むみたいに、背後の大海へ。なんだか気持ち良い。晴れやかな気分だ。これが有終の美ってやつなのかな。

 

「じゃあこの問題を……流先できるか? おーい流先、――ざき、――き」

 

 途切れ行く意識の中、そんな声が聞こえた。すみません先生、俺もう限界っす。

 そうして、まるでテレビの電源のように、俺の意識はプツンと切れた。

 

 

 

 

 肩を揺すられた。顔を上げると、眼鏡をかけた男と目が合う。

 

「おはよう」

 

「え、誰?」

 

 どっと、笑い声が上がる。見渡すと、クラスの生徒達が笑いながらこちらを見ていた。

 そして、私は瞬時に状況を把握すると共に、失っていた記憶を取り戻す。

 そうだ。これと同じ体験を、私は前にもしている。新太という男との入れ替わりを。

 なのに、私はその事を今の今まで忘れていた。どういう事なの? というより、これって完璧に異変じゃない!

 

「で、流先。あの問題は解けるのかね」

 

 眼鏡をかけた男は黒板まで行くと、チョークでコンコンと式を叩いた。

 正直、私の心境としては問題どころじゃないのだが、仕方ない。天才の片鱗ってやつを見せつけて上げるわ。

 えーと、何あれ? 二と五って数字以外は訳分からん符号じゃないの。そんなの解ける訳ないじゃんよ! 何考えてんの全く。

 私が途方に暮れていると、不意に腰あたりをつつかれた。そして、振り向くより早く誰かが小声――女の子の声だ――で私に問題の答えを教えてくれた。

 

「エックスイコール、マイナス二分の五」

 

「はい、正解です」

 

 ふぅ、助かった。名も顔も知らないけど、感謝するわ後ろの人!

 

 それから十分程で鐘の音が鳴り、授業は終わった。

 さっきの人に礼を言わなきゃ。

 この前は結局いつも通りだったから、今回は自然に、男っぽくしよう。そうだ、魔理沙っぽいしゃべり方をすれば良いんだ。

 後ろを向くと、少女と目が合った。肩まで伸びた黒髪にたれ目。おっとりしたオーラを纏った少女だ。

 

「あー、さっきは助かったぜ」

 

「いいえ、気にしないで下さい。後、居眠りはいけないんですよ」

 

 少女はクスクスと笑いながら言った。

 

「おう、今度から気をつけるんだぜ」

 

 そう返事をすると、少女は再びクスクスと微笑んだ。

 

「そのしゃべり方どうしたんですか?」

 

「なんか変なのぜ?」

 

「おかしいですよ、っふふ」

 

 少女はツボにハマってしまったらしく、笑いに悶えている。

 どうやら、魔理沙のしゃべり方は外の世界だとおかしいようだ。

 誤算だったわ。侮る事なかれ、外の世界。

 

「なんだか、いつもの流先君とは別人ですね」

 

 ひとしきり笑うと、少女は言った。私程でないが中々鋭い、こいつ出来る。

 

「まあそういう日もあるわ……ぜ」

 

 またいつも通り話すとこだった。危ない危ない。

 しかし考えてみれば、私はこの流先新太という人物像を全く知らない。ちょうど良い機会だし、聞いておこう。

 

「じゃあ、いつもの俺ってどんな感じ?」

 

「うーん、そんなに話しませんが、話しても何だか素っ気なくてすぐ会話が終わってしまいます。だから今日の流先君は、誰かと意識が入れ替わってるみたいです」

 

 なるほど。素っ気ないの。てか、あんた本当に鋭いわね。私程ではないにしろ!

 

 ここで、また鐘が鳴った。

 私は前を向こうとして、ある事を思い出した。

 

「そういえばさ、名前なんて言うの?」

 

 私が聞くと、少女は「酷いですよ!」と怒りながらも教えてくれた。

 

赤葉(あかば)(かえで)です。次はないですからね!」

 

 





はい、ありがとうございました。
ちょっと蛇足が多かったりまとめが雑かもしれませんが、まあ仕方ないですね!

それでは次回も、のんびりしていってね!
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