「え~~っとだな…、よし、俺はビッグバーガーのLセット!! ドリンクはコーラで!!」
「ボ、僕は紅茶だけでいい…かな。さすがにもうレオみたいに食べられないよ。」
「そうだな、俺はハンバーガーセット?というものにしておくか。この後予定があるしな。」
「達也は何にするんだ?」
「俺は、コーヒーとバーガーだけでいい。……以上か?」
「おう、これで全員注文し終えたぜ!」
全員の注文を終え、達也がてきぱきと慣れた手つきで会計を払う。もちろん全員分だ。
「ありがとよ、達也!」
「僕の分もよかったのかな?」
「構わないさ。レオも幹比古にもかなり走らせてしまったからな。詫びとして受け取ってくれ。」
「そ、そんな…!!詫びだなんて!!」
「そうだぜ! 確かにあいつらの目的は達也への挑戦がほとんどだったけどよ!?俺達にも挑んできた奴だっていたし、気にするなよ?」
「…なら、遊びに連れ出してくれたお礼という事でならいいだろ?」
「……まぁ、それならいいんじゃね~か?」
「僕はまだ抵抗あるけどね…。ふぅ~、じゃあ達也、今日は御馳走になるよ。」
これ以上は逆に失礼かと思った幹比古は、踏ん切りをつけるために深呼吸する。しかし、注文したものを持って、席に移動する中、将輝だけは悔しそうに達也を睨む。
達也に驕られた事で、男としてのステータスでも負けている感を見せられたような錯覚を感じた将輝は、この場に深雪がいないとはいえ、あの驕り慣れしている達也の対応にムカついていた。だからか、せっかくのルックスの良さも鋭く睨みを効かせる視線で近寄りがたい雰囲気を醸し出す。
言い遅れていたが、達也たちは解散する前にと、駅近くのファーストフード店に入り、軽く食べる事にしたのだった。
店の中は、もう夕方に近くなってきたので、利用者が多い。特に若者中心に、だ。そしてその彼らはイケメン揃いの達也たちに注目し、声を掛けようかとひそひそと話す。だが、将輝のお蔭で声を掛けられる事もない。
さっきまで追いかけられていた身としては、有難いと、達也は心の中で思った。
「レオ、よくそんなに食べれるね。まだ夕食も食べてないのに。」
「だってよ~?あんだけ走ったら、腹が減るだろ?夕食までは持ちそうにないし、これくらいなら夕食も問題ないぜ!」
「レオが羨ましいよ。僕は…、疲れすぎて喉が通らないよ。」
「そうか?達也はどう思う?」
「俺か?そうだな…、俺も少しは空いているから、レオに一票だな。だけど、限度は弁えておけよ、レオ。」
「ほぉ~~!!」
「………なぁ、司波。」
「なんだ?一条。」
和気あいあいと食べていた達也たちに今まで無言を貫いていた将輝が口を開く。
「司波は言っていたな?”あいつらが勝負をどうしても申し込もうとする根源を調べるために動いていたんだ”って一時的に俺達から離れていた時、何をしていたか…。そして、その理由はここから出た後だとも…。
なぜ、あいつらはあんなに必死に追ってきたんだ?」
ずっと気になっていた事をついに問いただした将輝の台詞に、バーガーを咥えたままレオも話に耳を傾ける。幹比古も飲んでいた紅茶をトレーに置き、聞く態勢を作る。三人が説明を求めていると理解した達也は、一連の行動の説明を始めるのだった。
「俺達に勝負を挑んできた彼らは一言で言えば、利用されていたんだ。俺達のゲームスコアを公開する事で、ゲーマーのプライドを煽って、俺達と勝負するように仕組んだ。」
「利用されただって? でもよ、俺達の目から見てもあいつらは純粋に勝負を挑んできていたにしか見えなかったぜ?…厄介で迷惑しかなかったけどな。」
「…もしかしたらそこにつけこまれたのかも。」
「どういう事だよ?」
「なるほど…。あのゲーマー集団は己の出したゲームスコアが頂点に高得点で決して揺らぐことはないと思っていた。そこに俺達が(ほとんど司波だけどな!!)ハイスコアを出した事で、勝負したくなった。そこに目をつけた何者かが、俺達に勝負を挑むように情報を流したってところか。」
「仮にそうだとして、あいつらに何の得があるんだ?」
「一番はハイスコアを出して、また頂点に咲き戻る事だろう。ただし、それだけで遠路はるばる来ることはない。それならそれで最寄りのゲームセンターでネットを介して勝負を挑めばいいだけだしな。」
「「あ!!」」
達也の台詞で、あそこのゲーム機器は全てネットに接続されていて、全国のプレイヤーのスコアをリアルタイムで記録してくれることを思い出したレオと幹比古。
「行きつけのゲームセンターでもいいのに、わざわざ来た理由。それって…。」
「いろいろあると思うが、俺達をカツアゲしようとしていたのかもしれないな。俺達を倒せば、そのゲームで手に入れた懸賞品を奪えるとでも言ったんだろう。ゲーマーたちは本来ならその商品をもらえるのは俺達だったんだからと思い込み、そしてなおかつ直接叩き潰せる機会を与えられると考え、集まったんだ。」
「そんな屁理屈が通用してどうするよ!!納得いかねぇ~!!」
「だが、同じ野望を持つ者同士が集まれば、力になるのは事実だ。もしあのまま勝負を受けていたとなると、何をされていたかはわからないな…。」
「例えば、こっちが勝っていて、最後の勝負中に向こうが『イカサマだ!!』と訴えたとして、観客はどっちを信用すると思う?」
「え?そりゃ、今まで勝っていたのは全部インチキだったのかって……。あ!!」
「そういう事だ。たとえこっちがイカサマをしていなくて、相手の嘘でも状況をみれば、観客は洗脳心理で嘘を真実だと思ってしまう。しかも取り巻きが更に煽って騒げば、なおさらだ。」
「その前に、俺達が逃げ出した事でそうならずに済んだんだけどな。そうか…、だからあいつらは必死に俺達を追いかけていたのか…。」
「それもあるが、雇われたって事もある。」
「……そう言えば、あいつらは利用されたと言っていたな、司波。誰に?」
「一条、もうここまで来たら分かるとは思うが?ゲーマーを集めるにしても、俺達のスコアだけでなく、情報までリークしているんだ。」
達也の呆れた顔を向けられ、一瞬怒りが込み上げたが、ここで達也にぶつけても自分が未熟者だと晒す事に繋がると頭が働いたおかげで、保つ事が出来た。
そして、これまで情報を整理し、真実に辿り着く。
「何で今まで気づかなかったんだ…。
そうだ、例え俺達のスコアがネットでつながっている影響で見れたとしても、俺達の情報まで入る訳がないんだ! あいつらが俺達へ勝負を挑んだ時、他にもたくさんフードコートにいたのに、真っ先に俺達に近づいて話しかけてきた。ネット配信されるのは、それぞれのゲームのスコアとそのスコアを出したプレイヤーの名前のみ。プレイヤーの顔は一切分からないはずなのに!!迷いなく、俺達に話しかけてきた!」
「そう言われればそうだ! 何で知っていたんだ?」
「……俺達の情報を流した奴が黒幕。俺達はあのゲームセンターには初めて行ったんだ。」
「俺は何回か、行った事あるけどな。確かに、俺ならともかく初の達也や幹比古、一条の事まで知るのは妙だよな?」
「そう…、初めて訪れた俺達の情報を見る事ができ、なおかつ顔も見る事が出来る。そんな事が出来るのは……
…………あのゲームセンターで働く従業員しかできない。」
将輝は拳を握りしめ、怒りが滲んだ表情を見せる。それはレオも幹比古も同様で、達也も不快感を覚える。
はい…。達也たちに刺客(ゲーマー集団)を送り込んだのは、ゲームセンターの従業員でした!
なんてことをしてくれたんだ!!娯楽を地獄に変えてどうするよ!!