謎の存在の強い願いが、その夜、何物かの力によって叶えられた。その願いが届き存在は大層喜ぶ。しかし、それに望まず巻き込まれる当事者にとって、繰り広げられるこの後の事は出来れば忘れたいと願わずにはいられないだろう…。
それほどの衝撃を彼らに与える出来事がこの先に待ち受けていようとは、まだ彼らも眠っていて気付かない。それを是と捉えたのかは知らないが、存在は心躍るような面持ちで意識に入った…。
”さぁ…、始めますよ…!”
★★★
「……ん? ここは一体どこだ?」
気が付くと、木に囲まれた場所に立っていた。
辺りを見渡すと、人工的に作られた山道が見えた。まぁ、人工的と言っても登りやすいように草を切って、土を固めたまさに登山道といった類だ。
しかし、登山に出かけた記憶もない。彼の記憶に最後に残っているのは、眠気を煽るために一般教養の課題をした後、ベッドに入り目を閉じた所で終わっている。
(もしかして……ここは…)
自分の覚えている記憶を探った彼は、思い当たる事があった。前にも似たような事があったからだ。
その時と同じように達也は一高の制服を着ていた。有り得ない服装チェンジに、覚えのない場所…、ここまで来ると達也はここがどこだか理解した。
(念のために深雪を確認しておくか。)
ここは何処なのかという結論はついたが、もしもの場合もある。深雪とのリンクを確認する。すると深雪が近くにいる事も確認できた。それが確信へと変わり、ため息を吐く。
「また夢の中か…。一体誰の夢なんだろうな…。」
以前も誰かの夢の中で巻き込まれてしまった達也はまたしても巻き込まれる感覚を感じて夢の中だが、頭痛に襲われそうになった。
それでもここでじっとしていても夢から覚める事は出来ないので、動くしかない。
達也は近くの山道まで歩き、それに沿って下っていく。登っても人と交流できるとは思えなかったからだ。そして下っていくといきなり樹木が一気に消え、平らな広場が現れた。夢の中だからか、あまり詳細に背景を設定していないのは前と同じだと呑気に思いながら、広場へと進むと、聞き覚えのある声が達也を呼んでいた。
「あ、お~~~い!!達也~~!!こっち、こっち~~!!」
「え!? 達也も来たのかい?」
「………司波、今日はもう会いたくなかったのにな。」
声のする広場の中心へと意識を向けると、そこにはレオ、幹比古、将輝が待っていた。
「レオ、幹比古、それと一条か…。まさかお前達とここで会うとはな。」
「それはこっちの台詞だぜ~。俺、確か…、あ、そうそう、ボクサーになって後もう少しでチャンピオンになるって所で、いきなり周りが変わってこんな広場にいたって訳だ。」
「僕も違う所にいたはずなのに気がついたら、川の中にいて、岸に上がろうと泳いたら広場に辿り着いていたんだ。」
「俺だってな……、良い所だったのに…、渡しそこなってしまった。」
「そうか、深雪へ告っていたのか。」
「!!い、いや…ちが……!!」
「一条~、ここは認めた方がいいぞ?」
「うん、僕もそう思う。なんというか僕でさえ分かるっていうか…。」
「そ、そうか…。はぁ~…、仕方ない。そうだお前達の想像通りだよ。あと一歩で成功するはずだったのにこの場でいつの間にか立ち尽くしていた。」
「お前も懲りない奴だな。」
「ふん、悪いが、司波!! 俺だって本気だ! お前に今度こそ勝って、あの人に俺の思いを伝えてみせるからな。」
「そうか、そうなればいいがな。」
((一条[君]が達也に勝てる感じがしない…。))
レオと幹比古がアイコンタクトで互いに同じ見解だという事を確かめ合ったその時、どこからか声が降ってきた。
”ふふふふふ…。相変わらず面白い人達です~。もっと知りたいな~。”
女の子の声だった。
その声にレオが問いかける。
「誰だ~!? こそこそ隠れてないで出てこいよ~! 」
レオが叫ぶが、辺りが静まりがえるだけ。もう一度呼びかけようかと息を吸い込むレオ。しかし、次に叫ぶ前に四人の目の前に小さな爆発が起きた。一斉にみんなが大きく後ろへジャンプして距離を取る。鋭い視線で爆発した場所を凝視するとそこには、先程までいなかった少女がいたのだった。
「ふふふふふ…! こんにちは~!
皆さん、私と遊んでくださいな?」
ウィンクしながらそう言って現れた少女を見つめる達也たち。呆然とするレオや幹比古達は固まるが、将輝は少女の意図を読もうと意識を集中する。
そして達也はおそらくこの夢を作りだしたこの少女に対し、何をさせるつもりなのかと思考を巡らせるのだった。
達也たちの夢がくっ付いて、またまた再会しましたね。達也たちの前に現れた少女は一体何をしようとしているんだろうか?