「う……や、やめて………こ、困る…困り…ます…! し、柴田………さん……」
何かに魘されて汗を掻いている。
熱があるのか、顔も真っ赤に染めている。
こんな状態で布団の中で眠っている少年は、正しく幹比古自身だ。
夢見が悪いのか、寝心地が悪いのか…。たまに無意識で身体を横にしたりするが、余計に顔色が青に変わっていく。その度に身体を元に戻す。その繰り返しだ。意識がない幹比古を寝かせているのは誰か…はすぐに分かるだろう。
それから数時間後、やっと重く閉ざしていた瞼を開け、魘される夢から解放された幹比古は、ぼやけた視界で木材でできた天井を映し出す。(そもそもここ自体が夢であるんだけど)
心地よい風と木の香りが眠気覚ましのように、幹比古をリラックスさせ、意識が徐々に回復していく。幹比古の家は和風屋敷でもあり、精霊使いという古式魔法を修得する一族なだけに自然の気には敏感である。そしてそれが力でもあり、幼い頃から親しんだものだ。数度寝た状態で深呼吸する。するとぼやけていた視界が完全に復活し、自分が今どんな状態なのかを首を左右に振る事で状況を理解しようとした。本当は身体を起こした方が全体を見渡せていいが、身体に力が入らない。視界は回復しても、身体の方が上に岩でも乗せられているように圧迫された感覚を覚える。更になぜか腕にも力が入らない。寝ていたはずなのにとてつもない疲労感や気怠さが幹比古の身体の自由を奪っていた。
それに、熱いのだ…。
身体中に巡る熱さで全体に汗を掻く。布団も被っているため余計熱が閉じ込められ、余計に汗を掻く。この状況で分かる事と言えば、どうやらここは風呂場ではないという事だけだった。
(…あれ? 僕は何で風呂場ではないと知ってほっとしたんだろう?)
ほっと息を吐き出しながら、疑問が頭の中に浮かび、自分の意識がなくなる前の記憶を呼び起こしていく。
(え~~っと、確か空から落ちて運よく民家に落ちて…そこで、柴田さんに逢って…!!)
順に追って思い出していた幹比古は、倒れる原因になった出来事を思い出し、赤くなっている顔を更に真っ赤にする。体温もさらに上昇する。まさか好意を寄せている少女の魅力の一つを間近で拝んでしまうとはあの時思わなかった。
今でも鮮明に覚えている記憶を振り払おうと動く首を激しく振る。そこにふすまが開く音が幹比古の耳に入る。音がした方へ首を振ると、そこには今まさに思い浮かべていた美月(仮)が立っていた。
「あ、お目覚めです…か?」
「え、ええ…。あの…僕は…」
「貴方様は極度の貧血と湯冷めしてしまった事で気絶してました。それから熱も出されたので看病させていただきました。」
美月(仮)の説明で幹比古はようやく自分が熱を出していたんだと理解した。この気怠さも熱の所為だと思えば納得した。それにあれだけの上空からダイブさせられていたんだ。身体も冷えていたし、緊迫した状態からいきなり湯を被ってしまえば神経が驚いて急激な気の廻りを起こし貧血になっても仕方ない。
…そう幹比古は自分に言い聞かせた。
…決して美月(仮)の豊満な胸を間近で目撃して気絶したのではない、と。
しかし敢えて言っておこう…!
幹比古よ、それが真実なのだと。
ゆっくりとじわじわとフフフな展開に持っていきましょうかね?
次回は幹比古…がんばれ!ドンマイ!(鼻血)