思いもよらず、事件に遭遇した幹比古だったが、俺のお蔭で危機を脱した。そして、二人は宿の前に置かれている茶席に座って、互いの近況報告をし始めるのであった。
「……へぇ~、幹比古は今は、ここで宿屋の亭主をしているのか~。」
「いや、亭主じゃないからね、レオ。ただの居候だよ。」
「どっちでも同じじゃないのか?だってよ、幹比古の話を聞く限り、いい感じに生活しているって印象しか浮かばないんだけど?」
「何で僕の話を聞いてそんな感想が出てくるんだよ…。」
「おいおい、自覚ないのか? さっきからやたらとこの宿屋の美月にそっくりな看板娘との生活の事しか、俺は聞いてないぞ?」
「ええええっ!!」
「……マジで気づいていなかったのかよ、幹比古。」
「…………」
絶句している幹比古を見て、ため息を吐くレオだが、それをいい事にからかったりはしなかった。…エリカならここぞと言わんばかりに「ミキ~、早く告白すればいいのに~!」とからかってくるに違いないが。
レオも幹比古と美月が良い雰囲気なのは知っているが、そう言うのは本人達に任せる性格のため、第三者目線で見守っている。まぁ、どうしてもこじれたりするなら、手伝ったりはするが、あくまで自分達で頑張れよ…という自由的考えを持っている。だから、「いい加減お前達、くっ付いたらいいと思うぜ。」とか、「やっぱり意識しているんじゃないか。」とかは言わない。しかし、さすがに赤面して、羞恥に浸っている幹比古を見ていたら、ほっとけなくなってきて、一言だけ語るだけにする。
「……俺が言うのもなんだけどよ? そろそろ意識して考えてみる時かもしれないな。俺達も後数ヵ月も経ったら、三年になるからよ。」
「…………うん、そうしてみようかな。…ありがとう、レオ。」
背中を押した事で、何やら決心ついた幹比古を見て、ほっと安堵するレオが、今度は自分の近況報告をする事になった。
「ところで、どうしてレオはさっきの御用人達と親しくしていたんだい?」
「ああ、それな。
実は今、俺も居候してるんだけどよ?そこがアイツら、御用人達のいる奉行所なんだよ。」
「………えええええ~~~~!?」
まさか奉行所で寝どまりしているとは思っていなかった幹比古は、驚愕の面持ちでレオの話を聞く。
続いてレオの話を聞くと、こうだ。
レオもこの夢世界に飛ばされて、目を覚ましたら満月が出ている夜の町の路地裏で寝ていたらしい。どうやら幹比古同様、空から落下したみたいだけど、幹比古のようにクッションになるような物もなく、ガチで落ちたようで、気を失っていたんじゃないかと本人は話していた。それを聞いてみて、幹比古は「ここが夢でなかったら、気を失うどころじゃないと思うけど。そして笑い事ではなくなるよ。」…と心の中で突っ込んだ。本当は口に出して言いたかったが、レオの身体の頑丈さは桁外れであり、本人の自覚も薄いため、例え言ったとしても「そうか?」と首を捻られるだけだ。もちろん、ここに達也がいたとしても、レオと同じく首を傾げていただろう。…前にも同じことがあったから。デジャブ感を味わう事にもなるし。
「それでよ、ここがどこかなんてわかんねぇ~から、夜道をあるいていたら、人斬りに遭遇してよ~。しかも御用人達も来て、乱闘だぜ。その乱闘中に御用人達を取りまとめる奴が斬られそうになって、俺が助けたんだ。
その後、俺の話を聞いたそいつが助けてくれた詫びだと言って、俺を居候させてくれたって訳なんだ。」
レオらしいといえばそうだが、凄すぎて内容を把握する頃には、淹れてきた緑茶も冷めていたのであった。
御用人達のお偉いさんと言えば、やっぱ奉行かな~?