レオの夢での生活が凄くて呆気にとられていた幹比古は、レオが奉行所でどんな生活をしているのか興味がわいてきていた。それを感じ取ったのかはわからないが、レオも話が弾んで、いろいろ話してくる。
まぁ、奉行所の間取りや警備の事などは機密事項だという事は弁えているので、言わないが。
「親分って人情とかに熱い奴でさ! 例え罪を犯した下手人でも訳あっての出来事や下手人自体が人として分かり合える奴なら手厚く接する人なんだよ。
ああいう人は俺は好きだぜ。」
「へぇ~、レオがそこまでいうなら、きっといい人なんだろうね。……それなのに何でだろう?」
不意に遠くを見るような目で疑問を投げる幹比古に、レオは苦笑して、頬を指で掻く。幹比古の言わんとしている事を察したからだ。
親分がそこまで仁義を通して、人情を持つ人柄ならその下に付く御用人達もそれなりに影響を持っていてもいいのに…という考えを抱いた。それはレオも若干思っていて、世話になっているし、友人の前で愚痴るのもどうかと思って言わなかったのだ。
「……まぁ、まだ親分は御用人頭の任に就いてまだ日が浅いみたいだからな。仕方ないんじゃないか?」
「そうなんだ。大変なんだね。」
「そうかもな。」
仲間を導くにはそれなりの人望や威厳、実力を持っていないと難しい。それは幹比古も風紀委員になってから実感した事なので、自分事のように納得した。
そしていずれ、その親分に会ってみたいと思うのであった。
「じゃ、親分にも都合を聞いておくからさ、幹比古も会ってみろよ!強面な顔つきしているけど、気さくで子供好きだからさ。」
「…それってぼくが子どもだって言いたいわけじゃないよね?」
「いいや、全然!」
互いに笑い合って、約束する。
それでしばらく笑った後、レオが思い出したと言って、幹比古に問い掛けてくる。
「そう言えばよ? さっき野次馬の中に美月がいたぜ? 話聞いてみたら、美月を助けるためにあいつらへ立ち向かったんだろ? いつのまに美月と再会したんだか。」
「い、いやいや!! 違うから! 確かに彼女を助けるためだったけど、あの子は柴田さんじゃないし!」
「は? 美月じゃねぇ~のかよ? ますますわかんねぇ~。だってあれはどう見ても美月だったぜ? あそこまで美月にそっくりの奴がいる訳ないだろ?」
首を傾げて不思議がるレオは、考え過ぎて頭から湯気を出す。理解不能だというのは、幹比古も理解できた。だって自分も初めは信じられなかったのだから。
「うん、レオの言うとおりだけどね。でも彼女は柴田さんではなくて、ミツっていうこの宿の女将の娘さんで、甲板娘なんだ。」
「…信じられねぇ~。 美月みたいに話していたのにな~。 」
「それは激しく同意するよ。」
「…あ、もしかして幹比古。お前、実は別人だと分かっていても、身体が本能的に美月を助けようと動いた…ってわけなのか?」
ストレートに胸を撃ち抜くように直球の質問が入ったため、幹比古は瞬時に顔を真っ赤にする。
「うっ…!
……………多分?」
良くは分からないが、レオの言っている事も間違っていない気がする。確かに助けようとする気持ちと一緒に絶対に誰にも穢されたくないという独占欲も働いたのだから。
バシャンっ………!!
地面に陶器が落ちて、割れる音が二人の耳に入る。その音が聞こえた方に目を向けるとそこには何かを持っていたらしき仕草で固まったミツと、地面には割れた湯呑とお盆が足元に散乱していた。
「あ………」
「あ……、これはやべぇ~かもな。」
顔を真っ青にして、言葉を失くす幹比古と、幹比古を憐れむ視線を向けて、悪かったと小声で謝るレオ。
そしてミツは、まだ身体を固まらせたまま、ショックを受ける。
これってリアルでは修羅場になるパターンだったりするよね?(汗)