魔法科高校の愛溺事録   作:薔薇大書館の管理人

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さてさて、将輝が深雪が来ないと知ったらどうなるやら…。


エピローグ~男だけの遊戯会~第三話 妄想と女難

 

 二〇九七年二月二十三日(土)

 

 

 

 9時より2時間前…

 

 

 

 〇〇駅の時計台下にて……、まだ朝の冷えが感じられ、行き交う人々が防寒具をしっかり着込んでいる中で、鼻を赤くして、誰かを待つ青少年が立っていた。

 

 

 

 

 

 

 その青少年は、いつもは自然とリーダーシップを取る、リーダーとして振る舞う事が自然だと思わせる風格のようなものを持っている。

 ルックスも完璧で、身長も肩幅も男らしいが、まだ少年らしさを感じる身体つきをした青少年だ。

 

 年は関係なく、女性ならお近づきになり、あわよくば付き合いたいと思っても、仕方がない。

 

 

 しかし、今日は妙にそわそわし、何度も髪形をチェックし、服装も見渡して、「おかしくないか? 張り切り過ぎてないか?」と独り言を口にし、落ち着きが見られない。

 頬も赤らめて、しきりに時計を気にし、たまにきょろきょろと辺りを見回す…という行為を繰り返している。

 

 

 こんな姿を見れば、明らかに「彼女(?)と待ち合わせしています」と言っているようなもの。通りすがりの人達は、これからの行動が予測できるほど、分かりやすい態度をする青少年を、羨望や嫉妬、好奇心を含んだ視線で余所見していく。

 

 

 そんな風に見られているこの青少年……、一条将輝は、周りが好奇な目で見守られているとは露にも思わず、…いや、これからの事を考えて、彼らの事が頭に入らないくらいに気合が入っていた。

 

 

 「まだ、時間はあるな…。 早く来てしまったか…。」

 

 

 待ち合わせの時間よりはるかに早く来てしまった将輝は、朝寒い中、白い息を吐いて、待ち人を待っていた。

 

 こんな寒い中で待たずに、近くの喫茶店かどこかで時間を潰せばいいのに、想い人が優雅に人垣を割って、こちらに向かってくる姿を想像するだけで、何時間でもいられる!!と考えているため、そこまで頭もまわっていない。

 

 

 (司波さんの私服……、きっと可愛らしいんだろうな~…。

 

  なんて声を掛けようか?

 

 

  『おはようございます、司波さん。 …その服、似合ってますね。とても司波さんらしい素敵な服です。』

 

  ……とかか?

 

  いや、もっと褒め称えるべきか?

 

  『美しい…。まさに司波さんだけにしか着られない、素敵な服です!!』

 

 

  ………ちょっと大げさすぎるか?

 

  ああああ~~~~~!!! 違うっ!!

  くそっ!!

 

  俺にもっと詩的な才能があれば!あの人……俺の女神を表すに相応しい麗句も、言葉を一生捧げるのに!!

  

  しかし、ここで挫ける俺じゃだめだ!!

 

  女神を自分だけの恋人……、将来の嫁にすれば、背徳感が堪らないじゃないか!!?

 

  しっかりしろ!! 俺!!)

 

 

 

 

 頭の中で深雪の事を考え、最初の言葉かけを慎重にシュミレーションしていく将輝。

 

 しかし、深雪は将輝を好きになる気は毛頭ないため、無駄に終わるだろう。

 

 それでも、将輝は何とか深雪を振り向かせることができると、達也と深雪の仲を詳しくは知らないため(秘密だから、当たり前である)、入り込む隙はあると勘違いしていた。

 そして、自分が考えた”将来の嫁”…というフレーズに酔いしれ、そうなった場合の妄想を始めた将輝は、自分が今、鼻の下の伸びきった状態で大いに喜び、笑みを浮かべている顔が大衆に白い目で見られて、引かれているという事に気づかなかった。

 

 

 今、この場に将輝の知り合いがいたら、きっと彼の今までの姿とのギャップに激しく動揺し、一歩距離を置くかもしれない……、そんな未来を感じさせる腑抜け顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ★★★

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして待ち合わせの9時………

 

 

 

 

 「こ、困った事になったな…。」

 

 

 将輝がそっと呟き、作り笑いをしている目と鼻の先には、愛しの女神…ではなく、年相応の女の子達が将輝を囲み、口説いて来ていたのだ。

 

 

 

 

 ようやく時間が近づいた事で、平常心を意識し、深呼吸して、いつも通りの姿で深雪の到着を待つ。(深雪達の、ではなく)

 

 深雪に男らしい姿を見せようと普段通りに立ち振る舞っていたら、通りすがりの少女たちが声を潜ませながら、足を止め、将輝にアタックするか相談し始めた。

 

 数時間前の将輝の腑抜け様を知らない少女たちは、ルックスのいい将輝とお近づきになりたいと考え、至る方向から将輝に接近してきた。

 

 それを将輝は、若干驚いたが、三高でも学年関係なしに女子生徒から言い寄られる事はあるため、少女たちの矢継ぎ早な質問も、律儀な応対で難なくこなす。

 

 

 (ああ…、この感じ、久しぶりだな。

 

  一高に転校してきてから、こういうのは少なかったからな。)

 

 

 一高での学校生活を思い出し、達也達と昼食を食べるようになってから、こういう女子にちやほやされるというイベントはなく、エリカや美月、ほのか、雫、そして深雪も将輝に言い寄る事はないため、この感覚が今まで普通だったな…と思っていた。

 

 しかし、いつまでも少女たちに囲まれていると、深雪に誤解されると思い、なるべく少女たちの気分を害さないように、丁寧に応対するが、これが自分の株を上げて、更に纏わりつかれてしまった。

 

 どうしようかと悩んでいると、通信機に連絡が入った音が将輝の耳に入ってきた。

 

 

 少女たちに断りを入れて、通信を取る。

 

 

 

 

 「はい、一条です。」

 

 

 『俺だ、司波だ。』

 

 

 「なんだ、司波か。 お前達、遅いぞ!! 待ち合わせ時間はとうに過ぎているじゃないか!」

 

 

 連絡がまた達也だったことで、苛立ちが募る。そして、待ち合わせの時間から10分以上は過ぎている事を知り、いまだに現れない達也達に文句を言う。予定通りに来ていたら、少女たちの群れを割って、向かってきてもいいからだ。

 少なくとも、将輝の相棒、吉祥寺真紅郎ならそうしただろう。

 

 

 『俺達なら、もう既に9時前に全員集合しているが? お前が来るのを待っているところだ。』

 

 

 「は? それはどういう意味だ?」

 

 

 『…100m先、12時の方角を見ろ。』

 

 

 達也の言われた通りにするのは癪に障ったが、真実を確かめるためには、仕方ないと言われた方向を見ると、駅の広場に設けられた花壇の前にこっちを見ている達也達が見えた。

 

 通信機を耳に当て、将輝と話している達也は無表情で少女たちに囲まれている将輝を見ているし、レオは頭の後ろに手を回してにやけているし、幹比古は将輝の置かれている状況に、チラチラと視線を送りながら、顔を赤くして、恥ずかしがってシャイな一面を覗かせている。

 

 

 達也達に観察されていたと知り、なぜか羞恥で顔が火照り、気付けば、少女たちの群れをかき分け、達也に向かって、大股で歩いていた。

 

 

 達也の正面に辿り着くと、将輝は大声で怒鳴る。

 

 

 「おい!!なんで助けてくれなかったんだ!」

 

 

 「なぜおまえを助ける必要がある? そんなこと頼まれていないが。」

 

 

 「俺が困っていたのは、知っていただろう!?」

 

 

 「俺はお前みたいに、愛想を振りまくような教育は受けてきていないからな。」

 

 

 「それとこれとは話が別だ!! せめて西城か、吉田が来てくれればこんな事には……」

 

 

 「俺だって、無理だぜ!! あの中に俺が突っ込んでいけば、間違いなく恨み買っていたって。そんな所には、俺は行きたくないな。

  …せっかくあの女がいないっていうのによ。」

 

 

 「ぼ、僕もあまりそういうのは、得意じゃないから…。」

 

 

 

 レオも幹比古もあっさりと将輝の要望を断る。

 

 

 

 「そういう事だ。一条、さっさと行くぞ。」

 

 

 

 もうこれで御終いと目的地へと行こうとする達也達に、将輝は怒りが込み上げてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何なんだ!!お前達~~~!!!性格悪すぎるだろ~~~!!!」

 

 

 

 

 

 

 将輝の叫びは、広場に響くのだった。

 

 

 

 

 




達也達に一杯食わされましたな。

そして、公共の場で爆発。

将輝のヘタレぶりが…。

そもそも、達也たちが率先して、群れの中に出向いて、将輝を助けるほど、親しいという訳ではないし、したくないから、離れた場所で傍観していたんだよ。

ああ…、将輝、深雪がいなくてよかったね…。
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