レオに連れられて辿り着いた場所は、レオが世話になっていると言っていた奉行所だった。
「本当に大丈夫?ミツさん。無理しなくても……」
「いえ、私は大丈夫ですから、気にしないでください。」
門前で幹比古はミツに気遣いを見せる。ここに入るという事は先日の事件の事も蒸し返されるかもしれないし、あの時の御用人達とも出会う可能性もある。怖い思いをさせたくないと思う幹比古の思いが言葉に出た結果だった。しかしミツは心配いらないと、幹比古の申し出を断った。関わったと言っても御用人達といざこざを構えたのは幹比古の方だ。だからミツは逆に幹比古が心配だった。
「ああ、あいつ等なら今巡回しに行ってると思うから鉢合わせはねぇ~だろうぜ?」
「そうなのですか?」
「それにお前らを連れてきたのは、親分直々に会いたいって言ってたからな。親分がもてなす客人に無礼な事をすれば親分が黙っていねぇ~よ。」
笑顔でそう断言したレオの言葉に安堵したからか、ミツの表情にも笑顔が浮かぶ。そしてミツの笑顔を見て、幹比古もまた奉行所の中に入る事に覚悟を決め、レオの案内されるまま、奉行所の中へと入っていった。
レオの後ろをついていきながら、奉行所内を歩く幹比古とミツは、客間として使われている和室に通された。用意された席に座るとすぐに、女性の奉公人がやってきて、お茶を持ってきてくれた。淹れたての御茶の味に和みつつ、呼び出したレオが世話になっている親分がやって来るまで待つ。その間、親分の話をレオから聞く事になった。
「親分さんはどんな人なんだい、レオ?」
「う~ん……、一言で言うなら熱血刑事…ってとこか?困っている奴はほっとけないし、部下の指導とかも熱心に自分から教えたりするんだ。」
「私も親分様の事は噂で聞いています。この前、近所の老舗の呉服屋さんが火事になってしまった時がありました。その時、御主人と奥様が燃え上がる炎で逃げ遅れて取り残されていたのですが、親分様は自ら炎が蠢いて危険な中に突っ込んで、二人を抱えて脱出し、二人が快復するまで看病したそうです。親分様、その際に火傷を負ったそうですが、
『民を護れたのだ。ならこの火傷なぞ、悔やむ必要は無い。もしそれが必要な時は、命を救えなかった時だ。その時俺は、この火傷を自らの戒めにするだろう…。』
…と仰られたそうです!
私…、この噂を聞いた時、憧れました!」
「そ、そうなんだ…。確かにかっこいいね、親分さん。」
目を輝かせてエキサイトしたミツを横目で様子を窺い見ている幹比古は、少しの嫉妬をまだ会った事のない親分に嫉妬する。しかし、ミツ的には憧れると言っても、異性というより古い文献に書かれた物語に登場する殿様のような印象を持っていて、こっそりと書いている趣味の執筆のネタにしているのであり、幹比古が嫉妬する様な深く考えた想いを抱いている訳ではなかった。
そんなミツとレオが親分の話で少し盛り上がってきた頃、その本人がようやくやってきたのであった…。
熱血刑事ぶりを見せる親分、このままのキャラで通すか、はたまた違う一面を見せるかどっちがいいだろうか脳内検討中。