最後の希望を目指す転生者 え、俺の事? 作:x-フィリップ-x
どうしてこうなった…。
「あなたが私の母さんだから」
「……」
「どんなに母さんが私の事を嫌いでも、私は母さんの事が大好きです」
「……ごめんなさいね。私もフェイト、あなたの事が大好きだったわ」
「え?」
無事駆動炉の封印を終えプレシアの方へ来ると、すでに足場は崩れ、虚数空間に落ちて行こうとするプレシアと生体ポットに入っているアリシアが見えた。
けどどうなっているんだ?プレシアは本当はテスタロッサの事が大好きだった? そんな話原作にあったか?
「母さん!」
テスタロッサの叫びとともに完全に落ちていくプレシア。それを追いかけようとするテスタロッサをアルフが必死に止めている。
クソ! 遅かったか! 今ならまだ間に合うか? いや、絶対に助けてみせる!
「「ウィザード(さん)!?」」
プレシアの後を追うように虚数空間に飛び込む俺を見て驚きの声をあげる2人。
そんな心配そうな顔するなよテスタロッサ……。
「大丈夫。俺が君の希望になるから」
『ハリケーン!プリーズ……。フウッ!フウッ!フッフッフッフッ!!!』
それを伝え、ハリケーンスタイルになり重力に従いながら落下しプレシアの元へ急ぐ。
しばらく落下していくと2つ落ちていく影、プレシアと生体ポットに入っているアリシアだ。
「見つけた!」
『バインド・プリーズ!』
緑色の魔方陣を2つだし、プレシアと生体ポットに向かって鎖を出して落下を止める。
ちょ、重!? 体重がとかじゃなくてバインド自体の強度が中途半端になっている! ホープに俺の魔法ならこの空間でも不完全ながら使えるって聞いてはいたけどこれはヤバイだろ!? これじゃバインド消してもうまく上昇できるかわかんねーぞ……。
「誰!」
「そんなことは後でいいだろ! とにかくさっさと脱出するぞ!」
何か考えないといけない……。何かないか、何か……。
「無駄よ! もう私達は助からないのよ!」
はぁ? 助からないってなんだよ!? その言い方じゃまるで……。
「どういう意味だ! 少なくともあんたはアルハザードに行こうとしていたはずだろ!?」
「確かに私は本気でアルハザードを目指していたわ……。でも気が付いてしまったのよ。もうすべて遅いって、もう何も私には残ってないって……」
今は俺が落下を止めているが、今にもこのまま落ちて楽になりたいという顔をしているプレシア。だが、懺悔のように彼女は話し続ける。
「私はアリシアの事を愛していた。そんなアリシアが死んでしまった時、私はすべてに絶望した……。もうアリシアの笑顔が見れないと思った時、世界全てがどうでもよくなった……」
アリシアの入った生体ポットを見つめ、涙を流しながら話し続けるプレシア。
「でも、私には諦めきれなかった……。どんなことをしてでももう1度アリシアの笑顔が見たかった。だからあの娘を、フェイトを作った……。あの娘にはアリシアの記憶をあげた、けど駄目だった。あの娘はアリシアとは全く違った……。そんなことわかっていたはずなのにどうしても受け入れられなかった」
俺は何も話さず、いや、何も話せずにただ話を聞いていた。
「あの娘の事は最初は大嫌いだった……。同じ姿なのにアリシアとはまるで違う……。それがどうしても許せなかった。でも最後の最後で分かったのよ、私はあの娘の事を心の底から嫌いにはなれなかった事を……だって」
自分の中で何かを確認するかのようにつぶやき
「だってあの娘は、フェイトは私の子供だから」
最後の一言を聞き俺はマスクの内側で笑っていた。その言葉を聞きやっと納得ができたから。
「全く不器用すぎだろあんた……。通信でのあの辛辣な発言は今後の彼女の立場を少しでもよくするため。最後のあの言葉があんたの本心って事かい」
「そうよ。あの娘にはたくさん辛い思いをさせてしまった……。せめてこれからは幸せになって欲しい。これ以上私が一緒にいるのはあの子のためにならないわ……」
「はぁ~」
親の心子知らずとはよく言うがその逆もまた然りだな……。
「あんたの話も分かったけど、テスタロッサも言ってただろ?何があろうとあんたは自分の母親だって。さっきの事も含めって話し合って、謝って、これからしっかり母親やればいいだろーが」
「もう遅いのよ! この虚数空間では魔法は使えない。あなたがどうやっているかはわからないけどもう無駄なのよ!」
確かにこの空間はまずい……。さっきからハリケーンスタイルでの風の操作がうまくできなく、落ちないように保つだけで精一杯だ。……でも!
「無駄かどうかなんて知ったことか!俺はあんたをここから連れ出してテスタロッサの前に連れていく。テスタロッサとあんた自身が納得するまでいくらでも話させてやる!」
「どうして、どうして今更……。あなたに何がわかるのよ! 何ができるのよ!」
何がわかる? 何ができる? そんなこと俺にもわからない……。
今、俺がしたことはただの自己満足かもしれない……。
俺が何かしなくてもどんな結末を辿るかは知っていた。むしろ邪魔しているのかもしれない……。
そうだとしても……
見てしまったんだ。自分は誰にも必要とされてないと思い俯いていた少女を。
知ってしまったんだ。最愛の家族に裏切られて絶望したが立ち上がった少女を。
そして会ってしまったんだ。家族もいなく、足も動かない、なのに強く生きようと必死に笑っている少女を。
確かに元は2次元のアニメの世界かもしれない。でも、俺は今ここで生きている。何があろうとそれは変わらない真実だ。だったら俺は後悔したくない。
俺にできることは小さいことかもしれない。でも、だからこそ何かを掴みたいんだ!
「だったら見せてやる。本物の魔法を! 本当の希望を!」
ここでテレポートを使うのはまずい……。空間が不安定なせいか、どこに飛ぶかがわからない。だったらまずはここから出るしかない。
だが今のハリケーンスタイルでは力不足……。だったらあれを使うしかないよな。
俺は左手のハリケーンウィザードリングを外し、同じ緑色で形状も似ているウィザードリングをはめる。そしてバックルを左側に傾け左手をかざす。
『ハリケーン・ドラゴン……。 ビュー!ビュー!ビュービュービュービュー!!!』
自身の目の前に魔方陣が展開されその中から緑色の魔力を纏った姿をしたウィザードラゴンが現れ、目の前の魔方陣が自分を通過すると同時に背後から俺の中に入り一体化する。
先ほどのハリケーンスタイルと使用されている色は同じだが、ローブの色が逆転し、頭部には2本の角が生え、両肩には中央に宝石が埋め込まれた装甲が追加され、更に胸部にも先ほどのウィザードラゴンの頭部を模した装甲が展開されている。
自身の中にいるウィザードラゴンと一体化しその力を使うことができるドラゴンスタイル。
「まだまだ!」
右手に付けているバインドのウィザードリングを外す。そのことによって2人に巻き付いているバインドを消えないようにしっかりと意識を集中しておく。変わりに違うリングをつけて、それを発動させる。
『超イイネ!スペシャル…サイコー!』
発動とともに背後に魔方陣が現れ、変身時にも現れたウィザードラゴンが俺を包み込み、俺の背後に魔力が集まっていきその形は完全なドラゴンの翼になる。
「……あなた……それ」
「言っただろ? あんたに本当の希望を見せてやるって」
俺はバインドを解き、両腕でプレシアとアリシアが入っている生体ポットをしっかりと掴む。
「飛ばすからしっかり掴まってろよ! おっしゃー! 振り切るぜ!」
翼を羽ばたかせ落ちてきた方向へ上昇する。先ほどと違いまったく抵抗を感じない。そして何事もなく虚数空間を抜け出し、崩れかけの時の庭園に出る。
って!ここもまずいんじゃねーか!
『テレポート・プリーズ!』
すぐさま右手にテレポートウィザードリングをつけクロノの反応を基点に飛ぶ。
飛んだ先には先ほど庭園に行っていた人とリンディさんとエイミィーさんが1つの部屋にまとまって集まっていた。
突然現れた俺らを目にし、その場にいる全員がお化けでも見るかのような目で見てくる。
「母……さん?」
その沈黙を破りテスタロッサが俺が抱えているプレシアに話しかける。
前書き通りどうしてこうなった…。
まだウォータースタイルとランドスタイルを出してないのにドラゴン。しかもフレイムじゃなくてハリケーンだし…。申し訳ないです。
新しいウィザードリング
・ハリケーンドラゴンウィザードリング
ハリケーンドラゴンスタイルに変身するのに使用。
ハリケーンスタイルの強化スタイル。スペシャルウィザードリングで具現化するのは翼。
・スペシャル
ドラゴン系スタイルに応じたウィザードラゴンの身体の一部が具現化する。