最後の希望を目指す転生者 え、俺の事? 作:x-フィリップ-x
「……母……さん?」
「……フェイト」
テスタロッサの名前を呼ぶプレシアだが、先ほどの別れもあってか顔を直接見ていない。それを見かね、俺は抱えているプレシアを降ろし、背中を押しテスタロッサの方に動かす。
「ちょ、ちょっとあなた!」
「あ~はいはい。もう諦めてさっきみたいに正直に言っちまいな」
「……」
やはり今までの罪悪感があってか、なかなか正直になれないプレシア。
「後悔してるんだろ? だったら次は後悔しないようにしっかりやりな」
「……。そうね」
覚悟が決まったのかゆっくりと話し出すプレシア。
先ほど、虚数空間で俺が聞いた話をここにいる全員に話し終え、少し空いた距離をつめるようにゆっくりと近づいていく。その両目には涙が流れている。そして、テスタロッサの目の前まで近づき、そのまま両腕で抱きしめる。
「フェイト、本当に……本当にごめんなさい……」
「母……さん、お母さん……」
その言葉を聞きテスタロッサも号泣する。高町とユーノ、エイミィーさんも目元にうっすらと涙を溜め、アルフに関しては一緒に号泣しているが、クロノ、リンディさんも含めて全員がとても嬉しそうな顔をしている。
「それにしてもウィザード。君はどうやって虚数空間から出てきたんだ?魔術式が全くの別物だから魔法の行使ができたとでも?」
テスタロッサ親子の感動的な抱擁も一段落した時にクロノが俺に聞いてくる。
「そうだな……。俺にも正確な事はわからないんだが、一様強度が中途半端ではあったけどバインドは使えたんだ。けど、その代わりに飛ぶこともままならなくてな……。だから脱出するために少しばかし奥の手を使ってな」
「奥の手?」
「まぁー、簡単に言うと、自分の中のドラゴンの力を借りた……かな?」
「? どう言うことだ?」
「またそのうち詳しく教えるよ」
と言っても本当にそうとしか言えないんだけどな……。それに、ドラゴンについてはまだ俺の体が出来上がってないからあんまり使いたくないんだよな……。体への負担が大きいからホープにも極力控えろって言われてるし。
「ウィザード、でいいのかしら?」
「ん?」
クロノとの話が終えてしばらくするとプレシアが俺の元に近づいて名を呼び、それに反応する。
「あなたのおかげでまたフェイトと会えて、謝ることができた……。本当に感謝しているわ」
「そう気にしなさんな。俺はあんたの正直な気持ちをほんの少しだけ後押ししただけさ」
「そう……。でも、そうだとしても。ありがとう」
俺はその言葉を、感謝の言葉を聞き、泣きそうになってしまった……。俺の行動ははやてのため、もっと言えば自分のため。自己満足のために動いているに過ぎない。だから誰にどう思われてもいいと思っていたはずなのに、感謝の言葉がこんなにうれしいなんて……。
「そのかわり、これからはしっかり母親をしないとな」
照れ隠しのために少しぶっきらぼうになってしまった……。
「えぇ、あなたに言われるまでも無いわ。私の命がどこまで持つかはわからないけど、最後までこの娘の最高の母親になって見せるわ」
「母さん……」
それを聞き、テスタロッサは嬉しさとも悲しさとも、どちらとも取れるような顔をしていた。先ほどの言葉はうれしいが、近いうちに死んでしまうかもと考えたんだろう……。
一応、対策は考えては来たのだが……。さて、うまく成功するだろうか……。
「ちょいと失礼」
そう言い、彼女の右手中指に他の指輪とはデザインが少し違う六角形で青色の指輪をはめる。
「何かしらこれ?」
「いいから、いいから」
そのまま指輪をはめた右手を俺のバックルの部分へ持っていく。
『ドルフィ・ピリーズ!』
ドルフィウィザードリングを発動するとプレシアの体が一瞬青く光る。そして光が収まると目の下のひどい隈がなくなり、肌の色もよくなり、まさしく健康体と言っていい姿をしていた。
「「「「「「「「え?」」」」」」」」」
その場にいる全員が今起きたことを理解していない。俺もこんなにうまくいくと思ってなかったから少しばかり驚いている。
さて、もう一つの方も無事成功してくれるとありがたいんだが……。
『コネクト・プリーズ!』
アリシアの入った生体ポットに近づきコネクトで外に出す。
う~、裸だから直視できない……。
「ちょっとあなた! 何やってるの!」
うわ! やっぱり怒った!
「後でちゃんと謝るから少し待っててくれ」
「そういう問題じゃないでしょ! いくらあなたでも許さないわよ!」
「あ~、テスタロッサ。母親の事少し落ち着けて」
「えぇ!?」
突然話を振られてあたふたしながらもプレシアを押さえてくれているテスタロッサ。
とりあえずこっちも済まさないと。これで失敗したらマジでプレシアに殺されるんじゃね俺……。
とにかくまずは服だな。先ほどのプレシアにしたようにアリシアの右手に指輪をはめて俺のバックルの所に持っていく。
『ドレスアップ・プリーズ!』
魔方陣が通過してアリシアに服を着る。イメージはAsでテスタロッサが闇の書の中で見たアリシアの着ていた水色の服。
さて、ここからが本番だ。右手の指輪を違う指輪に変えもう1度バックルに手を持っていく。
『プリーズ・プリーズ!』
指輪を通して俺の魔力がアリシアに流れる。
俺がしているのはアリシアの擬似的な蘇生。人によっては魔力で動く人形と言うやつもいるかもしれない、だが俺はそうは思わない。どんな理由であれ救えるかもしれない命が目の前にあるんだ。理由なんてそれで十分だ。
上手くいくか……。
これは俺の持論だから何とも言えないが、肉体的に死んでいても、精神的に生きている場合のみ蘇生が可能なんだと思う。肉体的には生体ポットに入っていたため問題ないと思う。後は精神の方だ……。
バックルに手をかざして少し経つが何も起きない……。
クソ! やっぱり駄目なのか!
「もういいでしょ! 早くアリシアから離れなさい!」
テスタロッサが必死に止めていてくれたがそれを振り切り、俺に詰め寄ってくる。
やっぱり無理なのか……。
「う~ん。お母さんうるさ~い」
「「え?」」
目をこすりながら起き上がるアリシア。俺とプレシアが驚いた声をあげる。
成功……したのか?
「……アリ……シア?」
「どうしたのお母さん?」
「アリシア!」
「きゃ! どうしたのお母さん? 痛い! 痛いよ~!」
起き上がったアリシアをとても強く抱きしめるプレシア。
……よかった。本当によかった。
「ウィザード、きみは本当に何者なんだい?」
2人の無事に安堵しているとクロノがそう聞いてくる。
何者?そんなもん決まっている。まだまだかもしれないけど俺は胸を張ってこう言う。
「絶望を希望に変える、指輪の魔法使いさ」
新しいウィザードリング
・ドルフィウィザード
使用者の状態異常を回復する。
・ドレスアップ
使用者の服装を別のものにする。
・プリーズ
使用者に魔力を分け与える。