最後の希望を目指す転生者 え、俺の事?   作:x-フィリップ-x

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29話 夢で逢えたら

「修也、起きなさい。もう朝よ」

 

「あ~。なんだよ母さん。まだ6時前じゃん……。せっかくの日曜日なんだからゆっくり寝させてくれよ……。てか、いい年して親に起こしてもらう必要ないって……」

 

 俺を起こす女の人の声に目を覚ます。あれ? 俺、ここ数年女の人に起こしてもらった記憶がないような……。

 ともかく、俺を起こしてくれたのは俺の母であった。その姿を見てまたも違和感を感じる。毎日顔を合わせているはずの母さんの顔が、何故か数年ぶりに見たように感じてしまう。

 だがそれを何かの気のせいと、きっと寝ぼけているせいだとスルーする。

 

「何言ってるのよ? 今日はお父さんと魔法の練習を一緒にするから起こしてくれって言ったんじゃない。後小学3年生のどこがいい年よ」

 

「魔法? 小3?」

 

 どうしたんだ家の母上は? 魔法とか言ってるんだけど? 頭でも打ったのかな……。

 あれ? 魔法……。なんか大事な事忘れているような……。むむむ……。あ! そうだ、魔法! 指輪の魔法!

 そうだ思い出し。今日は父さんと魔法の練習をするんだった。それに俺小学3年だったわ。だって体小さいもん。何でいい年とか言ったんだろ? 本当に今日の俺はおかしいな……。

 

「そうよ。普段は何に対してもめんどくさそうなあなたが珍しくやる気になっていたから。ちゃんと起こしてあげたのに。はぁ……、まったく家の息子は……」

 

 盛大に溜息をつき、頭に手を持っていく我母。

 それを見て悪いと思い、頭がかなりこんがらがっているが、ベットから立ち上がり、起きたことをしっかりとアピールする。

 

「ともかくありがと」

 

「はいはい、どういたしまして。下に朝ごはん用意しておくから顔洗って来なさい」

 

「うぃー」

 

 そう言い残し、俺の部屋から出て行く母さん。その姿を見送り、俺も箪笥から着替えをだし、早々と着替えをすます。

 階段を降り、リビングのある1階に向かう。リビングに向かう前に洗面所に行き顔を洗うことにする。

 顔を洗い、鏡を見るとまた違和感。鏡に映る自分の顔にだ。

 俺の顔って日朝に出てる人を子供にしたような顔だっけ? ……いや、そうだよ! 人の顔がそう簡単に変わるかっての。

 顔を洗い終わり、リビングに行き朝ごはんを食べる。

 朝食を食べ終わると父さんが庭でもうまってると母さんが教えてくれたので、食器をキッチンに持って行き、玄関で靴を履き、父さんの元へ向かう。

 

「修也、遅いぞ」

 

「ごめん、父さん。なんか寝ぼけてて」

 

「大丈夫か? 普段から何事にもめんどくさそうにしてるからじゃないのか」

 

 両親の俺の共通認識は『何事にもめんどくさそう』なのね……。間違いじゃないから文句言えないよな……。

 

「ともかく早く始めようぜ。早く終わらせて寝たいし」

 

「焦るな焦るな。まだ修也が来てないだろ」

 

「はぁ? 来てないって目の前にいるでしょうに……」

 

 何言っちゃってんのこの父上は? 若くしてボケでも始まってるの?

 あきれ顔を通り越して蔑むような顔で父さんを見る。

 そんな顔をしていると、後ろから誰かが近づいて来るのか足音が聞こえてくる。

 

「ごめん、ごめん。寝坊した」

 

「遅いぞ修也」

 

「!?」

 

 やって来た人物を見て俺はとんでもなく驚いてしまう。男性にしては長く肩にかかるほど伸ばされた黒い髪、身長は170cm近くあるが少し猫背気味になっているため少し低く見える、目は開けるのがしんどいと言わんばかりに半分だけ開かれており、彼を一言で表すなら『何事にもめんどくさそう』である。

 そう、彼は。いや、こいつは俺だ……。転生する前の俺だ。

 その姿を見てすべてを思い出した。今、現実で起きている事。ここが闇の書の中の事。全て。

 2人から距離を取り、自分の相棒であるホープに声をかける。

 

「ホープ! 聞こえるか!」

 

『あぁ、聞こえるよ。さっきからずっと声をかけようと思っていたんだけど、妨害があってね。恐らくマスターが僕の事を認識するまで声が届かなかったみたいだ』

 

 よかった。ホープも無事のようだ。

 だが俺がしっかりと現状を認識しただけで何も変化はない。この後どうするか考えないといけない。

 

「どうやったら、ここから出れる?」

 

『今は不可能みたいだね。向かいにいる彼なら知ってると思うが』

 

「了解」

 

 ホープとの会話を終え、目の前の2人を睨みつける。

 

「早速で悪いけどここから出してくれない?」

 

「なんだよ……。もう気づいたわけ? そんなにやる気になっちゃって、本当にお前俺なの?」

 

「どういう意味だ……?」

 

「わかってるんだろ? 俺だったら気づいててもめんどくさいから流される自身があるけど」

 

「……」

 

 なんと言うか。あれだな……。昔の俺ってここまでめんどくさがりだったのか……。

 人間早々変わらないと思っていたけど、これを見ると少しはましになったと思う。

 

「ともかく出してくれない?」

 

「あ~……、それ無理」

 

「はぁ? なんで?」

 

「いや、だってこれ俺の望んだ夢なわけ。で、俺が望んだのは『何事にも追われずにダラダラする』なわけよ。後、一応で家族が欲しいって言うのも少しはあるけど」

 

 俺の深層意識!? なに? リインフォースとの戦闘中や、ましてははやてを助ける最中でさえ俺は無意識のうちにダラダラしたいと思っているのか!? 馬鹿じゃないの!?

 ……本当に少しずつでいいから改善していきたいです。いや、マジで……。

 でもなんだろうかこの違和感……。まるで自分であって、自分でない感じは。

 

「だからさ、今からの魔法の練習も中止にしてのんびりしようぜ。欲望に忠実に。本能のままにってね」

 

「そう言う訳には行かないだろ……。外では皆が頑張ってくれてるのに」

 

「それなら大丈夫だろ」

 

「どういう意味だ?」

 

「単純に夢の中だからさここ。時間の流れも曖昧なのよ。夢の中で時間がとびとびになったりすることあるだろ。あんな感じだから」

 

 つまりここでの1時間は、外では1分しかたっていない。のように曖昧な時間の過ぎ方になっていると、目の前の俺は言っている。

 精神と時の部屋ってことで無問題?

 

「大体わかった……。でも俺はいち早くここから出たいいんだよ」

 

「はぁ……。強情だね俺は」

 

 もう一人の俺はやれやれといいながら、手で頭抑え溜息をつく。

 

「わかったよ。んじゃ1つだけ条件な」

 

「条件?」

 

「そう条件」

 

 もう一人の俺はいいことを思いついたとばかりに、口をニヤッと吊り上げ、右手人差し指を立てる。

 

「俺を納得させること。これができたら外に出してやるよ」

 

「納得?」

 

 何に対してかわからず聞き返してしまう。さっきから質問ばっかりだな俺……。

 

「どうして今の俺は人のためにそこまで必死になれるのかわからねーんだわ。だから納得したいわけよ俺は。納得はなによりも大事だ。ってね」

 

 つまり俺がはやてを含めた誰かのために行動しているのかわからないから説明しろって事らしい。

 そこで少し前から感じてた違和感が何かわかった気がした。

 

「納得させるってのはわかった。その前に1つだけ質問いいか?」

 

「面倒な事でなければどうぞ」

 

「それじゃ遠慮なく。お前はいつの俺だ(・・・・・)?」

 

 俺の質問に先ほどまで口角を上げて笑っていたもう一人の俺の顔は、一瞬で驚きの顔に変わった。

 

「驚いた……。まさか俺がそれに気が付くなんて……」

 

「これだけ喋れば当然だろ」

 

「そんなもんか? まぁ、いいや」

 

この反応は正解とみていいだろう。

 

「で、いつの俺なんだ」

 

「大体5年前の俺だな」

 

「やっぱり……」

 

 やっぱりだ。5年前。それは俺が1度死んで、転生する前。それまでの短い人生で一番と言っていいほど他人の事を信じていなく、一番めんどくさがっていた時期だ。所謂高二病でしょう。

 通りで自己嫌悪に近いものを感じているわけだ……。

 5年前。確かにそれだけ見るととても長い時間とは言いがたいが、成人以前の学生から見たら、性格が何かに影響され多少変わってしまうのには特別な事じゃないぐらいの時間はある。

 

「つまりお前は5年前の俺の記憶を元に生まれた存在ってことか」

 

「ま、概ね正解。正確に言うと、俺は俺の忘れられた記憶を元にってのが正しいと思う」

 

「どう違うんだよ?」

 

「俺は5年前は将来何になりたかったとか、マイブームとか、その他もろもろ細かく覚えている?」

 

「……」

 

「つまりそういう事」

 

 なんとなくだけど言いたいことが分かった。

 たしかに5年前の事を正確に覚えているかと聞かれると、答えはNoだ。

 紙か何かに書いてあるのを見たら懐かしいと思うか、黒歴史過ぎて悶えるかの2択を迫られるような感じしかしな。ちなみに俺は黒歴史派。

 5年前の俺は、今の俺が誰かのために行動すると言うのが理解できないのだろう。だから納得が必要なのだろう。

 

「そんなに理解できないか? 俺が誰かのために行動するのが」

 

「当たり前だ。当時の俺の将来の夢、引きこもれるってだけで物書きだぜ?」

 

「うわぁぁぁぁ!? やめて!? そんな事言ってた気がする!?」

 

 漫画で見た某だが断る漫画家を見ていいなぁーと思って、俺も煩わしいのが嫌だったのでそんなことを言ってた気がする。馬鹿じゃねーの?

 

「うぅ……。頼むからその話はしないで……」

 

「はいはい。で、ともかく、人のためとか本当に理解できない。現にそのなんとなくの人助けで1度死んでるんだぜ?」

 

 そう言ういい方されるとその通りだよな。あの時は偽善だのなんだの言っていた気がする。

 でも今ならしっかり答えられる気がする。

 

「そんなの決まってるだろ?」

 

「?」

 

 だから俺は正直にこう答える。

 

「俺のためだ」

 

「はぁ?」

 

 俺の答えに唖然とした顔をする。

 

「別にそっちが思ってるほど5年たっても俺は変わってねーよ。なのはが1人で寂しがってるのに声をかけたのも、フェイトが泣いてるのが嫌だからプレシアさんとアリシアにおせっかいしたのも、はやてのために必死に動き回ったのも全部俺のためだよ」

 

「あのなぁ……」

 

「仕方ねーだろ、これが俺なんだから。でも昔と違って今ははっきり言う事が出来る。俺がおせっかい焼くことで笑ってくれる人、喜んでくれる人、お礼を言ってくれる人。それを見るたび、聞くたびに、なんかいいなって思うことができるんだよ」

 

 つまり自己満足だ。でも俺はそれを否定しない。

 

「はやてに笑ってほしい。俺はその自分のために全力を尽くしている」

 

「……」

 

 俺は自分の考えをすべて言い切る。

 これで過去の俺が納得するかはわからない。だとしても、これが俺の今の答えだ。これ以上の答えなんていくら考えても出てこないだろう。

 最初は唖然としていたもう一人の俺も途中からは真剣な表情で真面目に聞いていて、今はその真剣な表情のまま俺の方を見ている。

 

「プッ」

 

 プッ?

 

「あはは! アホだ! やっぱ俺アホだ!」

 

 突如大声で笑いだし、自分の事をアホ発言しだす。

 なぜにて自分に罵倒されなきゃならん。

 

「あぁ~、納得。納得だわ。その理由だったら全力出すしかないわ」

 

 よくわからんが、納得したのか? だったら早く出してほしいんだけど。

 

「いや~、それにしてもまさか自分のためだとそこまで堂々と宣言されるとは思ってなかったわ。体は小さくなっても俺よりかなり成長してるんだな」

 

「当たり前だ。それより納得できたなら、はよ出してくれ」

 

「焦るな焦るな、さっきはやてが起きたみたいだから、もう少しで原作通りなのはたちの攻撃があるからそれに合わせてこっちからも攻撃して表に出な」

 

 その言葉ではやてが無事起きれたことをしり、うれしく思う。

 

「つまりその時にしか出れないと?」

 

「その認識で問題なし」

 

「サンキュ。ホープ」

 

『了解』

 

『シャバドゥビタッチヘーンシーン!! ランド・ドラゴン……。ダンデンドン・ズドゴーン・ダンデンドゴーン!!』

 

 黄色いウィザードラゴンと一体化し、ランドの強化フォーム、ランドドラゴンへと変身する。

 

『超イイネ!スペシャル…サイコー!』

 

 そして、スペシャルのウィザードリングを発動させ、3本のカギ爪、ウィザードラゴンの爪である、ドラゴヘルクローを両手に具現化する。

 

「羨ましいな……、本当に魔法使えるのは」

 

「え、使えないの?」

 

「当たり前だろ。俺はあくまで過去の俺なんだから」

 

 なるほど、たしかにそうだよな。あれ? でもそうなると少し変じゃないか?

 

「だったらなんでそこの父さん……ってあれ? どこ行った?」

 

「今更かよ……。俺と話しだしたくらいからいなくなってるよ……」

 

 あれ~……。全く気付かなかった……。久しぶりの両親の顔だっていうのに薄情すぎだろ……。

 

「そう落ち込むなって。ここの異変に気づいてからは俺以外の人はいなくなったと同時に認識から外れていたから」

 

「……そういう事か」

 

 つまり、もう一人の俺はイレギュラーな存在。この夢の中は俺の臨んだ夢。ダラダラっていうのも勿論あるが、両親と会いたいというのもあったと言っていた。

 なのにそこに過去の俺が出てくるのは可笑しい。全く俺は望んでいない。

 

「そんなに俺って頼りないか?」

 

「頼りないと言うより心配だった。考えてもみろよ、未来の自分が自ら危険な所に行こうとしてるなんて嫌、と言うより怖いだろ?」

 

「なるほど、たしかに」

 

 中学生ぐらいの時の自分が、大人になった自分を見てどう思うか。十中八九失望すると思う。中二病ではないにしろそのくらいの時には一度は人の上に立つだの、自分が特別なんだと思ったりする。

 万が一、中学生の自分がサラリーマンになって誰かに頭を下げている自分の姿を見たら絶望することになるだろう。

 俺の場合はその逆。クラスでも目立たないやつが、将来は誰かを守るヒーローの真似事をやっているんだ。誰よりも自分が驚いてしまうだろう。

 

「ま、要は考えようの問題だって。どちらにしろ面倒事に巻き込まれるんだ。ピンチはチャンスだってね」

 

「本当に前向きになったと言うか、ポジティブになったと言うか」

 

「魔法が希望をくれたのかもな」

 

「そっか……」

 

「そうだ……」

 

 変身したことによって身長が伸び、目の高さが同じくらいになり、軽い感じで話す俺。

 俺ももう一人の俺も口角を吊り上げ笑っている。俺の方は見えないけど……。

 

「さて、そろそろ時間だな」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ、もうすぐなのはとフェイトが全力で闇の書を攻撃する。それに合わせてその爪でこの世界を破壊して出て行きな」

 

「わかった。サンキューな……」

 

 そう言ってもう一人の俺に背を向けこの世界を破壊するためにドラゴヘルクローを構える。

 

「それじゃ、もう会うことはないと思うけど」

 

「そう言われると寂しいな……」

 

「だったらたまには黒歴史の事思い出してくれ」

 

「うっ……。出来れば嫌だな……」

 

 自分から黒歴史を開けるなんて正気の沙汰じゃないだろ……。

 

「頑張れよ、俺」

 

「ありがとな、俺」

 

 両手のドラゴヘルクローで世界を切り裂くように攻撃をする。

 すると世界が光に包まれるように感じ、一瞬だが意識が途切れる感覚がする。

 

 

 目を開けると、目に映るのは夜の海鳴り。無事戻って来れたってことか。

 そして、最初に目に映った彼女に声をかける。

 

「おかえり、はやて」

 

「ただいま、シュウ君。そっちもお帰り」

 

「あぁ、ただいま」

 

 それはバリアジャケットに身を包んで、笑いかけてくれるはやての姿だった。




次週はとうとうあれの登場です。
期待に答えれるように頑張りたいです。
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