最後の希望を目指す転生者 え、俺の事? 作:x-フィリップ-x
事の始まりは、俺が作ってきたおせちもどきを皆が食べ始めた時だった。
「これシュウ君が作ったの?」
俺が作ったおせちに口をつけ、なのはが聞いて来る。
「そうだけど、口に合わないか?」
「そんなことないよ! すごくおいしいよ!」
それはよかった。そう言い、自分でも口に運んでみる。うん、悪くないと思う。
普段の料理とおせちでは味付けなどが変わるから、あんまり慣れてないんだよな。
「本当においしいよシュウ」
「そうだよシュウ。凄くおいしいよ!」
「たしかにおいしいわね、これ……」
「うん、本当に……」
他の4人にも概ね好評のようだ。えがった、えがった。
それを聞きつつ、更に箸を進める。
「ホント、シュウ君の料理はおいしいな~」
「褒めても何も出ないぞ、はやて」
そりゃ残念。と俺の軽口に、はやても返してくれる。
「はやてはシュウの料理食べたことあるの?」
フェイトがふと疑問に思ったのか、はやてに聞いている。
「うん、前に私の誕生日に作ってくれたことがあんのよ」
「「「「「誕生日?」」」」」
「そうなんよ。私の家に来て、料理作ってくれて、プレゼントもくれて。あ、このネックレス、その時のプレゼントなんよ~」
「「「「「へぇ~……」」」」」
はやてが答えているのに、5人とも興味深く聞いている。ただ、最後にネックレスを見せた時の5人の顔が少し怖いです……。ジト目やめて。俺を見ないで。
俺は、藪蛇が怖いので、おせちを一人でもくもくと突いている。
「ねぇ、シュウ! 私もネックレスが欲しい!」
「はい?」
唐突なアリシアの発言に、疑問の声が出てしまう。
なにがどうしてそうなった?
「だって、はやてだけずるい! 私も欲しい!」
子供か! と思ったのだが、子供でしたね……。むしろアリシア以外子供らしいのがいない事の方がビックリだよ。
「誕生日に上げるよ」
「えぇ!? まだまだ先だよ!?」
「我慢しなさい」
「ブ~!」
ハッハッハッ! 頬を膨らませて、可愛いではないか。でも、それとこれは話が別です。
「そうなると、一番誕生日が近いのは……」
「えっと、私かな?」
そーと手を挙げ、宣言するなのは。
そうだっけ? まあ、ホープに教えてもらったはやての誕生日以外知らないんだけどね。もしかしたらホープなら全員の誕生日くらい知ってそうで怖いな……。
「そうなんか?」
「う、うん。3月15日だよ」
「案外近いんだ」
もう少ししたら作ろうかな?
といっても、普通のアクセサリー系は作るの案外楽なんだよね。ウィザードリングと違って、本当に楽だ。一番時間かかるのがデザイン考えるだからな。ちなみに、はやてにあげたネックレスは、月をイメージしたデザインだ。
「えっと……。期待してもいいかな?」
「おっふ……」
頬赤らめて、上目づかいはやめて。俺はロリじゃないんだから。ドキドキなんてしてないんだからね!
「まぁー、なんだ……。過度な期待は勘弁してくれ。ほどほどにな」
「う、うん!」
さて、家に帰ったら、作成の準備をするか。いっそのこと魔法石でも埋め込むか。え? 全然本気じゃないよ? ホントだよ?
「それはそうと、シュウ。あんたの誕生日はいつなのよ?」
「それにしても、おせちうまいよな」
「ちょっと!」
軽くスルーしたことに、アリサが怒って来る。
やめろよアリサ! それは開いてはいけないパンドラの箱なんだ!
「いいかアリサ? 人には知られたいことがあるんだ」
「何で誕生日がそうなのよ!」
俺の誕生日? ハッ! そんなもの遠の昔に諦めたね。
今更未練などない! はずだ……。あれ、目から汗が。
ともあれ、俺の誕生日を知られるのはまずい。また気を遣わせてしまう。
「ま、いいじゃん。俺の事は」
「はやてちゃんも知らないの?」
「ごめんなすずかちゃん。私も知らへんのよ」
「誰か知ってる人がいないかな?」
「「「「「「う~ん……」」」」」」
あれ? 俺の発言は無視ですか? そうですか。
ともあれ、残念ながら俺の誕生日を知るものはいない。これで詰みだ!
「あ!」
何か気づいたのか、はやてが声を上げる。
どうかしたのか?
「なぁーホープ?」
『ん? どうかしたかい、八神はやて?』
「なっ!」
はやてのやつ、なんて手を使うんだ!
たしかにホープならその程度の事知っている。でも大丈夫! ホープなら言わないでいてくれるはず!
「シュウ君の誕生日っていつなんかな?」
『マスターの誕生日は今日。1月1日だ』
えぇ!? 超あっさり言ったよこいつ!? 嘘だろ!
なんてことだ。まさかの伏兵がこんな近くにいるなんて。それも首からぶら下がってるほどの近さ。
「「「「「「……え? えぇ!?」」」」」」
ちょ、うるさい! 後、息合いすぎで怖いよお前ら!
「えっと……」
「「「「「「…………」」」」」」
沈黙が怖いので俺から口を開いたのに、残念ながらそううまく行かずに、沈黙してしまう。
いや、よく聞くと沈黙じゃない! なにやらぶつくさ言っているようだ。なにこれ怖い!
どうする? どうする俺!?
「こうしゃいられないよ! 行くよフェイト!」
「え? え、ちょっと姉さん」
いきなり立ち上がり、声を出したアリシアが、そのままフェイトの手を引き翠屋から出て行こうとする。
これには、子供たちを温かい目で見守っていた大人陣も驚いているようだ。
「あ~、心配だから、2人について行ってくるよ」
「お願いするはアルフ」
「あいよ」
2人に追いかけて行くようにアルフも人間モード(?)になり、一緒に翠屋から出て行く。
「私らも負けてられへん! 皆行くで! 八神家出動や!」
そう言い、車椅子を爆走させ行動を開始する。
ヴォルケンの4人とリインフォースの5人(1匹は狼だが)も焦った様子ではやての事を追いかける。
「「「……ハッ!」」」
一瞬の出来事に、なのは、アリサ、すずかの3人もあっけにとられていたようだが、意識がはっきりと戻ったようだ。
「なのは、すずか、私たちも行くわよ!」
「そうだね」
「え? え?」
どうやら3人も行動するようだ。
ただ、なのはだけがまだ理解しきれていないようだ。
「鮫島、車お願い!」
「かしこまりました」
「行くわよ、2人とも」
「え、え~」
あれよあれよで3人も出て行ってしまう。いや、なのはは引きずられてるけど……。
子供で取り残されたのは俺だけになってしまった。
「はぁ……」
とても大きなため息が出てしまう。
こうなるから言いたくなかった。知られたくなかったんだ。
1人でいるのも物悲しいので、ある程度テーブルの上を片付け、残っているおせちをまとめ、大人陣がいる場所に向かう。
「すみません、こっちいいですか?」
「あ、あぁ。勿論」
士郎さんに一言声をかけ、席に腰掛ける。ただ、こちらは椅子が高いので、俺も大人モードになる。
ただ、流石の大人陣も、先ほどの出来事にあっけにとられているようだ。
ちなみにこっちいいるのは高町夫妻にプレシアさん、美由紀さんと恭弥さん高町兄妹にその彼女ですずかの姉、忍さんの6人だ。
「シュウ君はずいぶんと落ち着いているんだね」
「あ~、なんとなく予測付いたんで」
「「「「「「予測?」」」」」」
どうやら皆さんは分からなかったようだ。
それも仕方がない事だ。今日、1月1日が誕生日の人は珍しい方だろう。
だったら俺が説明させてもらうか……。
「今日は何の日ですか?」
「何の日って、正月だろ?」
「正解です恭弥さん。次に、正月に子供が貰えるものは何ですか?」
「えっと、お年玉かな?」
「そうです美由紀さん。つまりそういう事です」
「「?」」
答えてくれた2人もこれだけでは理解できなかったのか、首をひねっている。
「子供って基本お金持っていないから、友達とかの誕生日プレゼントとかってお金かけれないじゃないですか。でも今日はお年玉をもらってお金を持っている。そこに、『俺、今日誕生日なんだ』とか言ったら、お金ないとか言えないし、気を遣ったりするでしょ? 今回も気を使わせたみたいですし……。だから言いたくなかったんだよな……」
はぁ……。とまたもや溜息をついてしまう。
「「「「「「…………」」」」」」
何故か大人陣が黙ってしまった。
どうしたんだ? まだまだ序の口なんだが?
「シュウ……。君は本当に小学3年生なのか?」
「一応その筈ですよ」
中身は別だけど。と心の中でつぶやく。
さて、他の事も愚痴ってもいいのだろうか? 誕生日プレゼント=お年玉になっていた事とか、おせちに合わないからとケーキなどが出てこない事とか、その他もろもろあるが。
いや、これ以上は言わなくてもいいか。恭弥さんに言われた通り、本日9歳になった小学3年生で、この世界に来たのが大体5歳で、その時から両親がいない事をこの人たちは知っているからな。下手な事を言うのも面倒だ。そしてなにより俺のトラウマが……。
「とりあえず、皆さんは気にしないでください。祝ってもらえないのには慣れているので」
「そうは行かないわ! 士郎さん、私今からケーキを作って来るわ」
「そうだね。僕も手伝うよ」
「え? あの?」
「と、言う訳で、シュウ君も少し外をぶらぶらしてきてもらえるかしら?」
「あ、はい。……って、はい?」
いや、本当にどうしてこうなった?
そして、俺の意見など聞いてもらえるわけもなく、翠屋から出ることになった。
急に店から外に放り出される。身も心もとんでもなく寒い……。
「どうしてこうなった……」
『諦めなよマスター』
「いや、元の原因はお前だからな?」
ホープに向かってジト目を向けてしまう。
傍から見たら、ネックレスにジト目で話しかけている変な奴だもんな。ま、周囲に人がいないのは確認済みだけど。
『これもマスターを思ってだよ。毎年毎年、元旦であり誕生日の今日を1人で過ごしているマスターが不憫でなかったんだよ』
「うっ……」
こう言われると、返す言葉もない。
デバイスに同情されるマスターって……。
「はぁ……。とりあえず時間つぶしか」
また夕方に来てくれと言われ、店から出てきたので何もやることがない。
「とりあえず家に帰って、年賀状の整理でもするか……」
本当にどうしてこうなったんだ……。
他に誕生日がはっきりしてるのっていましたっけ?
ないなら、オリジナルで考えた方がいいのか……。