テイルズオブゼスティリア~光の巨人伝~   作:ジャスサンド

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録画したアニメ見てたら思ったより熱が上がったので2話も書いてみました…長編にするか、それか短編で終わらせるかはまだ検討中です。


個人的な話ですが現在放送中のウルトラマンオーブことクレナイ・ガイさんのおかげで、ライラのティガさん呼びに違和感がなくて助かる。メビウスもちゃんとさん付けで呼んでくれる後輩ができて喜んでいることだろう


第2話 憩いの時間

 

『『アハハアハハアハハ』』

 

 

ティガとミケル、ライラはこの日も憑魔や憑魔獣を相手に戦闘を繰り広げていた。

敵対する彼らを小馬鹿にしたような奇声で笑うのは憑魔獣メンジュラ。

二体の同じ怪物が中央の結合部で繋がり一つの大きな体を持ったような姿の憑魔獣で侮れない相手だ。

 

 

「ジュア!」

 

 

巨大化したティガが打ち下ろした右拳がメンジュラの銀色の方にクリーンヒット。

ティガは反対側の金の方の攻撃を食らうより早くに蹴りを浴びせ、怯ませる。

 

 

「チャア!」

 

 

続けざまに踵落としを金色の頭に叩き落とし、体が連結しているせいで銀色の方も連動して仰け反ってしまう。

しかしメンジュラもやられてばかりではなかった。

連結部が消え分裂したメンジュラは、二体でティガの出口を塞ぐように周りを動き回る。

銀色の突撃を受け止めるティガの無防備な背中を狙い金色のメンジュラが、体を小刻みに震わせ何らかのアクションを始めようとしていた。

 

 

『ミケル様!』

 

「わかっている!」

 

 

ライラとの神依を展開していたミケルは二体に挟み込まれるティガに叫び、跳び上がり大剣を横一閃に切りつける。

 

 

「ティガ!こちらは任せてくれ」

 

 

その言葉にティガは深く頷き肯定の意を見せる。

ミケルの一太刀により分散したメンジュラの銀色の片割れをティガは請け負う。

長く伸びた角を突き刺してくるメンジュラの突進をすれすれでかわし、背後に抜けるメンジュラに視線をくれずに蹴り飛ばす。

 

 

『キャハハハハハ』

 

 

相も変わらず笑い声を上げるメンジュラ。

効いているのか効いていないのか検討しにくく、やりづらさを感じながらもティガは追撃を続ける。

 

 

『ハハハハハハ』

 

 

金のメンジュラを相手に闘うミケルもティガと同じく苦戦を強いられていた。

金色の攻撃手段は二本の角同士を重ね合わせその先端から炎を噴射する遠距離攻撃。

リーチが限定される大剣で厳しい敵だ。

だがそんな程度で根が折れるようでは導師は務まらない。

導師として憑魔等と戦ってきた経験が活きているのか炎を並外れた身体能力で避け、無駄な動きをせずにミケルは確実に距離を縮めていく。

 

 

「「燃ゆる弧月!」」

 

 

大剣に灯した炎が弧を描いてメンジュラ目掛けて宙を横切り、爆散。

メンジュラは被弾した腹を両腕で抑えながら痛みを堪えるようにあたふたと跳び跳ねる。

ティガも牽制のために威力を低くした光弾ハンドスラッシュを撃ち、速効性のある青き水平の光弾はメンジュラの首にあたる部位で爆発した。

 

 

「キャハハハキャハハハハハ」

 

 

狂ったように負傷しても変わらずに笑うメンジュラにティガもミケルも今までの憑魔にない不気味さにないしん寒気がするも、そんな場合ではないのは百も承知。

双方がメンジュラにダメージを蓄積していき、次第に反撃の色が薄くなる。

その瞬間二人はメンジュラを攻撃し弾き飛ばし銀と金のメンジュラは、最初とは異なった背中合わせの状態で密着してしまう。

 

 

『『キャハハハハハハハ』』

 

 

阿吽の呼吸とも呼ぶべき連携を見せた二人によって、異常事態に陥ったメンジュラはどうにか打開を試みるも互いに別々の敵に向かおうとするために足の引っ張りあいになってしまっている。

ティガは額の全面で両腕を交差させ、下に振り下ろすと赤の要素がなくなり紫と銀の二色の姿へ瞬時に変化した。

 

ティガの特殊能力タイプチェンジ。敵や状況に最も適した能力を持つ姿に変身する能力だ。

今この紫の姿は俊敏なスピードを引き出す能力に長けたスカイタイプと名の形態で、他にも後二つの形態がある。

銀・赤・紫の体色でスピードも力も平均的な能力な基本形態マルチタイプとパワーが格段に上がる代わりにスピードを犠牲にする赤い形態パワータイプ。

ティガはこれらの三つの形態を使い分けて闘うことができる。

 

 

スカイタイプとなったティガはメンジュラの上空に冷気を放ち、拡散したそれがたちまちメンジュラを凍結させ動きが完全に沈黙する。

ミケルとティガは頷き合いそれぞれとどめの術技を命中させた。

 

 

「ハアア、チャ!」

 

「『バーニングエコー!』」

 

 

スカイタイプの必殺技ランバルト光弾と神依化したミケルとライラの火炎術が、氷像と化したメンジュラを穿ち塵も残さず焼き尽くす。

メンジュラが消滅し周辺の嫌な気が知覚できなくなったのを確認したミケルはライラとの神依を解除し、ティガも変身を解き元の天族としての姿に戻る。

紫の瞳に少しかかった銀髪を気にも留めずティガはミケルと言葉を交わす。

 

 

「この辺りはこれで充分だね」

 

「あああの憑魔獣で終わりだ。穢れは完全に消えたようだ、成果は上々だ」

 

「お二人共そろそろ街に戻りませんか?もう半日中穢れを浄化し回っておりますし」

 

「む、もうそんなに時間が過ぎていたのか」

 

「言われてみれば確かにずっと憑魔と戦ってばかりだったね。でも…まだもう少しぐらいなら行けそうな気がするけど」

 

「私もだ」

 

「お二人がおかしいだけですわ」

 

平然と言ってのける二人の反応にさしものライラも苦い笑いしかできない。

活動時間が延びたのは導師として成長したということであり、主神であり仕える身のライラとしても非常に喜ばしいのだが小休止なしで半日も浄化を行うのは無茶苦茶だ。

ライラとティガ、二人の天族の支援があるのを差し引いてもいくら何でも無茶が過ぎる。

 

 

「言いですか?穢れを浄化するのは導師として正しい行いです。ですが休むのも導師の大事な行いですわ、今後はもうこんなことは止めてくださいね」

 

「ライラの言う通りだよ、ミケル」

 

「ティガさんもですよ。お二人に言ってるんですから」

 

「…さ、戻ろう。ミューズも待ってるし」

 

「だな。戻る時刻をとっくに過ぎてしまったからな。今頃心配しているに違いない」

 

「もうちゃんと聞いてるんですかお二人共!」

 

 

 

 

 

 

 

ティガがミケルの旅に同行して数年以上の時が経過していた。

数々の憑魔や憑魔獣を浄化しながら世界中を回る旅路の途中で、彼らの関係は劇的に進展し親友と呼べるまでになった。

もちろんミケルだけでなく火の天族ライラやミケルの妹で人間のミューズとも同等の信頼関係を築き上げ、親しくなっている。

人間から導師になったミケルは例外として通常人間には天族の存在は感知できない。だが行動を共にするうちにミューズの霊応力が段階的に上がり、知覚遮断をせずとも天族を感じることが可能となった。

 

 

「全くもう兄さんもティガもどうしてそうなの!」

 

 

ハイランド王国が統治する水の都レディレイクの宿でミケルとティガを待っていたのは、ミューズからのありがたいお説教であった。

ミューズのお叱りを正座で萎縮して項垂れる人間と天族の絵面は天族が見える者からは奇妙かつ物珍しい光景だ。

ライラだけは免れているのは同じ女性だからという贔屓目がかかっているのかそれとも別の理由からか、それはミューズ本人にしかわからない。

 

 

「すまんミューズ、ついすっかり忘れていたてしまってな…」

 

「思いの外捗って勢いづじゃったというか調子に乗っちゃったというか」

 

「ミューズ様さすがにもうよろしいのではないでしょうか?ミケル様もティガ様もこの通りちゃんと謝っておりますし」

 

「だーめ、散々人を待たせた挙げ句約束を忘れた人なんて知りません。せっかく初めてレディレイクで皆とお出かけしようと思ってたのに」

 

 

すっかり機嫌を損ねてしまった妹にどうすれば気を直して貰えるのか熟考するミケルとすがるようにライラに目で救いを求めるティガ。

そんな彼らに救いの手を差し出したのは他でもないミューズ自身だった。

 

 

「明日!今日約束破った代わりに明日は一日中付き合ってもらうから、いい?」

 

 

その一言に二人は一気に窮屈な思いから解放され、快く返事を返す。

 

 

「もちろんだ。明日はお前の好きなようにしてくれ」

 

「本当にありがとうミューズ」

「よかったですわね」

 

 

今回は運が良かったが以後は気を付けなければならないと、この時ミューズの恐ろしい説教が身に染みた二人は胸に誓った。

 

 

 

 

 

翌日、四人はレディレイクの街を散策した。

湖上の街と親しまれているだけあり街中には清らかな水が通い、時々吹きすさぶ風が涼しさを人肌に与えてくる。

 

 

「はい、兄さん。これもよろしくね」

 

「あ、ああ」

 

 

長旅に欠かせない食料品を購入しミューズはミケルにその荷を預け、るんるんと陽気に先頭を歩く。

先日ミケルらを待っている間にあらかた見て回っていたのか、初めての街にしては慣れた素振りで十字路を曲がる。

 

 

「えーと次は…」

 

「まだ…あるのか」

 

「あの調子だと夕方には荷物が倍以上になってると思う。うん、断言できる」

 

「よろしければ持ちますわよミケル様?」

 

「いやこれぐらい平気だ…」

 

 

ティガとライラに持たせてもいいのだがあくまでもこの荷物は妹の私物が八割を占めている。

そんな荷を天族にわざわざ持たせるわけにはいかない上、導師としでなく久々に人間の普通の兄として今日を送りたい。

だが何よりも根底にあるのは二人にも何の気兼ねもなしに、人間の街を満喫してもらいたいという望みだった。

 

 

「二人も何か気になる物があったら金のことは気にせず遠慮なく言ってくれ」

 

「兄さんー遅いよー!」

 

「そう急かすな今行く」

 

 

数十メートル先から大声で呼びかけるミューズの元へミケルは荷物を落とさぬよう気を配りながら、歩行する。

導師とは離れた印象のその後ろ姿を見届けたライラは呟く。

 

 

「ミケル様、楽しそうですわ」

 

「ここ暫く野宿続きでこんな風にゆっくりできる時間なんてなかったからね」

 

「そうですわね、ミケル様とミューズ様あのお二人を見ていると少し羨ましく思います」

 

「羨ましい?」

 

「はい。天族には家族はいませんから、もし家族がいたとしたらお二人のようになれたのではないかと思いまして」

 

 

なるほど、とティガは相づちを打つ。

人間が天族に転生したと言う事案は耳にした覚えはあるが、天族は基本人間のように母親から生まれたりはしない。

そのために人間で言うところの家族のようなものはないし、いたとしてもそれは血の繋がりはなく、ただ家族のように仲が良いだけ程度に片付いてしまう。

ライラがそう思うのも仕方のないことなのだ。

 

 

「だったらなっちゃえば?」

 

「え?」

 

「頼めばミケルもミューズもたぶん喜ぶと思うよ。あの二人ライラのこと好きなんだし」

 

 

ティガの言葉の意味が理解できず困惑するライラであるが、慌てて言葉を紡いだ。

 

 

「ですがお二人が迷惑ではありませんか」

 

「二人はそんなこと思わないって」

 

「そうでしょうか?」

 

「うーんそんなに気になるなら直接聞いてみればいいんじゃない?よかったら聞いておくけど」

 

ライラは眉を潜めて悩む。

無意識の内に人間と天族との壁を意識してしまい踏み出せないでいるのだろう。

ティガとしては自分などより付き合いも長いのだからそんなに臆病になる必要はないと思うのだが、本人がその気になるまでは無理強いをしても意味がない。

やはりライラが自分の口から言い出すまでは余計な手出しはしないとティガが決めた時、またミューズの声が街中に響く。

 

 

「何してるの二人共ー!」

 

 

ミューズの大声に周囲の人々が反応を示しちらりと彼女の視線を追うが、その方角には誰もいない。

その場に居合わせた人々はミューズを怪訝そうな目で一瞥し、自分の時間に戻る。

 

 

「行こうか」

 

「はい」

 

 

 

 

空が夕暮れを迎える頃にはミケルの手荷物はティガの予想通り倍以上増え、ミケルの腕は限界に達しかけていた。

顔が荷物で隠れてしまう程に積み重なっているのでそうなるのも当然と言えば当然なのだが、ミューズの中で買い物はまだ終わっていないようだ。

 

 

「後は野菜と~」

 

「ミューズ…さすがにもう限界だ…腕が疲れてきた」

 

「そうねえさすがにちょっと多すぎるか…兄さんたちは先に宿に帰っていいわよ。後はそんなにかさばらないし私一人で大丈夫だから」

 

「しかしお前一人だけでは危険だ。街中と言えども危険がないとも限らん、やはり私は残らさせてもらう」

 

 

妹の身を案じての台詞なのだろうが、ぷるぷる小刻みに震える腕と必死に荷物を落とさぬよう堪えている顔で言われても説得力がない。

そこで名乗りを挙げたのはティガだった。

 

 

「僕がミューズといるよ。僕だったら一人でも憑魔を浄化できるし」

 

 

光を司る天族のティガなら導師でなくとも憑魔を浄化できる。

それにないとは思うが憑魔獣が現れたとしても真っ先に対処できるため、ティガの申し出は最適な選択だ。

そう頭で飲み込んだミケルはライラを伴って一足先に宿へと帰って行った。

 

 

「すまない。では頼んだぞ」

 

「何かありましたらすぐ駆けつけますから」

 

 

ミケルとライラが場を去るとミューズはティガの腕を引っ張って、歩き出す。

 

 

「それじゃ行こっか」

 

「これは止めた方がいいんじゃないかなミューズ。これだと端から見たら何もないところを掴んでるように見えるよ」

「人目なんて気にしてたら導師の旅に付いて行くなんてやってられないでしょ。とにかく行くわよ」

 

「…は~い」

 

 

生真面目な兄と自由奔放な妹。

同じ血の繋がった兄妹でどうしてこうも違いがあるのか…つくづく人間は不思議だ。

そう思いながらティガはミューズの買い物に随伴した。

 

 

「人間の女の子って皆ミューズみたいに買い物好きなの?」

 

「どうだろう、女の子でも買い物好きじゃないって子結構いるし皆が皆私みたいに買い物好きじゃないんじゃないかしら。でも女の子に限らず男の人にも買い物好きはいるわよ」

 

 

これ綺麗だな、と売り物のマグカップを眺めながらミューズはティガの質問に答える。

 

 

「男の人でもそういう人いるんだ」

 

「そりゃそうよ。特に身だしなみは男も女も関係なしに大事な趣味、いいえ使命なんだから」

 

「使命…?」

 

 

言い過ぎではないのかとティガは呆気に取られるも熱が入ったミューズは、店員に怪しまれぬ程度に小声で熱弁する。

 

 

「年頃の男の子や女の子なんかはもう身だしなみをしっかりしないと生きていけないの。毎日毎日自分が着る洋服を選んだり、ちょっとしたアクセサリーで普段と違う自分を他人に見せつけたりするのが成すべき使命なのよ…わかる?」

 

「まあ…うん、なんとなくわかる」

 

 

身だしなみなど食事に次いで無縁な天族にその重要性を説かれても困るのだが、人間の価値観ではミューズの理屈は正しいのだろう。

まだ胸に引っかかるところはあるものの無理矢理納得したティガは、あれと首を傾げる。

 

 

「でもそれだと何でミューズは最近同じ服ばっかり着てるの?僕やライラは必要ないからともかく、ミューズとミケルには大事な使命なんでしょ?」

 

「う……」

 

 

ティガの一言にがくりと首を落とすミューズ。

その仕草でティガは自分の今の一言が失言であったのをそれとなく察する。

 

 

「いい…兄さんと私は…もう年頃じゃないからいいの、もうそういう時期は終わったから…それに同じ服に見えても洗ってないわけじゃないから、旅の途中でも一日ごとに手で洗濯してるから…絶対に不潔なわけじゃないから……!」

 

「わかった…ごめん、余計なこと言って…」

 

「ほんとそういうデリカシーのないところ、誰に似たんだか」

 

 

静かながらも恐ろしい剣幕にたじたじになるティガにミューズはぶつぶつ小言を言いつつも、再び売り物を見分した。

ティガもこれといって欲しい物がないが、何気なく売り物に目を通しているとある一つの商品に視線が止まる。

 

-そうだ

 

その商品を見てある考えが思い付いたティガはミューズにその考えを伝える。

 

 

「-なんだけどいいかな?」

 

「当然、絶対喜ぶわよ」

 

「ありがとうミューズ」

 

「いいのいいの、私も気に入ったから。これは今日一番の買い物になったかもね…むふふふ、楽しみになってきたわ」

 

 

揃って楽しげに満面の笑みを浮かべる二人。

しかし店主には実質ミューズ一人しか見えておらず、買い物を終え立ち去ってからも奇異な目を向けられていた。

 

 

 

 

 

一方その頃宿に戻ったミケルとライラは荷物を自分たちが取った部屋に置き、レディレイクの街外れの地下遺跡を訪れていた。

 

 

「やはりここに穢れが発生しているようだな。昨日からさっきまで気づかなかったとは情けない限りだよ…」

 

「おそらく今日の段階でここまで穢れが強くなったのでしょう。むしろ今気づけて幸いでした」

 

 

宿に戻った時ミケルとライラは強い穢れの気配を街の外から探知した。

邪魔になる荷物を置いて飛び出し森に隠された遺跡の入り口を発見し、そこから内部に侵入。

そして内部に進むとスライムを始めとする憑魔が襲いかかり、ミケルたちはこれらを撃破しながら遺跡の奥深くに進んでいるところだ。

 

 

「この先から強い穢れを感じる…気を抜くなライラ」

 

「いつでも大丈夫ですわ」

 

最奥とおぼしき扉を音を立てずゆっくり開けた途端、憑魔がこちらを捕捉し、目にも止まらぬ速さで襲いかかってきた。

俊敏な狼が憑魔と化したマーナガルムだ。

 

 

「くっ、素早い奴だ」

 

 

ミケルは懐より抜き放つと刀身で持ち上げるように振り上げ、マーナガルムの下顎を切り裂き先手を打つ。

速度が速い相手なだけに追撃はせず間合いを空けるのを優先したミケルはライラの名を呼ぶ。

 

 

「ライラ!」

 

「我が火は灼火!フォトンブレイズ!」

 

 

動きが鈍った隙にライラは炎熱を放出しマーナガルムに炎が上がる。

炎は自然には消えず鎮火しようとマーナガルムが走り回るが、その機動は初撃の速さを下回っている。

これぐらいならば一太刀入れるのもミケルには容易だ。

 

 

「虎牙破斬!」

 

 

一気に間合いを詰め斬り上げと斬り下ろしの二段斬りがマーナガルムの肉体を断絶した。

ライラの火属性の天響術の効果が重なりマーナガルムの穢れが浄化され、マーナガルムだったものは元の狼に戻り遺跡の外へ駆け出して行く。

 

 

「早急に処理できたおかげであれぐらいで済んだか…それよりこの遺跡まだ先があるようだな」

 

 

剣を鞘に納めミケルは更に奥を目指して暗がりを進む。

歩いて数分視界が当てにならず、ライラが炎を松明代わりに利用したことでようやく周囲の光景が鮮明にミケルの瞳に映る。

醜悪な悪魔のような化け物とそれを崇める人々が描かれた壁画と空間の中心で存在感を放つ祭壇。

そしてその無造作に散らばる人骨とハエがたかった多数の衣服、それら全てがミケルとライラの目を釘付けにする。

 

 

「何なんだ?人骨が何故こんな遺跡の奥深くに?先の憑魔の仕業というわけではないだろうが」

 

「生け贄…でしょうか…」

 

「心当たりがあるのかライラ」

 

「いえ、ですが噂に聞いたことがあります。天族を忌み嫌う一部の人たちが邪教を創設し邪神を召喚するために生け贄を捧げたと」

 

「それが本当ならばこの骨はその生け贄の成れの果てということか…酷い真似をする。穢れが満ちるのも当然だな」

 

腐敗臭にミケルは鼻を曲げながらも、この光景を生み出した者に悪態をつく。

 

 

「だが何故今日になって穢れを感知できなかった?」

 

「何らかの要因が影響していたのではないでしょうか?この遺跡に関係した何かが反応して穢れが増大したとか…」

 

「……今はここを出よう。せめて犠牲なった者たちが救われるよう祈りだけでも捧げていこう」

 

 

そう言ってミケルとライラは供養の祈りを行い、足早に出口で足を向ける。

この時青い霊魂のような不可視の球体がライラの体に吸い込まれるように入ったのだが、ライラとミケルどちらもそれに気づくことも違和感を覚えることもなく遺跡を出た。

 

 




ミケルとミューズこんな感じでいいのか凄く不安です…なんか若く書きすぎた気がする特にミューズ。


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