あくまで個人の空想、妄想の類いであることは忘れないで下さい。
それでは、よろしくお願いします!
20XX年12月某日、某所にて――――
「…………それがどうしてッッ! 前歴持ちで屋根裏に住んでるゴミなんかがァッ!! 俺に無えモン持ってんだよォォォォォッッ!!!!」
とめどない憎悪とやるせない嫉妬がないまぜになったような、悲痛な声を絞り出す黒装束の少年。
膝をつき、見るからに満身創痍でありながらその声はどこまでも響きわたった。
そして彼に相対するは、『怪盗』としか表現出来ない服を纏った少年を筆頭とした少年少女たちと、二本の足で立つ奇妙な猫。先頭に立つ少年からはどこかリーダーとしての風格のようなものが感じられる。
彼らはそれぞれが女スパイ、ギャング、江戸時代の義賊……まったく統一感の無い衣装を纏いながらも、どこかに同じ雰囲気があった。
一様に、その顔は仮面で覆われていた。
その中のギャングのような装いで、ドクロの面をした金髪の少年がおもむろに口を開く。
「…………いや……すげぇよ、お前は……」
怪盗というよりも盗賊というべき和装に、狐を模した面をつけた少年もその言葉に頷く。
「……ああ、お前はこの中の誰よりも優れていた」
それを聞いた黒装束の少年は息を詰まらせ、歪んだ笑みを作った。
「はっ……気休めかよ…………」
「いいえ、違うわ」
ハッキリと否定の声をあげたのはライダースーツに鉄仮面の少女だった。
「あなたはこの中の誰より力があった。私達があなたに勝てたのはみんなで挑んだから」
「私はあなたが羨ましかった……お姉ちゃんに信頼されているあなたが、羨ましかった……」
今度は女怪盗の格好をした少女もそれに続く。
「あなたがお父様にしたことは許されないことだけど……それでもあなたのこと、ちょっとわかる気がするの」
モノアイめいた模様の大きなゴーグルが印象的な、小柄な少女も頷いた。
「お前らが仕掛けてきたメジエドの一件……あれ、本当に最低な罠だったけどな。でもあれがなかったら多分、今の私も無かった。だからな…………その、いつからやり直したっていいんだ!」
さらにふと思いついたように言葉を続ける。
「つかお前……一人で二つのペルソナ使えるなんて、多分ジョーカーと同じ才能もあったんじゃね? でも誰とも関わりを持たず、人生ソロプレイだったから発現したのは自前の『嘘』と『恨み』の二つだけ……」
「でも、それでいいと思ってたんだろ? それは…………わかる。すっげぇわかる」
半ば独白のようなそれに再び狐の面の少年が同意する。
「そうだな。そこがおそらく、俺達に全てで勝るお前に唯一欠けていたものだ」
「……………」
それを聞いていた黒装束の少年は呆気にとられていた。
そして今度は先ほどと違って力無い苦笑を浮かべた。
「は、はは…………なるほどな……」
二本足で立つ猫も言葉を発した。
「まだ、やるか?」
はっきりと少年は首を横に振った。
「……いや、もういい……もう懲りたよ…………」
今まで沈黙を守っていた女スパイのような格好に豹を模した仮面をつけた少女が一歩前に出た。
「それで? これからどうする? 私達は、これから獅童と決着つけに行くけど。……途中で邪魔されたりしたらかなわないし、あんたも一緒に来る?」
わだかまりなどを感じさせないあっさりとしたその問いかけに絶句する少年。
その少女の発言に全員が疑問を持つ様子もないことを確認し、視線を下にむける。
しばらく黙りこんだ後、何を言うか迷うかのようにしながらゆっくりと口を開いていく。
「お前ら、本当に馬鹿だな……邪魔されるのが嫌なら、ここで俺を始末していくべきだろ……」
「まったく…………理解を超えてるよ、お前らは………………」
「俺は――――」
更に何かを言おうとした少年を遮るようにして突如、何者かの声が響いた。
「こんなにあっさりと負けるなんてな。つくづく情けない男だ……」
『!?』
反射的にその場にいた全員が周囲を見回し、声の主を探す。
そして。
その声の持ち主は暗がりから足音とともに姿を現した。
「お前、は……」
誰のものともわからない問いに反応を見せず、その人物――膝をつく少年とそっくり同じにしか見えない少年は、苦々しい表情をたたえた彼を無表情に見下ろす。
そして懐から拳銃を取り出し、眼前の少年に突き付けこう言った。
「シドウ船長からの命令だ……お前はここで処分する」
あまりの事態にこらえきれなかった金髪の少年がおもわず叫ぶ。
「明智が、もう一人ッ!?」
「いや違う! あれは……!」
鋭く否定したその声に続いて呆然とした別の声が発せられる。
「
明智と呼ばれた少年は苦々しい表情のまま、口元だけを歪に曲げて笑みを作った。
そして無表情に自分を見下ろし続ける同じ顔の少年――認知上の明智——に声を投げかける。
「………なるほど……前から、疑問だったんだ……もし俺がこのパレスの中で全力で暴れまわったら、あの男はいったいどうするつもりなのか、ってな………………」
「お前が、その答えってワケだ……自分と同じ顔をした人形に始末させる…………あの男らしい」
苦し気に言葉を区切りながら話す彼に認知上の明智と呼ばれたほうの少年も応じる。
「ああ……俺は人形さ。あの人に言われたことならなんだってやる」
「酷い……!」
そのやりとりを聞いていたライダースーツの少女がとっさに声を漏らす。
「……あれは獅童の認知上の明智君。つまり獅童は明智君をこう思っている……」
「『自分の言うことをなんでも聞く人形』……あの、外道が……!」
少女の言葉を引き継ぎ、怒りをこらえきれない様子で狐の面の少年はそう吐き捨てた。
その言葉も聞こえないかのように無視し、認知上の明智はまた話しはじめた。
「俺は確かに人形さ……だがな、俺が人形なら」
そこで区切り、誰が見ても明らかな嘲笑を作り言い放った。
「
「……!!」
その決定的な一言に、明智の口元の笑みは一瞬で消え失せ、劇烈な痛みに耐えるかのように強く歯を食いしばった。
「嬉しかったんだろう? あの人から頼られて。だからこそ、なんでもやったんだからなぁ!」
「黙れ…………‼」
「結局、どこまでいってもお前は人形でしかないわけだ……ああ、そうだ。今からでも遅くはない。
『なっ……⁉』
「「…………」」
認知上の明智はそこで初めて明智から視線を外し、怪盗の格好をした少年達のほうを見る。
皆の先頭に立つ少年と、本物の明智は揃って沈黙を守り続ける。
「そうすればこの場は生かしておいてやる。……どうした? やれよ」
「………………」
「ふっ、ふざけんなよテメェ‼!!」
あまりの物言いに激昂し、認知上の明智に詰め寄ろうとする金髪の少年。
それを一瞥した認知上の明智は、
「黙れ」
とだけ言った。
それと同時に、獰猛な気配を放つ犬と特殊部隊の格好をした人間達が、まるで地面から湧き上がるかのように無数に出現する。
それらが持つ雰囲気は、明らかに本物の生物とは違う、おぞましい何かが発するものだ。
「これは!」
「こいつ…………シャドウを……!」
踏みこもうとした金髪の少年もその光景にたじろぎ、動きを止める。
そして狐の面の少年がうめくように呟いた。
「今すぐこいつを殺してやろうか? それとも、お前らのうちの誰かが身代わりにでもなってみるか? そうすればこいつの命も少しは延びるかもなぁ……」
「野郎…………‼‼」
やり場の無い怒りから青筋を立てる少年も、うかつに近寄ることは出来ないことを悟った。
それを確認して認知上の明智は、明智へと視線を戻した。
「ほら、どうした? やらないのか?」
認知上の明智の言葉に応えず、本物の明智はゆらりと立ち上がる。
そして。
認知上の明智と同じように懐から銃を取り出し、黙って自分を見続けているリーダー格の少年にその銃口をむけた。
それを見た認知上の明智は哄笑する。
「ハハハハハッ! そうだ! それでいい! さあ、殺せ‼」
「 …………はっ……」
薄笑いを浮かべた明智はカチリ、と銃の撃鉄を起こす。引き金にかかった指が引き絞られていき————
「
瞬時に狙いを変えて認知上の明智を撃った。
「ガァッ⁉ き、貴様——」
いきなりの出来事に反応できず、その銃弾を喰らった認知上の明智はよろめき、命中した箇所の脇腹に手をやる。
その姿をせせら嗤う明智。
「俺はもう……人形じゃない……!」
互いに銃口をむけあうかたちになったそっくりな二人。しかし片方は顔を歪め、それとは対照的に片方は笑っている。
このまま双方が撃ちあい、共倒れで決着がつくかと思われた。
しかし、
「ッ!」
明智は何故か右手の銃を再びリーダー格の少年のほうにむけ…………撃った。
その一挙一動をずっと黙って見守っていた少年は瞑目し————
「【アラハバキ】ッ‼‼」
力強く、そう叫んだ。
刹那、それに呼応するように少年の傍に青銅でできた巨大な土偶が姿を現した。
その土偶、【アラハバキ】は少年を
それを見た明智は目を大きく見開いた。
「……ジョーカー……お前…………」
「……」
震える声の問いかけに黙って不敵な笑みを浮かべるリーダー格の少年……ジョーカーはスッ、と手を動かした。
それに合わせて【アラハバキ】は、明智と認知上の明智の間に入るような位置へと動く。
まるで、明智を庇うかのように。
「ど、どういうこと? 今の銃弾は明らかにジョーカーを外れていた……いえ、それよりも……」
「……何故ジョーカーは当たらない銃弾をわざわざ? まさか、彼が臆したわけでもないでしょうし……」
突然起きた連続した不可解な事態に呆然とした様子で声を漏らすライダースーツの少女と女怪盗の少女。
誰もが理解できずにジョーカーを注視する。その視線には目をやらず、明智と認知上の明智を見たまま、ジョーカーはようやく口を開いた。
「今の銃弾。俺を狙ったわけじゃない。それなら、
「何、って……………」
「明智がこんな意味の無い真似をするわけがない。つまり、そこには意味がある」
言葉少なに語るジョーカー。
「
「…………お前は……本当に……」
「お前が気付いたんだ。俺が気付いたとしても不思議じゃないだろう?」
そうやりとりする二人を他の面子は困惑しながら、どういう意味か考える。
「狙ったわけじゃない……? あっ⁉」
ゴーグルをつけた少女が何かに気付いた。その様子に、金髪の少年はおずおずと尋ねる。
「お、おい。ナビ、どういうこった? 明智はいったい何を……」
ゴーグルをつけた少女、ナビは先ほど明智が銃弾を放った方を指さす。
つられてそちらを見た全員が理解した。
「…………わかっただろう? スカル……明智が狙ったのはジョーカーじゃない。自分と私達とを分断する
「自分とシャドウ、認知上の明智を閉じ込めて私達を逃がす……なるほど、確かに自己犠牲ってわけだ」
そこにあった赤いスイッチに、自分達と離れたところにいる明智、その間の床に引かれた太い一本の線。それは隔壁が下りる場所を示す目印だった。
スカルと呼ばれた少年を含めた一同はナビの言葉に納得する。
しかしそれを聞いた明智は首を横に振る。
「自己犠牲……? はっ、んなわけあるかよ……これはただの打算だ……」
「お荷物にしかならない今の俺を抱えて……あれだけの数のシャドウから逃げ切れるわけがない、全滅するに決まってんだろうが…………」
「そうなりゃ、誰が……あの男をヤるんだよ……お前らには、こんなとこで死なれたら困る。ただ、それだけだ……」
「わかったら、とっとと行け……! こいつも、シャドウも、代わりに俺が始末しておいてやる……!」
語気を荒げる明智。
「……いや、それは無理だ」
きっぱりとそう断言して、ジョーカーはその手をズボンのポケットに入れる。
「いくらお前でも、それだけ消耗した状態であれだけのシャドウを相手にして無事でいられはしないだろう」
「それがどうした‼ お前らがパレスの外に出る程度の時間稼ぎができればいい……! その後で俺がどうなろうと、お前らの知ったことじゃ——」
「だから、それは許さない。お前も俺達も全員生きてここから出る。そして獅童との決着をつける。そう決めた。わかったか?」
「決めた……………って、お前……」
あまりに不遜な態度と物言いに絶句する明智。
「……そ、そもそもどうやって逃げるつもりだ? ここからパレスの入り口までは相当な距離があるし、第一ここには…………」
「貴様ら……今さら生きて帰るつもりか……⁉ ふざけるなよ……全員、ここで死んでもらう!」
明智の言葉を遮り認知上の明智が怒声を放つ。その言葉をきっかけに、先ほど出現した無数の犬や人間……シャドウがその体を溶かすようにして、それぞれが種々雑多な怪物たちに変貌していく。
しかし、その状況でもジョーカーの不敵な笑みは消えなかった。
「どうやって、か……そうだな、わかりやすく見せてやろう」
そう言ってポケットから出した手を無造作に振り上げ、こう言った。
「スカル!受け止めろ!」
「なっ…………⁉」
「はっ? 俺? いったい何を、ってうぉわぁぁぁっ⁉」
なんとジョーカーは、【アラハバキ】によって明智を後ろのスカルへ投げ飛ばしたのだ。
突然投げ飛ばされた明智はもちろん、受け止めろと言われたスカルも慌てふためき、必死に明智をキャッチする。
とはいえ、さすがに勢いのついた人間一人を受け止めるのは不可能に近く……
「「ガハッッ‼」」
明智とスカルは二人揃って地面に倒れこんだ。
セーブデータをつい上書きしてしまうため、肝心のシーン近くのデータが無いため細部は多少異なっていたり、改変されているかもしれません。
後から違う箇所を確認したり更に書き足したりして修正していこうと思うので、どうかそこは大目にみてやって下さい……申し訳ありません