~TAKE YOUR HEART~   作:10祁宮

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読者の皆さんありがとうございます……!


Turning Point/4

「グルルルゥゥゥォォォォォッッッ!!」

 

「ッ!」

 

威圧するようなシャドウの咆哮にも怯まず、正面から体を沈ませて一気に跳躍、シャドウの首に手を絡ませもう片方の手で深々とナイフを突き刺す。

崩れおちるシャドウを一顧だにせず、次の標的を探すジョーカー。

その背後に音も無く他のシャドウが近づき、その腕を振り上げてジョーカーを叩き潰す構えをとる。

しかし、

 

「ガァッッ!?」

 

渾身の一撃をぶつけようとする瞬間、間に割って入ってきた【アラハバキ】にその威力の全てを反射され大きく怯む。

そして次の動作に入ることなく、距離を詰めてきたジョーカーに一撃を入れられ絶命した。

 

乱戦が始まって以降、ジョーカーはこのようにあえて自分の隙を晒し、そこにつられたシャドウを【アラハバキ】によって足止めし自分でトドメ、という一連の流れを繰り返していた。

 

時たま、遠距離から飛んでくる攻撃は他のシャドウの裏に回り込んで身代わりにして倒させたり、【アラハバキ】を盾にして無効化させる。

 

ただシャドウを殺戮する機械になったかのように的確に急所を突き、一撃で仕留めていく。

 

それでも際限なくシャドウは出現し、戦いが始まってから一向に数が減る気配もない。そのことを理解しながらもジョーカーはなおも戦う姿勢を見せたが————

 

フッ、と脱力しナイフを持つ手を下ろした。

それを諦めと見てとったシャドウ達は彼へと殺到する。それはこの戦いが始まってから何度も繰り返された光景の焼き直しのようであったが、しかし結果は大きく異なった。

 

ジョーカーはその場を動こうともせず、【アラハバキ】も微動だにしなかった。

ただシャドウ達を見やり、覚悟を決めたように静かに息を吸い込み、たった一言だけを鋭く口にした。

 

 

 

「【ペイルライダー】ッッ!!!!」

 

 

 

瞬時に【アラハバキ】は搔き消え、代わりに現れたのは“死神”。

大鎌(デスサイズ)を携え、蒼ざめた馬(ペイルホース)に騎乗する髑髏の死神——【ペイルライダー】。

 

静謐な雰囲気を放っていたものの、決して攻撃的ではなかった【アラハバキ】とは違い、【ペイルライダー】が纏うのはまさしく死の気配。

【アラハバキ】とは存在としての格がまるで違う。

 

力量の差を感じとった周囲のシャドウは咄嗟にジョーカーから離れようとした。

しかしもう遅い。

 

彼が【ペイルライダー】を顕現させた時点で勝負は決着しているのだから。

 

 

 

 

 

「………………〈デスバウンド〉」

 

 

 

 

 

刹那、全シャドウの足元から数えきれないほどの()が現れ、シャドウ達を地面へと引き倒し、叩きつける。

そしてそのシャドウ達全てが消滅する(、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、 、)

 

最初からこのペルソナを出していればわざわざこうまでして戦う必要もなかったのでは無いか。

そう思わせるほどの圧倒的な力を行使した当のジョーカーは苦々しい顔をしていた。

 

彼は一瞬にして静寂を取り戻した空間で、とある会話を思い返していた。

 

 

 

(ほう……これは……)

 

(主! …………このペルソナは、囚人の力量と余りに不釣り合いです!)

 

(ええ……この囚人が御すことが出来る範疇を超えているのではないかと思います)

 

(ふむ……しかし、こうして宿った以上、このペルソナはこの男に従うだろう。いささか想定外の結果ではあったが……それもまた、必然ということ)

 

(ですが! …………いえ、主がお許しになるのなら……)

 

(……自らの分を弁えず差し出がましく口を挟み、申し訳ございません)

 

(よい。気にしていない)

 

(ありがとう、ございます。……おい、囚人! その力は貴様のものだ!)

 

(……このペルソナは確かに強大です。その力を使うなら大抵の敵は屈服することとなるでしょう。ですが、本来なら生み出すことのできないペルソナを使役するあなたの負担はかなり重くなります。囚人、扱いには気をつけることです…………)

 

 

 

(……これは確かに、なかなか、キツイな……!)

 

ジョーカーは胸を押さえて片膝をつく。

ずいぶん余裕のあった体力が相当削られている。

 

(体力を温存していて正解だったな……序盤からこれほどの体力をもっていかれては結局最後までもたなかった……)

 

彼は深呼吸しながら自身の分析をする。そして静かに佇んでいた【ペイルライダー】を一瞥し手を上げる。

その合図で【ペイルライダー】は消え失せ、まるで何事もなかったかのようにジョーカーただ一人がその場に立っていた。

 

(使えばほぼ間違いなく敵を倒す【ペイルライダー】だが、その燃費を考えると軽率には呼び出せない。よほどの窮地でない限り、身の丈にあったペルソナが一番というわけだ)

 

(かなりの時間稼ぎをしたから、おそらく他の皆はもう脱出できているはず。ここからは俺一人でこのパレスを切り抜けないといけない、か……)

 

(ナビの支援は無い。頼れるのは自分の記憶と地図だけ。…………最初はそれだけでやってきたっていうのに、こうも不安になるか……)

 

仲間の有り難さを実感し苦笑するジョーカー。

そして表情を引き締め、皆が出ていった扉を仰ぎ見る。

 

扉へ続く階段を登りながら再度出口への道筋を確認し頭に叩き込む。

そして最後の一段を登るとともに地図をしまいナイフや他の道具を取り出す。

戦闘が始まっても即座に対応するための準備を終え、ついにジョーカーは扉を開き、逃走を開始した。

 

 

 

 

 

「そっちに逃げたぞ! 追え!」

 

「畜生、どこに隠れた! 探すぞ!」

 

「あっ、あそこだ! クソッ、待て!」

 

「バウッ! バウバウッ!」

 

自分を追いかけ回す警備員や特殊部隊、犬の格好をしたシャドウを時には走り、時には隠れてやり過ごし、順調に逃げ続けるジョーカー。

 

たまにある『セーフルーム』で最低限の休息をとり、また逃避行を再開する。

 

どうしても戦闘しないといけない時は正面から真っ直ぐ突っ込んで敵の攻撃を【アラハバキ】で防ぎ、とある協力者(コープ)から習得した技術、『囲い崩し』を使って突破するという強引すぎる手段をとっていた。

 

いちいち戦闘なんて付き合いきれない、とばかりに駆ける彼はついに中央本会議場のあるホールにたどり着いた。

ここから正面入り口のある大ホールまではほんの僅かな距離しか無い。

見えたゴールに更にペースを上げて走ろうとするジョーカーは、つんのめるように急停止した。廊下の角に身を隠し顔を少し出して奥を覗く。

 

大ホールに続く扉の前にシャドウが出現したのだ。

明らかに今まで相手をしてきたシャドウ達とは放つ威圧感がかけ離れている。あのシャドウをやり過ごすことは難しい——

 

そう判断し、観念した彼は隠れるのをやめ、正面からシャドウへ近づいていく。

ジョーカーに気がついたシャドウはすぐに戦う構えをとる。

ジョーカーも何も言うことなく【ペイルライダー】を召喚。

 

……次の瞬間、音を立てて唸るシャドウの拳を【ペイルライダー】がその大鎌で受け流す。拳に対してカウンターの一閃、しかしシャドウも難なく避ける。

そこに死角からジョーカーの銃弾が撃ちこまれるが、

 

————カァンッ……

 

あっさりと弾かれる。

銃撃は効果が無い。

他のペルソナではこのシャドウには力負けするだろう。

ならば。

 

「純粋な力比べか……仕方ない」

 

「…………!」

 

シャドウは再びその豪腕を振り下ろす。

その一撃を華麗に回避し、バク転して距離をとるジョーカー。

【ペイルライダー】が入れ替わりに前へ踏み出し、大鎌を下から上に薙ぐ。

腕を地面に叩きつけた直後のシャドウは回避しきれず右腕を斬られた。

ザックリと深く刃が入るも切断には至らない。

 

「ゴァァァァァァッッッ!!」

 

しかし、その痛みはシャドウを怒らせるには十分だった。

傷つけられたシャドウはジョーカーを鋭く睨みつけ、物凄い勢いで突進した。

 

「なっ————!?」

 

【ペイルライダー】を無視した想定外の動きに動揺し、動きが鈍ったジョーカーは、

 

「ウグッ……ガッ……ァ…………!?」

 

巨大なシャドウの体重と速度の乗った体当たりをもろに喰らい、ボールのように吹き飛ぶ。

 

衝撃で途切れそうな意識を必死に繋ぎとめながらなんとか受身をとり、間髪を入れずもう一度突進してくるシャドウを回避する。

 

少しでも距離をとるためゆっくりと後ずさりする彼の背中に軽い衝撃が走る。

見るとそこにはホールへの扉があった。

 

ここを開けば逃げることはできる。

しかし————

 

「………………」

 

その瞬間、油断無くこちらを伺っているシャドウは突っ込んでくるだろう。

【ペイルライダー】を【アラハバキ】に交代させれば或いは、ほんの足止めになるかもしれない。

だがその隙に距離を詰められてしまうし、反射した勢いを無視し【アラハバキ】が押され続け、そのまま自分が扉との間に挟まれて潰される未来も見える。

 

どうする。

 

思考を巡らせ、あらゆる行動とその結果をシミュレーションし、自分がとるべき最適な動きを探る。

そして、ジョーカーは決断する。

 

 

 

「…………【アラハバキ】ッ!」

 

「! ……ガァァァァァァッッ!!!!」

 

 

 

彼が選択したのはペルソナの交代。

【ペイルライダー】の代わりに【アラハバキ】が現れ、それと同時にシャドウも一気に突進する。

【アラハバキ】に激突した瞬間、ごく僅かに動きが止まるがそれを気にも留めず、シャドウは勢いよく走り抜け————

 

————————ダァァァンッッッ!!

 

と、扉を揺らす。

【アラハバキ】と扉は少しの隙間も無く密着しており、間にいた者は間違いなく即死。生き残ることなどできはしない。

 

【アラハバキ】は静かに消滅していく。

それを見て何の感慨も無く振り返ったシャドウは、

 

 

 

 

 

 

 

「〈メガトンレイド(、 、 、 、 、 、 、)〉ッッッッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

自らが行った突進を更に超える勢いで疾風のように駆け抜けてきた【ペイルライダー】の一撃を正面から受け、真っ二つに両断された。

自分の体が分かたれていくのを認識しながらシャドウはただ一つ、

 

 

 

————何故、生きている?

 

 

 

という疑問を抱きながら崩れおちていった。




戦闘シーン、上手く描写できていましたでしょうか?
もしよければ感想を頂けると嬉しいです……
感想が面倒な方はポイントつけるだけでもありがたいです

どうにも判断基準がなくて……
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