何をやってもツイてないオレたち『GUSTAVE(13)』、『ELK(13)』、『TYLER(18)』、『NARSES(24)』だったけど、苦労の末にようやく初ライヴまで漕ぎ着けたぜ。
不運と踊る日々が続いたが、今日はオレたちのデヴュー曲『聖なる水源』の公開直前インタヴューだぜ。
後ろが切り立った崖になっている海沿いの岩場、そこに彼らは居た。
今をトキめく話題のビジュアル系バンド、『✝闇夜に輝く幻想の星✝』の四人である。
「じゃあインタビューを始めましょうか」
「はい、お願いします」
『✝闇夜に輝く幻想の星✝』のリーダーであるGUSTAVEは、インタビュアーのキュルケという女性に若干イケてるような口調でそう応える。
(プロインタビュアーになって初の仕事がビジュアル系バンドのインタビューなんて正直すごいツイてるけど……『✝闇夜に輝く幻想の星✝』か……。歌って踊れて戦えることが売りの新星バンドみたいだけど、なんだか売れなさそうな名前だわ……。今までツイてない人生だったことがバンド名の由来らしいけど……)
キュルケの想像したことは概ね正しかったかもしれない。彼らは本当にこれまでの人生、いいことなんて一つもなく生涯を送ってきたのだから。
だがそれも昨日までのこと。彼らは今日という輝く日に華々しいデヴューを飾り、音楽業界に新たな旋風を巻き起こすのだから。
だが、キュルケがインタビューを始めようとしたその時!
「ウワッ…! ウワァァァァァ―――!!!」
「ナ…NARSES―――!!!」
なんと金髪が美しいクールなNARSESの足元の岩が突如崩れ落ち、崖下の海にビジュアル系っぽいポーズを取りながら転落してしまったのだった!
仲間に襲いかかった突然の不運にGUSTAVE、ELK、TYLERたちメンバーは激しく動揺し、涙を流して彼が落ちた先を見て心の中で叫び声を上げる。
(NARSES――――――!!! ヤーデ伯爵家に三男として生まれたが、実家が爆発してやむなく夢追い人に転職したが、口の悪さから組むパーティ組むパーティ全員に嫌われ、結局一つとしてお宝を見つけられず、家はドロボウに入られた……! そんなツイてない人生にも負けず、ここまで頑張ってきたNARSES……!! NARSES――――――!!!)
そして一人減ったその様子を驚いたように見詰めるキュルケインタビュアー。
悲観に暮れるGUSTAVE、ELK、TYLERの三人だったが、その内の一人ELKが涙を拭って立ち上がる。
「な…泣くな皆!! 涙という名の宝石は心の牢獄に仕舞え!!」
「NARSESのためにも、残ったオレたちが頑張るしかないじゃないか!!」
「そうだ! TYLERの言う通りだぜ!!」
TYLERの言葉に力強く頷くGUSTAVE。
だが、気を取り直してキュルケがインタビューを始めようとしたその時!
「ウワッ…! ウワァァァァァ―――!!!」
「タ…TYLER―――!!!」
なんとオレンジのモヒカンが凛々しい男の中の男であるTYLERの足元の岩が突如崩れ落ち、崖下の海にビジュアル系っぽいポーズを取りながら転落してしまったのだった!
仲間に襲いかかった突然の不運にGUSTAVE、ELKらメンバーは激しく動揺し、涙を流して彼が落ちた先を見て心の中で叫び声を上げる。
(TYLER――――――!!! 夢追い人になることを夢見て、必死でお小遣いを貯めてやっと斧を買ったが、見た目に反して実はお茶碗より重い物を持ったことがなく、無理に斧を振って肩を脱臼してしまい、家はドロボウに入られて斧は爆発した……! そんな不幸にも負けず、バンドに人生を賭けたTYLER……!! TYLER――――――!!!)
そしてまた一人減ったその様子を若干引いたように見詰めるキュルケインタビュアー。
NARSES一人の犠牲ならまだ持ち堪えようがあったのだろうが、続くTYLERの犠牲にELKは絶望に打ちひしがれてしまう。
「も…もうダメだ……。オレたちの夢という名の翼はもがれてしまった……!」
「バカヤロウ! ここで諦めたら今までの頑張りが無駄になるぞ!!」
「でも…もうヴォーカルとドラムだけになってしまったじゃないか……!!」
「だからなんだってんだ!! 音楽ってのは、たとえ……」
ELKの弱音をGUSTAVEが一喝する。
だが、もう一度気を取り直してキュルケがインタビューを始めようとしたその時!
「ウワッ…! ウワァァァァァ―――!!!」
「ギュ…GUSTAVE―――!!!」
なんと所々尖った黒髪が特徴的な『✝闇夜に輝く幻想の星✝』のリーダーGUSTAVEの足元の岩が突如崩れ落ち、崖下の海にビジュアル系っぽいポーズを取りながら転落してしまったのだった!
仲間に襲いかかった突然の不運にELKは激しく動揺し、涙を流して彼が落ちた先を見て心の中で叫び声を上げる。
(GUSTAVE――――――!!! 世界一の剣士を目指したが、自作の剣が爆発して剣士生命を断たれた上に家はドロボウに入られ、勇気を出して密かに想いを寄せていた女性に告白した際には『わりとキライでした』とフラれてあえなく玉砕した……! それでも人生を諦めずにバンドに全てを賭けたGUSTAVE……!! GUSTAVE――――――!!!)
そして四人中三人も減ったその様子をドン引いたように見詰めるキュルケインタビュアー。
最後にたった一人残ったELKは二刀を模したスティックを震える手から落とし、今度こそ膝を折って絶望に支配されてしまう。
「なんてことだ…どうすればいいんだ……。とうとうドラムのオレ一人になってしまった……!」
(ドラムが残っちゃったの!?)
「ドラムのみのバンドなんて、バンドじゃなくてドラムという名の堕天使だよ……」
ELKは自分たちの宿命に絶望し、一人どうしようもない現実にむせび泣く。
だが、今度こそもう一度気を取り直してキュルケがインタビューを始めようとしたその時!
「ウワッ…! ウワァァァァァ―――!!!」
「ド…ドラムの人ぉぉぉぉぉ―――!!!」
なんと茶髪の髪型がワイルドな一番の跳ねっ返りELKの足元の岩が突如崩れ落ち、崖下の海にビジュアル系っぽいポーズを取りながら転落してしまったのだった!
自分に襲いかかった突然の不運にELKは激しく動揺し、涙を流して先程まで自分たちが居た場所を見て心の中で叫び声を上げる。
(オレELKは、尊敬していた男爵様の後を継ぐために昼は街の徘徊夜も街の徘徊と必死に働いたが、徘徊していたテルムの街が爆発し家はドロボウに入られ、所属していた自警団『鉄の狼』はよく見たら何かの宗教だった……! そんなツイてない人生にもめげずに頑張って、やっとバンドという新しい夢を掴んだのに……ここまでかよぉ……チクショォォォォォ――――――!!!)
インタビューの現場である崖に一人残されたキュルケインタビュアーは唖然と口を半開きにし、二重の意味で取り残されていた。
そして我に返ったキュルケインタビュアーは、ようやく出てきた言葉を心の中で呟く。
(……全滅した……)
~終われ~