ゼロの使い魔 ~小さな物語~   作:MAXコーヒー

4 / 22
5000文字以上も書けて嬉しかった。(小学生の作文並みの感想)


4話 ギュスターヴ7才

 

 

―――夏の日差しが降り注ぐエオーの曜日。今日はヴァリエール公爵家長男ギュスターヴと三女ルイズの7才の誕生日。

 

朝から屋敷中を使用人たちがパーティの準備に追われるようにごった返し、いつもよりも忙しそうにバタバタと走りまわる。

 

 

その様子を俺は少し呆けたように見る。

さっきまで俺は、浴場で悪夢のせいで若干沈んでいた気分を晴らすために汗を流していた。

風呂は嫌いではないので、沈んでいた気分も少しは紛れ、俺も自分の準備をするために着替えに行こうとしていた。

その矢先にこの光景であった。

俺はあまり派手なのは好きじゃない、むしろどちらかというと嫌いな部類になるかもしれなかった。

父上にも、『自分の子供の誕生日なのだから、盛大に祝ってやりたい』という気持ちがあるのは理解できる。

それに貴族というものは、世間体をなにより気にするものだ。

豪華絢爛な宴を催すことによって自分の家の権威を誇示するという意味もあり、それが反乱分子や、陰謀を企てる者たちに対する抑止力となりうるということもまた理解できる。

誕生日を祝ってくれること自体は、心の底から嬉しいと声を大にして言えるのだが……。

毎年、誕生日となると目の前にあるように、屋敷中の人員全員を動員しての盛大なパーティになるので、正直もう少し控えめにして欲しいというのが本音だ。

だけど、まぁそんなことは俺のわがままだ。

実際には『俺の』誕生日ではなく、『俺とルイズ』の誕生日なのだから。

ルイズは例え派手なパーティであろうが、俺のように余計なことは考えないで純粋に祝ってくれること自体を素直に喜んでいる。

そんなルイズの顔を見たら『派手なパーティは嫌だから、もっと静かなものにしてほしい。』なんて言えるわけがない。

そんなことを言ってルイズに泣かれても困るし、そもそも俺たちを喜ばせようとしてくれる父上と母上、それに料理を作ってくれたり、パーティの準備をしてくれる皆に失礼というものだ。

父上の跡を継げば、こういうことにも自然と慣れるようになるかもしれないし、先のことを考えればこのままでもいいと思ってる。

…少し嫌だけど……。

そんなことを考えていると、後ろから声を掛けられる。

 

「おや、坊ちゃん。いかがされました? このようなところでお考え事ですかな?」

「ん? あぁ、おはようギャリソン。なんでもないよ、ちょっとボーっとしてただけだよ。」

 

この物腰の柔らかい老人は、ヴァリエール家に仕える執事長のギャリソン。俺とルイズの世話をよく焼いてくれるお爺ちゃんのような人だ。

 

「左様でございますか。しかし坊ちゃん。パーティの準備も間もなく終わるようですが、その服のまま出席なさるおつもりですかな?」

 

いたずらっぽく笑いながら寝巻きのままだった俺の格好を指摘するギャリソンの言葉に

 

「 !! そうだった、こんなことしてる場合じゃないや! 早く着替えてこなきゃ!」

 

慌てて廊下を走り出そうとする俺だったが、ギャリソンに待ったを掛けられる。

 

「坊ちゃん。いつもルイズお嬢様に廊下は走るものではないとおっしゃっているのに、ご自身がやってしまっていては示しがつきませんぞ?」

 

またもいたずらっぽく笑うギャリソンに注意された俺は

 

「うっ…! はは、ギャリソンには適わないなぁ……」

 

指で頭を掻きながらギャリソンの注意に俺はそう応える。

 

(この人にはホントに頭が上がらないなぁ……)

 

そんなことを考えつつギャリソンと別れ、着替えるために部屋へと急ぐ。

 

 

 

 

部屋へと向かう途中、いつまで経っても戻ってこない俺に痺れを切らした召使いが探しに来ていて、ようやく見つけたとばかりに首根っこを掴まれて部屋に連行される。

 

「まったく、もうパーティが始まってしまいますよ!? 急いで着替えて下さい坊ちゃん!」

「ごめんごめん、反省してるから許してよ」

「い~え、ダメです! 普段はしっかりしているのに、こういう行事となると毎度のことながら坊ちゃんは時間にルーズになるんですから! これを期にしっかりと予定を立ててですね……!」

「わかったって! 今度から気をつけるからさぁ、ホントもう許してよ!」

 

着替えを手伝ってくれる召使いのお小言に悩まされながら手早く着替えを済ます。

こんな風に一介の召使いが子供とはいえ、貴族にこのような口を聞くことなど本来は有り得ないことなんだろう。

だが、俺はこの屋敷に住む人たちは皆家族だと思っている、昔からそういう接し方をしてきたせいだろうか? 父上や母上、上の姉たちのいないところではこのように、まるで自分の子供や弟であるかのように接してくれる。

俺にとって、それはたまらなく嬉しいことで自然と笑みが溢れる。

 

「さ、終わりましたよ。間もなくパーティも始まるようですね。楽しんでらっしゃいませ、坊ちゃん」

「うん、ありがとう。行ってくるよ」

 

俺は部屋を後にして、会場である庭園に急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――遅い。

 

(もぉ、兄さまってば何してるのかしら!? もうパーティが始まる時間なのに!)

 

パーティ会場の中心。今回の主役の一人であるルイズは、もう一人の主役である双子の兄ギュスターヴが開始時間直前になっても来ないことにやきもきしていた。

 

(やっぱり私が待ってて一緒に来たほうがよかったかなぁ)

 

ルイズは双子であるが故に、ギュスターヴがこのように派手な行事にあまり乗り気ではないことに薄々気付いていた。

 

(なんで兄さまはこういう派手なのが嫌いなんだろう……?)

 

人の気持ちとは、表層的な部分でならある程度推し量ることは出来るが、心の奥深くに根付く深層的な部分には、心理を読むことに長けた者でなければ中々気づけないものである。

まだ幼い故に仕方のないことではあるが、ルイズは自分にとって楽しいことなのだから、他人にとっても楽しいのは当たり前だと、そう思っているのだった。

だからこそ、なぜギュスターヴがこのように派手な行事に乗り気でないのか分からなかった。

 

(…兄さま、早く来ないかなぁ……)

 

考えても分からないことだと判断したルイズは、肘を膝の上に乗せ、頬杖をつきながら兄の到着を待つ。

そうしていると、ルイズの横から少々キツめの少女の声が話しかけてくる。

 

「ルイズ、ギュスターヴはまだ来ないの? あの子どこで道草食っているのかしら」

 

そう問うてくる金髪の少女の名は『エレオノール』。

ギュスターヴとルイズの11才上の姉で、ヴァリエール家の長女である。

 

「エ、エレオノール姉さま……! い、いえ、知りましぇん! 多分、もうすぐ来ると思うんですけど……」

 

ルイズはエレオノールのことが苦手だった。

何か粗相をするとことある毎に頬をつねられ、その度に教育と称したお説教をもらっているからだ。

彼女に怒られると、ルイズはいつも兄ギュスターヴに泣きつき、エレオノールの怒りを鎮めてもらっていた。

 

「まったく、あの子はもう少し公爵家の後継としての自覚を持つべきよ。折角お越し頂いてる諸侯の皆様に申し訳ないわ」

 

今朝方ルイズが兄に言ったことと同じことを言う姉に、ルイズは身の縮まる思いであった。

 

姉エレオノールとの空間に息苦しさを憶えていたルイズであったが、周囲がざわつくのを感じ、人々の向けている視線の先に自分も目を向けてみる。

そこには、待ち焦がれていた兄がこちらに歩いてくる姿があった。

 

「兄さま!」

 

大好きな兄の登場に嬉しさを隠すことなく手を振り自分のいる場所に呼ぶルイズ。

しかし、なぜ嬉しかったのかは、おそらくギュスターヴの登場だけではなく、エレオノールにとっては悲しいことだが、姉との二人きりの空間から解放されたことも大きく関係しているのだろう。

 

「遅いわよ、ギュスターヴ! 何をしていたの!?」

「申し訳ありません、エレオノール姉さん。少し準備に手間取ってしまって」

 

苦笑いで姉の言葉にそう返すギュスターヴ。

 

「遅れてごめんよ、ルイズ」

「ホントよ! このまま来なかったらどうしようって思ってたんだから!」

 

ルイズは頬を膨らませてプリプリ怒ったように言うが、すぐに笑顔になり兄の手を取って父と母、姉カトレアのいるところに向かう。

 

「む? 来たか、ギュスターヴ」

 

公爵はモノクル越しにギュスターヴを一瞥し、主役が揃ったことを確認する。

 

「はい、父上。少々遅れてしまいましたが、間に合いましたよね?」

「うむ、本来ならもっと早くに会場に入っているべきなのだが、今日はそのような小言はなしにしておこう」

 

ギュスターヴは父の言葉にホッと胸を撫で下ろす。

 

「ではあなた。主役も揃ったことですし、そろそろ始めましょうか」

「そうだな。二人共、こちらに来て座りなさい」

 

父に促され、来客たちを一望できる位置にある椅子に座るギュスターヴとルイズ。

本日の主役である双子が並ぶように登場するとざわつき出す来客たちだったが、公爵が挨拶のため前に出るとピタッと一斉に話し声が止む。

 

「オホンッ! ご列席いただきました諸侯皆様方、大変長らくお待たせしました! 只今より、我がヴァリエール家長男ギュスターヴ・フリークス・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと、三女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの誕生パーティを始めたいと思います!」

 

公爵が挨拶の言葉を述べると、先程まで静まり返っていた会場に大きな拍手が巻き起こる。

そこから約5分ほど公爵の挨拶は続き、最後に締めるように

 

「……では、堅苦しい挨拶はここまでにして、皆様どうぞごゆっくりご歓談をお楽しみください」

 

公爵の挨拶が終わり、来客の前から退場する公爵に拍手が送られ、響いていた音が鳴り止むと来客たちは各々食事に舌鼓を打ったり、談笑したりと、このパーティを楽しんでいるようだった。

父の長い挨拶ですっかり退屈な様子になっていたルイズは、終わるやいなや兄の方を向き、

 

「兄さま、お腹空いちゃったね? 何か取りに行きましょう。私クックベリーパイが食べたいな」

「ルイズは、クックベリーパイが大好物だったもんな。じゃ、俺は桃のタルトにしようかな?」

「兄さま桃だったらなんでも好きだもんね~」

 

ギュスターヴとルイズが互いの好物について語り合っていると、優しく、柔らかい声が二人を呼ぶ。

 

「ギュスターヴ、ルイズ。お誕生日おめでとう」

「ちい姉さま!」

「カトレア姉さん! うん、ありがとう」

 

二人を呼んだのは、ルイズと同じ桃色の髪をたなびかせるもう一人の姉、カトレアだった。

 

「カトレア姉さん、今日は体調は平気なの? 姉さんは体が弱いんだから座ってた方がいいんじゃないかな……?」

 

次女カトレアは生まれつき体が弱く、原因不明の病を患っている。

父である公爵もカトレアの病状を不憫に思い、なんとかしてやろうと何人もの優秀な水メイジに治療を依頼してはいるのだが、これまでカトレアの不調の原因を解明できた者は誰一人としていなかった。

ギュスターヴもそのことを承知しており、病状が悪化することを心配しているので、自分たちのことに構わずに休んでいるよう促した。

 

「大丈夫よ、今日はとっても気分がいいの。それに、なんといっても可愛いあなたたちのお誕生日なんですから、出席しないわけにはいかないわ」

 

二人の頭を撫でてやりながら、ニコニコと慈愛の溢れる優しい笑顔でカトレアは心配いらないと言う。

 

「そっか。でも姉さん、無理だけはしないでよ? 体調が悪くなったら俺でもいいし、絶対に誰かに言ってよ? 約束だよ?」

「そうよ、ちい姉さま。ちい姉さまが倒れちゃったら大変だもの」

「はいはい、分かったわ。ギュスターヴもルイズも心配性なんだから」

 

コロコロ笑いながらカトレアは二人の気遣いにそう応える。

 

「ふふ、あんまりあなたたちに心配も掛けていられないし、そろそろお父様たちのところに戻ろうかしらね」

「え~、もう行っちゃうの? ちい姉さま……」

 

少しの間二人と談笑を楽しんだカトレアは父たちのいる場所に戻ろうとするが、それを聞いたルイズがまだ話し足りない様子で残念そうに渋る。

 

「ごめんね、ルイズ。けど、いつまでもこのお祝いの主役を独り占めしてちゃ、お越し頂いてるお客様の皆様に申し訳ないもの」

 

カトレアは微笑みながらルイズを見やり、その後に人ごみの方に視線を向ける。

そこには、この場所に来ている貴族の子弟たちが祝いの言葉をギュスターヴとルイズに送るために歩いてきているのが見えた。

 

「う~……で、でもでも……!」

「ルイズ、これ以上カトレア姉さんに無理言っちゃダメだよ。それじゃあ姉さん、姉さんも無理をしない程度に楽しんでよ。俺たちもそうするからさ」

「ええ、そうさせてもらうわ。ギュスターヴも、せっかくのパーティなんだからしっかり楽しまなきゃ損よ?」

 

『あなたのことならなんでもお見通しよ?』と言わんばかりに、いたずらっぽく笑いながら言う姉の顔にギュスターヴは言葉に詰まり、何も返せずただ苦笑いで返すことしか出来なかった。

 

(ギャリソンもそうだけど、カトレア姉さんにもホント頭が上がらないなぁ……)

 

手を振り、この場を後にする姉の後ろ姿を見つめながら頭の中でも苦笑する。

さて、と自分たちの方に向かってきている貴族子弟たちの方を見て一つ息を吐く。

 

(今回はどんな美辞麗句で褒めちぎってくるのかね……)

 

ギュスターヴがこのような場を好まない理由の一つ、それがこれであった。

彼は、上辺だけを美しく飾ったような薄い言葉をどうしても好きになれなかった。

やれ雅びだの、やれ高貴なお顔だの、そんな半分も本音が込もっていない言葉には正直ウンザリしているというのが実際のところだった。

しかし、ふと隣にいるルイズを見ると

 

「わぁ~、たくさん来てくれたね! 兄さま!」

 

姉が行ってしまったことで、先程までむくれていたのに、今ではそれが嘘のように笑顔になっている。

やはりどんな理由であれ、自分たちのことを祝ってくれるのが嬉しいのだろう。

そんな妹の様子に毒気を抜かれたのか

 

(ま、年に一回のことなんだ。姉さんの言うとおり、ルイズを見習って俺も素直に楽しむとしようかな)

 

二人の顔を照らす夏の日差しにギュスターヴは目を細めながらそう独りごち、子弟たちを笑顔で迎える。

 

 

 

 

 

一面青に染まった雲一つない晴れ渡った空の下、この日二人は大勢の衆人に祝福され、七つの誕生日を過ごしたのであった。

 

 




いや~、書いた書いた。
しかし後書きに書く事もなくなってきちゃいましたね、と言っても大したことは書いてないんですが。
さて、いかがでしたでしょうか?
ギュスターヴとルイズは七才となり、まだまだ原作には入れませんが少しずつ話も進んでまいりました。
あんまりグダグダしてても仕方ないので、幼少期はあと3、4話くらいで終わらせたいところですが、うまくまとまるかな?
では、いつものように感想などなどお待ちしております。
また次のお話でお会いしましょう!

追記:ギュスターヴのフルネームにあった『フリークス』とは、ヨーロッパ圏の言葉で『化物』や『異形』等という意味。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。